ヒール (プロレス)

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プロレスにおけるヒールHeel)とは、プロレス興行のギミック上、悪役として振舞うプロレスラー、あるいはラフファイト反則攻撃挑発行為を得意としたり、好んで使用するプロレスラーのこと。悪役武闘派悪党派悪玉などとも呼ばれる。

対義語としてベビーフェイス(善玉、正統派)が存在する。

現在の日本ではヒールという言葉も広く普及しており、一般社会や創作物の中でも、敵役的なイメージの人物をヒールと呼ぶ事がある。大相撲の世界では「憎らしいほど強い」と言われた北の湖や、公私に渡りルール・マナー違反が指摘された朝青龍などが代表例。

目次

[編集] 概要

外国人ヒールの一例。マイクアピールを行うイラン出身のアイアン・シーク

1920年代、アメリカの都市部で隆盛したレスリング・ショーにおいて「正義」対「悪」という、勧善懲悪アングルが興行を盛り上げる上で必要と考えられたため、「ベビーフェイス」と同時に「ヒール」が発祥した。

ヒールは、元々はアメリカのプロレス業界で用いられていたスラングである。日本では元々「悪玉」、「善玉」という日本語の表現が用いられていたが、2009年現在では日本のプロレス業界でも一般的な単語になっている。メキシコにおけるルチャリブレでは、ヒールのことを「ルード」、ベビーフェイスを「リンピオ」という。

ヒールは通常反則を多用したラフファイトを展開する。金的への攻撃、凶器の使用といった反則はもちろん、レフェリーへの暴行、観客席での場外乱闘、果ては他者の試合への乱入なども行う。

基本的にはどの国でも自国レスラーがベビーフェイス、外国人レスラーがヒールというのが通例である。アメリカでは人種に基づく差別や偏見が根強く存在し、第二次世界大戦で敵国人だった日本人(グレート・東郷など)やドイツ人、あるいはアラブ系(ザ・シークなど)、異文化を象徴する覆面レスラーなど、わかりやすいヒールが主流である。ジャイアント馬場もアメリカ修行時代にはヒールとして活動している。

日本でも力道山時代には、アメリカ人の「ヒール」を日本人である力道山[1]が倒すのが定番の流れだった。戦勝国であるアメリカの大柄なレスラーを、敗戦で意気消沈した日本の小柄な力道山が倒すという展開に当時の日本のファンは熱狂した。

ただし1970年代以降のプロレス界では、アメリカ人のドリー・ファンク・ジュニアテリー・ファンクの兄弟が日本でベビーフェイスとして人気を得るなど[2]、複雑なアングルも生み出されるようになった。スタン・ハンセンブルーザー・ブロディなどは本来はヒール的な役回りでありながら、その爽快な強さで日本人ベビーフェイス以上の人気を得た。逆に上田馬之助極悪同盟は日本人でありながら日本国内でもヒールであった。

1983年ロード・ウォリアーズNWA世界タッグチーム王座を獲得した以降は単純な勧善懲悪の時代も終わり、1990年代にはストーン・コールド・スティーブ・オースチンジ・アンダーテイカー、またnWoに代表されるような、かっこいいヒール(=アンチヒーロー)が人気を博した。日本では蝶野正洋鈴木みのる藤田和之、またノーフィアーがアンチヒーローとして人気がある。

ヒールはあくまでもギミックとして演じるものであるとされ、リング外においてはベビーフェイスよりもヒールの方が好人物である、ということもしばしば語られる。またヒールはそのキャラクターにプライドを持っている選手が多く、会場でブーイングが少なかったり、観客が怖がらずに馴れ馴れしい態度をとった場合、激怒して余計に暴れることもある(ヒールとしての演技)。ヒールに対してはブーイングを送り、場外戦で近くに来た時には逃げるのが正しい観戦マナーであるとされる。

ヒールであっても、リング外では気さくにサインに応じたり、イベントに参加してファンとの触れ合いを行なうレスラーも多いと言われる。その一方、タイガー・ジェット・シンアンドレ・ザ・ジャイアントなどはヒールとしてのイメージが損なわれないよう、ファンを避けたり威嚇したりしていたと言われる。

[編集] 様々なヒール

狂人ヒールの一例。墓堀人のコスチュームで入場するアンダーテイカー

ヒールにはいくつかの類型が存在する。

  1. 狂人ヒール
  2. モンスターヒール
  3. エゴイストヒール
    エゴイストヒールの一例。派手なコスチュームに身を包み尊大な態度を取るリック・フレアー
  4. バカヒール(ヘタレヒール)
  5. 外国人ヒール
  6. 外敵ヒール
    • 団体抗争における、他団体の選手がこれに該当する。単によそ者というだけで、反則攻撃の頻度はレスラーの属性に依存する。所属団体ではクリーンファイトを繰り広げているが他団体参戦時にはラフプレイに転じるレスラーもいる。団体所属選手のヒール色が薄いプロレスリング・ノアでは獣神サンダー・ライガーを始め他団体から参戦する選手にブーイングが送られる事が多い。
  7. 反逆者ヒール
  8. 武闘派ヒール
    • レスラーのキャラクターや立ち位置ではなく、ファイトスタイルに基づいた分類で、ラフファイトや反則技、場外乱闘や過激・危険な技といった技術・行為を積極的に取り入れて戦うレスラーのこと。ショー的アングルが少ない団体などで存在し、90年代の全日本プロレスにおける川田利明渕正信などがこれに該当した。また、蝶野正洋がヒール転向した当初も「武闘派」と称していた。対義語は、正統派。

[編集] ヒールターン

かつてベビーフェイスだったレスラーが、ヒールに転向することをヒールターンと呼ぶ。興行自体がマンネリ化するのを避けるためだったり、レスラー自身のベビーフェイスでの人気がいまいちだったり、陰りが見えている場合に行われる。また新人レスラーがトップレスラーへ進む過程においてヒール修行は必須といわれ、これは観客の心をコントロールする術を身につけるためである。実際、ヒールレスラーに憧れてプロレス入りした者も多く、自ら志願してヒールターンする場合、あるいは最初からヒールとしてデビューするケースもある。

ヒールにターンする場合、観客が分かりやすい様に、他のベビーフェイスレスラーを襲撃する、リング上で仲間割れを起こす、コスチュームや髪型を変えるなどの行動を取る。

[編集] ヒール軍団

ECW出身のレスラーで結成されたWWEのヒール軍団「ECWオリジナルズ」は典型的な外敵ヒールでもある。

ヒールによって構成されるチームはアングルの一種である団体抗争を演出する上で不可欠の存在である。プロレス史の中には絶大な人気を誇ったヒール軍団も少なくない。

[編集] 主なヒール軍団

[編集] 脚注

  1. ^ 生まれは朝鮮半島だが、誕生時点では日本領だったことから日本国籍であり、また角界入りした際に長崎県出身とされた為、当時はほとんどその事実は知られていなかった。
  2. ^ 対するヒールはザ・シークとアブドーラ・ザ・ブッチャーであった。