淫蕩
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本項目では、次について言及されている。
このような概念は、一般的に淫蕩(いんとう)、淫乱(いんらん)、あるいは多淫(たいん)などという語を伴って表現される。また、不特定多数の相手と性的関係を持つ人間や、その結果として生活が乱れる様子などを指す表現は、「プレイボーイ」「ビッチ」などといった俗称や蔑称が多く存在する。[要出典]
なお、精神医学における異常性欲の状態は「色情症(色情狂または多淫症)」を参照のこと。
概要
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不特定多数の相手と性的関係を持つ人間やその生活習慣は、日本語で言うところの「淫蕩」「淫乱」「多淫」などといった否定的な語で形容され、批判の対象になりやすい[1][2][3]。殊に性行為に耽りすぎると、正常かつ健全な恋愛や婚姻などに支障をきたし、結果的に日常生活まで破綻する可能性すらある[要出典]。また男女関係のみならず、オナニーやフェティシズムに耽るような、単独の性行為も過度になれば、同様に放埓な素行であると看做される場合もある[要出典]。
これらは、社会的な常識や宗教的な戒律から逸脱した状態であったり、性道徳において禁忌(タブー)とされる不貞行為であると看做される傾向にあるため、その俗称や蔑称にも様々な言葉が存在する(後述の「俗称・蔑称」を参照)。
一方で、現代の社会常識や性道徳は多様化および複雑化しているため、どのような人間や状態が淫蕩であるかは、価値観や判断基準によって異なる場合が多い[要出典]。
また、精神医学(精神疾患)における異常性欲の状態は、性依存症や色情症(色情狂または多淫症)として診断される場合もあるので、使用の際には注意が必要である。[3]
日本
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古代の日本では、本来は性に関して非常に大らかだったとされる。一方で、時代や地域によって宗教の影響による戒律の徹底や性道徳の普及なども見られた。[4]
平安時代、上級貴族は一夫多妻制の上に招婿婚(妻問婚)という婚姻制度も設けており、男女共に(ただし女性は独身者に限り、既婚者が配偶者以外の男性と関係を持つことはもちろん。立后した女性は夫である天皇や上皇が他界していても男と通じることは論外であった)複数の相手と性的関係を持つことに対して大きな抵抗感はなかったとされる。もちろん、当事者同士の合意が必要であったにせよ、この感覚については同時期に成立した紫式部による古典「源氏物語」などでも垣間見ることができる。
当時18歳程と推定される光源氏には正室(本妻、葵の上)がいたものの、年上の藤壺(当時23歳程)と密通(不倫)したり、同時に年下の幼女ともいえる若紫(当時10歳程、後の紫の上)を見染めたりするなど、現代では非常識とも捉えられかねない奔放な恋愛遍歴を連ねている。実際、源氏物語は広く読み継がれた一方で、後年には仏教の五戒に反するとして、「不道徳な物語を書いた紫式部は地獄に堕ちた」とする伝承も生み出し、「源氏供養」と呼ばれる供養祭が盛んに執り行われた時期もあった。[5][6]
仏教の伝来による影響は非常に大きく、平安後期になると下級貴族や武士の間から自主的に一夫一妻制の尊重が見られるようになり、鎌倉時代の政令「御成敗式目(貞永式目)」では第34条に「密懐他人妻罪科事(人妻と不倫した場合の罪科)」として密懐法(びっかいほう)が規定された。これには、啓蒙として性道徳を普及させる目的と共に、戦乱に乗じて女性が戦利品として扱われてしまうような社会不安を払拭する目的があったと思われる。
原文に「右不論強姦和姦懐抱人妻之輩、被召所領半分、可被罷出仕/無所帯者可処遠流/女之所領同可被召之、無所領者又可被配流也/次於道路辻捕女事、於御家人者百箇日之間可止出仕」とあり、意訳すると「強姦または和姦を問わず人妻を懐抱(性行為に相当)した者は、所領(所得)の半分を没収、出仕(役職や仕事)を被罷(懲戒免職)とする。男が無所帯者(独身)であっても遠流(流刑)。女も同罪、所領を没収し、所領がない場合は配流(流刑)とする。次に、道路辻(街中や道端)で女を勝手に捕えるような事があった場合、御家人(武士)であれば100日間の出仕停止(謹慎処分)」などといった具合に処罰されており、その後の武家社会で一夫一妻制などの性道徳が遵守されるようになった端緒がうかがえる。[7][8][9]
ただし、どのような宗教や性道徳であっても完璧ということはなく、戒律を説いて実践するはずの僧侶や坊主が自ら堕落することもあった。戦国武将の織田信長が、「山門、山下の僧衆王城の鎮守たりといえども、業躰業法(ぎょうたいぎょうほう、その実態や有様はといった意味)、出家の作法にも拘らず、天下の嘲弄をも恥じず、天道の畏れをも顧みず、淫乱、魚鳥を食し、金銀賂に耽り」(信長公記)と批判して、1571年に比叡山にあった天台宗の延暦寺を焼き払った事件(比叡山焼き討ち)は有名である。
江戸時代に入り、儒教の道徳感が武士道に組み込まれて浸透するようになると、女性に対する貞操観念が強く要求されるようになり、その後の処女崇拝への端緒となった。一方で、江戸幕府公認の遊廓では商人や町人と共に武士も女遊びを楽しんでいたこと、血縁に頼らない養子縁組や妾の風習などが盛んであったこと、主従関係や義兄弟の絆を深めるために男色が流行したことなど、武士であっても性道徳に関しては柔軟な一面を残していたことがうかがえる。また、庶民や地方の農村などでは依然として夜這いが男女共通の楽しみとして社会的に黙認されて存在しており、女性から男性を誘うことも特に恥ずかしいことではなく、地方によっては祭日などの特別な日に童貞が人妻へ指南を請うために夜這うことを黙認するような風習もあったという。[7][8][9][4]
また、江戸や明治の頃まで日常的だった混浴の風習は、渡来した欧米人たちから驚きをもって記録されている。1853年の黒船来航でアメリカ艦隊を率い、1856年に帰国したマシュー・ペリー提督はアメリカ議会図書館に収めた公文書「ペリー艦隊日本遠征記(原題:Narrative of the Expedition of an American Squadron to the China Seas and Japan.)」の中で、日本人は礼儀正しく大人しいが「驚くべき習慣を持っている。ある公衆浴場での光景だが、男女が一緒に入り乱れて互いの裸体を気にしない」、「東洋諸国の中で優れた道徳を持つ」にもかかわらず、このような「淫猥(いんわい)な行為」は理解しがたいと述べている。また、春画や枕草紙についても見解を残しており、「淫乱の情を促す」もので「胸が悪くなるほど度が過ぎている」と不快感を露わにしている。[10][11]
ただし、どのような時代であっても行き過ぎた遊びが恋人や夫婦の仲といった男女関係や人間関係を険悪にしてしまうのは当然の結末であり、性道徳にだらしのないことが性病の危険性まで高めてしまうことなどは(よい意味での)迷信まで含めて社会的にも充分認識されていた。[12][13]
当時の破礼川柳(ばれせんりゅう)に「まだ髪が/多いとどらの/師匠いひ」という句があり、遊び人の師匠がその師弟(どら)に向かって「髪が残っているようではまだまだ遊び足りない」と茶化しているように読めるが、これは梅毒の第2期症状を指した句である。同様に「鷹の名に/お花お千代は/きつい事」という句は、梅毒による第3期以降の症状になった「夜鷹(よたか、娼婦)」に向かって「お鼻落ちよ(お花お千代)」と皮肉っている句である。また、「父親に/似ぬを知るのは/母ばかり」などにもあるように、不特定多数の相手と性的関係を持った場合、子供が出来るとその出生を確認することは困難になりやすく、当時の家族制度にとっても深刻な問題となった。産婦人科に相当する医師は中条流と呼ばれ、避妊には「朔日丸(ついたちがん)」、堕胎(中絶)には「牛膝(いのこずち、ごしつ)などと呼ばれる漢方薬を使用したが、実際には水銀の服用によって強制的に死産させるなど、母子共に命を落とす危険性が高かったとされる。[14][12][13]
幕末から明治になり、欧米諸国を参考に急激な近代化を目指した明治政府は1870年に「新律綱領(しんりつこうりょう)」を発布する。これはひとつの事例に過ぎないが、同時期に地位の高い男性や経済的に裕福な男性が本妻以外の女性を妾として養うことは男女共に認知されており、戸籍に入れることも社会的に問題視されていなかった。しかし、1876年の元老院会議では「蓄妾(ちくしょう、妾を囲うこと)」という言葉と「廃妾(はいしょう、妾を廃止すること)」という言葉を用いて議題に掲げられ、「本妻が跡継ぎの男児を産まない可能性もあるので、妻の代わりとしての妾は有用」といった意見や、「性的欲求を満たすための妾は無用」などといった意見が議論として実際に交わされたという。結果的には、手本とした欧米諸国に照らし合わせて一夫一妻制や姦通罪を制定周知し、妾や夜這いといった風習は全て淫蕩な行為として禁止になり、近代から現代へ至る性道徳や社会通念が成立するようになった。[15][16]
戦後以降、1960年代から1970年代にかけて日本においても多大な影響を及ぼしたウーマン・リブ(Women's Liberation、女性解放運動)や経口避妊薬の普及などによる女性の自立、1990年代から急速に普及したインターネット環境など、現代における性道徳は大量の情報と共に多様化および複雑化している。その為、現代社会では「どのような人間であれば淫蕩なのか」「どのような状態であれば淫蕩なのか」という定義や解釈は、個人の価値観や判断基準によって大きく異なる様相を見せている。[17]
海外
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海外では、キリスト教やユダヤ教なら婚前交渉や姦淫は重罪とされ、イスラム教なら女性の肌を他者へ見せることすら禁忌(タブー)として考えられているなど、淫蕩であることに対して非常に厳しい教義や処罰が多く存在している。しかしその一方で、社会的に人身売買や奴隷制度が公然と認められていたり、権力者が後宮の女性によって惣領や嫡子(跡継ぎ)を確保しているような歴史的な背景もあった為、あらゆる文化や地域において宗教的な教義や社会的な性道徳とは矛盾する事例が多く存在してきた。
右の絵画「スルターンとロクセラーヌ(Roxelane und der Sultan)」では、オスマン帝国のスルターン(大帝)であったスレイマン1世(Sulayman)と、後宮で寵愛された女性ロクセラーヌ(Roxelana)が描かれているが、ロクセラーヌ(またはロクサレーナ)とは「ロシア女」という意味であり、もともとはタタール人によって献上された元奴隷で、本名はアレクサンドラ・アナスタシア・リソフスカ(Alexandra Anastasia Lisowska)と言った。彼女は第1皇妃(本妻)に次ぐ第2皇妃として4男1女をもうけるなどして絶大な権力を握るが、後宮という制度や階級に依存していながら、その後も次々と献上されてくる後宮の若い女性にスレイマンが手を出すことには非常に厳しかったという。これを、淫蕩な手段を利用した悪女と看做すか、貞操観念の強い女性と看做すかは、時代や文献によっても意見が別れる。[18][19]
また、欧米諸国を参考に姦通罪などを制定した日本の明治政府であるが、その是非は兎も角として実際には欧米人の間にも愛人や妾の存在があった。1810年に民衆から撲殺されたハンス・アクセル・フォン・フェルセン(漫画「ベルサイユのばら」ではフェルゼンとして登場)は、フランス王妃のマリー・アントワネットの愛人として有名である。また、アメリカで「最も成功しなかった大統領」として挙げられることの多いウォレン・ハーディング(任期 1921年-1923年)は愛人によって数々のスキャンダルが露呈しており、「唯一、四期連続当選した大統領」であるフランクリン・ルーズベルト(任期 1933年-1945年)は愛人の傍で意識を失い亡くなっている。現在でも「ババ(南部訛りで兄弟の意味)」の愛称で人気の高い大統領ビル・クリントン(任期 1993年-2001年)は就任前からスキャンダルの多い政治家だったが、1998年にモニカ・ルインスキーとの不倫が発覚している。ルインスキーから「大統領の精液が付いたドレス」が証拠物件として提出されたことでDNA鑑定まで受ける事態へ発展し、最終的にクリントンは「私はルインスキーさんと不適切な関係にあった(I did have a relationship with Miss Lewinsky that was not appropriate.)」と認めた。この「不適切な関係(Relationship that was not appropriate.)」は当時の流行語にもなっている。[20]
ごく最近の事例では、モーセの十戒として知られる有名な教義「汝、姦淫するなかれ(Thou shalt not commit adultery. または You shall not commit adultery.)」を採用しているキリスト教のカトリック派において、2010年に未成年児童への性的虐待などがアメリカで露呈した。その後、アイルランド、メキシコ、オーストリア、イギリス、オーストラリア、オランダ、スイス、ドイツ、ノルウェーなどで次々に同様の性的虐待が発覚し、最終的にローマ教皇(法王)が謝罪する事態に至り、欧米諸国に大きな衝撃を与えている(「カトリック教会の性的虐待事件」を参照のこと)。[21][22]
何れにしても、海外に限らず、教義や性道徳は厳格すぎても自由すぎても完璧に維持継続することは困難であり、性行為に関連する事象や淫蕩と看做された場合は往々にして誤解や風評被害を招きやすいとも言える。過去、欧米諸国においてオリエンタリズム(東方趣味)が偏った憧憬や誤った思い込みを形成してしまい、中東のハンマーム(日本における性風俗としての「トルコ風呂」)やハレム(日本における一人の男性が複数の女性を独占する「ハーレム」)などが、淫蕩なイメージの一種として諸外国へ伝わってしまったような事例も多く存在している。
逆に、宗教や思想を悪用し、性に自由であることを拡大解釈したり、乱婚(多夫多妻制)に寛容であることを教義などで定めた結果、単なるカルト集団となってしまった事例もある。1969年にハリウッド女優シャロン・テートの殺害事件に関わった被告のチャールズ・マンソン(Charles Manson)は、一種のコミュニティー(マンソン・ファミリー)を作って複数の女性を囲い、ドラッグを服用しながらフリーセックスと称して乱交に耽ることもあった。同時代の大衆文化に大きな影響を与えたヒッピー・カルチャー(Hippie culture)は、本来はカウンターカルチャー(Counterculture、既存文化に対する抵抗文化)として、過去の慣習や従来の道徳観に縛られない「フリーラブ(Free Love)」と呼ばれる友愛思想を謳っていたものの、大概において「フリーセックス(Free Sex)」などと曲解して悪用されてしまうことが多く存在した。なお、実際にテートを殺害したのはマンソンを狂信していた女性たち、スーザン・アトキンス(Susan Atkins)やパトリシア・クレンウィンケル(Patricia Krenwinkel)であるが、彼女たちは殺害後の現場に「豚どもに死を(Death To Pigs)」との血文字まで残している。また、1978年にガイアナで900人以上の信者が集団自殺した「人民寺院(ジョーンズ・タウン)事件」では、教祖であり首謀者のジム・ジョーンズ(Jim Jones)が複数の女性信者を性的奴隷として扱ったりしている。[23][24]
俗称・蔑称
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日本において使用される淫蕩の俗称・蔑称、または隠語(スラング)を以下に挙げる。なお、該当すると思われる人間や状態を揶揄したり侮蔑する意味合いで差別的に使用することが多いので、実際に使用する際には充分な注意が必要である。また、詳細はリンク先の各項目を参照のこと。[25][26][27]
男性
不特定多数の女性と性的関係を持つ男性を指す淫蕩の俗称・蔑称を挙げる。なお、使用する状況によって、男性の甲斐性として解釈されたり、男性にとっての色気や性的魅力といった意味合いになる場合もある。[25][26][27]
- プレイボーイ(Playboy)
- 英語。日本語の俗称「遊び人」や「女好き」に相当する。軽い意味合いで使用される場合が多い。同様の意味で使用されるようになったのは20世紀初頭頃からで、日本へは大正頃に入ってきたとされる。1953年に創刊されたアメリカの男性向け月刊雑誌「PLAYBOY」の雑誌名としても知られている。一部の辞書には「プレーボーイ」との記述も見られる。[28][29]
- ジゴロ(Gigolo)
- フランス語。日本語の俗称「ヒモ」や「スケコマシ」、あるいは年上の女性に養われる男性の俗称「つばめ」などに相当し、本来は女性に対して意図的に頼って生活しようとする、悪意を持ったような男性を指していた。また、「男娼(だんしょう)」や「男妾(おとこめかけ)」を指すこともあった。ただし、現代の日本では「遊び人」程度の軽い意味合いで使用されることが多い。[30]
- ドン・ファン(Don Juan)
- 17世紀頃のスペインに実在したとされる伝説上の貴族ドン・ファン・テノーリオ(Don Juan Tenorio)の名前から。後年、「女遊び」や「好色」な男性、「漁色(ぎょしょく)」が過ぎて身を持ち崩すような男性を指す代名詞となった。なお、「ドン(Don)」とは、ボスや首領など高位にある者を指す敬称である。1787年にモーツァルトが作曲したオペラ「ドン・ジョバンニ(Don Giovanni)」は、ドン・ファンをイタリア語の発音綴りに置き換えたものであり、以降も多くの戯曲や小説で題材となっている。一部の辞書では「ドンファン」とも表記される。[31]
- カサノバ(Casanova)
- 18世紀のイタリアに実在した作家ジャコモ・ジローラモ・カサノヴァ(Giacomo Girolamo Casanova)の名前から。千人以上の女性経験を持つとされ、同性愛や異性装の実践、性病などの研究にも熱心だった。後年、「女好き」や「好色」な男性、「漁色家(ぎょしょくか)」の男性などを指す代名詞となった。戯曲や小説などで題材となることも多く、1976年に映画監督のフェデリコ・フェリーニが映画化したり、1992年に映画俳優のアラン・ドロンが主役として演じたりしている。一部の辞書では「カサノーバ」とも表記される。[32]
- 淫夫(いんぷ)
- 「情夫(じょうふ)」などの愛人に相当し、異性関係のだらしない男性や浮気者の男性を指す。[33]
- 姦夫(かんぷ)
- 「間男(まおとこ)」や「間夫(まぶ)」、「情夫(じょうふ)」などの愛人に相当し、正妻や恋人のいる女性と性的関係を持った男性を指す。「奸夫(かんぷ)」とも書く。なお、間夫は江戸時代の遊郭では「ヒモ」という意味合いも持っていた。[33][34]
- 色事師(いろごとし)
- 本来は歌舞伎用語であり、色事(恋愛)を演じるのが得意な女形(男優)を指した。濡れ場(性的な演出場面)を演じることから「濡れ事師(ぬれごとし)」とも呼ばれる。後年、性行為が巧みな男性や情事に秀でた男性を指すようになった。[35][36]
- ヤリチン
- 日本語の「やりたがる」や「やりまくる」という動詞の「やり(ヤリ)」と、男性器を指す俗称の「チンチン」や「チンポ」という名詞の「ちん(チン)」を合わせて縮めた言葉である。女遊びに精力的な男性や、女性経験の豊富な男性を指す。
女性
不特定多数の男性と性的関係を持つ女性を指す淫蕩の俗称・蔑称を挙げる。なお、女性に対して貞淑であることを強く求めてきた近代社会の常識や性道徳などの歴史的な背景から、男性の淫蕩を指す言葉よりも種類が多くなる傾向にある。また、そのような理由から、本来はプロのセックスワーカーや売春婦のみを指していた隠語(スラング)が、一般の女性に対しても広義に解釈されて転用するようになった例がある。[25][26][27]
- プレイガール(Playgirl)
- 英語。日本語で女性の「遊び人」や「男好き」に相当し、軽い意味合いで使用されることが多い。同様の意味で使用されるようになったのは20世紀初頭頃からで、日本へは大正頃に入ってきたとされる。一部の辞書には「プレーガール」との記述も見られる。なお、アメリカでは1953年に創刊された男性向け月刊雑誌「PLAYBOY」に対して、1973年に女性向けの月刊雑誌「PLAYGIRL」が創刊されている。[28]
- イエローキャブ(Yellow cab)
- 英語。本来はアメリカにおいて主にアジア人の娼婦を指すマイナーな隠語でしかなかったが、1989年に作家の家田荘子が同名作品で使用したことから日本では大きな話題となった。アメリカで定番色として認識されている黄色いタクシー(イエローキャブ、Yellow cab)の「誰でも乗車できる」という意味合いと、有色人種(カラード、Colored)の一種としてアジア人の肌色を黄色(イエロー、Yellow)として差別的に呼称した意味合いが重なっており、国内の解釈としては「白人男性を好む日本人女性」に対して使用するというイメージが広がった。
- ビッチ(Bitch)
- 英語。もともとは「雌犬」という意味の名詞で、道徳観念の低い女性や下品な女性を指す。なお、性的にだらしがないことを強調する場合には名詞「スラッツ(Slut)」が使用される。また、形容詞「ナスティ(Nasty)」を用いた Nasty girl は「最低の女」という意味が転じて「浮気女」や「尻軽女」という意味合いで使用される。
- 売女(ばいた)
- 非常に古くから存在する隠語で、本来はプロのセックスワーカーや売春婦を指していた。これが「金さえ払えば誰とでも寝る」という意味から広義に転じて、いつからともなく不特定多数の男性と性的関係を持つ一般の女性まで指すようになった。「ばいじょ」と読む場合もある。更に古くは「淫女(いんにょ)」「淫婦(いんぷ、いんふ)」「淫売(いんばい)」などとも言った。[37][38][39][40][41]
- 姦婦(かんぷ)
- 「間女(まおんな)」や「間女房(まにょうぼう)」、「情婦(じょうふ)」や「淫婦(いんぷ)」などの愛人に相当し、夫や付き合っている恋人のいる男性と性的関係を持った女性を指す。「奸婦(かんぷ)」とも書く。[33][34]
- あばずれ
- 江戸時代の流行語で、「暴れる」の「あば」と、「人擦れ(ひとすれ、ひとずれ)」や「擦れっ枯らし(すれっからし)」の「すれ(ずれ)」を合わせて縮めた言葉とされる。当て字で「阿婆擦(あばずれ)」や「阿婆擦女(あばずれおんな)」とも書く。本来は男女の別なく使用していたが、後年になるにつれて女性のみ指す俗称となった。片仮名で「アバズレ」と書くことも多い。同義語として「莫連(ばくれん)」や「莫連女(ばくれんあま、ばくれんおんな)」などとも呼ばれる。[42][43][44]
- すべた
- 江戸時代にポルトガルから輸入されたかるた(トランプ)が流行し、エスペラーダ(スペード)の中で配点にならない札(カード)があったことから、これらが合わさって「不細工な女」や「無用の女」といった意味合いで使用されるようになった。その後、更に転訛して娼婦や下品な女性を指す言葉となった。片仮名で「スベタ」と書くこともある。[45]
- 羅紗緬(らしゃめん)
- 江戸時代の後期(幕末頃)から使用されるようになり、日本へ渡来した西洋人を相手にしていた娼婦や彼らの妾となった女性を指した。本来の羅紗緬とは羊毛で織られた布地のことであるが、西洋人が遠洋航海の際に食欲と性欲を同時に解消する手段として羊を一緒に乗船させていたと信じられていた為に、これが転じて使用されるようになった。人間と動物による性行為については獣姦も参照のこと。[46]
- パンパン
- 戦後、主に在日米軍の外国人男性を相手にした娼婦を指した。語源には諸説があり、「パンパン・ガール」や「パン助(ぱんすけ)」とも呼ばれた。[47]
- ズベ公(ずべこう)
- 戦後の時期に、「ずぼら」の語源である「ずべら」の「ずべ」と、相手を侮蔑する意味合いの「公(こう)」を縮めて合わせた言葉として使用された。不良やならず者の女性という意味もあった。[48]
- ヤリマン
- 日本語の「やりたがる」や「やりまくる」という動詞の「やり(ヤリ)」と、女性器を指す俗称の「まんこ」という名詞の「まん(マン)」を縮めて合わせた言葉である。
- サセ子(させこ)
- どんな男性にもセックスを「させ(サセ)てくれる女性(子)」を指す。接頭語の「御(お)」のみを付けて「おさせ」と書く場合もある。
- 公衆便所(こうしゅうべんじょ)
- 女性を「誰でも使うことができる便所」と同一に看做し、男性が性欲処理の相手として卑下するような女性を指す。
- 肉便器(にくべんき)
- 女性器を「肉で出来た便器」と看做し、男性が性欲処理の相手として卑下するような女性を指す。
男女共通
不特定多数の相手と性的関係を持つ者として、男女共通で使用される淫蕩の俗称・蔑称を挙げる。接尾に男や女を付けて使用する例も多い。[25][26][27]
- 淫乱(いんらん)
- 「淫乱男(いんらんおとこ)」や「淫乱女(いんらんおんな)」、「淫乱者(いんらんもの)」など。古くは「婬」という漢字を使用することが多かったが、次第に「淫」の漢字が使用されるようになった。[49]
- 浮気(うわき)
- 「浮気男(うわきおとこ)」や「浮気女(うわきおんな)」、「浮気者(うわきもの)」など。
- 愛人(あいじん)
- 「情人(じょうじん、じょうにん)」とも書く。男性の「情夫(じょうふ)」や女性の「情婦(じょうふ)」を指し、古くは「妾(めかけ)」と呼ばれた。現代の一夫一妻制では、不倫や浮気などの情事(逢引や性行為)と共に使用されることが多い。
- 好色(こうしょく)
- 「好色男(こうしょくおとこ)」や「好色女(こうしょくおんな)」、「好色者(こうしょくもの)」など。異性や恋愛に積極的な男性を「女好き(おんなずき)」、対して同様に女性を「男好き(おとこずき)」などとも言う。男女を区別しない場合、「好色家(こうしょくか)」や「好き者(すきもの)」などとも言う。江戸時代の作家、井原西鶴による1682年の「好色一代男」や1686年の「好色一代女」などでも有名である。なお、漢字の「色」は、現代では主に色彩(Color)のことを指すが、古くは性的な意味合いや優れた容姿容貌などに対して使用される言葉であり、「色気(いろけ)」や「色事(いろごと、恋愛)」、好色と同義の「色魔(しきま)」などといった言葉がある。このことから、「性欲を貪る」と同様に「色を漁る(あさる)」とも呼ばれ、「漁色(ぎょしょく)」や「漁色家(ぎょしょくか)」などとも呼ばれる。[50][51][52]
- 尻軽(しりがる)
- 尻軽男や尻軽女など。ただし、尻軽という言葉そのものが売春婦を指していた地域もあり、現代では女性に対して多く使用される傾向もある。
- 二股(ふたまた)
- 二股男や二股女など。ある一人の人間が、同時に二人以上の相手と恋愛関係や性的関係を持っている状態を指す。相手が増えると人数に応じて三股(さんまた)や四股(よんまた)となる。
- すけべ
- すけべ男やすけべ女など。本来は助兵衛(すけべえ)と書き、言葉そのものは非常に古くから存在していた。江戸時代の頃から現在と同様の意味合いを持つようになり、主に猥褻な男性を指す傾向にある。
- エッチ
- 明治時代の頃から女子学生の間で猥褻な男性を指して使用されるようになり、語源には諸説がある。
- セックスフレンド
- フリーラブやフリーセックスと共に知られるようになり、婚姻を前提とせず性的欲求の解消だけを目的に付き合っているような相手を指す。
反義語
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以上のように「淫蕩」「淫乱」「多淫」といった概念の周辺には多様な類語が存在する。一方で、これらに対応する反義語は、俗称や蔑称も含めた種類と比べると数は少ない。単純に反対の意味となる語としては、「貞操(ていそう)」や「操(みさお)」、「貞淑(ていしゅく)」や「貞節(ていせつ)」などがあり、これらは「貞操観念がある」や「堅い操」、「貞淑な人」や「貞節がある」などといった表現で使用され、高い性道徳の観念や意識を持っていることを指す。また、より一般的には「真面目(まじめ)」であると表現したり、「身持ちが良い」や「身持ちが堅い」といった表現が使用される。[1]
なお、近年増加傾向にあるとされる、恋愛やセックスに消極的な若い男女を表現する俗語に「草食系男子」や「草食系女子」などがある。これらの対語は「肉食系男子」や「肉食系女子」である。
性行為感染症・風評被害
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人類史と共に性行為感染症による罹患者は存在していたが、1990年代頃からヒト免疫不全ウイルス(HIV)による後天性免疫不全症候群(AIDS)の急激な感染拡大が世界的に懸念されるようになった。また、性道徳の多様化や交通機関の発達によって感染拡大にかかる時間差や地域差、年齢差などが急速に失われるようになり、古来からの性病とされる梅毒や淋病に加わって、クラミジアやヘルペスといった新しい感染症が一般社会でも認知されるようになった。[53][54][55][56][57][58]
性的に奔放であることが全ての性行為感染症の感染原因であるとは断言できないが、不特定多数の相手との性行為による身体的な接触が大きな原因を占めていることは、各種報告書の結論から容易に推測することができる。従って、性病予防の啓蒙団体やマスメディアから提供される関連情報も併せ、以前のように性的に活動的(精力的)であることが「男の甲斐性」として評価されたり、性に開放的である女性が男性から羨望の対象となるようなことは減少傾向にあるとする意見もある。(恋愛やセックスに消極的な若い男女を指す俗語「草食系男子」や「草食系女子」も参照のこと。)[59][60]
一方で、1990年頃から日本ビデオ倫理協会の推奨によりアダルトビデオの冒頭にコンドームの使用による性病予防や避妊対策を啓蒙する広告が入るようにはなったものの、その内容は「中出し物(コンドームを使用しない膣内射精)」と呼ばれるジャンルが顧客層から多くの支持を得るといった矛盾も散見されている。また、経口避妊薬の安易な乱用や、未だに根強い誤った性知識や科学的な根拠のない性的空想(性的幻想)などが依然として感染拡大を招いているとする意見もある。これらの問題点は、教育機関における性教育が早急に取り組むべき課題として扱われることも多い。[61]
また、マスメディアが誤解を与えるような情報を扱ったり、インターネットが間違った情報を拡散させる場合もあるので、淫蕩という言葉の使用や解釈には風評被害や妄想、価値観まで含めて冷静に見極め、自主的に判断できるようなメディアリテラシーが求められる。
脚注・出典
- ^ a b 大辞泉(小学館、1995年)や、広辞苑 第六版(岩波書店、2008年)など。「淫蕩」の項目より。名詞や形容動詞として、淫蕩とは「酒色(しゅしょく)にふけって素行の悪い」者や「みだらな享楽(きょうらく)にふける」状態を指すとしている。
- ^ 古語大辞典 第一巻(角川書店、1982年)。「淫(いん)」または「婬(いん)」の項目より。特に「男女の性行為に関して非難の意を込めていうことが多い」とある。また、古くから「淫」や「婬」という漢字そのものが性交や性器に関連する言葉として使用されている。古い使用例として、平安時代(後期)の説話集「今昔物語」には「不浄の淫付きて染みたり(精液が付着すれば穢れてしまう)」や「男女娶がずと云えども、身の内に婬入ぬれば、此なむ子を生じける(男女が結婚せずに、身勝手にみだらな行いをすれば、望まぬ子供を妊娠してしまう)」などがある。また、仏教用語としての性道徳の戒律は「淫戒(いんかい)」とも呼ばれ、これを違反する行為は「淫犯(いんぼん)」と呼ばれた。また、肉食や妻帯(さいたい)といった、戒律全般を違反する行為は「破戒(はかい)」と呼ばれる。なお、民間伝承や道祖神において、男性器や女性器に似た形状の石や木を祀り崇めることは「淫祠(いんし)」や「淫祠邪教(いんしじゃきょう)」などと呼ばれる。この他にも「淫佚(いんいつ)」「淫樂(いんがく)」「淫書(いんしょ)」「淫靡(いんび)」「淫奔(いんぼん)」など、様々な言葉が存在している。ちなみに、非常に珍しい用例であるが、1992年の「隠語辞典 第36版(廣済堂)」によれば、江戸時代の盗賊が鍵のかかっていない防犯意識の甘い家屋や土蔵のことを「淫乱娘(いんらんむすめ)」という隠語で使用していたという。
- ^ a b 新版 精神医学事典(弘文堂、1993年)。「色情症(多 淫症または色情狂)」の項目より。主に二種類に大別されており、「相手から(根拠もなく)愛されていると錯覚する」妄想観念型と、「(性欲の)異常な亢進 または好色を指す」異常性欲型があるとしている。また、男性の場合は、全ての女性を愛する「カサノバ型」と、次々と女性を変える「ドン・ファン型」に大別 できるという。なお、異常性欲の男性は「サチリアジス(サチリアージス)」、対して同様の女性は「ニンフォマニア」と呼ばれ、「性機能障害による性欲抑制 の欠如」が原因と考えられている。ただし、こういった性的な症状における診断基準は困難であることも多く、精神科医の所見事例として「自慰(じい、オナニー)」の項目では「過度の自慰は有害であると教えることでさえ、それでは過度とは何なのかと思い悩ませることになる」とも述べられている。
- ^ a b 赤松啓介著「非常民の民俗文化-生活民俗と差別昔話」(明石書店、1996年)。同著「非常民の民俗文化 村社会の民族と差別」(明石書店、1996年)。その他の同著に「女の歴史と民俗」「猥談 近代日本の下半身」「夜這いの民俗学」「夜這いの性愛論」など。男であれば100人の女性経験を持つ「百人切(百人切り)」や、女であれば100人の男性経験を持つ「百人抜(百人抜き)」も珍しいことではなく、人間性の魅力として褒め称えられたと述べている。西欧諸国の道徳観念を明治時代に一気に輸入して急速に普及させたことが、現代の日本において矛盾する性道徳を混在させてしまっている要因として捉えることができる。
- ^ 源氏物語には様々な現代語訳本があり、その描写は著者や購入層の対象年齢などによって大きな差がある。一般にも知られる著名な作家としては、与謝野晶子や谷崎潤一郎、瀬戸内寂聴などによる現代語訳がある。
- ^ 橋本治著「源氏供養」 (中央公論社、1993年)。
- ^ a b 氏家幹人著「武士道とエロス」(講談社現代新書、1995年)。同著「江戸の性風俗 笑いと情死のエロス」(講談社現代新書、1998年)。同著「江戸の性談 男は死ぬまで恋をする」(講談社文庫、2005年)。
- ^ a b 北村鮭彦著「お江戸吉原ものしり帖」(新潮文庫、2005年)。
- ^ a b 松尾剛次著「破戒と男色の仏教史」(平凡社新書、2008年)。
- ^ オフィス宮崎編訳「ペリー艦隊日本遠征記」(万来舎、2009年)。
- ^ 中野明著「裸はいつから恥ずかしくなったか - 日本人の羞恥心」(新潮選書、2010年)。1855年にヴィンセント号で渡来したアメリカ人の士官アレクサンダー・ハバーシャムも、仮に「半分しか文明化していない東洋人」だとしても、「中流および下流階級の人々」は貞操観念に乏しく、「乱痴気(らんちき)なことに」若い女性であっても平気で混浴に入ることは理解出来ないと述べている。なお、日本人が入浴を好むことそのものに対しては好意的で、「マレーシアや南洋の島国、回教の人々を除くと、日本人が最も清潔である」とも記している。
- ^ a b 山本真鳥編「性と文化」(法政大学出版局、2004年)の苅谷春郎著「第2章・梅毒流行諸相」より。日本での梅毒の蔓延について、1563年に渡来した宣教師ルイス・フロイスは「男も女もそれを普通の事として少しも羞じない」、1857年に渡来した軍医ポンベ(ポンペ Johannes Lydius Catherinus Pompe van Meerdervoort)は「恐るべき状態がますます深刻に拡大しつつある」などと記録に残している。また、遊女たちは職業病とも言える梅毒になると「扱いは冷酷を極め、(中略)廓内の行灯部屋に閉じ込め看護も食事も充分に与えられず、(中略)放置された」という。その為、「投げ込み寺」としても知られる箕輪浄閑寺(東京都台東区三ノ輪)に残る過去帳では「遊女の死亡平均年齢は22.7歳という悲しい数字」であり、「一見華やかに見える廊社会の過酷な実態」がうかがえるとしている。
- ^ a b 花咲一男著「大江戸ものしり図鑑」(主婦と生活社、2000年)。「別世界吉原」や「市中の性風俗」より。なお、当時の中条流は堕胎を扱うことから別名「ながし屋」とも呼ばれた。
- ^ 破礼川柳(ばれせんりゅう)とは名の通り、礼を破った川柳であり、現代の下ネタや猥談に相当する句である。他に「どら息子/親の目を盗んで/鼻が落ち」や「生薬屋(きぐすりや)/やっと聞取る(ききとる)/ひゃんきらひ」などがある。後者は、梅毒の第3期症状となり口腔周辺の肉を失った患者が、漢方薬の一種である「山帰来(さんきらい)をしっかり発音できない様子を揶揄した句である。このように、江戸時代には梅毒によって身体の一部を失った者を見かけるのは日常茶飯事の出来事であったという。
- ^ 三橋修著「明治のセクシュアリティ-差別の心性史」(日本エディタースクール出版部、1999年)。
- ^ 黒岩比佐子著「明治のお嬢さま」(角川学芸出版、2008年)。第四章「家の存続と妾問題」より。なお「妾腹(めかけばら)という言葉が示しているように、女を腹として(道具のように見下して)扱うことを許す発想」が現代の「女は生む機械」に繋がるとしている。「生む(産む)機械」という言葉は、2007年の安倍内閣で第7代厚生労働大臣を務めた柳澤伯夫によるもので、女性への差別発言として当時のマスコミで大きく報道された。
- ^ 内閣府「平成13年(2001年) 国民生活白書 ~家族の暮らしと構造改革~」2002年3月26日公表 第1章 家族を巡る潮流変化「2.婚姻や子どもを生み育てる機能に関する変化-進む少子化、高まる離婚率」より「未婚化、晩婚化の傾向」「高まる離婚率」「変化する離婚観」「再婚の状況」の項目など。なお、「5.家族における変化の方向性-小世帯化と多様化」より「家族間の多様化」の項目では、婚前交渉を認めない層を「伝統重視群」、婚前交渉を認める層を「多様性重視群」と名付け、性別と年齢による分析が行われている。どちらにおいても、男性は「伝統重視群」が多く、女性は「多様性重視群」が多いといった結果などを見ることができる。
- ^ 澁澤幸子著「寵妃ロクセラーナ」(集英社、1998年)より。
- ^ 澁澤幸子著「ハーレムの女たち」(集英社、1999年)より。
- ^ クリントンの発言「不適切な関係」は世界中のマスメディアでトップニュースとして取り扱われ、1998年8月18日付けのワシントン・ポスト紙は「クリントン、ルインスキーとの関係を認める(Clinton Admits to Lewinsky Relationship.)」との見出しで報じた。
- ^ 教義「汝、姦淫するなかれ」は、モーセの十戒では第7条に、カトリック教会では第6条に定められている。
- ^ 共同通信「ローマ法王、涙ながらに謝罪・性的虐待の被害者に」(共同通信、2010年)。カトリック教会の第265代ローマ教皇であるベネディクト16世による謝罪の記事。
- ^ 柳下毅一郎およびアイカワタケシ著「コンプリート:チャールズ・マンソン ~ チャールズ・マンソンとシャロン・テート殺人事件」(コアマガジン、1999年)。歴史に名を残す犯罪者の多くがその時代を象徴するように、マンソンもヒッピー・カルチャーの負の側面を代表する人物として様々な物語で描かれている。 また、彼がビートルズの曲「ヘルター・スケルター」を黙示録の暗示として解釈し、インスピレーション(霊感)の源として崇めていたことは有名である。文献により、彼が囲い、彼を狂信していた女性たちはチャーリーズ・エンジェル(Charlie's Angels)と呼ばれる。
- ^ ティム・レイターマン(Tim Reiterman)およびジョン・ジェーコブズ(John Jacobs)著「人民寺院 ジム・ジョーンズとガイアナの大虐殺」(ジャプラン出版、1991年)。原題は「Raven : The Untold Story of the Rev. Jim Jones and His People.(レイベン:ジム・ジョーンズと、その人々の知られざる物語)」。Raven は2つの意味を持ち、ひとつは不吉の象徴であるワタリガラスを指し、もうひとつは略奪や飽食の状態を指す。集団自殺の正確な人数は信者914人とされるが、その直前(約40分前)に信者の解放を求めていたレオ・ライアン下院議員やNBCテレビの取材カメラマンを含む5名が狂信的信者によって殺害されており、これを加える場合がある。
- ^ a b c d 精選版 日本国語大辞典(小学館、2006年)。第一巻から第十三巻の該当項目より。
- ^ a b c d 日本俗語大辞典(東京堂出版、2006年)。該当項目より。
- ^ a b c d 江戸語大辞典(講談社、1974年)。該当項目より。
- ^ a b 「外来語の語源」(角川書店、1979年)。該当項目より。
- ^ 1907年にアイルランドを代表する作家ジョン・ミリントン・シング(John Millington Synge)が発表した戯曲「The Playboy of the Western World」は、プレイボーイという英単語を日本語の「人気者」などに翻訳することが多い。
- ^ 1930年に言語学者の桃井鶴夫が発刊した「アルス新語辞典」では、社交場などでダンスのパートナーになることを専門の職業にしていた男性を指してジゴロと呼んでいたとの解説がある。
- ^ ドン・ファンを最初に題材として扱った作品は、1630年にスペインの劇作家ティルソ・デ・モリーナ(Tirso de Molina)が発表したピカレスク小説(悪漢小説)「El Burlador de Sevilla y Convidado de piedra(セビーリャの色事師と石の招客)」とする説がある。
- ^ 同様の放蕩児や漁色家による記録文献は当時の風俗や大衆文化を知る上で貴重とされるが、カサノバによる伝記「我が生涯の物語(Histoire de ma vie)」はあまりにも性的な描写が多く、過去に度々発禁処分となっている。
- ^ a b c 1878年に福沢諭吉が初編を発表した「学問のすゝめ」には、「淫夫にても姦夫にても既に己が夫と約束したる上は、女何なる恥辱を蒙るもこれに従わざるを得ず、ただ心にも思わぬ顔色を作りて諌むるの権義あるのみ」や「姦夫淫婦の話なれども、ここに妾の議論あり」とある。
- ^ a b 1875年に英文学者の永峰秀樹が初めて翻訳した「千一夜物語(アラビアンナイト)」の日本語版「暴夜物語(あらびやものがたり)」には、「忽ち姦婦奸夫を四断となし」とある。
- ^ 1763年から平賀源内が風来山人(ふうらいさんじん)とのペンネームで発表した「根無草」の後編(1769年)には「色事師の名代にて」とあり、1776年に八文字屋自笑(はちもんじやじしょう)が編纂したといわれる談話集「役者論語(やくしゃばなし)」には「女形の心得」として「色事師の立役とならびて、むさむさと物をくひ、さてやがてぶたいに出て、色事をする時、その立役しんじつから思ひつく心おこらぬゆへ、たがひに不出來なるべし」とある。後者は、「色事師を演じる女形(男優)が、(たとえ舞台裏の休憩中であっても弁当などを)むしゃむしゃと貪り食ってから適当に舞台に出ているようでは、相手となる立役(男優)も恋愛の場面でその気になれない」という意味である。
- ^ 1780年の滑稽本「風来六部集」には、「ぬれ事師、女に贔屓(ひいき)せらるれば」とある。
- ^ 984年の仏教説話集「三宝絵詞」には、「婬女(いんにょ)は色好(いろずき)の名也」とある。
- ^ 室町時代からあった国語辞典の一種「文明本節用集」(1400年代の中期頃)には、「淫婦」の漢字に「インフ」の読み仮名を振っている。
- ^ 1780年の滑稽本「風来六部集」では、「土娼」と書いて「ばいじょ」と読ませており、売春婦に関連する俗称や蔑称は種類が非常に多い。なお、土娼とは、地元の娼婦といった程度の隠語である。
- ^ 1885年の坪内逍遥による「当世書生気質」には、「淫売といふ陋習(ろうしゅう)のみは尚禁じがたき」とある。「売春という悪い習慣だけは未だに禁じようがない」という意味である。
- ^ 現在の「商売」という漢字と同じ意味を持つ言葉を使用した最も古い文献のひとつに、1694年の堀流水軒(ほり・りゅうすいけん)による教科書「商売往来(しょうばいおうらい)」がある。従って、古くは淫女や淫婦と呼ばれていた言葉が、同時期から「売る」や「買う」という言葉が日常的に普及するようになり、次第に売女や淫売といった言葉に推移していったと思われる。
- ^ 「擦れっ枯らし」は、本来「すれからし」や「すれがらし」という口語が主体の言葉であり、促音の「っ」は加えていなかった。漢字による「擦枯」や「摩枯」、「擦れ枯らし」などは当て字である。1761年の洒落本「くたまき網目」には、「すれがらしなるけつの指髪を切るに」とある。
- ^ 江戸時代の大衆小説に相当する浮世草子などでは様々に表記されており、1802年の洒落本「祇園祭挑燈蔵」では「悪女」と書いて「ばくれん」と読ませている。
- ^ 1887年に中村座で初演され、盗賊の因幡小僧を題材にした講談「因幡小僧雨夜噺(いなばこぞうあめのよばなし)」には「莫連女(ばくれんあま)の根性ぢゃあ」などの台詞があり、これを阿婆擦女に同義としている。また、1889年に小説家の饗庭篁村が発表した「権妻の果」には、「莫連女(ばくれんおんな)とは知らず」とある。
- ^ 1776年の洒落本「風俗問答」には「愚鈍はあざとすべたを知らず」とあり、1960年に小説家の山本周五郎が発表した「青べか物語」(文藝春秋読者賞候補作品)には、「よくもあんなすべたあまと見替えやがった」とある。
- ^ 1780年の滑稽本「風来六部集」では、そもそも羅紗緬という言葉の成立そのものが非常に曖昧であり、「らしゃめんなんどあてじまいな名をつけ」などとしている。
- ^ 語源には諸説があるものの、娼婦やふしだらな女性を指す隠語として戦後の一時期に定着していたことは確かであり、1947年に小説家の田村泰次郎が発表した「肉体の門」には「お嬢さん面したパンパン娘」とある。
- ^ 1948年に小説家の平林たい子が発表した「地底の歌」には、「案外したたかなズベ公だ」とある。
- ^ 古くは14世紀頃の軍記物語「太平記」にて「婬乱日を重ねて更に止む時無かりしかば」や、1609年の「慶長見聞録案紙」にて「公家衆所々にて婬乱不行儀之由」など、「淫」ではなく「婬」の漢字が用いられていた。なお、「婬」から「淫」へ推移した経緯については、原因を特定できる文献に乏しい。
- ^ 漢字「色(音読:しょく、しき・訓読:いろ)」の日本における意味の成り立ちには諸説があり、1887年の谷川士清による「和訓栞」では「漢語で女のことを色という」としており、1920年代の与謝野鉄幹による「日本語原考」では「男女の放縦な情交(じょうこう、性行為)を指す淫(いん)の語尾を略し、ラ行音を添えた」としている。なお、国文学者の折口信夫は「古代の貴族階級にて家族内での女性順位を指した言葉の一種で、イロネなどに起因する」と捉え、「いろ兄」や「いろ姉」と書くイロネは何れも母親を同じにする兄弟姉妹を意味し、「色」という言葉や「いろ」という発音が血縁関係や性的な関連事象から発生したと推論している。
- ^ 辞書「全訳 古語辞典 携帯版」(ベネッセコーポレーション、2005年)、「色なり」の項目より。使用例として、平安中期頃の清少納言による随筆「枕草子」にて「髪、色に、こまごまとうるはしう(髪は、とても艶やかで、非常に細やかに整っている)」とある。
- ^ 窃視症の代名詞的な俗語「出歯亀(でばがめ)」の由来となった池田亀太郎(出歯の亀吉、出っ歯の亀太郎)について、1908年8月11日付の東京朝日新聞は「大久保の色魔、出歯亀に対して無期徒刑(強制労働)を宣告」と報じている。
- ^ 感染症情報センター「性感染症 2007年現在」(国立感染症研究所、2008年9月号のPDF資料)。梅毒、クラミジア、ヘルペス、コンジローマなどの感染症発生調査。
- ^ AIDS/STI Related Database Japan 厚生労働科学研究エイズ対策研究事業Official Web Site(国際連合エイズ合同計画 UNAIDS)。「日本におけるHIV流行の現状」や「日本の社会的状況」など。特に、若年層における性道徳の急激な変化が懸念されている。
- ^ API-Net エイズ予防情報ネットOfficial Web Site(エイズ予防財団)。「世界・日本の状況」や「エイズ動向委員会調査報告」など。なお、UNAIDSによる報告書「世界のエイズ流行 2010年版」によると、「ARV(Associated Retrovirus)治療が1人に施されている間に、新たに2人が感染している」という。
- ^ 文部科学省「平成11年度 我が国の文教施策」(文部科学省、1999年)。第2編(文教施策の動向と展開)第7章(心と体の健康とスポーツ)第一節(健康教育の充実)より、「1.新たな心と体の健康問題への対応」の「(4)性教育の充実」と「(5)エイズ教育の充実」から。「エイズは近年、世界各国で爆発的に増加し、深刻な社会問題となっている。我が国でも、患者・感染者が増加しているのみならず、20歳代を中心とした若い世代にも広がりつつあることが指摘されており、今後の急激なまん延を防ぐための対策が緊急の課題」であることや、「中学校の教科『保健体育』(保健分野)において、エイズについて取り扱うことを明示」などと述べられている。
- ^ 厚生労働省「平成22年第4四半期におけるエイズ発生件数」(厚生労働省、2011年2月7日付)。2010年9月27日から同年12月26日までの調査結果。
- ^ 共同通信「新規エイズ患者、過去最多・2010年、検査は減少」(共同通信、2011年2月7日付)。厚生労働省「平成22年第4四半期におけるエイズ発生件数」を報じる記事。
- ^ 厚生労働省「第5回男女の生活と意識に関する調査結果」(厚生労働省科学研究費補助金、2011年1月7日付のPDF資料)。調査の目的は「国民男女の生活と意識について知る」為であり、「層化二段無作為抽出法」という手段で実施された。人工中絶や性的虐待についての認識調査と併せ、「性に関する以下の事柄について、15歳までに知るべきと思う割合」や「セツクス(性交渉)をすることに、関心がない、または嫌悪している割合」などといった調査結果を見ることができる。
- ^ 朝日新聞「虐待経験5%、セックス関心ないも増加 厚労省調査」(朝日新聞asahi.com、2011年1月13日付)。厚生労働省「第5回男女の生活と意識に関する調査結果」を受け、特に「若年男性の草食系化傾向が強まって」おり、「セックスに関心がない一因は『異性と関わることが面倒だ』と感じることにあるようで、全体の4割の回答者が『面倒だ』と回答」などと報じている。
- ^ 文部科学省「義務教育諸学校における性教育の実態調査結果」(文部科学省、2005年)。都道府県別による指導要綱の作成や委員会の設置の割合など。なお、最も早い義務教育の時期として、小学校における性教育の指導要綱や教材作成について、都道府県の合計として「学校全体または学年全体で決定している」のは64.9%、「各教論に任せている」のは35.1%となっている。また、小学校における性教育に対する保護者からのクレームでは、都道府県の合計として「指導内容や教材が発達段階を踏まえていない(時期尚早である)」が最も多く約30.0%、次いで「保護者に説明なく進められている」が約8.2%となっている。
関連項目
社会
- モノガミー (Monogamy、一夫一婦制や一夫一妻、単婚など)
- ポリガミー (Polygamy、多夫多妻制や一夫多妻、複婚など)
- ポリアモリー (Polyamory、複数恋愛)
- 常識
- 道徳
- 社会通念
- 男女平等
- 男尊女卑
- 女尊男卑
- 性道徳
- 性教育
- 純潔教育
- 夜這い
- 姦淫
- 姦通罪 (布告1880年、現在は廃止)
- 不貞行為 (民法第770条における、配偶者の貞操義務の不履行)
医学
- 性行為 (セックスを含む)
- 性依存症 (セックス症候群などの精神疾患)
- 色情症 (多淫症または色情狂、男性のサチリアジスや女性のニンフォマニアなど)
- 異常性欲 (性欲における量的または質的な異常)
- エロトマニア (Erotomania、クラレンボー症候群など)
- フェティシズム (Fetishism)
- 性行為感染症 (Sexually Transmitted Disease、STD)
- ヒト免疫不全ウイルス (Human Immunodeficiency Virus、HIV)
- 後天性免疫不全症候群 (Acquired Immune Deficiency Syndrome、AIDS)
- 性病
- 避妊
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 (感染症新法)