MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島
| MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島 (広島市民球場) MAZDA Zoom-Zoom Stadium Hiroshima (Hiroshima Municipal Baseball Stadium) |
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|---|---|
球場外観 グラウンド(2階スタンドから) |
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| 施設データ | |
| 所在地 | 広島県広島市南区南蟹屋2-3-1[1] |
| 座標 | 北緯34度23分31.1秒 東経132度29分4.8秒座標: 北緯34度23分31.1秒 東経132度29分4.8秒 |
| 起工 | 2007年11月26日 |
| 開場 | 2009年4月1日 |
| 所有者 | 広島市 |
| 管理・運用者 | 広島東洋カープ |
| グラウンド | 内・外野 - 天然芝(ティフトン419、ペレニアル・ライグラス) |
| ダグアウト | ホーム - 一塁側 ビジター - 三塁側 |
| 照明 | 照明灯 - 6基 最大照度 投捕間:2500Lx 内 野:2000Lx 外 野:1500Lx |
| 建設費 | 約110億円 |
| 設計者 | 環境デザイン研究所 |
| 建設者 | 五洋建設・増岡組・鴻治組JV |
| 使用チーム • 開催試合 | |
| 広島東洋カープ(2009年 - 現在) | |
| 収容能力 | |
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定員:33,000人
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| グラウンドデータ | |
| 球場規模 | グラウンド面積:12,710 m² 左翼 - 101 m(約331.4 ft) 左中間 - 116m(非公称) 中堅 - 122 m(約400.3 ft) 右中間 - 116m(非公称) 右翼 - 100 m(約328.1 ft) |
| フェンス | 中堅周辺 - 2.5 m(約8.2 ft) (ラバーフェンス:1.8m + 金網フェンス:0.7m) 左翼 - 3.6 m(約11.8 ft) 右翼 - 3.4 m(約11.2 ft) |
MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(マツダ ズーム・ズーム スタジアムひろしま)は、広島県広島市南区南蟹屋にある野球場である。日本プロ野球・セントラル・リーグの広島東洋カープが本拠地球場(専用球場)として使用している。
正式名称は「広島市民球場」(ひろしましみんきゅうじょう)。
目次 |
[編集] 概要
老朽化した初代の広島市民球場(2009年4月から2010年8月末までは「旧広島市民球場」、広島市中区基町)に代わる施設として、広島市が主体となって建設し2009年春に竣工。施設は広島市が所有しており、株式会社広島東洋カープが指定管理者として運営管理を行っている(詳細は後述)。
正式名称は初代のものを引き継いだ「広島市民球場」であるが、2009年4月からマツダが愛称に対する施設命名権を取得しており、「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」(略称「マツダスタジアム」)と主に呼称されている(詳細は後述)。なお初代が本利用されていた2009年3月31日までは、広島市条例などにおける暫定的な名称を「新広島市民球場」(しんひろしましみんきゅうじょう)としていた。
[編集] 建設までの経緯
[編集] ドーム球場構想、オープン球場建設計画の挫折
広島東洋カープは1980年代から球団職員をメジャーリーグのスタジアムから国内の地方球場に至るまでくまなく派遣、施設の視察を行わせる[2]など、広島市民球場(当時)に代わる新球場の研究を精力的に重ねてきた。
1990年代に入ると、広島市長(当時)の平岡敬が「若者に魅力ある街づくり」との観点から、国鉄清算事業団が売却の方針を示していた広島市南区東駅町の東広島貨物駅(貨物ヤード)移転跡地に、ドーム球場建設を検討する考えを表明する。その後、地元経済界を中心に相次いでドーム球場プランが提言されたことを背景に、広島市の跡地検討調査委員会は1997年9月、「貨物ヤード跡地の利用目的はドーム球場建設」との結論に達し、1998年3月、広島市はこの土地を広島市土地開発公社に先行取得させた。
その頃には、広島市の財政事情悪化でドーム球場建設についての議論は下火になっていたものの、2000年代に入ると市民球場は開場から約半世紀が経過、耐用限度8,000時間とされた放電管式アストロビジョンの使用時間は1万時間をオーバーした上、ビジョンを構成する放電管が製造中止となったため、その交換もままならず、ドット落ちが発生するようになっていた。さらに、外野フェンスの一部に穴が開くようになり、プラスチック座席は3連戦で3、40席は壊れるなど、老朽化がより一層深刻になった。
また、三塁側ビジターチームのロッカーは冷房施設すらなく、ヤクルト選手会が大型扇風機を購入して無償で提供するような状態であり、あふれた選手は通路で着替えなければならないこと等、設備面に対しても不満の声が漏れ始めた。さらにビジターチームの不満は広島球団に向けられ、選手自ら頭を下げることもしばしばであった[3]。
こうした事情に加えて、ヤード跡地の金利負担軽減特例措置が切れる2003年が迫ってきたこともあり、2000年以降、再びドーム球場建設の可能性が検討されるようになった[4]。だがドーム球場は高い建設費・維持費に見合う収益が期待できない上、広島球団も「人工芝は選手にとって体への負担が大きく、米国では時代遅れとなった」ことなどを指摘したため、2001年3月、広島市はそれまでの方針を転換し、ドーム球場案に代わる「天然芝オープン球場を中核にした複合施設案」を有力候補とした[5]。これを受けて広島球団はオープン球場の事業化を検討開始。その後、2002年に行われたコンペにおいては、広島球団と米国の不動産投資信託大手のサイモン・プロパティ・グループ (Simon Property Group)、および電通、鹿島建設などによる共同企業体「チーム・エンティアム」が提案したPFI方式による再開発計画が選ばれた。
一方、地元経済界などからは、天候に左右されない広域集客のため、あくまでドーム球場建設を求める意見が出されたが[6]、2002年7月、広島市長の秋葉忠利はこの「複合施設型オープン球場案」を推進し、2004年度に事業着手することを正式表明した[7]。しかし、計画を進める途中の2003年9月、サイモン・プロパティ・グループが日本における進出方針を「東京を中心とした三大都市圏重視」に変更、同年11月には広島への進出断念を最終通告する。共同企業体の中核企業が撤退したことを受けて、同年12月1日、計画は全面的に白紙化、頓挫した。
[編集] 現球場改築か、新設球場か
その後、大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併問題を契機とした球界再編問題が起きた際に、広島球団生き残りに危機感を覚えた地元経済界を中心に、新球場の貨物ヤード跡地への単独建設や市民球場の改築などの案が検討され始めた。これと並行するように、中国新聞、中国放送などの地元マスメディアは「樽基金」と題して、建設資金捻出のための市民募金運動を実施し、最終的に約1億2000万円の募金を集めた。
検討を進めていく過程で、「観客席最後部に位置し、フィールドを望めた上で、球場を周回可能な幅8m~12mのコンコース設置」、「大リーグ球場並みのゆったりとした間隔・レイアウトの観客席」、「緩やかな勾配の1階席と、高さが抑えられ観戦しやすい2階席の設置」、「球場関係諸室面積25,000 m²(市民球場(当時)は約12,500 m²)の確保」等の広島球団の要望を満たすため、「新球場は市民球場より遙かに大きい建築物となる」ことが明らかとなった。
そのため現位置で改築を行う場合、まず近接している建物との干渉が問題になる。加えてホームゲームを進めながらの改築となれば、選手・観客への安全面での充分な配慮が必要となるため、建設費用増加や工期長期化が予想される。これが不可能となれば、ホームゲームをどこで行うか、その遠征費の負担は誰が負うのか等の検討が必要になる。
一方、貨物ヤード跡地に移転した場合、用地面での制約は少なく、さらに球場を中心とした広島駅周辺の大規模な再開発が可能になる一方で、公共交通機関や周辺道路が現位置ほどには整備されておらず、市民球場に慣れ親しんだ観客にとって交通利便性は悪化する。ただし、これは予定地の真横を走るJR西日本山陽本線に新駅を設置することである程度の対応が可能であり、JR西日本も地元自治体からの資金提供さえあればいつでも駅設置に応じる構えではある。
さらに、市民球場周辺の商店からは、街と一体化している球場が移転すると顧客の流れが大きく変わる恐れがあることへの懸念が示され、他にも事業主体をどうするか、何より資金調達の問題などを含めて、両者のメリット・デメリットはさまざまだった。
[編集] 新球場建設へさらなる混沌
2005年7月に入り、広島市長の秋葉忠利が、現在地での建設困難を理由に貨物ヤード跡地に建設する方針を示す。経済界や一部ファンの強い反発もあったが、その後、経済界はその方針を追認。新球場の方向性が固まったこともあり、2009年に新球場でのオールスターゲームの開催が内定した。
しかし、2006年3月に実施された新球場の設計・施工コンペでは、防衛施設庁談合事件に絡んだ多数のゼネコンが参加できない事態となり、唯一参加資格を得たグループの案も、広島球団に「(この設計案では)興行していく自信がない」と酷評されるほどの見解の相違が大きく、また広島市民やファンの間でも結果として一グループだけのコンペになったことへの不満・反発が強く、不採用となった。2006年4月には建設予定地の土壌から基準値を超える砒素が検出され、プレーする選手や観客の安全性を問題視する報道がなされた[8]。
また、広島市が再コンペ時に球場本体の建設予算を90億円(周辺開発に関する建設費並びに収益を含まず)に設定したことは、100億円以上の建設費を費やした他球場の例[9]を、一部マスメディアによってしばしば引き合いに出される結果となり、市民やファンの間に、「カープの本拠地となるのに、貧弱な設備しか持たない球場になるのでは?」という憶測が流れた。2006年6月には、先の設計・施工コンペに参加したものの選考前に辞退したアラップスポーツグループ[10]が広島市の方針に異を唱える記者会見を行い、建設費用を190億円に設定した独自の球場プラン[11]を公開する事態まで発生した。
このように新球場を巡る混沌とした状況に加えて、市民球場の跡地利用策が遅々として進展しなかったため、市民やファンからは、「広島市は本当に新球場を作る気があるのか」「(オールスターゲームが行われる)2009年に新球場は間に合うのか」といった厳しい意見も出始めていた。
[編集] 建設着手、2009年開場へ
上記のような厳しい見方があった中、2006年8月になって、駅東町地区インフラ整備として(新球場予定地も含めた)排水路工事が始まったほか、同年9月には設計を対象としたコンペが新たに実施され、最優秀案として東京辰巳国際水泳場や兵庫県立但馬ドームなどを設計した環境デザイン研究所(東京都港区)の作品が選ばれた。
広島市は2006年10月26日、この最優秀案を元にした基本・実施設計契約を環境デザイン研究所と締結、同社は、ファンや選手から寄せられた意見[12]を採り入れつつ、2007年2月に基本設計、同年7月には実施設計を取りまとめた。
さらに本体建設予算90億円の一部については、前述の「樽基金」や国土交通省のまちづくり交付金の他、新球場の年間使用料8億8500万円のうち、6億5500万円が充当されることが決定した。広島球団は球場使用料として現市民球場に年間5億6000万円を支払っているが、これが新球場では1900万円増額された5億7900万円となる[13](この負担増については「より快適な環境を提供するため」とされ、広島球団からも異議は出ていない)。残る3億円の年間使用料の負担については、従来のアマチュア・マスメディアからの使用料徴収、さらに広島市、広島県で負担するとされている。
こうした要因を加えると、残る実質負担額は46億円となり、2007年6月4日、広島市・広島県・地元経済界の3者で、広島市が23億、広島県と地元経済界が11億5000万円(うちマツダ、中国電力、広島銀行の3社で半額程度)ずつを負担することで合意した。これらの財源として、広島県・広島市は負担分のうち20億円分を充当するため、両者が共同でミニ公募債「新広島市民球場債」を発行、購入希望者を募集したところ、締め切りとなる2008年10月15日までに個人と法人合わせて1万2272件、予定額の3倍以上に上る66億2220万円の応募があったため、急遽同年10月17日に購入者を決める抽選会が行われた。また、地元経済界の負担分とされた11億5000万円については、広島商工会議所等が中心となって各企業から寄付を募った結果、期限の2008年3月末までに目標額を大幅に上回る16億円超が集まった。この目標を超えた部分の金額の使途については、経済界と広島市との間で寄付の趣旨等を踏まえた上で協議が行われ、新たに球場北側を走るJR車窓に向けて、得点・イニング数等を表示する電光掲示板が設置された[14]。
新球場設計案、建設費用の負担が正式決定したことを受け、本体建築工事については2007年8月30日に一般競争入札を実施。唯一応札した五洋建設と増岡組、鴻治組の広島にゆかりのある三社[15]による共同企業体 (JV) が予定価格の99.99%[16]で落札。電気設備工事を落札した中電工、日本電設工業、長沼電業社のJVと共に、2007年9月28日の市議会の工事請負契約の議決を受け、同年11月26日から建設工事が進められた。
上記の入札の後には、空調設備、衛生設備、スコアボード(大型映像装置・サブスコアボードを含む)等の工事についても入札が行われており、その結果、トータルの落札額が予定価格より2億9000万円安くなったため、この「差額分」は、完成後に追加予定だった設備(エレベーターなど)の発注や観客席のグレードアップ[17]に充てられた。
建設工事は順調に進み2009年3月28日に完成式が執り行われ、入場券や球団グッズの販売は2009年4月3日から始まった。4月10日の対中日戦が公式戦初開催となったが試合は3対11と中日が大勝し、奇しくも旧市民球場の初ゲーム(1957年・対阪神戦・1対15)と同様にカープ敗戦でのこけら落としであった。また同年7月25日には、オールスターゲーム第2戦が開催された(広島では14年ぶりの開催)。アマチュア野球の大会では、同年7月から全国高等学校野球選手権広島大会の開幕式、開幕試合、決勝戦等に使用されている。
[編集] 設計面での特徴
前項のような経緯を経て出来上がった新球場の特徴として、以下の点が挙げられる。
- 広島の新しい観光資源としてPR:公認野球規則に倣い、本塁から投手板を経て二塁に向かう線を東北東向きとした上で[18]、球場を北側のJR側へ大きく開く形態とした。これによって平行する山陽新幹線などJR車窓から試合の様子が窺えるようになった上(参照動画:山陽新幹線客席から見た満員のスタジアム)、内外野の天然芝保護に必要な風通し・通気性も確保されている。
- 左右非対称を基本とした構造:フィールドのサイズは、左翼101m(計画当初は103m)・中堅122m・右翼100m。公認野球規則の規定1・04付記(a)(両翼約99.06m以上、中堅約122m以上)を満たしているが、こうした左右非対称のフィールドはメジャーリーグでは一般的であるものの、従来の日本ではあまり見られないものである。外野スタンドも人気のあるホームチーム側(ライト側)の席を多くした左右非対称形であり、特にレフト外野席のデザインはフェンウェイ・パークやAT&Tパークを彷彿させる特徴有るスタンドとなっている(此処にボールが飛んで来ると場外に消えるシーンが多く見られる)。これは前述したように、球場敷地傍を山陽本線、山陽新幹線が通過するという設計上の制約を逆手に取り、JR乗客をも球場の観客と見立て、車窓から球場内を窺える構造にしたことによる。
- ファウルグラウンドの縮小:公認野球規則の制限内[19]で可能な限り縮小したことにより、観客は選手のプレーをより身近に見ることができるようになった。広島球団の松田元オーナーは、「選手との近さは大切な要素だ。二軍ホームグラウンドの建設当時、ファウルグラウンドを広く取るのがいいと考えたが、プレーの臨場感や迫力を考えればミスジャッジだった。」と語っており[20]、その反省点が活かされている。(参照動画:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島 - 内野スタンドからグラウンド全景)
- フィールド側へせり出した2階スタンド:従来の球場において、フィールドまでの距離が遠く臨場感が薄れてしまう例が多い2階内野スタンドも、新球場ではその先端部分を約10m程度跳出させ、よりフィールドに近い「スカイシート」が設けられるなど、ゲームの熱気を体験できるようになっている。
- 緩やかな勾配のスタンド:従来の日本の野球場は、立地上の制約や、野球以外の多目的な使用方法が考慮された結果、内野スタンドの勾配を1階席部分15.0~25.0度、2階席部分を35.0~40.0度に設定していた。野球専用施設として設計された新球場では、スタンドの勾配が1階席8.9~18.6度、2階席29.5度と、国内の一般的な球場に比べて5~10度勾配が緩やかになっており、これはメジャーリーグのボールパークとほぼ同じ数値である。このため観客席からコンコースへのアクセスも容易である。
- 多様な観戦シート:鳴り物装備の私設応援団や熱烈なファン向けの「パフォーマンスシート」や「砂かぶり席」の他、「ボックスフロア」「パーティフロア」「ブルペンレストラン」「のぞきチューブ」、さらにはAT&Tパークで見られるような「ただ見エリア」などが用意され、多くの人に様々なスタイルで観戦を楽しんでもらえるよう配慮されている(詳細は後述)。
- ゆったりとしたスペースの観客席:内外野スタンドの全席に、メジャーリーグクラスの横幅50cm・奥行85cmのスペースが用意されている。さらに内野スタンド外野寄りの席はピッチャーマウンド方向に向けて設置され、投手と打者とのマウンド間の勝負が基本になる野球の観戦に最適になるよう配慮されている。
- 幅が広く段差のないコンコース:内野部分12m・外野部分8mの幅を持つコンコースは1階観客席の最後部に配置される。ここには多数の売店・トイレが用意されており、どの位置からでもフィールド上の選手のプレーを眺めることができる(スコアボード裏部分は一時的にフィールドが見えなくなるため、プレーを確認できるテレビモニターが設置されている)。このため試合途中で観戦を中断させられることがなく、さらにこのコンコースを利用して球場を周回することも可能である。(参照動画:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島 - コンコース一周)
- ユニバーサルデザインの導入:車椅子利用者のためのスペースがコンコース上に142席用意される他、利用者はエレベーター(5基設置)を使えば球場内のあらゆる場所へアクセス可能である。コンコース上にはさらに、オストメイト対応型多目的トイレ、授乳室など用意されているほか、内外野スタンドの観客席には、難聴者向けに音声を電気信号に変えて床下に備えた装置から直接補聴器に届ける設備が1,000席分用意されている。こうした取組は高く評価され、国土交通省の『バリアフリー化推進功労者大臣表彰』を、国内のスポーツ施設として初受賞した[21] 。
- 内外野天然芝維持のための設備:新球場で育成される天然芝は、見た目の美しさやクッション性が考慮された結果、洋芝のティフトン419(夏芝)とペレニアル・ライグラス(冬芝)の2期作(オーバーシード)としている。この天然芝を効率的に育成・維持するため、国内プロ野球球団の専用球場としては唯一、フィールドにポップアップ式の自動散水装置(59基)を備える。コンピューターにより制御されたこの設備は、決まった時間に適量の水を、天然芝が最も吸収しやすい霧状にして撒く仕組みになっている。さらに球場敷地内(一塁側内野スタンド傍)には、シーズン中に痛んだ天然芝のフィールドを整備するため、補修用の芝が養生されている。2012年からは、より大規模な補修に対応するため、広島市内にある旧一軍選手寮(三省寮)跡地でも養生を行うことになった。
このように新球場は、様々な“観客視点に立った試み”がなされているのが大きな特徴である。
これは90年代以降、メジャーリーグで主流となったオリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズに代表される「新古典派(ネオ・クラシカル様式)」の考え方を、広島球団が新球場に取り入れるよう要望したためである。建設予算等で制約はあったものの、AT&Tパークの設計を参考に、構造物内の配管はむき出しのままにしつつも客席スペースは広くとる等、ここでもメジャーリーグ流の機能的、かつコスト配分のメリハリをつける設計思想が採用され[22]、さらに建設時においてはプレキャスト工法が導入される等、さまざまな工夫により建設費用抑制、工期短縮を実現した。
また当初の球場本体建設費90億円とは別に、広島球団はプロ野球興行に必要とされる設備(プロ専用のロッカールーム、スポーツバー、球場建物内の球団事務所、等)の建設費として22億円を追加負担[23]、最終的には建設費として110億円余りが注ぎ込まれた結果、規模・設備面において、国内のオープン球場としては屈指[24]のものとなった。
国内の球場としては初となる数々の試みは、従来の野球ファンのみならず、これまで旧市民球場での観戦を躊躇していた人々をも受け入れることになる。三世代から幅広い支持を集めたことにより、広島球団の2009年(開場初年度)観客動員数は、当初目標の150万人を大幅に上回る過去最多の187万人に達した。さらに同年の年間売上高も過去最高だった2008年のそれを46億円上回る117億円となり、初めて100億円の大台を突破した[25]。また中国電力系のシンクタンク「エネルギア総合研究所」の発表によれば、2009年シーズンにおける広島球団の活動による経済波及効果は約185億円に達し、旧市民球場時代を含めて過去最高となった[26]。
[編集] 球場建設の過程
1995年、JR貨物の東広島駅[27]は旧広島操車場跡地(広島駅の東側で山陽本線上下線間に挟まれて紡錘形に広がる用地)に移転し、広島貨物ターミナル駅として開業した。東広島駅の跡地は線路が撤去され、以後10年以上にわたり広大な空き地が広がっていたが(画像A)、2006年10月の球場設計案決定以降は順次整備が進められた。
まず前段階として、2006年12月に新球場のグラウンドとなる場所に地下貯溜池を建設する工事がスタートした。この地下貯留地は大雨降雨時に広島駅周辺地域の浸水を防ぐためのものであるが、新球場では貯められた水の一部をグラウンドの散水、トイレの洗浄等に利用している。2007年10月に完成した(画像B)。
翌11月下旬には球場本体の工事がスタートした。2008年3月まで基礎工事を行い(画像C)、4月に内野スタンド1階部分の筐体工事がスタートした(画像D)。5月下旬、内野スタンド1階の筐体工事もほぼ完成、グラウンド整備が開始された(画像E)。6月下旬、ティフトン芝の植え込み作業が行われ、7月中旬には緑に包まれつつあるグラウンドが現れた。同じく6月には外野スタンドの筐体工事もスタート(画像F)。7月からは国内最大級となる650トンクラスの大型クレーンを活用して、全国各地の工場で造られたプレキャストコンクリート (PC) 柱の据え付けによる2階スタンドの建設が進められた(画像G・J)。また、スコアボード、照明塔の建設も平行して進められ(画像H・I)、12月には球場本体がほぼ姿を現した(画像K)。2009年2月からは照明塔の点灯テストが始まり、所定の性能を満たしているか、また球場整備時における状態などの確認が行われ(画像M)、同時に球場敷地内では植栽工事(画像N)が進められた。
2009年3月16日に工事は終了。その後は同月の18日から19日にかけて、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島の正面看板が据え付けられるなど(画像O)、球場内の広告・看板の設置作業が行われている。
2009年3月28日には球場完成式が執り行われ、4月2日には招待者向けの見学会、続く4日には地元放送局中国放送により、事前応募から抽選で選ばれた2万人を招待してプレオープンイベントが行なわれた。2009年6月には、市民や経済界から集まった寄付金により、新たにJR乗客向けに試合経過を伝える得点掲示板が完成している(画像P)。
さらに新球場の周辺整備の一環として、球場とJR広島駅及びJR天神川駅を結ぶ歩道の整備が行われており(画像d)、これら歩道と新球場南側に伸びる大州通りを上空から眺めると、新球場を目玉に見立てた鯉のぼりの形が浮かび上がる仕掛けになっている[28]。また周辺の交通渋滞解消のため、球場南の大州通りの車線増加工事(画像a)、球場西側に位置する荒神陸橋の拡幅工事(画像b)、球場と平和大通りとを結ぶ段原蟹屋線の道路整備(画像c)が進められ、これら工事も球場完成とほぼ同じく、2009年3月に完了した。
[編集] 球場本体の建設画像
[編集] 球場周辺の整備画像
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c.新球場から平和大通りに通じる段原蟹屋線の建設現場。2009年3月に開通した。かつての宇品線跡である。(2009年2月8日 撮影)
[編集] 施設データ
地上7階、地下1階、最高高さ:30.65 m の規模である。旧球場との比較データは下記の通り。
| 項目 | 広島市民球場 (Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島) |
(参考)初代広島市民球場 | |
|---|---|---|---|
| 球場規模[29] | 敷地面積 | 50,472.42 m² | 23,848 m² |
| 建築面積 | 22,964.48 m² | 6,400 m² | |
| 延床面積 | 39,524.01 m² | 12,640 m² | |
| スタンド勾配 | 1階8.9-18.6度 2階29.5度 |
1階20.0-30.0度 2階35.0度 |
|
| フィールド | 左翼 | 101 m | 91.4 m |
| 中堅 | 122 m | 115.8 m | |
| 右翼 | 100 m | 91.4 m | |
| 外野フェンスの高さ | 中堅周辺2.5 m 右翼の一部2.5 - 3.4 m 左翼の直線部分3.6 m |
2.55 m | |
| 面積 | 12,710 m² | 12,160 m² | |
| 内野グラウンド | 天然芝 (ティフトン419と ペレニアル・ライグラスの オーバーシード) |
混合土 (黒土・砂混合) |
|
| 外野グラウンド | 天然芝 (高麗芝) |
||
| 観客席 | 総収容人員 | 33,000人 | 31,984人 |
| 内野1階席 | 14,150席 | 13,859席 | |
| 内野2階席 | 6,400席 | 4,925席 | |
| 外野1階席 | 6,550席 | 11,738席 | |
| 外野2階席 | 3,250席 | ||
| 車椅子スペース | 142席 (内野一塁側:67席、内野三塁側37席、 外野ライト側30席、正面砂かぶり三塁側1席、 カープパフォーマンスシート3席、 ビジターパフォーマンス4席) |
6席 (一塁側3席、三塁側3席) |
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| 固定席以外 | 約2500人 | - | |
| 座席寸法 | 横幅50cm×奥行き85cm | 横幅43cm×奥行き60-75cm | |
| 内野防球フェンス | 1.75m (ダッグアウト上のみ) |
3.51m | |
[編集] 主な特色
- フィールドの数値では左翼側が広いが、左翼ポール付近の外野フェンスは日本では珍しい直線となっているため、ポール際を除いて左翼側より膨らみがある右翼側のほうがホームベースからの距離が長い。
- 外野フェンスについては、広島球団の緒方孝市をはじめとする選手達からの要望を取り入れた結果、全体の高さに大きな変化はないものの、クッション部分の高さを従来の1m35cmから1m80cmに高めたほか、クッション自体も高性能な衝撃吸収能力を持つ製品(厚さ125 mm)が採用されている。2010年に広島の赤松真人と天谷宗一郎が相次いで成功させた、ホームラン性の打球を外野フェンスによじ登ってキャッチしたプレーは、このクッションの厚みと硬度のおかげとも言われている(プレーの詳細は両名の記事を参照のこと)。
- 左翼側フェンスは、ホームランとして判定するラインをスタンドの2層目(3.6 m)、もしくは3層目(7.5 m)にするかで検討された結果、2層目とすることで決着した[30]。1層目の砂かぶり席、ライト側にあるのぞき穴チューブ席の前面にはグラウンドと仕切るための金網が設置される。
- 公認野球規則を満たす国内の球場の多くが、フィールド面積13,000~14,000 m²となるのに対し、新市民球場はプレーの臨場感や迫力を重視し、ファウルグラウンド部分を可能な限り縮小したため、改装後の宮城球場(同:12,800 m²)とほぼ同じく、従来よりやや小さなフィールド面積となる。プロ野球の本拠地の中では西武ドーム(同:12,631.29 m²)に次いで2番目にフィールド面積が小さい。
- 内野土には従来の黒土と砂からなる混合土に、天然芝との色彩の調和を考慮し、アンツーカーをブレンドしたものを使用している。外野土にはアンツーカーを使用。
- 『報道ステーション』での栗山英樹のコメントによれば、内野が天然芝のためゴロが転がりにくく、イレギュラーバウンドが多く、ダブルプレーが取りにくいという。
- メジャーリーグの多くのスタジアムと同様にホームベースは南西方向にある。そのためデーゲーム時において、外野手は飛球を追う際に太陽光に対する注意が必要とされる。
- 内外野スタンドにある全ての観客席が旧市民球場のものからサイズアップしており、かつカップホルダーを備える。
[編集] スコアボード
センターバックスクリーン上に設置。正面の左端から中央にかけては可変式の大型映像モニター装置(パナソニック製アストロビジョン、ハイビジョン対応)が設置されており、全体1画面のほか、2画面分割の形式で試合のリプレーシーンや各種試合情報などを提供する。通常、画面左部分はリプレーなど各種映像や審判団の表示、右部分は両チームの打順掲示を行う(旧球場では打順表示は固定表示であった)攻撃時、出塁している打者の文字は緑色にて表示されるがこれは旧市民球場から受け継がれたものである。全体のデザインも旧市民球場のスコアボードを意識している。
スコアボードの右端は固定表示部分となっており、得点掲示(10回まで)やボールカウンターの他、球速(SPEED)、打率(AVG)、ホームラン数(HR)、打点数(RBI)を表示する仕組みになっている。 右端の最上部には開場以来JALの広告が入っていたが、2010年に経営破綻したためこの年限りで撤退。翌2011年からはセブン-イレブンの広告が入る。 球場付近を走行する列車から見える位置にも設置されていることから、スコアボードの裏面には球場名とともに広島来訪に対する歓迎メッセージが入っている。
このほか内野2階席最前面にも、得点表示用のサブスコアボードと帯状映像装置(リボンビジョン)が設置されている。
2010年5月11日、ボールカウントの表記をストライク、ボールの「SBO」表記からボール、ストライクの「BSO」表記に変更された。これは国際慣習に基づくもので、横浜スタジアムに次いで国内では2例目。14日の交流戦(対楽天戦)から使用開始している。
[編集] 放送席
メディア用の放送ブースは1階スタンドと2階スタンドの中間に設置されている(テレビ中継でも頻繁に映っているバックネット裏のブースは場内アナウンス用)。
設計当初、放送ブースは近年建設された他球場の例に倣い2階スタンドの最上部に設けられる予定であった。一方、旧市民球場の放送ブースはバックネット裏のグラウンドレベルに設けられていたが、これは旧市民球場が建設された1950年代においては、野球中継の主流がラジオ放送であり、選手の動きを詳細な言葉にして伝える必要があるため、放送ブースは観戦しやすいことが最重要であったためである(そのため同時代に建設された野球場のラジオ放送ブースはバックネット裏に設置される事例が多かった)。
その後、球場の実施設計の過程において、旧市民球場の実況に慣れ親しんだ地元放送局・RCC中国放送から、放送ブースの設置位置に関する要望が出された結果、最終的に現在の位置に落ち着いた。
[編集] 施設改修について
球場完成後もかつての旧市民球場と同様、順次改修が行われている。
[編集] 特別席(プレミアムシート)の増設
- 2010年
- テーブルを囲むテラス席やパーティーエリアが人気を集めていること、さらにバリアフリーの充実を図ることから、グループ観戦席の改修がメインとなった。
- レフトスタンドの最上部を改修し、「ファミリーテラス」「パーティーデッキ」を設けた。このエリアはコンコースに面し段差がないため、車椅子のまま利用可能な席となっている。
- 三塁側内野席の最上部には、掘りごたつ形式で畳に腰掛け、テーブルを囲む「鯉桟敷」が設けられた。
- 車椅子席は従前の90席から121席へ増設された。さらに介助者も車椅子利用者の隣に座って観戦できるよう席のレイアウトが改善された。
- 2011年
- 車椅子席が、正面砂かぶり席(1席)、カープパフォーマンスシート(3席)、ビジターパフォーマンスシート(4席)にも新たに設けられるなど、合計で142席に増設された。
[編集] 太陽光発電設備の導入
環境問題がクローズアップされる昨今において、欧米では敷地面積の大きなスタジアムへの太陽光発電の導入が相次いでいる。2007年に米国のAT&Tパークは、野球場としては世界初となる年間12万kWの発電能力を持つ太陽光発電システムを設置したが、日本では埼玉スタジアム2002(8,500kW)や熊谷スポーツ文化公園(3万kW)などで比較的小規模の太陽光発電が行われているに過ぎなかった。
2008年、広島市は「2009年度市役所低炭素化プロジェクト」において、当時建設中の新球場に年間10万4,800kWの発電能力を持つ太陽光発電システムの導入を決定。2009年のオフシーズンを利用して、スタンド屋根に580枚の太陽電池パネルが設置され[31]、同様の工事が行われた阪神甲子園球場と共に2010年春以降、国内初のスタジアムによる大規模太陽光発電を行っている。発電された電力はナイター照明のほか、空調設備などに使用されており、二酸化炭素の年間排出量を約70トン削減できるとされている。
[編集] カープ名選手レリーフの設置
2010年の広島球団創設60周年を記念し、地元メディアの中国新聞社にて歴代の名選手について読者投票を行い、選ばれた17名の選手を『カープの星』と銘打ち、そのレリーフを同年5月以降に球場西側の大型スロープ「広島市西蟹屋プロムナード」に設置することになった[32]。
投票の結果、選出された歴代選手は以下の通りである。なお、広島球団史上最高のスターとされる山本浩二と衣笠祥雄両選手は、その功績から「無投票当選」となった。
- 1950-59年:白石勝巳、長谷川良平、藤井弘 (3月30日の中国新聞朝刊で特集記事を掲載)
- 1960-69年:安仁屋宗八、古葉竹識、山本一義
- 1970-79年:江夏豊、外木場義郎、三村敏之
- 1980-89年:高橋慶彦、達川光男、津田恒実
- 1990-99年:大野豊、北別府学、野村謙二郎
- 2000-09年:緒方孝市、佐々岡真司
[編集] 球場外トイレの設置
2009年以降、試合開始当日は球場開門前から多くの野球ファンが訪れるようになったが、「球場外にトイレがなくて不便だ」との苦情が相次いだ。そのため球場内の関係者用トイレを臨時開放する等して対応してきたが、2009年のオフシーズンを利用して球場正面入り口東側にトイレが建設された。ファンや企業からの寄付金により建設されたこの施設は、オストメイト・車椅子利用者に対応する多機能トイレやベビーチェアが用意された身体障害者用個室1室を備えている。
[編集] 緑のトンネル
バックスクリーン裏側のコンコース上に、パーゴラ(アーケード状の骨組み)が新設されており、ガーデニングの立体的な景観を楽しめるようになる他、デーゲームの日差しをしのげる葉陰ができるようになった。 初年度の2010年はシーズン中に、朝顔とゴーヤをこの骨組みにはわせて栽培したが、2011年はこれらに加えて竹原市特産の竹簾をバーゴラに取り付けることになっている。
[編集] 各種オブジェの設置
2010年3月、センター側ウッドデッキ席の後部に、当球場と同じ高さ、同じ材料を使用したラバーフェンス2枚と、打球に飛びつく等身大の天谷宗一郎人形が設置された。
これはフェンス際の果敢なプレーを恐れない天谷の守備と、球場のラバーフェンスの高さ、および高性能な衝撃吸収能力を観客に実感してもらえるよう設置されたものである。
2011年は、「日本の野球史上、もっとも衝撃的なキャッチ」(米CBS)として世界的な話題となった2010年8月4日・対横浜ベイスターズ戦の赤松真人のスーパープレイを再現した人形が新たに加わった。
赤松オブジェは1年で役目を終え、2011年末には撤去された。[33]。
[編集] 球場周囲のモニュメント
-
カープ坊やのマンホール。球場周辺の道路262箇所に設置されている
[編集] アトラクション、演出
- 5回裏終了時には球場内の総勢約80名のホーカー(鷹の様にスタンドを行き来する売り子)のリードで『CCダンス(Carp Cheer Dance)』が披露される。
- 『CCダンス』の原曲は『勝利を我らに!〜Let's win!〜』。振り付けはラッキィ池田の手によるもの。
- 『CCダンス』の振り付けはヤンキースタジアムの『YMCA』同様、アルファベット「CARP」を人文字で表すものであり、曲調も軽快なテンポの良いものであったため、09年シーズン終盤には観客の多くが参加するようになった。
- 旧市民球場から引き続き、6回裏終了時にはビジターチームの応援歌、7回表終了時には『それ行けカープ 〜若き鯉たち〜』が流される。
- カープが勝利を収めると、試合終了後は『勝利を我らに!〜Let's win!〜』がフルコーラスで流される。
[編集] 球場特別ルールについて
本球場の特徴の一つに、内野スタンドの最前列部分がグラウンドレベル(地表面)から約90cm程度掘り込まれていることが挙げられる。これは臨場感を売りとする「砂かぶり席」と、メジャーリーグのスタジアムに倣い、低い位置にダグアウトを設けるために配慮されたものであるが、ダグアウト横に設置されたカメラマン席も同様に低い位置となっている。 「砂かぶり席」とダグアウトの前面には、フィールドでプレーする選手がファウルボールを追った際に床下に転落しないよう、高さ90cmのフェンスが備え付けられているのに対して、カメラマン席の前面はカメラマンの撮影を妨げないよう、高さを55cmに抑えた塀が代わりに設置されている(併せてカメラマンの撮影体勢を保持するための足場も設置された)。
球場開場前に行われた実戦練習にて、広島球団のブラウン監督(当時)は、カメラマン席の塀が「砂かぶり席」のフェンスと比べて高さが抑えられたことに対して、選手がファウルボールを追った際に転落してしまう可能性を指摘した。
選手の安全面に万全を期すため、広島球団と審判団が話し合った結果、カメラマン席の塀に選手が足をかけたり尻や膝を乗せる等、体をあずける体勢になった時点で、仮に捕球してもファウルボールと判定することになった(塀に手を添える程度で捕球した場合はバッターアウトになる)。なお、このルールが適用されるのはカメラマン席に限定されており、「砂かぶり席」・ダグアウト前のフェンスについては、それに体をあずけてフライを捕球した場合でも通常通りバッターアウトが宣告される。
[編集] 球場の名称について
新球場の名称については、仮称として「広島市新球場」などの呼称が用いられていたが、2008年(平成20年)3月の広島市議会での議決により球場利用に関する広島市条例が制定され、正式名称は「新広島市民球場」となった。さらに2009年4月1日には旧市民球場から名称を引き継いだ「広島市民球場」に変更されている。ただしマスメディアにおける呼称、道路標識や歩行者案内、観光地図、印刷物などは、後述する命名権(ネーミングライツ)による愛称が利用されるため、この正式名称の使用は最小限になっている。
[編集] 命名権(ネーミングライツ)の導入
正式名称とは別に愛称として、広島市は将来の球場改修費に充てることを目的とした命名権(ネーミングライツ)の導入を決定[34]。2008年11月4日に開かれた選考委員会での選定を経て、11月6日に広島市はマツダを命名権取得予定者とすることを決定した[35]。
10月にマツダが提案した内容は、名称は「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(マツダ ズーム・ズーム スタジアムひろしま)」で、契約期間は2009年(平成21年)4月1日から2014年3月31日までの5年間で、年額3億円(消費税別)。「Zoom-Zoom」はマツダのキャッチコピーである「ZOOM-ZOOM -もっと乗りたくなる。-」から引用された[36]。命名権で企業団体のキャッチコピーが用いられるのは異例のこと[37]。マツダは、社会貢献の一環として、観客来場者数100万人につきマツダの福祉車両を社会福祉団体に寄付することや、カープ球団の歴史を展示するコーナーの開設、風力発電の電力を購入し球場で使用する[38]としている。またマツダは、こうした提案内容とは別に、自己負担より新たな名称の提案を行う事も出来るとされた。
2008年12月24日、マツダと広島市は命名権について正式契約を交わした。契約までに市民やファンの間で、「ズムスタ」「マツスタ」など複数の呼び方が広がったことを踏まえ、混乱を避けるためにマツダは広島市に略称を提案、「マツダスタジアム」とすることで合意した。マツダと広島市はマスメディアに対して、「マツダスタジアム」の略称を試合中継時等に使ってもらうよう働きかけている。
[編集] 命名権導入~名称決定までの経緯
命名権(ネーミングライツ)については、2004年の球界再編問題を契機とした「現市民球場改築か、新設球場か」を巡る議論がなされていた当時から、建設・運営費用を確保するための手段として検討されていたものである。なお旧市民球場にも命名権導入が検討され、常石造船やイズミが取得の方針を示したが、使用可能期間が短い、市民球場の名称に愛着がある等の理由より見送られた。
2008年7月に、広島市は諸条例を改正の上、新市民球場に命名権を導入する方針を示した。募集に対し、対象企業は広島県民に浸透しやすいように過去1年以上広島県内に本支店を置く企業(株式会社)とされ、さらに以下の条件を満たすよう求めていた。
- 広島にあるプロ野球本拠地球場としてのふさわしさを持つ名称であること
- 契約期間は2009年4月1日から5年間以上、年間契約額2億円以上
- 広島球団や球場と連携した地域貢献策の提案
- 企業の法令遵守(コンプライアンス)の姿勢
- 貸金業・風俗営業を主たる業としないもの、指名停止措置を受けていないもの
この命名権購入については、マツダ、イズミなどの企業数社が検討していると報道されていた。
2008年10月8日に1回目の選考委員会が開かれ、募集要項及び選考方法が決定。10月10日より募集を開始。10月27日締め切りで、それまで報道されていたマツダ、イズミの2社が応募(イズミの応募に関しては、市からは公表されず)[39]。11月4日に開かれた2回目の選考委員会で命名権購入企業を選定した。5日の市長報告の時点までは選定の公平性を確保するため、応募企業や購入企業、球場名は伏せられており、落札決定までに自らの応募を公表した企業は失格するものとされた。
選定にあたっての基準は下記の3項目であり、11月5日に選考委員会はマツダの当選を市長に報告、翌日6日に広島市は命名権取得予定者を正式決定した。
- 命名権金額 - 50点
- 企業の適格性 - 30点
- 名前のふさわしさ - 20点
- 合計100点。
[編集] 球場の運営
[編集] 指定管理者制度の導入
それまでの旧市民球場では所有する広島市が直接施設の運営を行い、試合開催時には広島球団(株式会社広島東洋カープ)に球場内の売店などの営業権を認めるという方法をとっていたが、本球場では2003年の地方自治法改正により運用が開始された指定管理者制度を導入することとなり、2008年6月28日の広島市議会にて、広島球団を指定管理者とすることが議決された。日本プロ野球の本拠地球場(専用球場)の管理運営に球団が直接関与する事例としては、スカイマークスタジアム(神戸市が所有、2002年からオリックス・バファローズの運営法人「オリックス野球クラブ」が運営)、クリネックススタジアム宮城(宮城県が所有、2004年から東北楽天ゴールデンイーグルスの運営法人「株式会社楽天野球団」が運営)に次ぐ3例目、球団が指定管理者として運営する事例は千葉マリンスタジアム(千葉市・千葉県が所有、2006年から千葉ロッテマリーンズが受託)に次ぐ2例目となる[40]。これらの球場では、球団に球場内の売店、看板広告の自主運営が認められた上に[41]、球場設備(観客席・アミューズメント施設等)をある程度自由に変更できるようになり、球団の収支改善に大きく寄与することが期待されている。
[編集] 広島球団と三井物産の提携
2008年10月28日、総合商社の三井物産は、広島球団とスポンサー開拓業務を始めとする新市民球場の共同運営を行うことを発表した。これは昨今、プロ野球球団の収益源として従来重きをなしていたテレビ中継の放映権収入が減少し、代わりに球場入場料や看板広告、飲食物販売等の収入が重要視され始めた状況下において、新市民球場は旧市民球場の5倍の売店面積を持つなど充実した設備を持つが、これにマッチした運営を行うために、経験豊富な三井物産のノウハウを借りて収益を伸ばすことを狙ったものである。三井物産は総合商社としての顧客ネットワークなどを活用しながら、スポンサーゲームの企画や商標権の販売、観客席の命名権の販売などを手がける方針で、スポンサー収入に応じて成功報酬を受け取ることになっている。
また、球場内のケータリングをはじめとするフードサービスについて広島球団は、広島アジア大会の選手村の食堂運営、阪神甲子園球場のフードサービスを中心としたコンサルティング業務(2007年~2008年)などの実績を持つ三井物産系のエームサービスと包括的な業務委託契約を締結した。スタジアム内の飲食店舗の他、スポーツバー、パーティルーム、スイートルーム等のフードサービスを一社の包括運営とするのは、メジャーリーグで導入事例が多いものの国内では初の試みで、2010年時点においてエームサービスでは「広島風お好み焼き」や「広島風つけ麺」「かきめし」「尾道ラーメン」など広島ならではの名物の他、選手プロデュースのメニューを含む約100種類のメニューを提供している。2009年(開場初年度)の広島球団の飲食売上高は前年比13億円増の20億円に達した。
さらに新メニューに加えて、旧市民球場で年間約10万6000食を売り上げた人気商品「カープうどん」も継続販売されている。旧市民球場で5店舗を出店していた鯉城食品は価格などで折り合いが付かず撤退することになったが、同じくうどんやラーメンをバックネット裏2店舗で販売していたマルバヤシが引き続き新市民球場のコンコース(一塁側内野席後方)に新店舗「カープうどん SINCE 1957」を出店しており、2009年の年間売上は207,566食に達した。
[編集] 常設グッズショップの開設
本球場の建物内には、試合の有無に関わらず開店するグッズショップが設けられている。旧市民球場では試合開催日に球場外・正面玄関付近でグッズのワゴンセールを行っていたが、付近は混雑するためお客は身動きが取れず、商品をじっくりと手にとって選べるとは言い難い状況だった。また試合開催日以外では、一塁側内野スタンド裏側に設置された商品販売部での購入も可能であったが、スペースの都合上、入口が分かりにくい場所にある上、売り場面積も充分ではなかった。グッズ・チケット販売や球団の歴史資料を展示する常設施設としては、広島市内に球団所有の施設である「カルピオ」[42]もあるが、場所が球場から離れている上、日曜日・休日は試合開催日以外は閉店していた。
これらの反省点を踏まえて本球場の正面ロビー付近に設置されたグッズショップは、2階建てで売り場の総面積424 m²(1階:276 m²、2階:148 m²)、内装はレンガ造りで、壁には巨大なグローブやボールが飾られるなど遊び心あふれる造りになっており、広島球団が取り扱うグッズは全種類が用意されている。 グッズショップは球場のこけら落としなる2009年地元開幕の対中日戦(4月10日)よりも1週間早い4月3日にオープンしたが、試合開催日以外にも多くのファンが訪れるようになり、2009年(開場初年度)の広島球団のグッズ販売高は、広島市民球場(初代)ファイナルイヤーで盛り上がった2008年(9億8700万円)を10億円余り上回る20億円に達した。
[編集] 多様な座席設定
[編集] 一般座席
2009年2月13日、広島球団は新球場の公式戦における座席価格を発表した(座席配置および価格の詳細は広島東洋カープ公式サイトのチケット案内を参照)。旧市民球場で応援しやすいことから人気があり、その結果、座席の場所取りが激しかった外野スタンドは、新球場では全席が指定席とされる一方で、販売が奮わず稼働率が25%程度に落ち込んでいた2階席は大部分が自由席とされ、大幅に価格が引き下げられている。こうしたこれまでの販売状況の見直しに加えて、新球場では座席そのものが旧市民球場と比べて大幅に快適になることが考慮され、球場全体としては1席あたり100円~300 円程度の価格上昇となった。
[編集] パフォーマンスシート
本球場では、旗や鳴り物による応援活動は「パフォーマンスシート」と名づけられた外野2階席に限定されている。ホーム側応援席となる「カープパフォーマンスシート」は外野ライトスタンドに、ビジター側応援席となる「ビジターパフォーマンスシート」は三塁側外野ファウルグラウンド横に位置する。JRの路線沿いにあるという地理の関係上、レフト側外野席を大きく削ったスタンド形状になっていることから、日本の球場では珍しくファウルグラウンド横のスタンドに活動エリアを設けた。基本的に応援団は、活動許可を得た上でこのエリア内にて応援活動を行う。
[編集] プレミアムシート
さらに一般席とは別に、以下のような多種多様な特別席(プレミアムシート)が用意されている。
- 砂かぶり席:バックネット裏に2カ所(各40席)、内野一塁・三塁側のカメラマン席の横(各150席)、および3層から成るレフトスタンドの1層目に位置する(180席)。他球場のフィールドシートに相当するものであるが、大相撲での「砂かぶり」(土俵下の桟敷席)を意識して座席はグラウンドレベルより低く設置されており、最前列の観客のほぼ胸の位置が地表面のため選手の転落防止用にフェンスが付けられている(Kスタ宮城も同様)。2010年はバックネット裏の計80シートがビックカメラ[43]、内野一塁・三塁側の計300席は前年から引き続きキリンビールがそれぞれ命名権を獲得、「ビックカメラシート正面砂かぶり席」「KIRINシート内野砂かぶり席」となった。「KIRINシート内野砂かぶり席」ではカープが勝利を収めると、ヒーローインタビューを受けた選手とハイタッチできる特典がある。
- のぞきチューブ席:レフトスタンド砂かぶり席同様にライトスタンドの下に設置される観客席であり、床はグラウンド地表面より85cmも低く、ライトフェンス下部に設けられた縦0.6m、横15mの「のぞき窓」から試合を観戦できる。のぞきチューブ席が設置される空間はドリンクや軽食をそろえたスポーツバーになっており、室内には天井を突き抜けた巨大バットが直立、壁にはめり込んだ巨大ボールがデザインされている。通常チケットに500円の追加料金を支払えば入場できる(30分ローテーションの入替制)。2010年度からはパーティースペースとして団体で利用することが出来るようになった。
- ウッドデッキ席:スコアボードの横、レフト側に設置される観客席で、西部劇を思わせる木製デッキ・木製酒だるが用意され、バーを思わせるカウンター越しに試合を観戦できる。スコアボード下に設けられた売店で軽食も注文できる。
- 寝ソベリア:スコアボードの横、ライト側に設置される観客席。ここには人工芝が敷きつめられており、チケット購入者にはチームカラーを意識した赤色の2人用クッションソファーが用意される。ソファーは防水加工が施された上、長時間でも疲れにくいよう厚みを持たせており、背もたれを倒してゆっくりと寝ころびながら観戦できる。2011年度からはセブン-イレブンが命名権を獲得したため「セブン-イレブンシート寝ソベリア」となっている。
- ゲートブリッジ:三塁側内野スタンドとビジターパフォーマンスシートを結ぶ高さ8mの橋上に設置された観客席であり、6人用のテーブルとベンチが10セット設置される。ここからは球場内外を見渡せるため、球場傍を行き交うJR山陽新幹線や山陽本線が視界に飛び込んでくる。
- コカ・コーラテラスシート:内野スタンド2階の最前列に位置するボックス状になったブースで、日本コカ・コーラ株式会社と、広島県フランチャイジー(ボトラー)のコカ・コーラウェストが命名権を獲得した。木製の椅子とテーブルが用意されている。
- びっくりテラス:ライトポール際のスタンドに設置された観客席で、観戦しながらバーベキュー等を楽しめる。椅子やピクニックテーブルを備えており、食材はチケットとセット販売される。ネーミングの由来は、ファウルボールが突然飛び込みやすいエリアにあることから。エバラ食品工業が命名権を獲得、「エバラ黄金の味 びっくりテラス」となっている。[44]
- パーティフロア・パーティベランダ:団体客を対象としたエリア。パーティフロアは内野スタンドの中2階にあり、大きさは横50m、奥行き6m。通常は7部屋に区切られているが、間仕切りを外すことで大がかりなイベントにも活用できる。三塁側には広めのスペースが確保されているラグジュアリーフロアがある。パーティベランダは3層から成るレフトスタンドの2層目に位置する。
- ただ見エリア:レフトスタンド砂かぶり席の後方は壁の一部が取り払われており、球場の外から無料で試合を観戦できる。このエリアからは、投手や打者はよく見えるものの、外野への打球の行方は見えそうで見えない。
こうした新たな種類の座席が用意されることから、旧市民球場では11区分だった観客席チケットは、本球場では27区分とより細分化されている。なお、2010年から以上の席を一部改装し新たな区分を設けた。
[編集] 球場付属施設の開発
本球場が建設された貨物ヤード跡地は、全体で11.6haの広大な土地であり、そのうち球場用地として利用されるのは中央部分の約5haである。残る球場を挟んだ東側と西側の未利用地には、プロ野球が開催されない日も賑わいを創出できるよう「集客施設」が建設される。
2006年9月に行われた球場設計コンペでは、設計者が球場設計案と共に、この未利用地の将来の整備イメージを提出することが認められており(広島市は参考意見として聴取)、最優秀案に選ばれた環境デザイン研究所案では、「鯉をイメージした躍動する屋根」「スポーツミュージアム」「平和広場(イベントステージ)」などが提案された。
2007年11月、正式に広島市はこの未利用地に集客施設を建設・運営する民間事業予定者の募集を行った。募集要項では、「景観的に球場とのバランスが取れていること」「JR列車からの景観に配慮すること」等が条件とされた。計画の策定が円滑に行われるようにするため、民間事業予定者に対してコンセプトやデザインの指導を行うマスターアーキテクトには、新球場設計者である環境デザイン研究所が任命された。
その後、2007年12月中旬までに5つの民間事業体から、アミューズメント施設、フィットネスクラブ、スポーツクラブ、温浴施設、観覧車などの集客施設の他、飲食、物販の商業系施設、併せてマンション、病院などを建設する概要案の応募があり、さらに2008年3月下旬までに、これら概要案を応募した5社のうち、3社から詳細な事業計画案が提出された(残る2社は失格、または辞退)。
選考委員会で審査した結果、三井不動産、コナミスポーツ&ライフ、ラウンドワン等で構成する民間事業体の計画案「Hiroshima Ball Park Town」が、「資金計画や出店企業が具体的で実現性が高い」「事業内容が近隣の商業施設と競合しない上、広域集客が見込める」などの観点から最優秀案に選ばれ、広島市は同年4月28日、新球場周辺の事業予定者とすることを正式決定した。
最優秀案は、球場西側地区(1.8ha)を「観客を迎え、交流を育むライフスタイルセンター」とし、大型スポーツストア、コミュニティホテル、マンションの他、球場の利便性向上に貢献する商業施設として飲食・物販等のサービス店舗が整備される。一方、球場東側地区(2.6ha)は「様々なスポーツ・レジャーを満喫できるスポーツ&エンターテイメント」とし、大型スポーツクラブ、複合エンターテイメント施設が並ぶ予定である。西側地区は球場の玄関となる大型スロープと連結し、また東側地区は球場の大型コンコースに連結することで、球場と各施設を合わせた街並みに回遊性が生まれる計画である。土地購入費を含めた総事業費は160億円、新球場と併せて年間 680万人の集客が見込まれている。
当初は最優秀案で提示された各施設の基本計画の策定を2009年2月に終了させ、実施設計を経て、2009年9月に球場東側地区、2009年12月に球場西側地区が着工する予定としていた。しかし、折からの急激な国内経済情勢悪化に伴い、主要企業以外に出店が見込まれていたテナントの事業参画交渉が難航しているとして、事業代表の三井不動産は2009年2月16日、基本計画書の提出期限延長を申し入れたため、広島市も了承し、工事着工は先延ばしされた。
2010年10月28日、三井不動産は「難航していたテナント誘致にめどがついた」として、策定が遅れていた基本計画書を広島市に提出した。この基本計画では球場東側地区の先行整備を行うこととし、ラウンドワンに代わって、ウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型卸売小売)チェーンのコストコホールセールを、さらにコナミスポーツ&ライフに代わってルネサンスを誘致するものとなった。さらに、これら集客施設と球場は接続されており、プロ野球開催時には集客施設・商業棟内に球場集客用の駐車場が200台分用意される内容となっている。これを受けて、広島市は基本計画と最優秀案「Hiroshima Ball Park Town」との整合性を精査、さらに球場西側地区の整備を確約するよう三井不動産と協議を行った結果、2011年1月14日に計画は承認された。
これを受けて、2011年12月から球場東側地区の工事が開始されており、2012年9月に「ルネサンス 広島ボールパーク店」、2013年2月にコストコ、同年8月にマンション(ボールパークレジデンス)がオープンする予定になっている。一方、球場西側地区は、2016年2月までに三井不動産が用地を購入することで広島市と合意した。建設する施設については、球場東側地区に当初予定されていたアミューズメント施設の誘致を目指すとされており、それまでの間は、三井不動産によりバザー等のイベントが催される予定となっている。[45][46]
[編集] 現状の課題とその対策
本球場はMLBのスタジアムに範を取り、従来の日本の球場にない特徴を備えているが、その結果として、当初は様々な運用上の課題が出たため、各種対策を行っている。
広島球団の意向もあり、新市民球場では従来の外野に加えて内野にも天然芝が植えられている。そのため初代広島市民球場で行われていた少年野球・ソフトボールは、プロ野球・高校野球に比べて塁間距離が約4~10メートル短く、そのままでは二塁ベースを天然芝の部分に設けざるを得ず、天然芝の部分をベースランニングすることとなり芝を傷める原因となるとして、広島市は当初「これらの試合の受け入れは困難」との認識を示していた。しかし、旧市民球場を利用していた少年野球関係団体などから「子供達の夢を奪わないでほしい」等の陳情を受け、再検討した結果、試合間隔を空けること、内野天然芝を保護するシートを敷くこと等により対応している[47]。
また試合観戦の臨場感を重視したため、MLBのスタジアムでは当然であるが、日本の球場としては珍しくダグアウト上部以外に観戦の妨げになる内野フェンスは設置されていない。これは観戦者にとっては非常に都合が良いものの、高校野球の応援におけるブラスバンドは、「グラウンドに背を向けて演奏するため打球に対する安全性が確保できない」として2009年は禁止されていた。2010年以降は、各出場校の野球部員が演奏の脇でグラブを持ち打球に対処することを条件としてブラスバンドは解禁された。
一方、球場までの交通手段についてはJR広島駅からの徒歩が主となるため(詳細後述)、歩いてくる観客を迎え入れる球場西側の大型スロープ「広島市西蟹屋プロムナード」に加えて、球場完成までにJR広島駅南口からスロープ入口に至る道路(距離約600m)を中心とした整備(車道と歩道の分離等)が行われた。さらにこの道は、往来の集中が予想される試合開始前・終了後の1時間、車両の進入を禁止し、歩行者専用道路となっている。一方、JR西日本でも広島駅南口改札の増設、広島駅南口地下改札口の利用時間延長を行うと共に、東隣の天神川駅からの利用も想定して天神川駅下りホームの改札口増強・精算機新設(に伴う列車停止位置の変更に対応するためのホーム延伸)を行った[48]。
新球場に隣接する駐車場については周辺道路事情を考慮して事前予約制とされ、一般車両・大型バス含めて約500台分用意されるが、球場駐車場に駐車できない観客は、他の広島市内各所の駐車場を利用する必要がある。こうした市内各所と新球場を結ぶため、広島市が各所と協議した結果、広島電鉄が試合終了後、5分間隔で走らせるシャトルバスを運行しているほか、JR西日本はナイター開催時の21時~22時台にかけて、広島駅と五日市駅・瀬野駅・坂駅・緑井駅との間で、臨時列車「赤ヘルナイター号」を運行している[48]。 また、球場周辺には駐車場とは別に、自転車・バイク利用者の利便性を図るため、2000台を収容できる駐輪場が整備されている[49]。
[編集] 一般開放
本球場は、2009年11月からは市民の希望者に対して一般開放が行われている。内外野の天然芝を育成・保護するため、以下の使用条件が定められている。
- 1日1団体のみに貸し出し
- 1日5時間までの使用
- 最大2試合まで
- 使用するスパイクは、裏面が金属製以外のもの
最初の開放日と予定されていた2009年11月14日の使用抽選は同年10月3日にマツダスタジアムで行われたが、球場への高い関心もあって108団体が応募、さらに11月21日、22日の使用抽選も10月4日・5日に続けて行われたが、88倍・60倍という高倍率となった。一般開放は2月中旬まで行われており、土・日・祝日(年始年末除く)が抽選使用になる。12月・1月・2月は10倍以下の日もあるものの、球場への関心の高さに加え、利用制限があることも手伝って、同時期の旧市民球場の使用抽選倍率よりも高い。
2010年以降も、プロ野球シーズンオフから予定されている。
[編集] 大州雨水貯留池
本球場グラウンド地下には集中豪雨時等、広島駅を含めた球場周辺地域の雨水を溜め込むことで、浸水被害を防ぐ大州雨水貯留池が設けられており、スコアボード裏には関連建物がある。
ゲリラ豪雨等、局所的な集中豪雨に対応するため、現在、各都市において雨水貯留管の建設など様々な雨水対策が進められているが、都市地下に巨大なシールドトンネルを築造する工事は多大な費用と長い期間を必要とするため、財源確保と工期短縮は大きな課題となっている。このような中、広島市では、新球場の地下に周辺地区の雨水の流出抑制と再利用を行う大容量の貯留池を建設するという構想を打ち立てる。貯留池の建設は2006年11月より開始され、新球場着工直前の翌2007年11月に完成した。総工費は45億円。
貯水量は1万5000m³。直径100m、高さ3.5mの円筒形で、溜め込まれた雨水は大洲下水処理場で処理される。この貯留池へ雨水を流入させるため、球場周辺には直径0.9mから2.2mの雨水流入遮集管が総延長で約900m整備された。その結果、JR広島駅周辺の市街地を含む大州排水区(533ha)は、従前1時間あたり20ミリまでの降水量にしか対応できなかったが、2.6倍に当たる53ミリまで対応できるようになった。
また、貯留池に貯められた雨水の1000m³分は、施設の濾過装置を通すことで、新球場の天然芝への散水やトイレ用水として利用されており、水道料金の軽減に大いに役立っている。
[編集] 交通機関
- JR・広島電鉄
- 広島駅南玄関から、JR山陽本線の線路敷地に沿って徒歩約10分
- 路線バス
- 広島電鉄・広島バス・芸陽バス「マツダスタジアム前」バス停から徒歩3分
(2009年3月28日をもって、広島電鉄と芸陽バスの「大州一丁目」バス停と広島バスの「南蟹屋」バス停が球場前に移転統合し、名称変更された)
- シャトルバス
- 試合終了後から、広島電鉄が球場西側の「広島市西蟹屋プロムナード」隣を発着場に、シャトルバスを30分間随時運行する。ただし、試合時間が4時間を超える場合は開始4時間後から運行開始[50]。
- 段原蟹屋線から平和大通りを経由、新天地・八丁堀・本通りの3ヶ所に停車(球場から本通りまで約20分)。
[編集] 備考
[編集] 脚注
- ^ 広島東洋カープ公式サイトでの案内より。
- ^ 参考・中国新聞2004年10月14日付記事『沈黙する球団』より。こうした広島球団の視察は野球場にとどまらず、英国の歴史的建築物や国内一の入場者数を誇る旭山動物園にまで及んだ。
- ^ 参考・中国新聞2004年6月19日付記事『どうする広島市民球場 現状編』より。
- ^ 「どうするドーム球場 - 中国新聞特集サイトより
- ^ 広島市、天然芝のオープン球場案提示へ - 中国新聞2001年3月14日付記事
- ^ 参考・中国新聞2002年5月30日付記事『公費投入、屋根付き球場を ―経済4団体が要望―』より。
- ^ 広島市長「複合型オープン」表明 - 中国新聞2002年7月10日付記事
- ^ 発見された汚染土壌は、新球場建設工事と並行して除去されている。
- ^ 近年建設された松山坊っちゃんスタジアムの建設費は118億円とされる。一方で90億円に近い予算で球場本体が建設された例として、サンマリンスタジアム宮崎(建設費:89億6400万円)等がある。
- ^ イギリスの建設コンサルタントであるアラップ、松田平田設計事務所、NGOアーキテクチャー、大成建設を中心とする複数の企業から構成されるプロジェクトチーム。なお、アラップ社の運動施設部門の呼称も「Arup Sport」であるが、本文書における「アラップスポーツ」は同部門を指すものではない。
- ^ 建物外部をETFEの膜で覆い、内側から明かりを灯す(アリアンツ・アレナと同様)ことで「灯篭」をイメージした作品。カープの試合時には赤、アマチュアの試合時には白等と光を発する。スタジアムの構造は、RFKスタジアムに範を取り、レンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントンを参考に、球場に賃貸オフィス等、複合施設を組み込んだ。この複合施設の収益を見込むことで、予算を大幅に上回る建設費を回収可能とした。
- ^ コンペ終了後、最優秀案に対しては、ビジターチーム応援用の観客席が少ないとの不満の声が広島市に寄せられていた。また同時期に広島市は、球場の使い勝手などカープの選手に意見を求めている。
- ^ グラウンド使用料金の3億8000万円(公式試合の有料入場者数が100万人を超えた場合は、超過人数分の入場料収入の2%~4%が上乗せされる)に、球場内の広告掲示料や店舗設置料などを加えた合計額が5億7900万円となる。
- ^ 参考・中国新聞2008年11月27日付記事『新球場、魅力アップ策続々』より。
- ^ 五洋建設・増岡組は広島県呉市が発祥の地、加えて増岡組は現市民球場の建設にも携わっており、鴻治組は広島に本社を置く。
- ^ 予定価格5,571,428,571円に対し、応札額5,571,000,000円(いずれも消費税相当額を除く)。
- ^ 参考・中国新聞2007年10月25日付記事『新球場の魅力 3億円アップ』より。
- ^ 本塁から投手板を経て二塁に向かう線を東北東向きとするスタジアムは、AT&Tパーク、ヤンキースタジアムなどメジャーリーグでは事例が多いものの、従前の日本では少数であった。2009年3月以降、広島球団が新球場にて実戦練習を重ねる過程で、デーゲームを想定し守備練習をしたところ、特に左翼の守備に就いた外野手は、午後の日差しと正対するため、飛球が太陽と被って見失いやすいことが判明している。そのため外野手は打球を後ろへ逸らさないよう守備位置を深く取る等、より工夫が求められる。なおメジャーリーグにおいても、外野手はデーゲームではサングラスを着用して守備につく選手が多い。
- ^ 公認野球規則1・04より、「本塁からバックストップ(ネット)までの距離、塁線からファウルグラウンドにあるフェンス・スタンドまでの距離は60ft(18.288m)以上を必要とする。」
- ^ 守れカープ 市民の力で - 中国新聞2006年1月3日付記事
- ^ 国土交通省報道発表資料より (PDF)
- ^ NHK総合「お元気ですか日本列島」(2009年4月10日放送分)にて紹介されたエピソード。新球場設計にあたり広島市職員を始めとする工事関係者は自腹を切って渡米、メジャーリーグの数々の球場を視察した。
- ^ 参考・中国新聞2009年3月28日付記事『新球場の魅力 3億円アップ』より。これについて松田元オーナーは「新球場はみんなの負担で造る物、負担は当然」とコメントしている。
- ^ 野球博物館、監督室など余裕の間取りを持ち、新球場との比較の俎上にあげられた松山坊っちゃんスタジアムの延床面積は33,400m²、サンマリンスタジアム宮崎は30,973m²、近隣のマスカットスタジアムは24,727m²である。新球場はこれらよりも一回り規模が大きい(同:39,524m²)。
- ^ 参考・中国新聞2010年3月26日付記事『カープ売上高117億円、新球場効果で46億円増』より
- ^ 2009年11月11日発表、中国電力報道向け資料
- ^ 広島駅の東側で山陽本線下り線のすぐ南側の三角形の用地にあった貨物専用駅。東広島市にあるJR山陽新幹線東広島駅とは無関係。
- ^ 参考・中国新聞2009年1月27日付記事『街と一体、コイの道-新球場に近づくほど「赤」濃く』より。
- ^ 『建築技術』2009年6月号(ISSN00229911)49ページより。
- ^ 参考・スポーツニッポン 2008年10月31日付記事『広島新球場は“岩本仕様”3・6Mフェンス』より。
- ^ マツダスタジアムの大型太陽光発電設備の完成(国内初)について(広島市) (PDF)
- ^ 球場にカープ名選手レリーフ - 中国新聞2010年1月1日付記事
- ^ 「赤松君&天谷君」人形“引退 - ニッカンスポーツ2011年12月16日付記事
- ^ 新広島市民球場命名権取得企業募集要項 (PDF)
- ^ 命名権取得企業予定者の決定(広島市)
- ^ Zoom-Zoomってどんなこと(マツダ公式サイト)
- ^ 日本では他に小正醸造が取得した鹿児島県日置市の「チェスト小鶴ドーム」(伊集院総合運動公園伊集院ドーム、「チェスト」は鹿児島弁で気合いを入れるときのかけ声)がある程度。
- ^ マツダによる球場使用電力相当分の自然エネルギー電力の購入は2008年から冠スポンサーを務めているオールスターゲームでも導入している。
- ^ 参考・中国新聞2008年11月6日付記事より。中国新聞の取材に対し、イズミは「(落選したものの)市民としてカープを愛する気持ちに変わりはない」とコメントしている。
- ^ なお、スカイマークスタジアムとクリネックススタジアム宮城の2例は都市公園法に基づく管理許可制度による運営管理であり、千葉マリンスタジアムの実際の運営管理は千葉ロッテ球団と県・市の共同出資による第三セクター「株式会社千葉マリンスタジアム」が受託しているため、球団が指定管理者として直接運営まで携わる事例としては初となる。
- ^ 国内のプロスポーツ団体の多くは、使用するスタジアムを地方自治体、第3セクター等から借りているケースが多数であり、このような賃借関係の場合、スタジアム内の売店、広告看板から得られる収益の多くが運営側(地方自治体、第3セクター)の取り分となる事例が多い(初代広島市民球場においては、広島市と建物を寄付した地元経済界との間で、広島球団を支援するための取り決めがされており、球団による球場内売店の自主運営、ならびに広告看板収益の7割5分~8割を球団収入とすること等、認めていた)。指定管理者制度により球場運営を任されると、これらの収益は球団収入として認められるようになる。
- ^ 広島市中区八丁堀にある。マツダスタジアム完成後も当面は移転予定はなく、この場でチケットやグッズ販売を行う予定。名称はスペイン語で「鯉」を意味する。
- ^ 2009年度は東芝で「TOSHIBAシート正面砂かぶり席」という名称だった
- ^ 上段席の後ろの看板は毎年変わっており、2010年度は「焼肉が食べたいのぉ~!!」、2011年度は「焼肉の香りにご注意ください!」と書かれてある。
- ^ 大型商業施設、来年12月開業 - 中国新聞2011年1月15日付記事
- ^ 広島ボールパークタウン整備事業B地区基本計画(概要)
- ^ 参考・中国新聞2008年3月8日付記事『新球場 学童野球にも開放』より。
- ^ a b 新広島市民球場オープンへの対応について - JR西日本プレスリリース
- ^ 広島市議会2009年2月定例会における2月19日の質疑応答より。
- ^ 広島電鉄:カープ試合会場への交通アクセス
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島(マツダスタジアム)公式サイト
- MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(広島東洋カープ)
- MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(中国放送) - 球団の協力により各座席からの写真や動画を掲載
- 環境デザイン研究所
- 新球場建設の推進(広島市都市活性化局)
- 新球場工事アルバム(広島市都市活性化局) - 定点写真や施工中の内部写真など
- 新広島市民球場プロジェクト(五洋建設)
- 新「広島市民球場」建設工事 動画(日本建設業団体連合会)
- みんなのカープ(中国新聞)
- 広島市民球場ストリートビュー
| 前本拠地: 旧広島市民球場 1957 - 2008 |
広島東洋カープの本拠地 2009 - 現在 |
次本拠地: n/a - |
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