ネット右翼

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ネット右翼(ネットうよく、略称:ネトウヨ[1])とは、インターネット上で使用されるインターネットスラング

目次

[編集] 概要

ネット右翼はある一定の傾向をもった人々に対して使われる言葉だが、それらがどんな傾向を持つかについては言葉の使用者によって様々である。

デジタル大辞泉の解説のように、保守的、国粋主義的な意見を発表する人々をネット右翼としている[2]ものがあれば、ニューヨークタイムズのように、自分たちの生活状況への落胆を外国人排斥へと繋げている青年[3]をネット右翼と捉えているメディアもある。漫画家の小林よしのりもネット右翼を「年収200万円以下の下層」と表現しており、貧困との関連付けが見られる[4]。朝日新聞では、自分と相容れない意見にコメントを繰り返し書き込む人をネット右翼とし、彼らの意見が概ね右翼的であるためそう呼ばれているのだとしている[5]。その一方で、このようにネット右翼を右派、左派といった枠組みで捉える言説についての反論もある。社会学者の北田暁大は、2ちゃんねる上などで観測される「ウヨ厨」の振る舞いについて、本来は彼らの嫌うマスコミなどへのアイロニカルなコミュニケーションだったものがやがて右翼的な発言をコミュニティ内で連鎖させること自体が目的化した形式主義的なもの(つながりの社会性)へと転化しており、発言内容自体の政治的な右/左の枠組みではその本質を捉えられないとしている[6]。社会学者の鈴木謙介も北田の説を支持し、それらの振る舞いはネタを共有することが目的化しているのだと述べている[7]

右派・左派と別種の枠組みで捉えるものといえば、「ニート、引きこもり」との関連付けを指摘するものがある。近藤瑠漫は、「ネット右翼」はニート引きこもりなどの負け組あるいは負け組予備軍として、社会から蔑視されている人々であり、被差別者などを自分たちより更に劣った存在と判断し、そういった人々が見れば不快に感じるような事柄をインターネット掲示板などに投稿し、ネット上で類似した仲間と話し合う事で現実逃避しているものと主張している[8]

上記と異なるのが、劇作家鴻上尚史の見解である。鴻上はネット右翼を「古きよき日本(=社会ではなく世間)」を維持、あるいは復活させようとしている存在であると捉えている[9]。また、「ネット右翼の代表」を自称する瀬戸弘幸は、「ネット右翼をニートや引きこもりと関連付ける言説は、左翼やマスコミの決め付けであり、彼ら(ネット右翼)は全く普通の会社員や学生である」と主張している[10]

安田浩一は近年の保守思想の一潮流である行動する保守を「街頭に出たネット右翼」と捉えている[11]。また、行動する保守を標榜する「在日特権を許さない市民の会」を、ネット右翼がデモや集会に集まる団体と紹介している記事もある[12]

日本のネット上での右傾化については匿名掲示板「2ちゃんねる」を中心にいくつか論考が著されているが[13]辻大介大阪大学准教授の調査によれば「ネット利用者全般というよりも特に2ちゃんねる利用が排外的ナショナリズムと関連し(ており)、2ちゃんねるの利用はネット上の悪口や過激な書き込み、炎上に対して許容的な態度と有意に関連している」としている[14]。また辻は、ブログや電子掲示板等で積極的に情報発信をおこなうネット利用者における右傾的傾向をいわゆる「ネット右翼的」と操作的に定義した上で調査を行ったところ、ネット右翼的な層はネットの外でも署名・投書・募金や集会出席などの「リアル」な活動に積極的な傾向がみられた。このことから「“ネット右翼”はネット特有の現象というよりも“リアル”と地続きの現象であり、これまでは目につきにくかった“右翼”的な潜在層がネット上で可視化されたととらえるのが適当かもしれない」としている[14]

[編集] ネット右翼の影響力

堀江貴文は、自民党が徴兵制の検討を示唆したことに対して自身のブログにて「兵役の義務化など憲法9条を持つ国として普通にあり得ないことだと思うが、意外にネット上もネトウヨが幅を利かせていて上記の投票結果も賛成過半数ではないものの、意外に賛成派が多い」と、ネット右翼がネット上で一定の影響力を持っていることに言及している[15]。 その一方で、コラムニスト小田嶋隆は、インターネット上の特性としてネット右翼が多いのか、それとも少数のネット右翼の書き込みが多いのか結局のところ分からないと述べている[16]

また、インターネットの大衆化にともないネット上での言論の偏りが集団的に増幅される傾向についてはキャス・サンスティーン集団極性化サイバーカスケードの可能性として指摘している。

[編集] メディアでの論評

  • 2005年5月8日産経新聞の記事『【断】「ネット右翼」は新保守世論(佐々木俊尚)』において、確認可能な範囲では日本の新聞紙上で初めて「ネット右翼」という言葉が紹介された。
  • 2006年3月14日ジャパンタイムズに「Net uyoku」の表記で採り上げられた[17]
  • 2009年9月1日J-CASTニュースで、自民党が選挙で下野した際に、2ちゃんねるにおける自民党支持者が「ネット右翼」として捉えられた(2010年6月10日設立のJ-NSCの礎と考えられる)[18]。この記事では、「ネット右翼」とは知識人の伝統(いわゆる「進歩的文化人」)として左寄りの報道を繰り返す[19]マスコミに対して「本当のことを報じていない」とする反発から生まれたものであるとしている。
  • 2009年9月2日在日本大韓民国民団機関紙民団新聞』は、「参政権獲得運動を誹謗中傷する“ネット・ウヨク”と闘っている」という在日韓国人女性の発言を掲載している[20]
  • 2010年8月29日ニューヨーク・タイムズが“Net right”と表記して、在日特権を許さない市民の会などの行動を伝えている[21]。「日本社会の中・下層の青年たちは、自らの生活に対して失望・落胆した感情を、インターネットなどを通じて外国人への排斥につなげている」「彼らの矛先はアジア人の他、キリスト教徒にも向いている」とされる[3]
  • 2011年11月12日新・週刊フジテレビ批評』の特集「“ネトウヨ心理”とテレビ」において批評家の濱野智史は冷戦後、左派イデオロギーによって社会への不満が解消され得なくなり、その代わりに出てきたものであり、動きの早いネット社会においてネット右翼的現象は10年以上継続しているのは驚くべきこととし「反マスメディア、もしくはネトウヨ的な運動というのは、ある種の市民によるマスメディア監視と言えなくもない。ある意味、評価できる。ネトウヨ的なものがいるということは、日本のメディアをめぐる民主的な状況というのは、健全と言えなくもない。『右翼だから別に聞かなくていいでしょう』と無視するようなレッテル貼りはそろそろ限界」と指摘。またジャーナリストの津田大介は「ネットウヨク」と言われる人々は、右翼団体の延長の人から一般人まで、あらゆるタイプの人々であり、反日的な中韓に不満を持っている人、左翼的なエリート主義への反発など、色々な人が色々な要素を持ってネットで繋がり、ここ数年ではフジテレビ抗議デモのように、ネットに限らずリアルでも繋がり始めていると述べた[22][23]

[編集] 脚注

  1. ^ 中国の『ネトウヨ』(1)”. 日経BP (2011年8月1日). 2011年12月27日閲覧。
  2. ^ デジタル大辞泉「ネット右翼」 - コトバンク
  3. ^ a b 経済的に困窮した日本人が右翼化、ネットで外国人排斥-米紙サーチナ2010年8月31日
  4. ^ 小林よしのり「フジデモ」痛烈批判 「ネトウヨ」は年収200万円以下の下層でしょ?
  5. ^ 「萎縮の構図・4:炎上」、『朝日新聞』2006年5月5日
  6. ^ 北田 (2005)、206-216頁。
  7. ^ 鈴木 (2005)、141-143頁。
  8. ^ 近藤&谷崎 (2007)[要ページ番号]
  9. ^ 鴻上 (2009)、187-188頁。
  10. ^ ネット右翼について - せと弘幸Blog『日本よ何処へ』
  11. ^ 安田 (2010)[要ページ番号]
  12. ^ リアル右翼「愛国の作法」 - AERA-net.jp 2011年1月16日
  13. ^ 北田 (2003)[要ページ番号]近藤&谷崎 (2007)[要ページ番号]
  14. ^ a b 辻大介インターネットにおける「右傾化」現象に関する実証研究 調査結果概要報告書 (PDF)2008.9.10 P.19
  15. ^ そして右傾化は進む。 2010年3月9日エントリー
  16. ^ 日経ビジネスエッジ 小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」
  17. ^ Net boards venue for faceless rightists(ネット掲示板は顔無き右翼達の場)エリック・ジョンストン記者
  18. ^ 政権交代で「ネット右翼」危機? 2ちゃんねるでも潮流変化か J-CAST2009年9月1日
  19. ^ これは戦中の大本営発表に抗する事が出来なかった反省から来ている。逆コースを参照。
  20. ^ 「参政権」どうなる 本紙記者座談会 2009-09-02 民団新聞
  21. ^ マーティン・ファクラー New Dissent in Japan Is Loudly Anti-Foreign(日本の新たな異議は騒々しい排外)
  22. ^ 2011年11月12日放送 フジテレビ「新・週刊フジテレビ批評」『“ネトウヨ心理”とテレビ
  23. ^ 2011年11月12日 ニコニコニュース「"ネトウヨ"というレッテル貼りをするな」 フジテレビ番組が「ネトウヨ」特集(伊川佐保子)

[編集] 参考文献

[編集] 関連項目

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