JR東日本キハE200形気動車

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JR東日本キハE200形気動車
キハE200-1(2009年4月 / 八千穂)
キハE200-1
(2009年4月 / 八千穂)
営業最高速度 100km/h
起動加速度 2.3km/h/s(起動時)[1]
減速度 3.5km/h/s[1](常用最大)
3.5km/h/s[1](非常)
車両定員 46(座席)+71(立席)=117名
最大寸法
(長・幅・高)
19,500×2,920×3,620(mm)
車体材質 ステンレス
機関出力 直噴式直列6気筒ディーゼルエンジン
331kW(450PS)
主電動機 かご形三相誘導電動機
MT78 (95kW)×2
駆動装置 ハイブリッド方式
(蓄電池併用電気式)
台車 軸梁式ボルスタレス台車
DT75(動力)/TR260(付随)
制動方式 電気指令式ブレーキ
回生ブレーキ排気ブレーキ併用
保安装置 ATS-Ps
製造メーカー 東急車輛製造
備考
Wikipedia laurier W.png
第48回(2008年
ローレル賞受賞車両
小海線を走行するキハE200形
(2007年8月12日)

キハE200形気動車(キハE200がたきどうしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の一般形気動車

2003年平成15年)に試作されたNEトレイン(キヤE991形)の試験結果を受け、2007年(平成19年)に世界で初めて営業用として投入された、ハイブリッド式(シリーズ方式)の鉄道車両である。3両(1 - 3)が量産先行車として東急車輛製造で製造され、小海線営業所に配置されて7月31日から小海線で営業運転を開始した。同線での営業運転開始から2009年(平成21年)までの約2年間にわたって、量産車導入に向けたデータ収集を行っていた。

「環境世紀にふさわしい最新技術を用いたハイブリッド気動車の実現」という特徴が評価され、鉄道友の会の2008年度ローレル賞を受賞した。

概要[編集]

ディーゼルエンジンリチウムイオン蓄電池(屋根上に設置)を組み合わせ、車輪の駆動にかご形三相誘導電動機を使用する。発車時は蓄電池充電電力を使用し、加速時はディーゼルエンジンが動作して発電機を駆動し、蓄電池電力と合わせて電動機を回転させる。減速時は電動機を発電機として利用し、運動エネルギーを電気に変換して蓄電池に充電する(ディーゼルエンジンは停止もしくは排気ブレーキ動作)。したがって、本形式の走行音は独特のものである。また、運転台に設置してあるモニタ装置トイレ付近に設置された液晶ディスプレイではエネルギー転換の状況がリアルタイムに表示される。 なお、内装については中央線快速で実施したアンケートを基に、キハ110系と比べて改良されている。

車両[編集]

外観[編集]

車体は軽量ステンレス構体の拡幅車体とし、水郡線で運用されているキハE130系気動車と同様に2,920mmの幅広車体を採用し、腰部から下を絞った形状としている。た。また、E231系と同様に側面からの衝撃に対する安全向上策が図られている[2]。、両運転台車であり、 床面高さは、レール面から1130mmとしており、キハE130と同じくキハ110と比べて45mm低くなっている。

塗色[編集]

塗装は、小海線の持つ高原のイメージより青を基調に黄色帯をまとった配色とし、新システムであることをアピールするため、「HYBRID TRAIN」の文字(TRAIN は HYBRID の D の部分に小さい文字で描かれている)が抜き文字で表示されている。

内装[編集]

バリアフリー対策で、キハE130系と同様に通路部分の床面高さをキハ110系と比較して45mm下げている。また、優先席部分でつり革の高さをキハ110系比で40mm低くしたり(色はオレンジでつり手もオレンジ色、形状は他の部分も含めてE531系電車と同一)、スタンションポールの設置を行っている(形状はE233系電車と同一)。 腰掛けの幅(ロングシート部分)をキハ110系比で20mm拡大している。 小淵沢方の出入り口付近には車椅子対応の自動ドア付き大型トイレを設置し、LED式の旅客案内装置やドアチャイム・ドア開閉告知灯を採用した。また、自動放送装置はワンマン運転の他、車掌乗務時にも使用される。

機器・制御システム[編集]

主回路の見取り図

キハE200形が採用しているハイブリッドシステムは、エンジンの動力を直接駆動力には使用せず、発電機を回転させる電力用として使用され、発電機からの電力と搭載された蓄電池の電力と組合わせてモーターを駆動する「シリーズハイブリッド」方式と呼ばれるシステムであり、電車の技術が最大限に使用できるのが特徴である。システムを構成する機器類は、エンジンとそれに直結した発電機を持つエンジン発電機、主回路用蓄電池、主変換装置、輪軸駆動用のモーターで構成されており、力行時には、主回路用蓄電池からの電力または主回路用蓄電池とエンジン発電機からの両方の電力を使用して、主変換装置に内蔵されたVVVFインバータ装置により、VVVFインバータ制御でモーター(誘導電動機)を駆動させる。制動時には、回生ブレーキによりモーターから発生した電力を、VVVFインバータ装置を介して主回路用蓄電池に充電する[3]。また、エンジン発電機の起動または停止は、主回路用蓄電池の充電状態により、自動的に行われている。また、「エネルギー管理制御システム」を搭載しており、各装置からの情報を集約して、最適な動作の指示を各装置に行うことで、エンジン発電機と最適な蓄電池の充放電の制御を行なっている。

エンジン発電機には、排気ガス対策のため、コモンレール方式の燃料噴射装置を使用した直噴式直列6気筒横形ディーゼルエンジン(コマツ製SA6D140HE-2、JR形式はDMF15HZ 定格出力331kw(450PS)定格回転数2100rpm×1)と発電機(DM113形交流発電機、出力270KW×1)を組合わせている。 主回路用蓄電池には、出力密度が高く、軽量高出力のIC122形リチウムイオン電池が使用されており、1両あたりの容量は15.2KWhである。また、蓄電池に不具合が発生した場合を考慮して、2群構成として冗長性を持たせている。主制御装置には、C120形主変換装置を搭載しており、補機類とサービス用の電源装置である静止形インバータ(SIV)と一体構成となっている。なお、補助電源装置の容量は50KVAである。

主電動機は、E231系に使用されているMT73形をベースとしたMT78形誘導電動機(定格出力95kw)を1両につき2個、動力台車に装備している。台車は、E531系で使用されている台車を基本に、キハE130系小諸方に動力台車のDT75形・小淵沢方に付随台車のTR260形を使用している。

車両の床下には、主変換装置、エンジン発電機、エンジンラジエーター、制御用蓄電池箱、ブレーキ制御装置を満載しており、エンジン冷却性能向上のためエンジンラジエーターの大形化や静止形インバータの容量増加による主変換装置の大形化が図られている。そのため、車両の屋上には、集中式冷房装置を挟んで、前位に主回路用蓄電池を2個、後位に元空気だめの一部が搭載されている。また、各車には、補助電源で作動するMH3125-C600N形電動空気圧縮機(CP)を搭載している。

加速度キハ110系相当の2.3km/h/sを有している[4]。 なお、同じハイブリッドシステムを持つHB-E300系とは併結運転が出来る機能を有しており、実際に長野地区向けのHB-E300系との試運転時に併結試験を行っている[5]

ハイブリッドシステムとコモンレール式のエンジンの採用により、蓄電池を効率よく組み合わせて環境負荷の低減を図り、従来のキハ110系気動車に比べて排気中の窒素酸化物 (NOx) や粒子状物質 (PM) の60%低減を達成した。また併せて燃料消費量は起伏の激しい小海線で約10%低減を達成した。アイドリングストップにより、駅停車時の騒音は約30デシベルまで低減されている。

車両が停車→発車→加速→惰行→制動→停車するまでの車両の状態は以下の通りになる。

停車中・惰行中

  • エンジン発電機はアイドリングストップを行い、車両のの補機類とサービス用の電源は主回路用蓄電池からの電力が補助電源装置に送られて、そこから電力が送られる。

発車時

  • 最初は主回路用蓄電池からの電力のみでモーターを駆動させ、約25km/h程度からエンジン発電機を起動させて、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。

加速時

  • 主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。惰行中からの場合は、エンジン発電機を起動させる。また、走行負荷の状態に応じて主回路用蓄電池の充放電を行う。

制動時

  • エンジン発電機を停止させ、回生ブレーキによりモーターから発生した電力を主回路用蓄電池に充電する。

運行[編集]

前述のとおり、2007年7月31日から小海線で営業運転を開始した。出発式のあった日は3両編成で運行されたが、通常は2両編成で運行され、1両は試験や検査で使用する。営業開始からしばらくは、先頭車の前面に愛称の「こうみ」のヘッドサインを装着していた。通常期は小諸駅 - 小海駅間を中心に小淵沢駅まで1往復する運用だが、小淵沢駅 - 野辺山駅間に臨時列車が増発される場合は、臨時列車中心に運用されている。

本形式は、量産先行車3両の同線での運用実績を反映した量産車が導入された場合、同線で使用されているキハ110系を置き換える可能性もあるが、今のところ具体的なビジョンは発表されていない。

その他[編集]

  • 本形式が登場する前に、JR東日本により、ハイブリッド車を紹介する3分間の長編CMが放送された。
  • 本形式の登場を記念して、小淵沢駅で「高原野菜と牛焼むすび弁当」という駅弁が販売されている。
  • 2008年8月から関東地区のJR線車内やJR駅に掲出されている、JR東日本の求人広告ポスターに、八ヶ岳をバックにした本形式の走行写真が使われている[1]
  • 2010年に本形式と同様のハイブリッドシステムを搭載したリゾートトレインHB-E300系[2]、2015年に仙石東北ライン向けとしてHB-E210系[6]の運用が開始された。

脚注[編集]

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  1. ^ a b c 日本鉄道車両工業会「車両技術」234号「JR東日本 キハE200形ハイブリッド車両」記事。
  2. ^ 車体構造の側構体の縦方向の骨組みである柱に、上部にある幕板の補強と屋根構体の横方向の骨組みである垂木の位置を合わせて結合強度を向上させることにより、車両の構体にリング構造を多数設けることで、衝撃荷重を受けた際の構造の変形量抑制を図っている。
  3. ^ 詳しく解説すると、主変換装置内はコンバータ部とVVVFインバータ部に分かれており、その間に主回路用蓄電池が接続されている。力行時はDM113形交流発電機からの三相交流の電力をコンバータで直流の電力に変換した後に主回路用蓄電池からの直流の電力を加えてVVVFインバータで三相交流に変換して誘導電動機を駆動させ、制動時は、誘導電動機からの三相交流をVVVFインバータで直流の電力に変換した後に主回路用蓄電池に充電される仕組みとなっている。また、補助電源装置の静止形インバータ(SIV)へ送る電力は、停止時や低加速での力行時では主回路用蓄電池から、中高速時での力行時には主回路用蓄電池からの電力の他に発電機からの電力の一部が送られる、制動時は回生ブレーキにより発生した電力が主回路用蓄電池に充電するために送られる際にその一部が送られる。
  4. ^ 日本鉄道車両工業会「車両技術」240号「JR東日本 HB-300系リゾートトレイン用ハイブリッド車両」記事
  5. ^ HB-E300+キハE200,小海線で試運転railf.jp 鉄道ニュース 2010年7月17日
  6. ^ 通勤形車両の新造計画について (PDF) 東日本旅客鉄道(2013年7月2日)

外部リンク[編集]

関連項目[編集]