デシベル

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ベル
bel
Integrating Sound Level Meter dB(A) Brüel Kjær 2225.jpg
デシベル単位で目盛りが降られた騒音計
記号 B
種類 SI併用単位
レベル表現
定義 二つの基準値 A と B に 10x の比があるとき、これを x[B] とする量
語源 アレクサンダー・グラハム・ベル
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デシベル英語: decibel、記号: dB)は、

  • の強さを表す単位、または音圧レベルの単位[1]。音の強さでは毎平方メートル10~12ワット、音圧では毎平方メートル2×10-5ニュートンを零デシベルとし、音の強さでは100倍するごとに20デシベルを加え、音圧では10倍ごとに20デシベルを加える[1]
  • 電力比や電気機器の利得を表す単位[1]。入力電力と出力電力との比の常用対数の10倍で表す[1]

(一般化、抽象化して説明すると)「デシベル」というのは音圧、電力、利得など、物理量レベル表現を用いて表すときに使用される単位である。(なおSIにおいてレベル表現として表される量には次元が与えられておらず、無次元量である。)電気工学振動音響工学などの分野で頻用される。

概説[編集]

デシベルを解説するのだが、都合上、まず「ベル」について解説する。

「ベル」の語源は、アレクサンダー・グラハム・ベルが電話における電力の伝送減衰を表わすのに最初に用いたことに由来する[2]

ベル[編集]

物理量のレベル表現とは、その物理量の基準とする量に対する比の対数で表した量である。底が10である常用対数によりレベル表現をする場合の単位がベル(bel、記号: B)と定義される。

基準量を A0 としたとき、物理量 A のレベル表現が LA であるとき

の関係がある。

ベルは十進法における桁の差を表したものと言える。例えば、AA0 の1000倍、すなわちちょうど3桁大きい場合

となり LA = 3 B である。

例えばゲインが1段で100倍のアンプを2段重ねると、全体のゲインは 100 × 100 で10000倍になる。これをベルであらわすと、1段は2ベルである。それが 2 + 2 = 4 で、全体で4ベルすなわち10000倍となる。このように、対数で表現することで、倍率と倍率の組み合わせで乗算になる計算を、加算で済ませることができる、という利便性がある。

さらに1000倍×1000倍といった値を扱う分野では1/100万から100万のように幅広い桁数の値を扱うことになるが、ベルの値であれば-6から+6と扱い易い値でとりあつかうことができる。

デシベル[編集]

よく使われる1/10倍から10倍の範囲は−1ベルから+1ベルとなる、つまりたいていの場合−0.*ベルとか+0.*ベルとなり、ベルは少々使い勝手が悪い。そこで数値が10倍になるように単位の方を1/10倍したデシベルが通常よく使われる。デシベルはベルに101を意味するSI接頭辞デシ(記号: d)を付けたものである。

基準量 A0 に対する A のレベル表現 LA をデシベルによって表すと

となる。 その定義から、0デシベルで1倍、10デシベルで10倍、20デシベルで100倍である。1デシベルは約1.259倍である。また「10デシベルで1桁違う」ということから「1デシベルで0.1桁違う」とも言える。

デシベルによる表現は、音の強さ(音圧レベル)や、電力の比較、減衰などをエネルギー比で表すのに使用される。

レベル表現は二つの量の相対的な関係を表現するものだが、絶対的な値を表現するために、各分野で基準値である0dBに相当する量が定義されている。

電磁波の減衰、音圧レベル、振動加速度レベルについては、計量法において、「取引又は証明」に用いるべき単位としてデシベルを定めている。後2者は、それぞれ、音圧 (Pa) および振動の加速度 (m/s2) の基準値に基づいて定義された、絶対デシベルである。電磁波の減衰は相対比をデシベル表現したもの(相対デシベル)である。

電力利得と電圧利得[編集]

デシベルは増幅器や減衰器の利得(ゲイン)を表す場合にも用いられる。

デシベルで表す電力利得 LP は、入力電力を Pin 、出力電力を Pout とすると、

である。

また、デシベルで表す電圧利得 LV は、入力電圧を Vin 、出力電圧を Vout とすると、

である。

入出力のインピーダンスが等しい場合、

すなわち

となる。

相対量としてのデシベル[編集]

相対量としてのデシベルは基準量との比をレベル表現で表すものである。相対量であることを明示するために dBr という表記をする場合もある。

デシベル値・場の量[3](電圧など)の比・工率の量(電力など)の比を表にして示す。

デシベル値 場の量の比 工率の量の比
0 dB 1.000 倍 1.000 倍
1 dB 1.122 倍 1.259 倍
2 dB 1.259 倍 1.585 倍
3 dB 1.413 倍 1.995 倍
4 dB 1.585 倍 2.512 倍
5 dB 1.778 倍 3.162 倍
6 dB 1.995 倍 3.981 倍
7 dB 2.239 倍 5.012 倍
8 dB 2.512 倍 6.310 倍
9 dB 2.818 倍 7.943 倍
10 dB 3.162 倍 10.00 倍
11 dB 3.548 倍 12.59 倍
12 dB 3.981 倍 15.85 倍
13 dB 4.467 倍 19.95 倍
14 dB 5.012 倍 25.12 倍
15 dB 5.623 倍 31.62 倍
16 dB 6.310 倍 39.81 倍
17 dB 7.079 倍 50.12 倍
18 dB 7.943 倍 63.10 倍
19 dB 8.913 倍 79.43 倍
20 dB 10.00 倍 100.0 倍
30 dB 31.62 倍 1,000 倍
40 dB 100.0 倍 10,000 倍
50 dB 316.2 倍 100,000 倍
60 dB 1,000 倍 1,000,000 倍

場の量で 6 dB は約 2 倍、 12 dB は約 4 倍、 14 dB は約 5 倍、 17 dB は約 7 倍、 18 dB は約 8 倍、 19 dB は約 9 倍、 20 dB は正確に 10 倍である。工率の量では 3 dB は約 2 倍、 6 dB は約 4 倍、 7 dB は約 5 倍、 9 dB は約 8 倍、 10 dB は正確に 10 倍である。

電圧や電流では 10 倍であることを +20 dB とか 20 dB 大きいといい、 1/10 であることを −20 dB とか 20 dB 小さいという。電力では 100 倍であることを +20 dB とか 20 dB 大きいといい、 1/100 であることを −20 dB とか 20 dB 小さいという。一見厄介に思えるが、電圧が 10 倍だと電流も 10 倍で電力は 100 倍ということをすべて +20 dB で表現できる。逆に 10 倍では電圧のことなのか電力のことなのかいちいち確かめなくてはならず、慣れるとむしろデシベルで表現する方がわかりやすい。

ただし、どんな場合でも電圧の 1/2 が −6 dB になるわけではない。たとえば工率を計測する機器で出力電圧の 1/2 が工率の 1/2 を表す場合、それは −6 dB ではなく −3 dB である。当然のことながら計測対象の性質を考慮することが必要である。


絶対量としてのデシベル[編集]

基準となる物理量をあらかじめ決めておくと、デシベルで物理量を直ちにレベル表現できるようになる。これは音響など特定の分野で非常に便利であり多用される。その例を下記に示す。

ただし国際度量衡総会 (CGPM) の立場ではデシベルはあくまで相対量であり、基準量を示す必要があるとしている。その表現方法としては、アメリカ国立標準技術研究所 (NIST) から発行されている「Guide for the Use of the International System of Units (SI)」[1]の 7.4 節に次のように記されている。

ある量の値を表現する場合、量やその測定条件に関する情報を提供するために単位に文字や記号を添えるのは正しくない。そのような場合には量記号に文字や記号を添えるべきである。
Vmax = 1000 V
こうではなくV = 1000 Vmax

従って下記に示す dBSPL などの表記も正しくなく、 Lp (re 20 μPa) = x dB もしくは Lp/(20 μPa) = x dB と表記するべき、というのが CGPM の立場である。実際にはいちいち Lp (re 20 μPa) = ... などとやっていられない場合も多く(たとえば図中に記入する場合)、そのような場合には x dB (20 μPa) のような表記を CGPM は認めている。

要するに CGPM としては dBSPL とか dBSIL といった特定用途向けの単位を乱造するのではなく、 20 μPa なり 1 pW/m2 なりの基準量を明示して相対量として dB を使えということだ。しかしそれらの単位が作られた理由はまさに特定用途において便利だからであり、 CGPM の思惑どおりになるかどうかは不明である。

dBSPL(Sound Pressure Level, 音圧レベル)
圧力である音圧に対して用いられる。媒体が空気の場合、基準量は 20 μPa (0 dBSPL = 20 μPa = 20×106 Pa)。 20 μPa はかつて人間の 1 kHz における最小可聴値とされていた。現在の等ラウドネス曲線 (ISO 226:2003) によれば 1 kHz における最小可聴値は 30 μPa 程度だが、音圧レベルの基準が変わっては困るのでそのままになっている。
dBSIL(Sound Intensity Level, 音の強さレベル)
単位断面積を単位時間あたりに通過する音のエネルギーである音の強さに対して用いられる。基準量は 1 pW/m2 (0 dBSIL = 1 pW/m2 = 1012 W/m2)。
dBFS (Full Scale)
デジタル音声のレベルに対して用いられる(アナログ音声には用いない)。基準量は規格上の最大レベル。したがって基本的には 0 dBFS がレベルの上限となる。ただし扱う波形が正弦波に限らない場合、実効値は 0 dBFS 正弦波の実効値を超える場合がある。
dBW, dB(W)
1 W を基準量とする電力のレベル表現 (0 dBW = 1 W)。
dBm, dB(mW)
1 mW を基準量とする電力のレベル表現 (0 dBm = 1 mW = 103 W)。音響の分野で誤って電圧に対して用いられていることがある(dBv の項を参照)。
dBp, dB(pW)
1 pW (ピコワット)を基準量とする電力のレベル表現 (0 dBp = 1 pW = 1012 W)。無線通信など小さい電力を扱う分野で用いられる。
dBf, dB(fW)
1 fW (フェムトワット)を基準量とする電力のレベル表現 (0 dBf = 1 fW = 1015 W)。無線通信など小さい電力を扱う分野で用いられる。
dBV, dB(V)
1 Vr.m.s. を基準量とする電圧のレベル表現 (0 dBV = 1 V)。
dBv
775 mVr.m.s.[4] を基準量とする電圧のレベル表現 (0 dBv = 775 mVr.m.s. = 0.775 Vr.m.s.)。主に業務用音響機器の音声信号に対して用いられ、 600 Ω純抵抗の消費電力が x dBm のときの電圧が x dBv という関係にある。古典的な業務用音響機器は 600 Ωでインピーダンス整合されており、信号レベルの単位には dBm が用いられていた。実際には電力でなく電圧を見ている場合が多かったが[5]、インピーダンスが決まっていれば電力と電圧は一対一で対応するので問題なかったのである(50 Ω, 75 Ωなどで整合される高周波回路でも同じ)。後に 600 Ωで整合されない機器が多くなり、対象を明確に電圧に変える必要に迫られ、 600 Ωにおいて dBm と互換性があるように考えられたのがこの dBv という単位である。しかし dBV と非常に紛らわしいため、現在では dBu と表記する方が普通。なお、信号レベルの単位に dBm が用いられていた時代が長かったため、現在でも誤って dBm が電圧に対して 0 dBm = 775 mVr.m.s. として用いられていることがある。
dBu
意味は dBv と全く同じ。 dBv が dBV と非常に紛らわしいため、現在では dBu の方が普通。
dBs
意味は dBv と全く同じ。日本放送協会で使われるが、それ以外ではほとんど見かけない。
dBμV, dB(μV)
1 μVr.m.s. を基準量とする電圧のレベル表現 (0 dBμV = 1 μVr.m.s. = 106 Vr.m.s.)。主に無線通信の分野で用いられる。
EMF (ElectroMotive Force)
無線通信の分野で高周波信号発生器 (SG) の出力電圧を表す場合、 SG 出力を終端した状態の電圧(終端電圧)で表す場合と SG 出力を開放した状態の電圧(起電力、 Electromotive Force)で表す場合とがある。 EMF と表示されていれば起電力である。整合終端では 6 dB の差があり、例えば 50 Ω系の場合、整合終端の 107 dBμV と EMF の 113 dBμV はどちらもほぼ 0 dBm に相当する。日本では業務用無線機や PDC 方式携帯電話機で EMF が用いられることが多く、米国やアマチュア無線では終端電圧が用いられることが多い。規格や仕様によっては EMF が省略され明記されていない場合があり注意が必要である。 dBm, dBf など電力による表示なら間違えるおそれがない。
dBi
アイソトロピックアンテナ(全ての方向に均等に電波を放射する仮想的なアンテナ)を基準とするアンテナの利得。ダイポールアンテナを基準にする場合は dBd または単に dB と表す。 dBi 表記は dBd より 2.15 大きい。

符号位置[編集]

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+33C8 - ㏈
㏈
デシベル

Unicodeには、デシベルを表す上記の文字が収録されている。これはCJK互換用文字であり、既存の文字コードに対する後方互換性のために収録されているものであるので、使用は推奨されない[6][7]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d 大辞泉
  2. ^ 騒音の計測単位-なぜdBという対数尺度を使用するか”. 小野測器. 2014年4月15日閲覧。
  3. ^ 工率平方根の量ともいう。
  4. ^ 厳密には 0.6 Vr.m.s.
  5. ^ アンプ類の負帰還では電圧を見ていたし、歪率などの特性も電圧で測定されていた。
  6. ^ CJK Compatibility” (2015年). 2016年2月21日閲覧。
  7. ^ The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。

関連項目[編集]

音響・聴覚関連