エロトマニア

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エロトマニア: Erotomania)とは、自分が相手に愛されているものだと曲解する、極度の妄想癖を持った精神病のことである。この症状を分析したフランス人精神科医の名前から別名「クレランボー症候群Clérambault's syndrome)」とも言う。日本語では「恋愛妄想」「被愛妄想」や「恋愛妄想などの妄想症」と訳される。


エロトマニアとは、自分は特定の相手に愛されていると思い込む妄想性障害 (英語:Delusional disorder )であり[1]、自分のアイデンティティーに充実感を見出せない為、エロトマニアは自分以外の人を通して満ち足りた気分を味わおうとし、大抵の場合は本人よりも社会的地位や階級の高いと考えられている人物と結びつきたいと切望する。その妄想は決して揺るがない。[2] エロトマニア妄想は、一般的には妄想性障害または総合失調症の主用症状などに見られる。


概略[編集]

女性色情症Nymphomania)とは正反対の概念であるにも関わらず、日本語でのエロトマニアという語は色情症や異常性欲の一種だと混同されやすい。しかし、これはストーカーの原因となる妄想症状の一種で、れっきとした精神病である。この「相手に愛されている」といった確信は元より根拠がない場合がほとんどであり、完全な虚構や妄想である。しかしその確信が揺らぐことはない。

症名はフランスのエスキロール博士によって命名。クレランボー博士(Gaëtan Gatian de Clérambault、1872–1934年)により研究され、1921年に出版された「Les Psychoses Passionelles」に記載されている。クレランボー博士によれば、自分が相手に好意を抱いているという自覚すらないものがある(この場合、相手こそが自分に対して好意を抱いているという妄想)。ストーカー行為に及んでも罪悪感や自覚意識がほとんどないのが特徴という。

さらにこの症状は、相手が自分に対して拒否・嫌悪・逃避するような行動を取ると、「第三者による妨害」や「愛ゆえの逃避」「嫌がらせ(好き避け)」や「毛嫌いする行動を取ることで自分を試している」などといった過大解釈をするようになり、ますます相手に対する行動が悪化する傾向である。男性がこの症状になった場合、フラストレーションから暴力的な行為に走りやすい。


アメリカ人精神科医のドリーン・オライオン(Doreen Orion,M.D.)によれば、エロトマニアの妄想にとりつかれた者が求めやまないのは、本人が理想化し心から愛する相手との、肉体的ではなくロマンティックで形而下的(精神的)ともいえる一体感である。この種の妄想はきわめて執拗で何年も続く事が多く、別の対象を見つけない限り終わらないという。多数の研究の見解からもエロトマニアの場合、対象からの強制的な解離、禁止命令の取得や収監などの法的な介入により解離が必要である [3]。ストーカーの中にはエロトマニア妄想を伴う精神分裂症など、多くは他の精神病をかかえている [4]。エロトマニアは、十代の若者と同様に、対象の反応を誤解する。相手の何でもない行動や素振を、気のある素振を見せたと思い込んで舞い上がり、この期待に満ちた思いを潤色してグロテスクにゆがめるため、勝手な思い違いをいつまでも繰り返し、どんなにはっきり拒絶されても、愛を告白されたものと誤解してしまう。[5]


司法精神科医のDr.リード・メロイは、愛の対象を長い間必死になって追い求め続けさえすれば、対象もいつか必ず自分の愛にこたえてくれるという過剰に理想化された考えを持つ人物を「ボーダーライン・エロトマニア型妄想性障害」と命名した。ボーダーライン・エロトマニアは、過剰な理想化は真の妄想より現実に基づいているため、妄想に取り付かれたエロトマニアと違って、大抵の場合、どんなささいなことであれ、対象と接触してから異常な執着を持つ様うなるという。ストーキング行為に出る可能性があり、求愛をやめるよう説得するのも同じくらい難しいと考えられている。[6]


エロトマニアを題材としたフィクション作品[編集]


参考文献[編集]

  • 細江達郎 『図解雑学 犯罪心理学』2001年、ナツメ社、ISBN 4816329641、172ページ
  • ドリーン・オライオン 『エロトマニア妄想症―女性精神科医のストーカー体験』 朝日新聞社 (1999年)ISBN 4022573686


脚注[編集]

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  1. ^ 「エロトマニア妄想症」p37
  2. ^ 「エロトマニア妄想症」p40
  3. ^ 「エロトマニア妄想症」p40-42
  4. ^ 「エロトマニア妄想症」p54
  5. ^ 「エロトマニア妄想症」p65
  6. ^ 「エロトマニア妄想症」p67


関連項目[編集]