ネット右翼

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ネット右翼(ネットうよく)はインターネット上で反左翼的、右翼的な発言をする人物、またはその風潮にたいして、主に、批判された側がその勢力を指す用語。一種の罵倒語、侮蔑語でもある。ネットウヨク、ネットウヨ、ネトウヨとも呼ばれる。そのため、後述のように、実体として狭義の右翼にとどまらず、反左翼、反独裁、民主化などの勢力を含んだ用語である。

目次

概要

ネット上の掲示板やブログにおいて反左翼的発言および各種メディアへの批判の拡大に対してその風潮および発言者をさして使われだした用語である。小泉政権発足後、急速に台頭し、注目されるようになった。これはブロードバンドの発達ともリンクしているとみられる。 ただ、確固たる組織を形成しているわけではなく、個々がネットで連帯をとりながら行動している。

自然発生的に生まれた言葉とされるが、特にネット上でよく批判されるマスコミが多用する事で知られる。使用する各人によりネット右翼の定義は様々であるが、ベルリンの壁崩壊以後の西欧において進む民主化の進展から取り残された東アジアの状況、特に北朝鮮の拉致問題核問題の深刻化や中国のチベット侵略の激化などにいらだつ民衆の、それに責任を負うと考えられる一部マスコミを中心とする左派への批判の強まりを背景にした動きであり、2000年代の日本における左派への批判の強まり、右傾化の象徴とみなす識者が多い。また、ネット右翼に対してネット左翼という言葉が新聞・テレビ等のメディア上で存在しないことも注目される。

具体例

  • 2005年にネットにおける議論を背景にマンガ嫌韓流が出版され現在(2009年4月)までに4巻で90万部以上が販売される。
  • 2005年、杉並区での教科書採択において一部が現場からレポートし、[誰?]その様子が取材された。[誰?]
  • 2005年の総選挙での自民党の歴史的勝利において、投票率が7%以上上がったことも含めその投票行動が注目された。当日の開票速報では専門家が2ちゃんねるの反応について触れた。
  • 2006年の小泉首相靖国参拝において、ネット上の発言のみならず実際に参拝に訪れた様子が報道された。[誰?]
  • ネットでの多用が近年メディアでも使われるようになった特定アジアという用語が定着するきっかけの一つになった。
  • 「左翼的」、「反日的」だと思われる人間に対して、当該人物が運営するブログに批判的なコメントが殺到し、炎上することがある。
  • 2008年の北京オリンピックの聖火リレーでは、中国のチベット侵略に抗議するオフ会が組まれた。
  • 2009年4月5日NHKで放送されたプロジェクトJAPANのひとつ、シリーズJAPANデビュー第1回「アジアの“一等国”」をめぐり、放送直後から「日本統治時代が悪と一方的に描かれている」「台湾人が反日的であると印象操作している」など日台双方から批判が続出し、NHKに対する抗議行動が組まれるなどした。

メディアの扱い

近年、メディアによるネット右翼の特集が目立って増えてきている。朝日新聞毎日新聞左派の立場からの論考に対し、産経新聞は右派の立場から、どちらかというと好意的である。毎日新聞はこの問題について、2ちゃんねる管理人の西村博之らを交えた座談会を断続的に行っている。TBSNEWS23で特集を放送した。

一方で、2008年のチベットに対する中国の侵略批判を巡っておこなわれた、聖火リレーに対する抗議行動や、2009年の台湾問題を巡って、中国大陸の共産党政権の立場に強く依拠したNHKのシリーズJAPANへの抗議行動などは、ほとんど報道されていない。

2006年の8月15日に小泉総理が靖国参拝をした際、テレビ、新聞の各メディアの大半が反対キャンペーンを行ったが、その後の世論調査で支持が過半数を超え、メディア各社は戸惑いを隠さなかった。NHKは当日の生番組で携帯電話でアンケートをとった結果、賛成が63%反対が37%となった。これについて、後日朝日新聞が携帯電話では若い世代の意見に偏ると批判した。これは、事実上ネット右翼に対する批判と考えられる。

2006年9月11日の朝日新聞のファッション欄に掲載されたワンポイントマーク復活の記事において、「メンズウエアの胸元に、ワンポイントマークが復活している。かつては中年男性のゴルフ用ポロシャツに、必ずついていた傘や熊などのマーク。それが今、おしゃれな装飾としてさまざまな形に進化している。」という書き出しから「そういえば、自らの国家や民族に固執する右翼系の若者が世界的に増えているという事実も、多少気になるところだが。」との結論に至った。これもネット右翼を日常的に意識している結果と見られている。

識者の見解

  • ジャーナリストの佐々木俊尚は「これまでマスコミで黙殺されてきた新保守論的な世論が、ネットという媒体を得て一気に表舞台へと噴出してきているというのが正体ではないか」としている(産経新聞2005年5月8日)。
  • 北田暁大東京大学准教授は「中韓そのものへの嫌悪というよりは、中韓に優しいように見えるマスコミの正論に反発することで、連帯感を共有しているように見える」としている(福島民報2005年10月20日)。
  • 鈴木謙介国際大学客員研究員)は「右翼というよりは『左翼嫌い』、より正確に言えば、『マスコミに流通する言葉が優等生的な言説ばかりであることにいらだっている』集団」としている(朝日新聞2006年5月19日)。
  • 漫画家の小林よしのりはもともとは批判的な立場であったが、2006年の小泉総理靖国参拝後、「わしのゴー宣は、描き始めてから発表に3週間かかる。あえて批判してきたネット保守に共闘をもちかけたい。今後、同調圧力をかけるマスコミがいたら、直ちに批判してくれ! わしの力の限界を超えてくれ!」とネット右翼に共闘を呼びかけた。これはさまざまな憶測を呼んでいる(SAPIO2006年9月27日号)。
  • 山口二郎北海道大学教授は「攻撃的引きこもりである小泉総理を見習って、蛸壺に閉じこもりつつ、気にくわない言説への攻撃に精を出している」と評している(生活経済政策2006年10月号)[1]
  • 加藤紘一自民党元幹事長は小泉総理が靖国参拝をした2006年8月15日実家を放火された。その後「マスメディアも、いわゆるインターネット右翼と呼ばれる人たちの動向などについてももっと報道して欲しい。従来の民族系右翼の人たちとは異なる側面を感じる。彼らとも活発に真剣な議論をかわしていきたい」と発言した[2]
  • 辻大介大阪大学大学院准教授は2008年に「インターネットにおける「右傾化」現象に関する実証研究」とする論文を発表した[3]。この論文において、ネット右翼の最新の研究結果が報告された。この研究には北田暁大と鈴木謙介も参加した。また、この論文は朝日新聞出版発行の専門誌Journalism2009年3月号にも掲載された[4]

新聞紙上における『ネット右翼』の用例

  • 『<プラネタリウム>インターネットと選挙』(北海道新聞、2003.03.13)
  • 『【断】「ネット右翼」は新保守世論(佐々木俊尚)』(産経新聞、2005.05.08)…新聞紙上で初めて「ネット右翼」が使用された記事とみられる。
  • 『再考・来た道行く道<4>自由 言論に「覚悟」はあるか-連載』(西日本新聞、2005.12.25)
  • 『特集ワールド・ちょっと待った!:怒りはどこへ…?』(毎日新聞、2006.05.01)
  • 『(「みる・きく・はなす」はいま)萎縮の構図:6 炎上 他人のブログ、はけ口に』(朝日新聞、2006.05.05)
  • 『【ネットウオッチング】「ネット右翼」って?』(産経新聞、2006.05.25)
  • 『【ネットウオッチング】「炎上」という現象』(産経新聞、2006.06.08)
  • 『にっぽんに思う:/1 23歳男性・会社員 きっかけは漫画「戦争論」』(毎日新聞、2006.07.31)…「戦争論」がネット右翼に影響を与えた。
  • 『あの人に迫る 鈴木邦男 新右翼団体顧問 宝にも凶器にも愛国心は化ける』(東京新聞、2006.09.29)…新保守派の学者はネット右翼の共犯。
  • 『中島岳志的アジア対談:右傾化する「自分探し」--雨宮処凛さん』(毎日新聞、2006.10.23)…フリーターでネット右翼の子からその様な気持ちを取り上げることの危険性を語る。
  • 『論壇リポート=安倍政権 御厨貴氏・強い総理へ解散提言 蒲島郁夫氏・安保で都市部が離反』(熊本日々新聞、2006.11.18)…「論座」の特集「言論テロと右翼」の対談を引いて、ネット右翼の特徴を指摘。
  • 『余録:ゲーム漬けで大脳の機能が低下するという…』(毎日新聞、2007.01.08)…ゲーム脳とネット右翼を絡めた小文。
  • 『地に在りて・番外編=強まる思想統制、言論の監視 「命の格付け」許さぬために(斎藤貴男)』(信濃毎日新聞、2007.01.18)…ネット右翼を格差社会で阻害された人々とし、より弱い立場の人や集団を見下すことで自我のバランスを取りたがるとしている。
  • 『週刊ノンフィクション劇場 ニッポンの「右翼」大研究(3)米国とネット右翼』(週刊朝日、2007.02.09)
  • 『【ネットウオッチング】ネットイナゴ』(産経新聞、2007.02.22)
  • 『(歴史と向き合う 第6部 愛国心再考:4)「公」とつながりたい「私」』(朝日新聞、2007.02.28)…ネット右翼と「愛国心」を絡めた朝日的論調。
  • 『世相解剖 あまから談義 「おれちん」から見る日本(上)若者の全能感が招く 依存と破壊』(京都新聞、2007.03.29)
  • 『世相解剖 あまから談義 「おれちん」から見る日本(下)「他者」とのかかわり どう築くか』(京都新聞、2007.03.30)…対談。ネット右翼は罵詈雑言を吐いても行動を伴わないと指摘している。

脚注

  1. ^ JiroYamaguchi Official Web Site
  2. ^ JanJan 脅かされる言論の自由
  3. ^ 「インターネットにおける「右傾化」現象に関する実証研究」調査結果概要報告書(財団法人日本証券奨学財団平成18年度(第33回)研究調査助成金による)
  4. ^ Journalism 2009.3 no.226「[研究室からのメディア・リポート]調査データから探る「ネット右翼」の実態」辻大介(大阪大学大学院人間科学研究科准教授)

関連項目

関連書籍

  • 「別冊宝島 ネット右翼ってどんなヤツ?」(別冊宝島)
  • 近藤瑠漫、谷崎晃、桜井春彦「ネット右翼とサブカル民主主義」(三一書房)

外部リンク