デシベル

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ベル
bel
記号 B
種類 SI併用単位
レベル表現
定義 二つの基準値AとBに10xの比があるとき、これをx[B]とする量
語源 アレクサンダー・グラハム・ベル
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デシベル(英語: decibel、記号: dB)は、電気工学振動音響工学などの分野で、物理量をレベル表現により表すときに使用される単位である。SIにおいてレベル表現として表される量には次元が与えられておらず、無次元量である。

ベルの語源は、アレクサンダー・グラハム・ベルが電話における電力の伝送減衰を表わすのに最初に用いたことに由来する[1]

ベル[編集]

物理量のレベル表現とは、その物理量の基準とする量に対する比の対数で表した量である。 底が10である常用対数によりレベル表現をする場合の単位がベル(bel、記号: B)と定義される。

基準量を A0 としたとき、物理量 A のレベル表現が LA であるとき

の関係がある。

ベルは十進法における桁の差を表したものと言える。例えば、AA0 の1000倍、すなわちちょうど3桁大きい場合

となり LA=3 B である。

例えばゲインが1段で100倍のアンプを2段重ねると、全体のゲインは100×100で10000倍になる。これをベルであらわすと、1段は2ベルである。それが2+2=4で、全体で4ベルすなわち10000倍となる。このように、対数で表現することで、倍率と倍率の組み合わせで乗算になる計算を、加算で済ませることができる、という利便性がある。

さらに1000倍×1000倍といった値を扱う分野では1/100万から100万のように幅広い桁数の値を扱うことになるが、ベルの値であれば-6から+6と扱い易い値でとりあつかうことができる。

デシベル[編集]

日常よく使う2倍から10倍の範囲が0.3ベルから1.0ベルとなり、ベルでは使い勝手が悪い。そこで数値が10倍になるように単位の方を10−1倍したデシベルが通常よく使われる。デシベルはベルに10−1を意味するSI接頭辞であるデシ(記号: d)を付けたものである。

基準量 A0 に対する A のレベル表現 LA をデシベルによって表すと

となる。 その定義から、0デシベルで1倍、10デシベルで10倍、20デシベルで100倍である。1デシベルは約1.259倍である。また「10デシベルで1桁違う」ということから「1デシベルは0.1桁違う」という単位であるとも言える。

デシベルによる表現は、音の強さ(音圧レベル)や、電力の比較、減衰などをエネルギー比で表すのに使用される。

レベル表現は二つの量の相対的な関係を表現するものだが、絶対的な値を表現するために、各分野で基準値である0dBに相当する量が定義されている。

電磁波の減衰、音圧レベル、振動加速度レベルについては、計量法において、「取引又は証明」に用いるべき単位としてデシベルを定めている。後2者は、それぞれ、音圧(Pa)および振動の加速度(m/s2)の基準値に基づいて定義された、絶対デシベルである。電磁波の減衰は相対比をデシベル表現したもの(相対デシベル)である。

電圧と電力[編集]

デシベルはオペアンプなど増幅器の利得(ゲイン)を表す単位としても用いられる。 入出力インピーダンスが等しい電気回路において、オームの法則により電力の倍率は電圧の倍率の2乗になる。このため、アンプなどでは電圧のレベル表現の2倍が電力のレベル表現になる。

入力電圧を Vin、出力電圧を Vout とすると、電圧の倍率のレベル表現 LV

である。しかし、増幅器の利得 G は電力の倍率で表されるため

となる。 VoutVin の2倍の大きさであるとき、 log2=0.301 であるので LV=3.01 dB となる。一方、G=6.02 dB になる。電気信号のレベルの表現などでは、そのデシベルが電圧と電力のどちらを表現するものかも決める必要がある。音圧レベルについても同様である。

相対値としてのデシベル[編集]

相対的な値であるデシベルは基準となる物理量との比を対数で表すものである。相対値としてのデシベルであることを明示するために dBr という表記をする場合もある。

デシベル表記と電圧比・電力比を表にして示す。

デシベル 電圧比 電力比
0 dB 1.000 倍 1.000 倍
1 dB 1.122 倍 1.259 倍
2 dB 1.259 倍 1.585 倍
3 dB 1.413 倍 1.995 倍
4 dB 1.585 倍 2.512 倍
5 dB 1.778 倍 3.162 倍
6 dB 1.995 倍 3.981 倍
7 dB 2.239 倍 5.012 倍
8 dB 2.512 倍 6.310 倍
9 dB 2.818 倍 7.943 倍
10 dB 3.162 倍 10.00 倍
11 dB 3.548 倍 12.59 倍
12 dB 3.981 倍 15.85 倍
13 dB 4.467 倍 19.95 倍
14 dB 5.012 倍 25.12 倍
15 dB 5.623 倍 31.62 倍
16 dB 6.310 倍 39.81 倍
17 dB 7.079 倍 50.12 倍
18 dB 7.943 倍 63.10 倍
19 dB 8.913 倍 79.43 倍
20 dB 10.00 倍 100.0 倍
30 dB 31.62 倍 1,000 倍
40 dB 100.0 倍 10,000 倍
50 dB 316.2 倍 100,000 倍
60 dB 1,000 倍 1,000,000 倍

電圧比で 6 dB は約 2 倍、 12 dB は約 4 倍、 14 dB は約 5 倍、 17 dB は約 7 倍、 18 dB は約 8 倍、 19 dB は約 9 倍、 20 dB は正確に 10 倍である。

電圧や電流では 10 倍であることを +20 dB とか 20 dB 大きいといい、 1/10 であることを -20 dB とか 20 dB 小さいという。電力では 100 倍であることを +20 dB とか 20 dB 大きいといい、 1/100 であることを -20 dB とか 20 dB 小さいという。一見厄介に思えるが、電圧が 10 倍だと電流も 10 倍で電力は 100 倍ということをすべて +20 dB で表現できる。逆に 100 倍では、それは電圧のことなのか電力のことなのかということになり、慣れるとむしろデシベルで表現する方がわかりやすい。

ただし、たとえば計測機器の出力を処理する場合、出力電圧の 1/2 が単純に -6 dB になるとは限らない。計測対象が照度などエネルギーであれば、出力電圧の 1/2 は計測単位での 1/2 、つまりエネルギーが 1/2 ということを表しているので、 -6 dB ではなく -3 dB となる。針式メーターで振れ角の半分の目盛が 1/2 とは限らないのと同様、計測対象の性質を考慮することが必要である。


絶対値としてのデシベル[編集]

デシベルの基準量を特定の値にとることで、絶対的な値を直ちにレベル表現できるようになる。音響などの分野でこれは非常に便利であり多用される。ただしこれらは SI 準拠ではない。

dBSPL (Sound Pressure Level, 音圧レベル)
圧力である音圧に対して用いられる。基準量は 20 μPa (0 dBSPL = 20 μPa = 20×106 Pa) 。 20 μPa はかつて人間の 1 kHz における最小可聴値とされていた。現在の等ラウドネス曲線 (ISO 226:2003) によれば 1 kHz における最小可聴値は 30 μPa 程度だが、音圧レベルの基準が変わっては困るのでそのままになっている。
dBSIL (Sound Intensity Level, 音の強さレベル)
単位断面積を単位時間あたりに通過する音のエネルギーである音の強さに対して用いられる。基準量は 10-12 W/m2 (0 dBSIL = 10-12 W/m2) 。
dBFS (Full Scale)
デジタル音声のレベルに対して用いられる(アナログ音声には用いない)。基準量は規格上の最大レベル。したがって基本的には 0 dBFS がレベルの上限となる。ただし、扱う波形が正弦波でない場合、その実効値が 0 dBFS 正弦波の実効値を超えてしまう場合がある。
dBW, dB(W)
1 W を基準量とした電力のレベル表現 (0 dBW = 1 W) 。
dBm, dB(mW)
1 mW を基準量とした電力のレベル表現 (0 dBm = 1 mW = 10-3 W) 。音響の分野で誤って電圧に対して用いられていることがある(下記 dBv 参照)。
dBf, dB(fW)
1 fW (フェムトワット)を基準量とした電力のレベル表現 (0 dBf = 1 fW = 10-15 W) 。受信電力など非常に小さい電力を扱う分野で用いられる。
dBV, dB(V)
1 VRMS を基準量とした電圧のレベル表現 (0 dBV = 1 V) 。
dBv
775 mVRMS[2] を基準量とした電圧のレベル表現 (0 dBv = 775 mVRMS = 0.775 VRMS) 。主に業務用音響機器の音声信号に対して用いられ、 600 Ωの純抵抗の消費電力が x dBm のときの電圧が x dBv という関係にある。古典的な業務用音響機器は 600 Ωでインピーダンス整合されており、信号レベルの単位には dBm が用いられていた。実際には電力でなく電圧を見ていたのだが[3]、インピーダンスが決まっていれば電力と電圧は一対一で対応するので問題なかったのである(50 Ω, 75 Ωなどで整合される高周波回路でも同じ)。しかし後に 600 Ωで整合されない機器が多くなり、対象を明確に電圧に変える必要に迫られ、 600 Ωにおいて dBm と互換性があるように作られたのがこの dBv という単位である。しかし信号レベルの単位に dBm が用いられていた時代が長かったためか、現在でも dBm が誤って電圧に対して 0 dBm = 775 mVRMS として用いられていることがある。
dBu
意味は dBv と全く同じ。 dBv が dBV と非常に紛らわしいため、現在では dBu の方が普通。
dBs
意味は dBv と全く同じ。日本放送協会で使われるが、それ以外ではほとんど見かけない。
dBμ, dB(μV)
1 μVRMS を基準量とした電圧のレベル表現 (0 dBμ = 1 μVRMS = 10-6 VRMS) 。主に無線通信の分野で用いられる。
dBμEMF, dBμ(emf)
無線通信の分野で高周波信号発生器 (SG) の出力電圧を表現する場合、 SG の出力を整合終端したときの電圧(終端電圧)で表現する場合と開放終端したときの電圧(開放電圧)で表現する場合とがある。両者は 6 dB の差があるため、開放電圧で表現する場合は EMF (Electro Motive Force) と付記するか、別に説明する必要がある。例えば 50 Ωの場合、 113 dBμEMF と 107 dBμ はどちらも約 0 dBm である。日本では業務用無線機や PDC 方式携帯電話機で dBμEMF が用いられることが多い。米国やアマチュア無線では dBμ が使われることが多い。規格や仕様で EMF が省略されて書かれていることもあるため注意が必要である。例えば、 -6 dBμ の受信感度の業務無線機と、 -12 dBμ の受信感度のアマチュア無線機はどちらも同じ受信感度であるが、アマチュア無線機のほうが受信感度が良いと誤認するおそれがある。 dBm や dBf で表示すれば間違うおそれはない。
dBi
アイソトロピックアンテナ(全ての方向に均等に電波を放射する仮想的なアンテナ)を基準としたアンテナの利得。ダイポールアンテナを基準にする場合は dBd または単に dB と表す。 dBi 表記は dBd より 2.15 大きい。

符号位置[編集]

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+33C8 - ㏈
㏈
デシベル

Unicodeには、デシベルを表す上記の文字が収録されている。これはCJK互換用文字であり、既存の文字コードに対する後方互換性のために収録されているものであるので、使用は推奨されない[4][5]

脚注[編集]

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  1. ^ 騒音の計測単位-なぜdBという対数尺度を使用するか”. 小野測器. 2014年4月15日閲覧。
  2. ^ 厳密には 0.6 VRMS
  3. ^ レベルメーターやアンプ類の負帰還では電圧を見ていた。
  4. ^ CJK Compatibility” (2015年). 2016年2月21日閲覧。
  5. ^ The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。

関連項目[編集]

音響・聴覚関連