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|英名=Wasabi, Japanese horseradish
|英名=Wasabi, Japanese horseradish
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{{栄養価 | name=わさび 根茎 生<ref name=mext7>[[文部科学省]] 「[http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm 日本食品標準成分表2015年版(七訂)]」</ref>| kJ =368| water=74.2 g| protein=5.6 g| fat=0.2 g| carbs=18.4 g| opt1n=[[食物繊維|水溶性食物繊維]]| opt1v=0.8 g| opt2n=[[食物繊維|不溶性食物繊維]]| opt2v=3.6 g| fiber=4.4 g| sodium_mg=24| potassium_mg=500| calcium_mg=100| magnesium_mg=46| phosphorus_mg=79| iron_mg=0.8| zinc_mg=0.7| copper_mg=0.03| Manganese_mg=0.14| selenium_ug =9| betacarotene_ug=7| vitA_ug =1| vitE_mg =1.4| vitK_ug=49| thiamin_mg=0.06| riboflavin_mg=0.15| niacin_mg=0.6| vitB6_mg=0.32| folate_ug=50| pantothenic_mg=0.20| opt3n=[[ビオチン|ビオチン(B<sub>7</sub>)]] | opt3v=3.5 µg| vitC_mg=75| opt4n=[[硝酸イオン]]| opt4v=0.1 g| note =ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した<ref>[[厚生労働省]] 「[http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf 日本人の食事摂取基準(2015年版)]」</ref>。廃棄部位: 側根基部及び葉柄| right=1 }}
{{栄養価 | name=わさび 根茎 生<ref name=mext7>[[文部科学省]] 「[http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm 日本食品標準成分表2015年版(七訂)]」</ref>| kJ =368| water=74.2 g| protein=5.6 g| fat=0.2 g| carbs=18.4 g| opt1n=[[食物繊維|水溶性食物繊維]]| opt1v=0.8 g| opt2n=[[食物繊維|不溶性食物繊維]]| opt2v=3.6 g| fiber=4.4 g| sodium_mg=24| potassium_mg=500| calcium_mg=100| magnesium_mg=46| phosphorus_mg=79| iron_mg=0.8| zinc_mg=0.7| copper_mg=0.03| Manganese_mg=0.14| selenium_ug =9| betacarotene_ug=7| vitA_ug =1| vitE_mg =1.4| vitK_ug=49| thiamin_mg=0.06| riboflavin_mg=0.15| niacin_mg=0.6| vitB6_mg=0.32| folate_ug=50| pantothenic_mg=0.20| opt3n=[[ビオチン|ビオチン(B<sub>7</sub>)]] | opt3v=3.5 µg| vitC_mg=75| opt4n=[[硝酸イオン]]| opt4v=0.1 g| note =ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した<ref>[[厚生労働省]] 「[http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf 日本人の食事摂取基準(2015年版)]」</ref>。廃棄部位: 側根基部及び葉柄| right=1 }}
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|1=Izu city, Ikadaba, Wasabi fields 20111002 C.jpg
|1=Izu city, Ikadaba, Wasabi fields 20111002 C.jpg
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'''ワサビ'''(山葵)は、[[アブラナ科]][[ワサビ属]]の植物。[[日本]]原産{{要出典|date=2017年7月12日 (水) 02:19 (UTC)}}。食用。
'''ワサビ'''(山葵)は、[[アブラナ科]][[ワサビ属]]の植物。[[日本]]原産{{要出典|date=2017年7月12日 (水) 02:19 (UTC)}}。食用。


強い刺激性のある[[香味]]を持ち、日本独特の[[香辛料]]として、以前から欧米や東南アジアで認知度の高まりを見せているが、東欧では自産の[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ]]が伝統的に出回っている{{要出典|date=2014年9月}}。また日本においても、家庭用練りワサビにはセイヨウワサビを本種と混ぜ合わせたものが多い。毒ではない。
強い刺激性のある[[香味]]を持ち、日本独特の[[香辛料]]として、以前から欧米や東南アジアで認知度の高まりを見せている。また日本においても、家庭用練りワサビにはセイヨウワサビを本種と混ぜ合わせたものが多い。


== 名称 ==
== 名称 ==
本種の学名は''Wasabia japonica'' ([[フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェル|Miq.]]) [[松村任三|Matsum.]]''とされることが多いが''、現在では''Wasabia''属は独立した属とはみなされていないので、''Eutrema japonicum'' ([[フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェル|Miq.]]) [[小泉源一|Koidz.]]が正しい学名である。<ref>岐阜大学植物遺伝育種学研究室HP
本種の学名は''Wasabia japonica'' ([[フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェル|Miq.]]) [[松村任三|Matsum.]]''とされることが多いが''、現在では''Wasabia''属は独立した属とはみなされていないので、''Eutrema japonicum'' ([[フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェル|Miq.]]) [[小泉源一|Koidz.]]が正しい学名である。<ref>[http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/wasabiKitamichi2.html 植物遺伝育種学 ワサビ属植物系統保存] 岐阜大学植物遺伝育種学研究室HP</ref>[[918年]]の『[[本草和名]]』で、「山葵」の和名を'''和佐比'''と記している。同じく[[平安時代]]の『[[和名類聚抄]]』にも和佐比と記されている。

http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/wasabiKitamichi2.html
</ref><ref>Plant List "''Eutrema'' ''japonicum'' (Miq.) Koidz."

http://www.theplantlist.org/tpl1.1/record/kew-2805492
</ref>

[[918年]]の『[[本草和名]]』で、「山葵」の和名を'''和佐比'''と記している。同じく[[平安時代]]の『[[和名類聚抄]]』にも和佐比と記されている。


ワサビの名が付く近縁な植物、特に[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ]]と区別するため'''本わさび'''と呼ぶことがある。
ワサビの名が付く近縁な植物、特に[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ]]と区別するため'''本わさび'''と呼ぶことがある。
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* 1958年頃までの日本で栽培されていた品種は、中伊豆町の農家が発見して育成した品種「だるま」が多かったが、1958年[[狩野川台風]]により中伊豆町のわさび田が壊滅し、この台風被害からの復興の際に育種苗が不足したことや高品質な味と形を求められたことなどから、[[和歌山県]]産真妻(マズマ)種に置き換わっていった<ref>{{PDFlink|[http://jags.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2-1-2.pdf 伊豆天城地方におけるワサビ栽培の地域的展開]}} 地理空間 2009 Vol.2-1</ref>。また、栽培が盛んな県の農業試験場では、地域毎の栽培特性に合わせた独自品種を開発して県内農家向けに種苗供給をおこなっている<ref name="yamaguchi">[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010672359 ワサビ新品種「徳育1号」の育成経過と品種特性] 山口県農業試験場研究報告(53), 73-74, 2002-03</ref><ref name="ja_nagano">[http://www.iijan.or.jp/oishii/products/etc/post-2301.php 信州花めぐり♪安曇野でわさびの花を味わう] JA長野</ref><ref>[http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-720/tokusan/wasabi.html 地域の特産物(わさび)天城山麓] 静岡県 東部農林事務所</ref>。
* 1958年頃までの日本で栽培されていた品種は、中伊豆町の農家が発見して育成した品種「だるま」が多かったが、1958年[[狩野川台風]]により中伊豆町のわさび田が壊滅し、この台風被害からの復興の際に育種苗が不足したことや高品質な味と形を求められたことなどから、[[和歌山県]]産真妻(マズマ)種に置き換わっていった<ref>{{PDFlink|[http://jags.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2-1-2.pdf 伊豆天城地方におけるワサビ栽培の地域的展開]}} 地理空間 2009 Vol.2-1</ref>。また、栽培が盛んな県の農業試験場では、地域毎の栽培特性に合わせた独自品種を開発して県内農家向けに種苗供給をおこなっている<ref name="yamaguchi">[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010672359 ワサビ新品種「徳育1号」の育成経過と品種特性] 山口県農業試験場研究報告(53), 73-74, 2002-03</ref><ref name="ja_nagano">[http://www.iijan.or.jp/oishii/products/etc/post-2301.php 信州花めぐり♪安曇野でわさびの花を味わう] JA長野</ref><ref>[http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-720/tokusan/wasabi.html 地域の特産物(わさび)天城山麓] 静岡県 東部農林事務所</ref>。
* [[2002年]]から[[2004年]]にかけて日本で「火災時における臭い警報システムに関する研究」が行われ、この研究をもとにワサビの臭いを用いた[[聴覚障害者]]向け[[住宅用火災警報器|火災報知器]]が商品化された<ref>{{Cite web|url=http://nrifd.fdma.go.jp/news/20111124/index.html |title=株式会社シームスの2011年イグノーベル賞受賞について |publisher=[[消防庁]][[消防大学校]] 消防研究センター |author= |date=2011-11-24 |language=日本語 |accessdate=2015-07-03 }}</ref>。この商品開発に関わる研究は、[[2011年]]に[[イグノーベル賞]](化学賞)を受賞した。
* [[2002年]]から[[2004年]]にかけて日本で「火災時における臭い警報システムに関する研究」が行われ、この研究をもとにワサビの臭いを用いた[[聴覚障害者]]向け[[住宅用火災警報器|火災報知器]]が商品化された<ref>{{Cite web|url=http://nrifd.fdma.go.jp/news/20111124/index.html |title=株式会社シームスの2011年イグノーベル賞受賞について |publisher=[[消防庁]][[消防大学校]] 消防研究センター |author= |date=2011-11-24 |language=日本語 |accessdate=2015-07-03 }}</ref>。この商品開発に関わる研究は、[[2011年]]に[[イグノーベル賞]](化学賞)を受賞した。
* 2012年には、[[イギリス]]の[[クレソン]]を栽培している会社が南部の[[ドーセット州]]で3年前から日本の本ワサビの栽培に取り組んだ末、欧州の料理店向けに販売を開始した。これは、欧州で初めての商業ベースのワサビ栽培の事例となった。価格は100グラム30ポンド(2012年時点で約4200円)であった<ref>[http://sankei.jp.msn.com/world/news/121228/erp12122816570003-n1.htm 出典 : MSN 産経ニュース『英で日本のワサビ栽培・販売、欧州初 仏料理にも採用』2012.12.28 16:55版]</ref>。
* 2012年には、[[イギリス]]の[[クレソン]]を栽培している会社が南部の[[ドーセット州]]で3年前から日本の本ワサビの栽培に取り組んだ末、欧州の料理店向けに販売を開始した。これは、欧州で初めての商業ベースのワサビ栽培の事例となった。価格は100グラム30ポンド(2012年時点で約4200円)であった<ref>[http://sankei.jp.msn.com/world/news/121228/erp12122816570003-n1.htm 出典 : MSN 産経ニュース『英で日本のワサビ栽培・販売、欧州初 仏料理にも採用』2012.12.28 16:55版]</ref>。


== 産地 ==
== 産地 ==
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水ワサビはワサビ田で栽培し、その根茎(根と茎の間の芋の部分)は生食用として利用される。このワサビ田は溪流式、地沢式、平地式、畳石式の4つの様式に分かれる<ref name="ehime">{{PDFlink|[http://www.pref.ehime.jp/060nourinsuisan/080ringyou/00001461021016/5_guide/wasabi1.pdf ワサビの栽培]}} - 愛媛県、2012年11月2日</ref>。
水ワサビはワサビ田で栽培し、その根茎(根と茎の間の芋の部分)は生食用として利用される。このワサビ田は溪流式、地沢式、平地式、畳石式の4つの様式に分かれる<ref name="ehime">{{PDFlink|[http://www.pref.ehime.jp/060nourinsuisan/080ringyou/00001461021016/5_guide/wasabi1.pdf ワサビの栽培]}} - 愛媛県、2012年11月2日</ref>。


水ワサビの生育には、豊富で綺麗な水温9 - 16℃ <ref>[http://www.tnet.metro.tokyo.jp/~T087/zen/jinndai/wasabi/wasabi.htm 東京都立農業高校 神代農場 ワサビ栽培]</ref>の水と、砂地などの透水性が良い土壌が必要で、強い日光を嫌う。粘土質土壌や腐葉土質を嫌うため肥料等は必要なく育成の手間も殆ど要らないが、大量のきれいな水のある場所に生育が限定されるため、栽培の難しい[[農作物]]としても知られる。なお、経験的に、20℃ 3時間以上で根の腐敗が始まるとされる<ref>築地録太郎、鈴木正、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs1953/38/10/38_10_415/_article/-char/ja/ ワサビ栽培の基礎調査 (1)温度調査について] 日本林学会誌 Vol.38 (1956) No.10 P415-418, {{doi|10.11519/jjfs1953.38.10_415}}</ref>。一方、山間の沢や水路を利用して小規模に栽培されることもある。
{{要出典範囲|date=2016年4月|
水ワサビの根茎は大きいが、畑ワサビや自生種のワサビのそれは極端に小さい。これはワサビが根から放出する[[アリルイソチオシアネート]]の影響による。この物質は周辺の土壌を殺菌し、根に菌を住まわせる必要がある一般的な植物が生えないようにしているが、ワサビ自身もこの物質によって大きくなれない(自家中毒)。対して水ワサビは、流水と透水性の良い土壌によってアリルイソチオシアネートが洗い流されるので、大きくなることが出来る。

一般にワサビといえば、水の中で栽培される水ワサビを連想されることが多い。また、水ワサビの方が根茎が大きくなることから、水生植物と思われがちであるが、本来は畑(土)で育つものであり、「水生でも育つ」というのが正しい理解である。事実、静岡や島根県の農家は、苗をわさび田に定植する際に水没による成長阻害を避けるため、新芽が水没しない様な管理をする。
}}

水ワサビの生育には、豊富で綺麗な水温9 - 16℃ <ref>[http://www.tnet.metro.tokyo.jp/~T087/zen/jinndai/wasabi/wasabi.htm 東京都立農業高校 神代農場 ワサビ栽培]</ref>の水と、砂地などの透水性が良い土壌が必要で、強い日光を嫌う。粘土質土壌や腐葉土質を嫌うため肥料等は必要なく育成の手間も殆ど要らないが、大量のきれいな水のある場所に生育が限定されるため、栽培の難しい[[農作物]]としても知られる。なお、経験的に、20℃ 3時間以上で根の腐敗が始まるとされる<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs1953/38/10/38_10_415/_article/-char/ja/ ワサビ栽培の基礎調査 (1)温度調査について] 日本林学会誌 Vol.38 (1956) No.10 P415-418</ref>。一方、山間の沢や水路を利用して小規模に栽培されることもある。


種類は赤茎種と緑茎種の2種類がある。静岡県で盛んに栽培される真妻種、島根県の在来種は赤茎系とされる。[[キャベツ]]と同じ[[アブラナ科]]の植物であるため、時として[[スジグロチョウ]]<ref>[http://dx.doi.org/10.1303/jjaez.7.348 ワサビの害虫スジグロチョウの幼虫,蛹の天敵について] 日本応用動物昆虫学会誌 Vol.7 (1963) No.4 P348-349</ref>や[[モンシロチョウ]]<ref>[http://dx.doi.org/10.4165/kapps.52.135 ワサビにおける総合的病害虫管理 4. 静岡県におけるスジグロシロチョウの寄生性天敵相] 関西病虫害研究会報 Vol.52 (2010) P135-137</ref>の[[幼虫]]([[青虫]])に葉を食害される。また、{{要出典範囲|date=2016年4月|根茎部分は[[ヨコエビ]]による食害が報告されている。この食害は表面を黒く変色させ、商品価値を大きく損ねため、かつては農薬を使用して対策をしてきた。しかしワサビ田下流域汚染を引き起こし、生の多様性を損ねることから、現在は使用を規制されている。}}
種類は赤茎種と緑茎種の2種類がある。静岡県で盛んに栽培される真妻種、島根県の在来種は赤茎系とされる。[[キャベツ]]と同じ[[アブラナ科]]の植物であるため、時として[[スジグロチョウ]]<ref>中田正彦、[http://doi.org/10.1303/jjaez.7.348 ワサビの害虫スジグロチョウの幼虫,蛹の天敵について] 日本応用動物昆虫学会誌 Vol.7 (1963) No.4 P348-349</ref>や[[モンシロチョウ]]<ref>西東力、杉山泰昭、芳賀一 ほか、[http://doi.org/10.4165/kapps.52.135 ワサビにおける総合的病害虫管理 4. 静岡県におけるスジグロシロチョウの寄生性天敵相] 関西病虫害研究会報 Vol.52 (2010) P135-137</ref>の[[幼虫]]([[青虫]])に葉を食害される。また、根茎部分は[[ヨコエビ]]による食害が報告されている<ref>西島卓也{{PDFlink|[http://www.tokusanshubyo.or.jp/tokusan20_19.pdf ワサビ栽培におけ病害虫対策]}} 静岡県農林技術研究所伊豆農業研究センターわさび科</ref><ref>{{PDFlink|[http://www.pref.shimane.lg.jp/nogyogijutsu/index.data/wasabimanyuaru.pdf ワサビの総合的作管理 (ICM)マニュアル]}} 島根県</ref>。


=== 畑ワサビ ===
=== 畑ワサビ ===
畑ワサビは直接水を利用しないで、保育から収穫までを畑で行うもので、水ワサビに比べ品質は落ちるが温度と湿度管理が整えばどこでも栽培することが可能である<ref name="ehime" />。しかし、株分けによる栽培を続けると数年で「退化現象」と呼ばれるウイルス感染に伴う成長障害や不稔、病気<ref>[[doi:10.11337/ktpps1999.2008.39|東京都奥多摩地域のワサビ栽培における病害の発生状況]] 関東東山病害虫研究会報 Vol.2008 (2008) No.55 P39-44</ref><ref>[[doi:10.4165/kapps.52.87|ワサビにおける総合的病害虫管理 8 ワサビ白さび病菌のアブラナ科植物に対する病原性]] 関西病虫害研究会報 Vol.52 (2010) P87-88</ref>が生じ衰退する。この退化現象を回避するため[[茎頂培養]](成長点培養)による[[ウイルスフリー]]苗(メリクロン苗)が生産技術が1990年代には確立され栽培農家に供給されている<ref>{{PDFlink|[http://www.pref.shimane.lg.jp/nogyogijutsu/seika/kenkyuu-houkoku/title.data/26-5.pdf 山田員人、春木和久、:ワサビの茎頂培養による大量増殖法]}} 島根県農業試験場研究報告, 1992</ref>。栽培では、日射を避けるため日よけを施した広葉樹林<ref>[http://www.pref.nara.jp/20342.htm 畑ワサビ栽培の実証(森林環境教育)] 奈良県 農林部</ref>や針葉樹林の湿り気の多い場所が多く利用される。ハウス栽培も行われる<ref>[http://www.yc.zennoh.or.jp/voice/94/ 畑わさび(ハウス)] JA全農やまぐち</ref>。2000年代になり人工光源を使用した栽培実験も行われている<ref>田中逸夫、舟橋芳仁、嶋津光鑑 [http://dx.doi.org/10.11450/seitaikogaku.20.119 【原著論文】ワサビの人工光栽培に関する研究] Eco-Engineering Vol.20 (2008) No.3 P119-124</ref>。
畑ワサビは直接水を利用しないで、保育から収穫までを畑で行うもので、水ワサビに比べ品質は落ちるが温度と湿度管理が整えばどこでも栽培することが可能である<ref name="ehime" />。しかし、株分けによる栽培を続けると数年で「退化現象」と呼ばれるウイルス感染に伴う成長障害や不稔、病気<ref>竹内純、竹内浩二、鍵和田聡 ほか、[[doi:10.11337/ktpps1999.2008.39|東京都奥多摩地域のワサビ栽培における病害の発生状況]] 関東東山病害虫研究会報 Vol.2008 (2008) No.55 P39-44</ref><ref>外側正之、芳賀一、杉山泰昭 ほか、[[doi:10.4165/kapps.52.87|ワサビにおける総合的病害虫管理 8 ワサビ白さび病菌のアブラナ科植物に対する病原性]] 関西病虫害研究会報 Vol.52 (2010) P87-88</ref>が生じ衰退する。この退化現象を回避するため[[茎頂培養]](成長点培養)による[[ウイルスフリー]]苗(メリクロン苗)が生産技術が1990年代には確立され栽培農家に供給されている<ref>{{PDFlink|[http://www.pref.shimane.lg.jp/nogyogijutsu/seika/kenkyuu-houkoku/title.data/26-5.pdf 山田員人、春木和久、:ワサビの茎頂培養による大量増殖法]}} 島根県農業試験場研究報告, 1992</ref>。栽培では、日射を避けるため日よけを施した広葉樹林<ref>[http://www.pref.nara.jp/20342.htm 畑ワサビ栽培の実証(森林環境教育)] 奈良県 農林部</ref>や針葉樹林の湿り気の多い場所が多く利用される。ハウス栽培も行われる<ref>[http://www.yc.zennoh.or.jp/voice/94/ 畑わさび(ハウス)] JA全農やまぐち</ref>。2000年代になり人工光源を使用した栽培実験も行われている<ref>田中逸夫、舟橋芳仁、嶋津光鑑 [http://doi.org/10.11450/seitaikogaku.20.119 【原著論文】ワサビの人工光栽培に関する研究] Eco-Engineering Vol.20 (2008) No.3 P119-124</ref>。


=== 主要品種と特徴 ===
=== 主要品種と特徴 ===
[[File:Azumino Wasabi fields-2.jpg|thumb|安曇野 売店に並ぶワサビ(2008年8月18日撮影)]]
[[File:Azumino Wasabi fields-2.jpg|thumb|安曇野 売店に並ぶワサビ(2008年8月18日撮影)]]
山葵の上品な味と香り、辛み、苦味、甘みについて、国内の交通が急激に変化した[[明治時代|明治]]から[[大正時代]]にかけて研究されており、日本国内の主要産地ごとに微妙な違いが認められる。
山葵の上品な味と香り、辛み、苦味、甘みについて、国内の交通が急激に変化した[[明治時代|明治]]から[[大正時代]]にかけて研究されており、日本国内の主要産地ごとに微妙な違いが認められる。
多くの栽培品種があるが、「真妻」、「だるま」、「島根3号」が3大品種と云われ、その他の品種はこれらが育種母体として利用されていることが、DNA鑑定の結果判明した<ref name="DNA">[http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/wasabiRes_DNA.html ワサビ属植物系統保存] 岐阜大学 植物遺伝育種学、2010年</ref>。これらと野生在来種を交配選抜し「栽培効率」「耐病性」「食味」「保存性」などを向上させた改良品種が数多く存在している。
多くの栽培品種があるが、「真妻」、「だるま」、「島根3号」が3大品種と云われ、その他の品種はこれらが育種母体として利用されていることが、DNA鑑定の結果判明した<ref name="DNA">[http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/wasabiRes_DNA.html ワサビ属植物系統保存] 岐阜大学 植物遺伝育種学、2010年</ref>。これらと野生在来種を交配選抜し「栽培効率」「耐病性」「食味」「保存性」などを向上させた改良品種が数多く存在している。
* 真妻(まずま)- 旧真妻村(現和歌山県印南町川又)が発祥の品種。品質が優れていたため静岡を中心に栽培が広がった。現在印南町の農家が発祥の地復活を目指し、一度は途絶えた生産出荷に向け取り組んでいる<ref>[http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/nagomi/web/nagomi23/specialfeature04/index.html 真妻わさび] [特集] 発祥の地、和歌山、Vol.23、2014年</ref>。
* 真妻(まずま)- 旧真妻村(現和歌山県印南町川又)が発祥の品種。品質が優れていたため静岡を中心に栽培が広がった。現在印南町の農家が発祥の地復活を目指し、一度は途絶えた生産出荷に向け取り組んでいる<ref>[http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/nagomi/web/nagomi23/specialfeature04/index.html 真妻わさび] [特集] 発祥の地、和歌山、Vol.23、2014年</ref>。
** 正緑(まさみどり)- 親品種は眞妻。耐病性と大型化を改良。
** 正緑(まさみどり)- 親品種は眞妻。耐病性と大型化を改良。
* 達磨(だるま)- 大正時代末期から昭和初期にかけて静岡において導入された半原種(神奈川県原産)の中から突然変異株として優れた系統を発見、選抜された。1965年頃から急速に退化現象が現れ、原種に近いものはほとんどなくなり、静岡では代わりに前述の「真妻種」が主力品種となった<ref>[http://kitamura-wasabi.com/work/work01.html 「ダルマ種」について]北村わさび、2010年</ref>。
* 達磨(だるま)- 大正時代末期から昭和初期にかけて静岡において導入された半原種(神奈川県原産)の中から突然変異株として優れた系統を発見、選抜された。1965年頃から急速に退化現象が現れ、原種に近いものはほとんどなくなり、静岡では代わりに前述の「真妻種」が主力品種となった<ref>[http://kitamura-wasabi.com/work/work01.html 「ダルマ種」について]北村わさび、2010年</ref>。
** ふじだるま<ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/40017854084/ ワサビ新品種'ふじだるま'について] 静岡県農業試験場研究報告 (19), 64-69, 1974-10</ref>
** ふじだるま<ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/40017854084/ ワサビ新品種'ふじだるま'について] 静岡県農業試験場研究報告 (19), 64-69, 1974-10, {{naid|40017854084}}</ref>
* 島根3号(しまねさんごう)- 島根県農事試験場の野津六兵衛が、1925年以降全国各地から集めたワサビと、島根在来種との自然交配による実生を育て、更に横木国臣の協力を得て1936年に選抜、1942年に公表した<ref>[http://ir.lib.shimane-u.ac.jp/bull/bull.pl?id=1541 ワサビ 島根3号]吉田正温、ワサビ属の細胞学的研究皿、島根大学農学部研究報告8</ref>。一時日本を席巻し、京都の高級料亭ではよく使用された品種とされる<ref>[http://www.kosuke-ogawa.com/?eid=3566 世界から愛される和食に不可欠なワサビの危機]山根京子、2015年</ref>。
* 島根3号(しまねさんごう)- 島根県農事試験場の野津六兵衛が、1925年以降全国各地から集めたワサビと、島根在来種との自然交配による実生を育て、更に横木国臣の協力を得て1936年に選抜、1942年に公表した<ref>吉田正温、[http://ir.lib.shimane-u.ac.jp/1541 ワサビ属の細胞学的研究(II) : ワサビ 島根3号] 島根大学農学部研究報告 8, 49-50, 1974-12-15, {{naid|120005583092}}</ref>。一時日本を席巻し、京都の高級料亭ではよく使用された品種とされる<ref>[http://www.kosuke-ogawa.com/?eid=3566 世界から愛される和食に不可欠なワサビの危機]山根京子、2015年</ref>。
** 徳育1号 - 「島根3号」の種子から優良株の選抜を複数繰り返し、山口県が開発した<ref name="yamaguchi"/>。
** 徳育1号 - 「島根3号」の種子から優良株の選抜を複数繰り返し、山口県が開発した<ref name="yamaguchi"/>。
* 半原(はんばら) - 別名:丹羽山
* 半原(はんばら) - 別名:丹羽山
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== 有効成分 ==
== 有効成分 ==
ワサビの[[辛味]]成分は、[[唐辛子]]の辛味成分である[[カプサイシン]]とは辛味成分が全く異なる物質で[[カラシナ|芥子菜]]など、アブラナ科の植物が多く含む[[からし油配糖体]](グルコシノレート)の一種の[[シニグリン]]が、すりおろされる過程で[[酸素]]に触れ、細胞にある[[酵素]]と反応することにより生成される[[アリルイソチオシアネート]](6-メチルイソヘキシルイソチオシアナート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8-メチルチオオクチルイソチオシアナート)などであり、[[抗菌]]効果<ref>[http://doi.org/10.5803/jsfm.11.173 調味料と香辛料が腸炎ビブリオの生存に及ぼす抗菌作用 I. 醤油と沢わさび, しょうが, にんにくの共働抗菌作用] 日本食品微生物学会雑誌 Vol.11 (1994-1995) No.3 P173-178</ref>もあるとされる。なお、成分は品種、栽培条件、収穫時期で変化する<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs1953/41/5/41_5_180/_article/-char/ja/ ワサビ無機成分の時期別変化について] 日本林学会誌 Vol.41 (1959) No.5 P180-183</ref><ref>[http://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.56.935 わざびの生育期間中における辛味生成因子の変動] 日本農芸化学会誌 Vol.56 (1982) No.10 P935-937</ref>。また、胃がん細胞増殖抑制成分が含まれているとする研究もある<ref>[http://doi.org/10.3136/nskkk.43.1092 沢わさびの胃がん細胞増殖抑制成分の精製と構造解析] 日本食品科学工学会誌 Vol.43 (1996) No.10 P1092-1097</ref>。わさびスルフィニル(''wasabi sulfinyl'')は、国産の本わさびからわさび特有の辛みを除いた抽出した成分6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート/6-methylsulfinylhexyl isothiocyanate (6-MSITC)を指す<ref>[http://www.wasabi-labo.jp/sulfinyl/about 金印わさび機能性研究所 「わさびスルフィニル® / 「わさびスルフィニル®」とは]</ref><ref>[http://doi.org/10.3136/nskkk.51.477 わさびおよび加工わさび製品中の6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含量] 日本食品科学工学会誌 Vol.51 (2004) No.9 P477-482</ref>。また、様々な研究がされており、例えば名古屋市立大学院医学研究科は、神経細胞の再生を促し記憶力や学習能力を改善させることを発見したと報道された。1日に12.5グラムを食べれば、脳だけでなく、全身で細胞の再生が促進され、認知症予防以外にも血管拡張や骨密度強化など多彩な効果があるとされる<ref>中日新聞、2008年12月18日</ref>。また、中部大応用生物学の研究チームは、わさびの辛味成分「アリルイソチアシアネート」が酸化ストレスを防ぐ体内酵素を活性化させ、人の老化や疾病を防ぐ一定の効果の他に抗アレルギー作用があると発表し報道された。<ref>静岡新聞2010、2010年2月18日</ref>。
ワサビの[[辛味]]成分は、[[唐辛子]]の辛味成分である[[カプサイシン]]とは辛味成分が全く異なる物質で[[カラシナ|芥子菜]]など、アブラナ科の植物が多く含む[[からし油配糖体]](グルコシノレート)の一種の[[シニグリン]]が、すりおろされる過程で[[酸素]]に触れ、細胞にある[[酵素]]と反応することにより生成される[[アリルイソチオシアネート]](6-メチルイソヘキシルイソチオシアナート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8-メチルチオオクチルイソチオシアナート)などであり、[[抗菌]]効果<ref>七山征子、橋本明子、新井輝義 ほか、[http://doi.org/10.5803/jsfm.11.173 調味料と香辛料が腸炎ビブリオの生存に及ぼす抗菌作用 I. 醤油と沢わさび, しょうが, にんにくの共働抗菌作用] 日本食品微生物学会雑誌 Vol.11 (1994-1995) No.3 P173-178</ref>もあるとされる。なお、成分は品種、栽培条件、収穫時期で変化する<ref>鈴木正、長島善次、内山正昭、[http://doi.org/10.11519/jjfs1953.41.5_180 ワサビ無機成分の時期別変化について] 日本林学会誌 Vol.41 (1959) No.5 P180-183</ref><ref>[http://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.56.935 わざびの生育期間中における辛味生成因子の変動] 日本農芸化学会誌 Vol.56 (1982) No.10 P935-937</ref>。また、胃がん細胞増殖抑制成分が含まれているとする研究もある<ref>小野晴寛、足立圭子、福家洋子 ほか、[http://doi.org/10.3136/nskkk.43.1092 沢わさびの胃がん細胞増殖抑制成分の精製と構造解析] 日本食品科学工学会誌 Vol.43 (1996) No.10 P1092-1097</ref>。わさびスルフィニル(''wasabi sulfinyl'')は、国産の本わさびからわさび特有の辛みを除いた抽出した成分6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート/6-methylsulfinylhexyl isothiocyanate (6-MSITC)を指す<ref>[http://www.wasabi-labo.jp/sulfinyl/about 金印わさび機能性研究所 「わさびスルフィニル」 / 「わさびスルフィニル」とは]</ref><ref>村田充良、宇野みさえ、永井陽子 ほか、[http://doi.org/10.3136/nskkk.51.477 わさびおよび加工わさび製品中の6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含量] 日本食品科学工学会誌 Vol.51 (2004) No.9 P477-482</ref>。また、様々な研究がされており、例えば名古屋市立大学院医学研究科は、神経細胞の再生を促し記憶力や学習能力を改善させることを発見したと報道された。1日に12.5グラムを食べれば、脳だけでなく、全身で細胞の再生が促進され、認知症予防以外にも血管拡張や骨密度強化など多彩な効果があるとされる<ref>中日新聞、2008年12月18日</ref>。また、中部大応用生物学の研究チームは、わさびの辛味成分「アリルイソチアシアネート」が酸化ストレスを防ぐ体内酵素を活性化させ、人の老化や疾病を防ぐ一定の効果の他に抗アレルギー作用があると発表し報道された。<ref>静岡新聞2010、2010年2月18日</ref>。


== 利用・加工法 ==
== 利用・加工法 ==
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=== 粉わさび・練りわさび ===
=== 粉わさび・練りわさび ===
缶入りの粉わさびやチューブ入りあるいはパック入り(主に刺身用)の練りわさびが市販され、一般家庭ではこちらが広く用いられる。原料には[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ]]が使用されていることが多いが、
缶入りの粉わさびやチューブ入りあるいはパック入り(主に刺身用)の練りわさびが市販され、一般家庭ではこちらが広く用いられる。原料には[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ]]が使用されていることが多いが、
<ref>{{Cite web |url=http://www.kinjirushi.co.jp/dictionary/seiyou/seiyou.html |title=金印グループ 西洋わさびについて] |accessdate=2015-02-22}}</ref>
<ref>{{Cite web |url=http://www.kinjirushi.co.jp/dictionary/seiyou/seiyou.html |title=金印グループ 西洋わさびについて] |accessdate=2015-02-22}}</ref>
<ref>{{Cite web |url=http://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/detail.php?SPCCODE=00041 |title=S&B エスビー食品株式会社 ホースラディッシュ] |accessdate=2015-02-22}}</ref>
<ref>{{Cite web |url=http://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/detail.php?SPCCODE=00041 |title=S&B エスビー食品株式会社 ホースラディッシュ] |accessdate=2015-02-22}}</ref>
<ref>{{Cite web |url=http://housefoods.jp/products/catalog/pkgview.php?cd=84020&ct=1 |title=ハウス食品 粉わさび] |accessdate=2015-02-22}}</ref>
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ワサビの入ったものもある。{{要出典範囲|date=2015年7月|根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用される事が多い<ref>[http://www.tv-asahi.co.jp/rakuen/contents/past/0240/ テレビ朝日]島根・益田市 ~単身移住でワサビ栽培~ 2016年2月17日閲覧</ref>
ワサビの入ったものもある。{{要出典範囲|date=2015年7月|根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用される事が多い<ref>[http://www.tv-asahi.co.jp/rakuen/contents/past/0240/ テレビ朝日]島根・益田市 ~単身移住でワサビ栽培~ 2016年2月17日閲覧</ref>
<ref>[http://www.ryusendo-water.co.jp/selection/wasabi.html 岩泉産業開発]主に茎を利用する「畑わさび」で、現在では練りわさびの原料として日本一の生産量 2016年2月17日閲覧</ref>。}}チューブ入りわさびにおいては植物油、食塩、糖分、増粘剤等を添加している物もある。品名(名称)は、いずれも「加工わさび」であるが、日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさびの使用量が50%未満の場合は「本わさび入り」、50%以上の場合は「本わさび使用」を表記してよいとしている<ref>[https://www.sbfoods.co.jp/customer/faq/wasabi.html S&B よくいただくお問い合わせ]</ref>。
<ref>[http://www.ryusendo-water.co.jp/selection/wasabi.html 岩泉産業開発]主に茎を利用する「畑わさび」で、現在では練りわさびの原料として日本一の生産量 2016年2月17日閲覧</ref>。}}チューブ入りわさびにおいては植物油、食塩、糖分、増粘剤等を添加している物もある。品名(名称)は、いずれも「加工わさび」であるが、日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさびの使用量が50%未満の場合は「本わさび入り」、50%以上の場合は「本わさび使用」を表記してよいとしている<ref>[https://www.sbfoods.co.jp/customer/faq/wasabi.html S&B よくいただくお問い合わせ]</ref>。


== 参考画像 ==
== 参考画像 ==
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* [http://www.pref.ehime.jp/h35700/1461/5_guide/5_sansai.html 山菜の栽培技術指針]、{{PDF|[http://www.pref.ehime.jp/h35700/1461/5_guide/documents/wasabi1.pdf ワサビの栽培]}} - 愛媛県
* [http://www.pref.ehime.jp/h35700/1461/5_guide/5_sansai.html 山菜の栽培技術指針]、{{PDF|[http://www.pref.ehime.jp/h35700/1461/5_guide/documents/wasabi1.pdf ワサビの栽培]}} - 愛媛県
* 栗田憲二、鈴木正、安藤愛次:[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs1953/35/1/35_1_14/_article/-char/ja/ ワサビの生育と作土性質について] 日本林学会誌 Vol.35 (1953) No.1 P14-16
* 栗田憲二、鈴木正、安藤愛次:[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs1953/35/1/35_1_14/_article/-char/ja/ ワサビの生育と作土性質について] 日本林学会誌 Vol.35 (1953) No.1 P14-16
* 長島善次:[http://dx.doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.31.7_514 わさびに関する研究(第3報)配糖体Sinigrinの分離,確認] 日本農芸化学会誌 Vol.31 (1957) No.7 P514-515
* 長島善次:[http://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.31.7_514 わさびに関する研究(第3報)配糖体Sinigrinの分離,確認] 日本農芸化学会誌 Vol.31 (1957) No.7 P514-515
* 笠島一郎、平林孝之、川合真紀、内宮博文:[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010791884 日本ワサビのDNA多型解析] 農業および園芸 85巻・ 6号, p.633-636(2010-06)
* 笠島一郎、平林孝之、川合真紀、内宮博文:[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010791884 日本ワサビのDNA多型解析] 農業および園芸 85巻・ 6号, p.633-636(2010-06)



2017年8月28日 (月) 05:02時点における版

ワサビ
ワサビの葉
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : ビワモドキ亜綱 Dilleniidae
: フウチョウソウ目 Brassicales
: アブラナ科 Brassicaceae
: ワサビ属 Eutrema
: ワサビ E. japonicum
学名
Eutrema japonicum (Miq.) Koidz.
シノニム

Wasabia japonica (Miq.) Matsum.

和名
ワサビ
英名
Wasabi, Japanese horseradish
わさび 根茎 生[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 368 kJ (88 kcal)
18.4 g
食物繊維 4.4 g
0.2 g
5.6 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
1 µg
(0%)
7 µg
チアミン (B1)
(5%)
0.06 mg
リボフラビン (B2)
(13%)
0.15 mg
ナイアシン (B3)
(4%)
0.6 mg
パントテン酸 (B5)
(4%)
0.20 mg
ビタミンB6
(25%)
0.32 mg
葉酸 (B9)
(13%)
50 µg
ビタミンC
(90%)
75 mg
ビタミンE
(9%)
1.4 mg
ビタミンK
(47%)
49 µg
ミネラル
ナトリウム
(2%)
24 mg
カリウム
(11%)
500 mg
カルシウム
(10%)
100 mg
マグネシウム
(13%)
46 mg
リン
(11%)
79 mg
鉄分
(6%)
0.8 mg
亜鉛
(7%)
0.7 mg
(2%)
0.03 mg
セレン
(13%)
9 µg
他の成分
水分 74.2 g
水溶性食物繊維 0.8 g
不溶性食物繊維 3.6 g
ビオチン(B7 3.5 µg
硝酸イオン 0.1 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[2]。廃棄部位: 側根基部及び葉柄
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
天城山の北麓、伊豆市筏場のワサビ田。
天城山の北麓、伊豆市筏場のワサビ田。

ワサビ(山葵)は、アブラナ科ワサビ属の植物。日本原産[要出典]。食用。

強い刺激性のある香味を持ち、日本独特の香辛料として、以前から欧米や東南アジアで認知度の高まりを見せている。また日本においても、家庭用練りワサビにはセイヨウワサビを本種と混ぜ合わせたものが多い。

名称

本種の学名はWasabia japonica (Miq.) Matsum.とされることが多いが、現在ではWasabia属は独立した属とはみなされていないので、Eutrema japonicum (Miq.) Koidz.が正しい学名である。[3]918年の『本草和名』で、「山葵」の和名を和佐比と記している。同じく平安時代の『和名類聚抄』にも和佐比と記されている。

ワサビの名が付く近縁な植物、特にセイヨウワサビと区別するため本わさびと呼ぶことがある。

地下茎をすり下ろしたすりわさびの事をワサビと呼ぶこともある。寿司屋の符牒なみださびがある。寿司刺身の世界的な普及に伴って、英語フランス語台湾語広東語韓国語などでそのままwasabiという発音で借用されている。

利用の歴史

深山幽谷の清冽な渓流に沿い自生していたものが、その利便から人里近辺の清流栽培へと根絶さけて広がり、食文化の国内需要とともに農業生産されるに至る。

  • 飛鳥時代の遺跡である飛鳥京跡苑池遺構奈良県明日香村)から出土した木簡に「委佐俾三升(わさびさんしょう)」と書かれていた、これがわさびについて記された最古の史料とされる[4]
  • 718年奈良時代)に出された「賦役令」(現代の法人税法施行令に相当)の中に「山葵」(わさび)の名前が見られる。土地の名産品としてすでに納付され、薬用として使用されていたと考えられる。
  • 1221年7月(鎌倉時代)、後堀河天皇の即位に際して、丹波国より山葵が献上される。
  • 室町時代、すでに現代と同じ薬味としての利用が確立されていた。さらに江戸時代に入ると寿司蕎麦の普及とあわせ、広く一般に普及・浸透していった。古くは自生のものを採取・利用していたが、江戸時代に現在の静岡市葵区有東木(うとうぎ)地区に住む村人が野生のわさびを栽培したのが、栽培普及の端緒と伝えられる。
  • 江戸時代、有東木のワサビは駿府城大御所政治を執っていた徳川家康に献じられ、その味が絶賛されたことやワサビの葉が徳川家家紋の「葵」に通じることから、幕府の庇護を受けることとなった。一方で門外不出の扱いとなり、その栽培技術を他地区に広げることは禁じられた。
  • 延享元年(1744年)、天城湯ヶ島(現伊豆市)で山守を務めていた板垣勘四郎は三島代官の命によりシイタケ栽培の技術指導で有東木を訪れた。板垣はワサビの栽培を天城でも行いたいと懇願し、有東木の住民はシイタケの礼から禁を犯して板垣にワサビの苗を持たせた。この後、板垣の努力で天城でも栽培が始められることになる[5]
  • 1892年ごろ、原保村(現伊豆市)の平井熊太郎が畳石式栽培を開発した[6]
  • 1958年頃までの日本で栽培されていた品種は、中伊豆町の農家が発見して育成した品種「だるま」が多かったが、1958年狩野川台風により中伊豆町のわさび田が壊滅し、この台風被害からの復興の際に育種苗が不足したことや高品質な味と形を求められたことなどから、和歌山県産真妻(マズマ)種に置き換わっていった[7]。また、栽培が盛んな県の農業試験場では、地域毎の栽培特性に合わせた独自品種を開発して県内農家向けに種苗供給をおこなっている[8][9][10]
  • 2002年から2004年にかけて日本で「火災時における臭い警報システムに関する研究」が行われ、この研究をもとにワサビの臭いを用いた聴覚障害者向け火災報知器が商品化された[11]。この商品開発に関わる研究は、2011年イグノーベル賞(化学賞)を受賞した。
  • 2012年には、イギリスクレソンを栽培している会社が南部のドーセット州で3年前から日本の本ワサビの栽培に取り組んだ末、欧州の料理店向けに販売を開始した。これは、欧州で初めての商業ベースのワサビ栽培の事例となった。価格は100グラム30ポンド(2012年時点で約4200円)であった[12]

産地

安曇野 大王わさび農場(2008年5月12日撮影)

日本の主要な産地は静岡県長野県東京都奥多摩)、島根県山梨県岩手県奈良県等である。なかでも、匹見ワサビ島根県益田市)、安曇野ワサビ(長野県安曇野市)、有東木ワサビ(静岡市)は日本三大ワサビと呼ばれる。ほか、台湾南部、ニュージーランド中国雲南省などでも栽培されている。また、ワサビの産地である伊豆市安曇野市では市の花に指定されている。

栽培法

栽培の方法は大別すると、渓流や湧水で育てる水ワサビ(谷ワサビ、沢ワサビ)と、畑で育てる畑ワサビ(陸ワサビ)がある。

水ワサビ

水ワサビはワサビ田で栽培し、その根茎(根と茎の間の芋の部分)は生食用として利用される。このワサビ田は溪流式、地沢式、平地式、畳石式の4つの様式に分かれる[13]

水ワサビの生育には、豊富で綺麗な水温9 - 16℃ [14]の水と、砂地などの透水性が良い土壌が必要で、強い日光を嫌う。粘土質土壌や腐葉土質を嫌うため肥料等は必要なく育成の手間も殆ど要らないが、大量のきれいな水のある場所に生育が限定されるため、栽培の難しい農作物としても知られる。なお、経験的に、20℃ 3時間以上で根の腐敗が始まるとされる[15]。一方、山間の沢や水路を利用して小規模に栽培されることもある。

種類は赤茎種と緑茎種の2種類がある。静岡県で盛んに栽培される真妻種、島根県の在来種は赤茎系とされる。キャベツと同じアブラナ科の植物であるため、時としてスジグロチョウ[16]モンシロチョウ[17]幼虫青虫)に葉を食害される。また、根茎部分はヨコエビによる食害が報告されている[18][19]

畑ワサビ

畑ワサビは直接水を利用しないで、保育から収穫までを畑で行うもので、水ワサビに比べ品質は落ちるが温度と湿度管理が整えばどこでも栽培することが可能である[13]。しかし、株分けによる栽培を続けると数年で「退化現象」と呼ばれるウイルス感染に伴う成長障害や不稔、病気[20][21]が生じ衰退する。この退化現象を回避するため茎頂培養(成長点培養)によるウイルスフリー苗(メリクロン苗)が生産技術が1990年代には確立され栽培農家に供給されている[22]。栽培では、日射を避けるため日よけを施した広葉樹林[23]や針葉樹林の湿り気の多い場所が多く利用される。ハウス栽培も行われる[24]。2000年代になり人工光源を使用した栽培実験も行われている[25]

主要品種と特徴

安曇野 売店に並ぶワサビ(2008年8月18日撮影)

山葵の上品な味と香り、辛み、苦味、甘みについて、国内の交通が急激に変化した明治から大正時代にかけて研究されており、日本国内の主要産地ごとに微妙な違いが認められる。 多くの栽培品種があるが、「真妻」、「だるま」、「島根3号」が3大品種と云われ、その他の品種はこれらが育種母体として利用されていることが、DNA鑑定の結果判明した[26]。これらと野生在来種を交配選抜し「栽培効率」「耐病性」「食味」「保存性」などを向上させた改良品種が数多く存在している。

  • 真妻(まずま)- 旧真妻村(現和歌山県印南町川又)が発祥の品種。品質が優れていたため静岡を中心に栽培が広がった。現在印南町の農家が発祥の地復活を目指し、一度は途絶えた生産出荷に向け取り組んでいる[27]
    • 正緑(まさみどり)- 親品種は眞妻。耐病性と大型化を改良。
  • 達磨(だるま)- 大正時代末期から昭和初期にかけて静岡において導入された半原種(神奈川県原産)の中から突然変異株として優れた系統を発見、選抜された。1965年頃から急速に退化現象が現れ、原種に近いものはほとんどなくなり、静岡では代わりに前述の「真妻種」が主力品種となった[28]
  • 島根3号(しまねさんごう)- 島根県農事試験場の野津六兵衛が、1925年以降全国各地から集めたワサビと、島根在来種との自然交配による実生を育て、更に横木国臣の協力を得て1936年に選抜、1942年に公表した[30]。一時日本を席巻し、京都の高級料亭ではよく使用された品種とされる[31]
    • 徳育1号 - 「島根3号」の種子から優良株の選抜を複数繰り返し、山口県が開発した[8]
  • 半原(はんばら) - 別名:丹羽山
  • みどり - 主にワサビ漬けの材料用品種。
  • グリーンサム - 辛みが強いが、病気にかかりやすい。
  • 岩泉1号 - 岩手県に多い品種。(畑ワサビ)[32]
  • 静岡17
  • 高井(たかい) - 長野県に多い品種。
  • 長野23号 - 大きくなるが、病気にかかりやすい。[9][33]

有効成分

ワサビの辛味成分は、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンとは辛味成分が全く異なる物質で芥子菜など、アブラナ科の植物が多く含むからし油配糖体(グルコシノレート)の一種のシニグリンが、すりおろされる過程で酸素に触れ、細胞にある酵素と反応することにより生成されるアリルイソチオシアネート(6-メチルイソヘキシルイソチオシアナート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8-メチルチオオクチルイソチオシアナート)などであり、抗菌効果[34]もあるとされる。なお、成分は品種、栽培条件、収穫時期で変化する[35][36]。また、胃がん細胞増殖抑制成分が含まれているとする研究もある[37]。わさびスルフィニル(wasabi sulfinyl)は、国産の本わさびからわさび特有の辛みを除いた抽出した成分6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート/6-methylsulfinylhexyl isothiocyanate (6-MSITC)を指す[38][39]。また、様々な研究がされており、例えば名古屋市立大学院医学研究科は、神経細胞の再生を促し記憶力や学習能力を改善させることを発見したと報道された。1日に12.5グラムを食べれば、脳だけでなく、全身で細胞の再生が促進され、認知症予防以外にも血管拡張や骨密度強化など多彩な効果があるとされる[40]。また、中部大応用生物学の研究チームは、わさびの辛味成分「アリルイソチアシアネート」が酸化ストレスを防ぐ体内酵素を活性化させ、人の老化や疾病を防ぐ一定の効果の他に抗アレルギー作用があると発表し報道された。[41]

利用・加工法

採取・切断して販売される地下茎
すりおろした状態
鮫皮ワサビおろし

地下茎(根茎)

地下茎をすりおろしたものは、日本料理の薬味として寿司刺身茶漬け蕎麦・鰻の白焼などに添えられる。洋食のローストビーフスパゲッティに使われることもある。また西洋料理、特に日本料理に影響を受けた近代フランス料理でソースなどに使用されることがある。殺菌効果を持つため、生ものと一緒に食べるとよいと信じられている。

すりおろす道具としては、酸素と触れなければ辛味が出てこないため、細胞を細かく摩砕できるサメの皮で作られたおろし器が良いとされている。また、俗にワサビは金気を嫌うので金おろしを使わないという。ただし現実には、そのことによって料理店の良し悪しが付けられてしまうこともあるものの、細目の金おろしを使っている和食店、寿司店も多い。

ワサビの風味、特に辛味は揮発性のものが多いため、すり下ろして余り時間を置くと風味を失ってしまうが、すってすぐの物も味にカドが有り一般には使われない。地下茎とおろし器を供し自分でするシステムを取る店も有るが、あくまで下ろしたてという「風情」を味わう為で有る[誰によって?]

またワサビを醤油で溶いたりしても、殆どが醤油に含まれるメチオノールで消臭されるため、風味を弱く感じるようになる。作家・池波正太郎は著書『男の作法』の中で「刺身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りが抜けちゃう。醤油も濁って新鮮でなくなるしね」と述べている[42]。一方、北大路魯山人は著書の中で「しょうゆの中にわさびをいれてしまっては辛味はなくなる。しかししょうゆの味がよくなる」と記述している[43]

ワサビの鼻につんとくる独特の刺激的な辛さは、一般的に子供には好まれない。そのため、寿司などにワサビを入れないものを「サビ抜き」といい、子供やワサビが苦手な人のために作られる。また、逆に鉄火巻きの要領でワサビだけを巻いた寿司として「ワサビ巻き(なみだ巻き)」がある。

刻んだ地下茎を酒粕に混ぜて漬け込んだ粕漬けの一種のわさび漬けは、酒のつまみや米飯の副菜となり、静岡県の名物となっている。

島根県の山間部には山葵の風味を生かした汁かけご飯の一種、うずめ飯がある。

葉、茎、花

葉や茎や花を軽く湯通しし、密閉した容器にしばらく保管しておくとワサビの辛い風味をおひたしで味わうことができる。同様に、葉や茎を醤油と一緒に瓶に詰めた醤油漬けもある。保存が利き、茶請けや付け合せ、酒のツマミなどとして利用される。ワサビの葉の醤油漬けは、巻き寿司にされることもある。花や葉は天ぷらとすることもある。島根県西部(高津川流域)と山口県東部では、新芽の部分をその独特の食感から、「ガニ芽」と称し、高級食材として活用している。

葉や茎は、成分・エキスを抽出したり、すり下ろして練りわさびやスナック菓子などの風味付けの原料として用いられる。ワサビ風味の食品には、冷菓(ソフトクリームアイスクリーム)、米菓(せんべいあられ)もある。但し、ワサビの辛味成分は数分で揮発してしまう為、添加物を加えてそれを抑止する等の工夫をしている。

食用外でも、アリルイソチオシアネートの殺菌作用や、植物の老化を早めるエチレンガスの発生を抑制する作用を利用して、食品・野菜用の抗菌・消臭・鮮度保持剤として冷蔵庫などで使用する製品もある。弁当用の防腐剤防虫剤としても利用されている。

広義のわさび

わさびの名が付く植物

ワサビに似た辛味がある植物に、ワサビの名がついていることがある。ただし、必ずしもワサビと近縁ではない。

粉わさび・練りわさび

缶入りの粉わさびやチューブ入りあるいはパック入り(主に刺身用)の練りわさびが市販され、一般家庭ではこちらが広く用いられる。原料にはセイヨウワサビが使用されていることが多いが、 [44] [45] [46] ワサビの入ったものもある。根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用される事が多い[47] [48][要出典]チューブ入りわさびにおいては植物油、食塩、糖分、増粘剤等を添加している物もある。品名(名称)は、いずれも「加工わさび」であるが、日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさびの使用量が50%未満の場合は「本わさび入り」、50%以上の場合は「本わさび使用」を表記してよいとしている[49]

参考画像

出典

脚注

  1. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  3. ^ 植物遺伝育種学 ワサビ属植物系統保存 岐阜大学植物遺伝育種学研究室HP
  4. ^ 飛鳥京跡苑池遺構第3次調査(飛鳥京跡第145次調査)”. 現地説明会資料(2001年7月7日). 奈良県立橿原考古学研究所. 2016年4月26日閲覧。
  5. ^ とれたてぴちぴち伊豆育ち。ふるさとの特産品をご紹介 - 伊豆市、2012年11月2日閲覧
  6. ^ 地域森林景観 山間に広がる美しい棚田~中伊豆ワサビ田~ - 東京大学、2012年11月2日閲覧
  7. ^ 伊豆天城地方におけるワサビ栽培の地域的展開 (PDF) 地理空間 2009 Vol.2-1
  8. ^ a b ワサビ新品種「徳育1号」の育成経過と品種特性 山口県農業試験場研究報告(53), 73-74, 2002-03
  9. ^ a b 信州花めぐり♪安曇野でわさびの花を味わう JA長野
  10. ^ 地域の特産物(わさび)天城山麓 静岡県 東部農林事務所
  11. ^ 株式会社シームスの2011年イグノーベル賞受賞について”. 消防庁消防大学校 消防研究センター (2011年11月24日). 2015年7月3日閲覧。
  12. ^ 出典 : MSN 産経ニュース『英で日本のワサビ栽培・販売、欧州初 仏料理にも採用』2012.12.28 16:55版
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  16. ^ 中田正彦、ワサビの害虫スジグロチョウの幼虫,蛹の天敵について 日本応用動物昆虫学会誌 Vol.7 (1963) No.4 P348-349
  17. ^ 西東力、杉山泰昭、芳賀一 ほか、ワサビにおける総合的病害虫管理 4. 静岡県におけるスジグロシロチョウの寄生性天敵相 関西病虫害研究会報 Vol.52 (2010) P135-137
  18. ^ 西島卓也、ワサビ栽培における病害虫対策 (PDF) 静岡県農林技術研究所伊豆農業研究センターわさび科
  19. ^ ワサビの総合的作物管理 (ICM)マニュアル (PDF) 島根県
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  21. ^ 外側正之、芳賀一、杉山泰昭 ほか、ワサビにおける総合的病害虫管理 8 ワサビ白さび病菌のアブラナ科植物に対する病原性 関西病虫害研究会報 Vol.52 (2010) P87-88
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  23. ^ 畑ワサビ栽培の実証(森林環境教育) 奈良県 農林部
  24. ^ 畑わさび(ハウス) JA全農やまぐち
  25. ^ 田中逸夫、舟橋芳仁、嶋津光鑑 【原著論文】ワサビの人工光栽培に関する研究 Eco-Engineering Vol.20 (2008) No.3 P119-124
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  48. ^ 岩泉産業開発主に茎を利用する「畑わさび」で、現在では練りわさびの原料として日本一の生産量 2016年2月17日閲覧
  49. ^ S&B よくいただくお問い合わせ

関連項目

外部リンク