マジックナンバー (野球)

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マジックナンバー(日本では一般にマジックと呼ばれる)はプロ野球の用語で、「他のチームの試合結果に関わらず、自チームがあと何勝すれば優勝が決定する」と言える勝ち数を意味する。

優勝までにあと何回勝たねばならないかにほぼ等しい。日本では他の全チームに自力優勝の可能性がなくなった状況でのみこの値を用い、この条件を満たすことをマジックナンバーが「点灯」したという。野球チームは優勝までに、マジック点灯⇒マジックナンバーを減らす⇒優勝という経過を通常たどるため、マジックナンバーはチームが優勝するまでの道筋として用いられる。

米国では自力優勝の条件が満たされない場合でもマジックナンバーを用いるため、「点灯」の概念はない。また米国では野球以外のスポーツでもマジックナンバーを用いる。

概要[編集]

定義[編集]

プロ野球リーグ戦は総当たり戦(×複数回)の勝率により順位が決まるため、チームBがチームCに勝って勝率を上げたかどうかがそれらとは別のチームAの順位に影響する。したがってチームA,Bの順位はA対Bの試合(A,Bの直接対決という)の結果だけでなく、AとCとの試合結果やBとCとの試合結果にも影響される。

リーグ戦の途中段階で、

  • チームAが自力優勝可能であるとは、Aが残りの試合に全勝すれば、それ以外の試合(A以外のチームB,C間の試合)がどのような結果になろうともAが優勝できることを意味する。すなわちチームAの自力優勝消滅とは、Aが残りの試合に全勝しても、それ以外の試合の結果次第ではAが優勝できない場合があることを意味する。
  • Aの優勝が確定するとは、今後行われる試合がどのような結果になろうとも、リーグの最後にはAが優勝する事を指す。すなわちA以外の任意のチームBに対し、Bが全ての残り試合に勝って、かつAが全ての残り試合に負けたとしても、Bの勝率がAの勝率を超える事ができない事を指す。

チームAのマジックナンバーとは、

  • (Aが今後n 勝してリーグが終了した時のAの勝率) >(Xが残り全ての試合に勝ってリーグが終了した時のXの勝率)

が全てのチームXに対して成り立つ最小のn のことである。以上の定義から分かるように、Aのマジックナンバーを計算するには、上式の左辺を上式の右辺が最も大きくなるチーム((マジック)対象チーム)と比較する。

性質[編集]

AのマジックナンバーはAが勝つ度に大抵1減り、マジックナンバーが0なら優勝が確定する。またリーグ中マジックナンバーは減ることはあっても増えることはない。このため、マジックナンバーは優勝が確定するまでに必要な勝利数にほぼ等しい。またマジック対象チームBが負けた場合にもAとBとの勝利数の差が減少するので、マジック対象チームが負けるとAのマジックナンバーが大抵1減る。

しかし例外的なケースではこれらが成り立たず、試合に勝ってもマジックナンバーが減らない、また逆に2減る、といったことがあるため、マジックナンバーは必ずしも優勝確定までの勝利数と一致しない。

例外[編集]

マジックナンバーが不規則な振る舞いをするケースは3つある。まず第一に、マジック対象チームが入れ替わるケースがある。マジック対象チームBが負けても、新しくマジック対象チームになった別のチームCに対するマジックナンバーが減るとは限らないので、この場合マジックナンバーが減るとは限らない。

2003年7月23日、マジック39を点灯させていた阪神がヤクルト戦に勝利して62勝23敗1分となったが、この結果マジック対象チームだったヤクルトは44勝41敗となり、マジック対象チームがこの日の横浜戦に勝利し44勝40敗となったた中日に変わったため、マジックは1つしか減らず38となった。これはこの時点で阪神が残り54試合(当時は140試合制)で37勝すれば99勝40敗1分(勝率.712)となり、ヤクルトが残り54試合に全勝した場合の98勝41敗(勝率.700)を上回るが、中日は残り56試合に全勝すると100勝40敗(勝率.714)となり、阪神を上回るためである。なお阪神が残り54試合で38勝すれば100勝39敗1分(勝率.719)となり、中日が残り56試合に全勝した場合を上回る。

第二に、Aがマジック対象チームBと直接対決するケースがある。両者が直接対決した場合、「Aの勝利によるマジックナンバーの減少」と「Bの敗北による(Aの)マジックナンバーの減少」が両方起こるため、通常はマジックナンバーが2減る。これはマジックナンバーの定義で、AとXとの直接対決が残っている場合には「Aが今後n 勝した時」と「Xが残り全ての試合に勝った時」とが同時に起こらないことを無視しているからである(Xとの直接対決で「Aがn 勝した場合」、Xはn 回敗北するので「Xが残り全ての試合に勝つ」が満たされない)。したがって直接対決の場合にはAの勝利とXの敗北が二重カウントされる。

さらに特殊なケースとして、直接対決によるBの敗北の結果マジック対象チームが別のチームCに入れ替われば、Aのマジックナンバーの減少が0の場合も1の場合もある。また非常に特殊なケースとして同率だった場合の順位決定ルールによっては、マジックナンバーが3つ減ることもありうる。

マジックナンバーが3つ減った例は、2013年9月11日、パ・リーグでマジック18を点灯させていた楽天イーグルス(70勝49敗2分)が、マジック対象チームのロッテ(66勝55敗2分)に勝利したことによって起こった。これは、楽天の勝利と、ロッテの敗北によるマジックナンバーの2の減少に加え、楽天が対ロッテ戦13勝8敗のシーズン勝ち越しを決めたことにより、楽天とロッテが勝率で並んだ場合には、直接の対戦成績で上回る楽天の順位が上位になるため、この事象に由来するマジックナンバーの減少が発生したためである。

第三のケースはAが試合で引き分けた場合である。日本プロ野球ではリーグでの順位は勝ち数でなく勝率で決まることと勝率の分母に引き分けを入れないことの影響で、引き分けが起こると、AとBとで勝率計算の分母が異なってしまう。これが原因で、Aが引き分けた場合、状況によってAのマジックナンバーが1減る場合も減らない場合もある。また、Aの引き分け数とBの引き分け数が極端に大きい状況下ではBの敗北によりマジックナンバーが減らない事も2減る事もありうる。これは、引き分け数が偏ると勝率の分母から引き分け数を引いていることが原因で勝率の分母がチーム毎に異なるので、勝率の分子である1勝の価値がチーム毎に違ってくるためである。

さらに言えば、引き分けによってマジック対象チームが入れ替わることも考慮する必要がある。

引き分けがない場合[編集]

引き分けが無い場合、勝率の大小は勝ち数の大小に一致するので、チームAのマジックナンバーは

W_B + R_B - W_A + 1

の式で求めることができる。ここでBはマジック対象チーム、W_AW_B はそれぞれ現時点でのA,Bの勝ち数、R_B はBの残り試合数(最後の+1はAの勝ち数\gneqqBの勝ち数を保障するために必要)。引き分けがある場合は前述した理由でより複雑な計算が必要になる。詳細は計算方法の項を参照のこと。

なお引き分けがなく、さらに今後マジック対象チームの入れ替わりもないとすれば、

  • マジックナンバー = 優勝確定までに必要な勝利数 + マジック対象チームとの直接対決数 + 1

となるため、優勝とマジックナンバーとの関係が明解である。

マジックナンバーの点灯[編集]

日本では「A以外のチームが自力優勝可能ではなくなった」という条件を満たした場合のみマジックナンバーを用い、Aがこの条件を満たした場合にAのマジックが点灯したという。またAのマジックが一旦点灯した後にA以外のチームの自力優勝の可能性が復活した場合には、Aのマジックが消滅したという。上述したことから分かるように、自力優勝の条件を満たしていなくても原理的にはマジックナンバーを定義できる。マジックが点灯していない状態でのマジックナンバーを隠れマジックということがあり[1]、マジック消滅後再点灯しそうな状況などで用いられる。

「マジック対象チームBが残り試合を全勝した場合」というマジックナンバー計算の仮定をする場合、マジック点灯チームAの残り試合のうちBとの直接対戦でAの負けを想定することになる。「それでもBとの対戦以外を勝てば、Aが優勝できる」ということを意味する「マジック点灯」には、一位二位が歴然として残り試合が多いケースで合理性がある。

順位決定方法によっては、マジックナンバーが2種類点灯することもある。セントラル・リーグでは2001年から2006年までの間、勝率1位球団が勝利数で勝率2位球団を下回った場合(2001年のみ勝率1位球団が勝利数1位でない場合)はプレーオフを行うという取り決めがあり、マジックも勝率1位決定マジックと優勝決定マジックの2つが存在していた。

点灯概念の限界[編集]

以下のケースではマジックナンバーの「点灯」は優勝に対する適切な指標にならない。

  • 自力優勝可能な2チームの直接対決しか残っていない場合:この場合、「自分以外のチームの自力優勝可能性がない」という条件が満たされず、いずれのチームにもマジックが点灯しない。なおこの状況でも隠れマジックは定義できるので、隠れマジックを指標として使える。
    過去の例として1994年セントラルリーグの10.8決戦が挙げられる。
  • 残り試合数がチームによって大きく偏っている場合:野球の試合は雨天中止があるため、残り試合数が偏る事も起こりうる。大半の試合を消化したチーム同士が互いに潰しあっている状況では、それらのチームは自力では優勝できなくなる。このためこうした状況ではあまり試合を消化していないチームに、そのチームの優勝可能性とは無関係にマジックが点灯することがある
    過去の例として1988年パシフィック・リーグがある。1位ながら試合消化が進み優勝の決まらない状態で130試合を終えた西武ライオンズを対象として、2位の近鉄バファローズに優勝マジックが灯ったが、10・19(対ロッテオリオンズダブルヘッダー)に1勝1引き分けし優勝を逃している。また2010年セントラル・リーグでも1位・中日ドラゴンズの試合消化が進んでいる影響で、9月26日には阪神タイガースに2位ながらも自力優勝マジックが点灯した(更に9月28日には3位に転落したが、マジックは変わっていない)ほか、リーグ優勝ではないものの2006年パ・リーグでのレギュラーシーズン1位マジックが灯る状況でありながら直接対決の結果によっては順位変動のためなかなか灯らないというケースもあった。

計算方法[編集]

チームA,Xに対し、

  • (Aが今後n 勝してリーグが終了した時のAの勝率)>(Xが残り全ての試合に勝ってリーグが終了した時のXの勝率)

を満たす最小のnM_{A,X}とすれば、Aのマジックナンバーは

  • \max_{X\neq A}M_{A,X}

により表されるので、以下M_{A,X}の計算方法を説明する。

リーグの総試合数をT 、チームXの現時点での勝ち数、負け数、勝ち越し数、引き分け数、残り試合数をそれぞれW_XL_XD_X (=W_X-L_X )E_XR_X (=T-(W_X+L_X+E_X) )とする。チームAが今後n 試合勝ってリーグが終了した場合のAの勝率r_A

r_A = \frac{W_A+n}{T-E_A}

である。チームBをマジック対象チームとするとき、チームBが全ての残り試合に勝った場合のBの勝率r_B

r_B = \frac{W_B+R_B}{T-E_B}

である。

Aの勝率がBの勝率を上回るにはr_A > r_B である必要がある。これに上式を代入して整理すると、

n > \frac{T-E_A}{T-E_B}\cdot (W_B+R_B)-W_A

M_{A,B}は上の式を満たす最小の整数nなので、チームAのBに対するマジックナンバーM_{AB}

M_{A,B}=\left\lfloor\frac{T-E_A}{T-E_B}\cdot (W_B+R_B)\right\rfloor-W_A+1

となる。ここで\lfloor \cdot \rfloor床関数

引き分け数が同じ、または引き分けが無い場合、すなわちE_A=E_B(=0) の場合、(T-E_A)/(T-E_B)=1 でしかもW_B+R_B は整数なので、M_{A,B}はは前述した式

M_{A,B}=W_B+R_B-W_A+1 …(1)式

に一致する。

他の計算方法[編集]

引き分けのある無しに関わらず、M_{A,B}は以下の方法でも求められることが簡単な計算で確かめられる。

M_{A,B}=\left\lfloor\frac{1}{2}\{(W_B-L_B+R_B)\frac{T-E_A}{T-E_B}-(W_A-L_A-R_A)\}\right\rfloor+1
=\left\lfloor\frac{1}{2}\{(D_B+R_B)(1-\frac{E_A-E_B}{T-E_B})-(D_A-R_A)\}\right\rfloor+1
=\left\lfloor\frac{D_B+R_B-D_A+R_A}{2}-\frac{D_B+R_B}{2} \cdot \frac{E_A-E_B}{T-E_B}\right\rfloor+1

また上述の(1)式を変形することにより導かれる。

M_{A,B}=\left \lfloor \frac{L_B(E_A-E_B)}{T-E_B} \right \rfloor +T-(W_A+E_A)-L_B+1=\left \lfloor \frac{L_B(E_A-E_B)}{T-E_B} \right \rfloor +L_A+R_A-L_B+1 …(2)式

の式を用いてもM_{A,B}を計算する事もできる。

マジックナンバーの増減[編集]

定義より、マジックナンバーが増加することはありえないが、リーグ戦が進むとマジックナンバーが減る事がある。マジック点灯チームA、およびマジック対象チームBの勝敗により、Aのマジックナンバーは以下の挙動を示す。

  • マジック点灯チームAが1勝すると、マジックナンバーは1つ減る。
  • マジック点灯チームAが1敗した場合、マジックナンバーは変化しない。
  • マジック点灯チームAの引き分けが1つ増えると、マジックナンバーは1+(N_M - N_{EA} ) だけ減る。
  • マジック対象チームBが1勝した場合、マジックナンバーは変化しない。
  • マジック対象チームBが1敗すると、マジックナンバーは1+(N_M - N_{LB} ) だけ減る。
  • マジック対象チームBの引き分けが1つ増えると、マジックナンバーは(N_M - N_{EB} ) だけ減る。

ここでN_MN_{EA}N_{LB}N_{EB} は、

N_M=\left\lfloor\frac{L_B(E_A-E_B)}{T-E_B}\right\rfloor  N_{EA}=\left\lfloor\frac{L_B(E_A-E_B+1)}{T-E_B}\right\rfloor
N_{LB}=\left\lfloor\frac{(L_B+1)(E_A-E_B)}{T-E_B}\right\rfloor  N_{EB}=\left\lfloor\frac{L_B(E_A-E_B-1)}{T-E_B-1}\right\rfloor

で表される整数とする。

以上をまとめると次のようになる。

マジックナンバー
M_{AB}の変化
Bの勝敗
試合なし 勝ち 負け 分け
Aの勝敗 試合なし 0 0 -1-N_M+N_{LB} N_{EB}-N_{M}
勝ち -1 -1 -2-N_M+N_{LB} -1+N_{EB}-N_{M}
負け 0 0 -1-N_M+N_{LB} N_{EB}-N_{M}
分け -1-N_M+N_{EA} -1-N_M+N_{EA} -2-2N_M+N_{EA}+N_{LB} -1-2N_M+N_{EA}+N_{EB}

ただし、マジック対象チームが交代する場合には上記のような挙動には必ずしも当てはまらない。

引き分けの場合は1つ減るかどうかは勝率により左右されるが、引き分け再試合制でない場合、点灯チームと対象チームの双方が引き分ければ通常は1つ減るが、引き分け数にばらつきがある場合に変則的な減り方をすることがまれにある。

2009年9月20日、セ・リーグの読売ジャイアンツ(以下、巨人)には、試合前に優勝マジック6が点灯していた。この日の試合は、巨人が勝ち、マジック対象チームの中日ドラゴンズ(以下、中日)は敗れたが、巨人の優勝マジックは1つしか減らず「5」となった。巨人は残り14試合で4勝10敗の場合、勝率が6割2分2厘2毛。一方、中日が残り12試合に全勝すると6割2分2厘3毛となり、巨人を上回る。このため、巨人が優勝するには、自力での5勝が必要な計算となる。当該シーズンは、巨人の引き分けが突出して多かった(巨人が9、中日が1)ためこうした影響が出た[2]

いったん消滅した後に再点灯した場合も、消滅した時の数字より小さくなる。それは各チームがそれぞれに個別にマジックナンバーがあり、はじめは直接対決などの考慮に入れないいわゆる隠れマジックとなっており、隠れマジックの状態でも試合に勝利したり対戦相手が敗れれば数字が減少するからである。なお、マジックナンバーが点灯したチームが変われば数字上は増えることはありうる。


マジック点灯のスピード記録[編集]

※パ・リーグの前後期優勝およびプレーオフ進出マジックは含まない

米国の「Magic Number」[編集]

米国の場合は、他チームの自力優勝の可能性を考慮しない。よって、「点灯」という概念がなく、消滅もしない。

2001年アメリカン・リーグ西地区のシアトル・マリナーズが独走した時、シーズン前半にして早くも地区優勝マジック97が点灯していたが、話題にしていたのは日本のメディアのみで、現地のメディアは取り上げなかった。なお、現地時間の2001年5月31日の試合を終えた時点で、アメリカン・リーグ西地区の成績は

  • 1位 マリナーズ   40勝12敗 勝率.769 残り試合110
  • 2位 アスレチックス 26勝26敗 勝率.500 残り試合110 14ゲーム差
  • 3位 エンゼルス   24勝28敗 勝率.462 残り試合110  2ゲーム差
  • 4位 レンジャーズ  19勝33敗 勝率.365 残り試合110  5ゲーム差

で、この時点でのマリナーズとアスレチックスとの残り直接対決数は13試合あった。アスレチックスが残り110試合に全勝すれば136勝26敗(勝率.840)になるが、マリナーズがアスレチックス戦を除いた97試合に全部勝つと137勝25敗(勝率.846)となるため、アスレチックスの自力優勝は消滅した。エンゼルス・レンジャーズも自力優勝は消滅していた。

またメジャーリーグでは引き分けがないため、マジックナンバーの計算に前述した簡単な式を用いる事ができる。

語源[編集]

ビンゴゲームで、日本でいう「リーチ」状態の時に、ビンゴ完成のために必要な番号をマジックナンバーと呼ぶのが語源とされている[3]。「この数字が出てちょうだい」と呪文(magic word)のようにお祈りする数字で、それが転用されて「実現を願う数字」を意味する語として使われるようになり、特にリーグ戦方式のスポーツでは「そのチームの優勝までに必要な最小勝利数」の意味に使われるようになった。野球では1947年には使われていたとされる。

日本では、ビンゴに独自に「リーチ」という言葉が定着しているため、語源までは伝わらなかった。そのため、いくつかの俗説が流布している。「点いたり消えたりするから」という説があるが、米国では他チームの自力優勝の可能性と関係なく数える。また「(カレンダーのように)マジックで数字を消していくから」という説もあるが、日本のマジックインキ、米国のマジックマーカー共に1950年代の発売であり、「マジックナンバー」の語が使われ始めた1940年代よりも後である。

特異例[編集]

2006年のパシフィック・リーグでは、9月22日に1位の北海道日本ハムファイターズ以外のチームに自力シーズン1位の可能性がなくなったにもかかわらず、日本ハムにマジックナンバー(レギュラーシーズン1位決定マジック)が付かないという異例のケースが起こった。[4]

9月22日時点でのパ・リーグの1位から3位までの順位を下に示す。

順位 チーム 成績 勝率 残り試合
1位 日本ハム 80勝52敗0分 .606 4(ソフトバンク2・ロッテ2)
2位 西武 78勝52敗2分 .600 4(ロッテ2・楽天2)
3位 ソフトバンク 75勝51敗5分 .595 5(日本ハム2・オリックス2・楽天1)

※4位以下(ロッテ・オリックス・楽天)はすでにBクラスが確定

一方、上位3チームが残り試合を全勝した場合の勝率は以下の通りである。

チーム 成績 勝率
日本ハム 84勝52敗0分け .618
西武 82勝52敗2分け .612
ソフトバンク 80勝51敗5分け .611

既に日本ハムとの直接対決を終えていた西武の自力シーズン1位は消滅していた。しかし、ソフトバンクは日本ハムとの直接対決を2試合残していた。ソフトバンクが残り試合に全勝した場合、日本ハムは最高でも2勝しかできない。この場合、日本ハムの最高勝率は.603(82勝54敗0分け)となり、ソフトバンクが日本ハムを上回ることになる。しかし、そのソフトバンクも直接対決がもうない西武の勝率を自力で上回ることはできないため、自力シーズン1位はやはり消滅していた。

以上をまとめると、「自力で1位になれるのは日本ハムだけだが、3位のソフトバンクは1位である日本ハムの勝率を自力で上回ることができる。しかし、ソフトバンクは2位である西武の勝率を自力で上回ることができない」という三竦みの状況となった。1位チームの勝率を自力で上回れるチームがあれば、そのチームが2位チームでなくとも、また自力優勝の可能性がなくともマジックは付かないので、日本ハムのマジックは点灯しなかった。

ちなみに22日は3チームの中で西武だけが試合があり、西武が負けたためこのような状況になった。21日の段階では西武が2位ながら日本ハムに対しても自力で勝率を上回ることができたので、西武に「逆マジック5」が点灯していた。「逆マジック」も数年に1度程度しか出ないものである。

実際の経過[編集]

  • 9月19日 2位の西武にマジック5が再点灯。
  • 9月22日 西武● で上記の状況。新聞各社「マジック消滅」と報じる[5]
  • 9月23日 日本ハム● 西武○ ソフトバンク● ※西武が首位に立ち、1位通過マジック3が「再点灯」。
  • 9月24日 3チームとも● ※西武の1位通過マジックは2。
  • 9月26日 西武● 日本ハム○ ソフトバンク● ※西武の1位通過マジックが消滅。日本ハムが首位に立ちマジック1が点灯。ソフトバンクの1位は消滅。
  • 9月27日 日本ハムが勝ったため、日本ハムのシーズン1位が決定。

派生用法・関連語[編集]

単に「目標まであといくつ」という意味で用いられることもある。自力優勝に関係なく「優勝まであとn勝」など、トーナメント戦でも決勝進出のことを「マジック1」など、「2000本安打までマジック9」などのような使われ方をする場合もある[6]。これらはすべて派生的な用法である。

逆マジック[編集]

マジックナンバー点灯チームが、必ずしもその時点での首位のチームとは限らない。これは、ある日付に残り試合数が異なっていると、残り試合の多い方が最終勝率・勝利数を高められる場合があるためである。マジックナンバー点灯チームよりマジックナンバー対象チームが上位にいる場合「逆マジック」ともいう。

なお「逆マジック」は、あと何敗すると最下位が決定するか、もしくは優勝やポストシーズン進出が消滅するかといった、敗北状態へのカウントダウンのために用いられる場合もある。特に前者の意味では「裏マジック」・「最下位マジック」という言葉もある。米国では後者の意味で「エリミネーション・ナンバー」が用いられ、ポストシーズン進出が消滅したチームには「E」で表される。

プレーオフマジック(クライマックスマジック)[編集]

2004年からパシフィック・リーグプレーオフを導入。また、2007年から両リーグでクライマックスシリーズ(以下「CS」という。)がスタートした。これに進出できるまでのマジックを、それぞれ「プレーオフ進出マジック」「クライマックスシリーズ進出マジック(略してCSマジック、あるいはCMと表記される)」。自力で今いる順位に入る可能性がなくなったチームが3チーム以上になった場合にそのチームに点灯する。なお、パリーグでは2004年からの3年間はプレーオフの結果でリーグ順位を決定していたため、従来指標によるマジックは「レギュラーシーズン1位決定マジック」としていた。

対象となるチームは4位以下(Bクラス)の全チームであることが多いが、残り試合数に差があれば、優勝マジックと同様にBクラスのチームに点灯する可能性もある。主な概要は優勝マジックと同じである。また、下位のチームの勝率が5割以下になることが確定した場合、マジックが3減ることもある。

例として、点灯チームが70勝70敗1分、対象チームが68勝70敗3分で残り試合がともに3試合の場合、対象チームは全勝すると71勝70敗3分、勝率.50354で、点灯チームがこれを上回るには3勝する必要があるため(3勝すると73勝70敗1分で勝率.5105だが、2勝1敗だと72勝71敗1分で勝率.50350となる)CM3となるが、点灯チームが勝利して対象チームが敗北した場合、残り2試合を点灯チームが全敗すると71勝72敗1分で勝率.49650、対象チームは全勝しても70勝71敗3分で.49645となり、点灯チームを上回れなくなる。このケースではCSマジックが一気に3減って0になったことを意味する。対象チームの負け越しが決まったときにこの状況が起こり得るが、優勝マジックでは、対象チームと勝率が並んだ場合に上位となることが確定した場合を除き、通常起こらない。

最速点灯記録は7月8日の阪神(2008年・M55)。CSへは、各リーグ6チーム中上位3チームが出場できるため、自チームが残り試合全敗で、他チームのうち、残り試合全勝でも自チームより勝率が上回れないチームが3チーム以上あれば、自チームのCS進出が決まる(CSマジックがゼロになる)。CSマジックの場合、マジック点灯チーム、マジック対象チームのいずれも複数のため、その計算はリーグ優勝マジックよりも複雑である。特にリーグ戦では、下位チームの試合消化が遅いと現在より下の順位に自力で入れないケースが生ずるため、計算がさらに煩雑になりやすい。例えば2位甲が71勝65敗6分、3位乙が68勝64敗5分、4位丙が63勝63敗5分の場合、甲は残り2試合に全勝すると73勝65敗6分(勝率.52899)となるが、乙が残り7試合を6勝1敗で、丙が残り13試合を11勝2敗で終えると、乙と丙が74勝65敗5分(勝率.53237)で並ぶため、甲は残り2試合がともに乙戦でない限り、2位でありながらより下の3位に自力で入れない。

プレーオフマジックの発生を、メディアが見落とすこともまれにある。メディアの多くは、共同通信社が配信する順位表に依存している。2009年9月19日付け以降、共同通信社の配信記事を転載している新聞で、プロ野球のセ・パ両リーグの順位表には、CS進出決定の☆マークのみの掲載となった。これは、配信元である共同通信社の「マジックナンバー計算プログラム」の一部に不具合が生じたためである。ただし、リーグ優勝へのマジックナンバーは掲載されているため、同プログラムの不具合はCSマジックのみだと思われる。なお、記事本文にはCSマジックの状況は記載されているほか、残る1枠(3位)に対しての進出マジックについても、優勝マジックの条件と大差ないため数値が記載されることもあった。

こうした経緯もあり、共同通信社では2010年シーズンはCS進出決定となるまでの勝利数の指標として「CSクリンチナンバー」を配信することとした[7]

詳細はクライマックスシリーズ#クリンチナンバーも併せて参照。

不具合の事例[編集]

共同通信社の「マジックナンバー計算プログラム」の不具合として、以下の事例が挙げられる。

2009年9月12日に、CMが1となった巨人のクライマックスシリーズ進出決定が報じられた。9月11日終了時、セ・リーグで、巨人は75勝39敗9分で勝率.658。CM「1」と報じられていた。巨人は残り21試合全敗した場合の最終勝率.556(75勝60敗9分)となる。6位の横浜(43勝78敗0分)は残り23試合に全勝しても最終勝率は.458、5位の広島(55勝63敗4分)も残り22試合に全勝しても最終勝率.550であり、この2チームはいずれも巨人を上回れない。一方、3位のヤクルトは56勝61敗1分で、残り26試合全勝すると最終勝率は.573、4位の阪神は56勝62敗4分で、残り22試合に全勝すると最終勝率は.557となり、いずれも巨人が残り試合全敗した場合の最終勝率を上回る。このため、共同通信社の配信記事は、巨人のCMを「1」としていた。

しかし、この時点で阪神は残り試合に全勝しないと巨人の勝率を上回ることはできない状態にあり、一方のヤクルトは2敗以内であれば巨人を上回る可能性はあったものの、ヤクルトと阪神の直接対決が6試合残っていたために両チームが揃って巨人を上回る可能性はなく、同時に巨人が4位以下になる可能性もなくなっていたため、CS進出が既に確定していたことが発覚した。

この事例では、阪神とヤクルトが「巨人を上回れる最低成績での敗戦数の合計」が「阪神・ヤクルトの直接対決の数(6)」未満となれば、いずれか一方はその他の試合を全勝しても巨人の成績を上回れなくなるため、その時点で巨人の3位以上は確定する。そのため、実際には9月11日の前日の9月10日の時点で、巨人のCS進出は決定していたことになる。

9月9日
  • 巨人 敗戦(73勝39敗9分 .652)残り23試合 全敗時73勝62敗9分 .541
  • ヤクルト 敗戦(55勝60敗1分 .478)残り28試合
  • 阪神 勝利(55勝61敗4分 .474)残り24試合
阪神は残り21勝3敗であれば.542となり巨人を上回る。ヤクルトも残り23勝5敗であれば.543で巨人を上回るため、この日の時点では確定していない。
9月10日
  • 巨人 勝利(74勝39敗9分 .655)残り22試合 全敗時74勝61敗9分 .548
  • ヤクルト 敗戦(55勝61敗1分 .474)残り27試合
  • 阪神 敗戦(55勝62敗4分 .470)残り23試合
阪神は残り22勝1敗で.550となるが、この場合のヤクルトの最高勝率は22勝5敗(阪神との直接対決で最低5敗を要するため)で.538となる。逆にヤクルトが24勝3敗とした場合は.552となるものの、阪神の最高勝率は20勝3敗時の.536となるため、両チームが同時に巨人を上回れる可能性が消滅した。

(9月11日時点での成績から、それ以前の試合結果を元に成績及び最低・最高勝率を算出)

脚注[編集]

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  1. ^ 「最短28日V」中日新聞 2010年9月24日記事。中日を隠れマジック4と報じた事例。
  2. ^ 2009年9月21日付け読売新聞
  3. ^ 現代用語の基礎知識1986年版(自由国民社)
  4. ^ ベースボール・レコード・ブック2007 ベースボールマガジン社
  5. ^ 朝日、毎日、日経の2006年9月23日朝刊
  6. ^ International Sports & Marketing (2009年8月3日). “松井稼が2ラン、2000本安打までM9”. 読売新聞. http://www.yomiuri.co.jp/sports/daily/20090804-FUTYTT00001.htm 2009年8月4日閲覧。 
  7. ^ 共同通信がCSクリンチ配信へ 統数研との共同研究 - 2010年7月29日付 47NEWS

関連項目[編集]