SI併用単位

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SI併用単位(エスアイへいようたんい)とは、国際単位系(SI)には属さないが、SIとの併用が国際度量衡委員会(CIPM)により認められている単位である。

SI基本単位やそれを組み立てたSI組立単位は、計算の際に単位の換算をしなくて済むという利点があり、全ての人がSI単位を使用することで、その利点がより発揮されることになる。しかし、実際にはいくつかの非SI単位が科学、技術、通商の分野でも使用されており、それらは今後も使われ続けることが予想される。そのため、SIの国際文書ではそれらの非SI単位についても触れ、そのうちのいくつかを「SI単位と併用される非SI単位」「SIとの併用が認められている単位」としている。SIでは、これらの単位のSIとの併用は認めているものの、使用を推奨しているわけではない。[1]

SI併用単位[編集]

下記に、SI国際文書第8版(2006年)(及び2014年3月に発出された補遺[2]によるアップデート[3])第4章「SIに属さない単位」で挙げられている非SI単位の全てを列挙する。

これらのうち、SI単位との併用が認められているのは表6中の10個の単位および表7中の電子ボルトドルトン統一原子質量単位の3個の単位、合わせて13個の単位である。

表6 SI単位と併用される非SI単位[編集]

この表中の単位は、SI単位との併用が認められている。

このうち、天文単位(au)は2014年3月の第103回CIPMによって、この表6に採用されたものである[4]。その記号は、au と定められた(2014年3月以前の記号は、ua であった[5])。ただし、国際単位系(SI) 国際文書第8版 2006年の日本語訳[6]においては、補遺(2014年3月に発出)による修正がなされていないため、2015年12月現在、含まれていない。

単位の名称 単位の記号 SI単位による値
時間 min 1 min = 60 s
(a) h 1 h = 60 min = 3600 s
d 1 d = 24 h = 86 400 s
平面角 (b,c) ° 1° = (π/180) rad
1′ = (1/60)° = (π/10 800) rad
(d) 1″ = (1/60)′ = (π/648 000) rad
面積 ヘクタール(e) ha 1 ha = 1 hm2 = 104 m2
体積 リットル(f) L, l 1 L = 1 l = 1 dm3 = 103 cm3 = 10-3 m3
質量 トン(g) t 1 t = 103 kg
長さ 天文単位(h) au 1 au = 149 597 870 700 m

(a) この単位の記号については,第 9 回 CGPM(1948; CR 70)の決議 7 に含まれている.

(b) ISO 31 は平面角の単位,分及び秒を用いるよりも,10 進法による小数点以下の数値を使用して度で表すことを推奨している.しかし航法や測量の分野では,緯度の 1 分が地球表面で凡そ 1 海里の距離に相当することから,分を使う利点がある.

(c) 単位ゴン(gon またはその別名 grad)は(π/200) rad の値をもつ平面角の単位である.したがって,100 ゴンが直角を表す.極から赤道までの距離がほぼ 10 000 km であるから,地球の中心から見た 1 センチゴンは地球表面で約 1 km に相当する.これが航法でゴンが使われる理由であるが,ゴンが使われることは稀である.

(d) 天文学で小さい平面角は,アーク秒(as または ” の記号を使う),ミリアーク秒(mas),マイクロアーク秒(μas),ピコアーク秒(pas)で測られる.アーク秒は平面角「秒」の別名である.

(e) ヘクタールの名称と記号 ha は 1879 年の国際度量衡委員会(議事録 1879, 41)で採択された.土地の面積を表すために使用される.

(f) 単位リットルとその記号の小文字のl(エル)は 1879 年の国際度量衡委員会(PV,1879, 41)により採択された.もう一つの記号大文字のLは,小文字のlと数字の1との混同による危険を避けるために,第 16 回 CGPM(1979, 決議 6, CR 101,及びMetrologia, 1980, 16, 56-57)で採択された.

(g) 単位トンとその記号 t は 1879 年の国際度量衡委員会で採択された(議事録 1879, 41).英語圏の国々では,この単位を通常「メートル系トン」と称している.

(h) 長さの単位である天文単位は,国際天文学連合の第18回総会で再定義された(2012年,決議B2)


表7 SI単位で表される数値が実験的に求められる非SI単位[編集]

この表のうち、電子ボルトドルトン統一原子質量単位の3つは、SIとの併用が認められている。 この表のうち上記の3つ以外の10個の単位(自然単位系の4単位、原子単位系の6単位)はSIの併用が認められていないが、物理学の分野で広く使用されているため参考として掲載されている。天文単位(au)は、2014年3月に、この表7から表6に移された。

単位の名称 単位の記号 SI単位による値(a)
SIとの併用が認められている単位
エネルギー 電子ボルト(b) eV 1 eV = 1.602 176 565(35)×1019 J
質量 ダルトン(c) Da 1 Da = 1.660 538 921 (73)×1027 kg
統一原子質量単位 u 1 u = 1 Da
自然単位系(n.u.)
速さ 速さの自然単位
(真空中の光の速さ
c0 299 792 458 m/s(正確に)
作用 作用の自然単位
換算プランク定数
ħ 1.054 571 726 (47)×1034 J·s
質量 質量の自然単位
電子質量
me 9.109 382 91 (40)×1031 kg
時間 時間の自然単位 ħ/(mec02) 1.288 088 668 33 (83)×1021 s
原子単位系(a.u.)
電荷 電荷の原子単位
電気素量
e 1.602 176 565(35)×1019 C
質量 質量の原子単位
(電子質量)
me 9.109 382 91 (40)×1031 kg
作用 作用の原子単位
(換算プランク定数)
ħ 1.054 571 726 (47)×1034 J·s
長さ 長さの原子単位(ボーア)
ボーア半径
a0 0.529 177 210 92 (17)×1010 m
エネルギー エネルギーの原子単位(ハートリー
(ハートリーエネルギー)
Eh 4.359 744 34 (19)×1018 J
時間 時間の原子単位 ħ/Eh 2.418 884 326 502 (12)×1017 s

(a) この表のなかの「SI 単位による値」は,基礎物理定数の 2010 年 CODATA 推奨値(P. J. Mohr, B. N. Taylor, D. B. Newell : Rev. Mod. Phys., 2012, 84, 1527-1605)から採られている.各数値の最後の 2 桁の標準不確かさを括弧内に示す.

(b) 電子ボルトの大きさは,真空中において 1V の電位差を通過することにより電子が得る運動エネルギーである.電子ボルトは,しばしば SI 接頭語を付して使われる.

(c) 単位ダルトン(Da)と統一原子質量(u)は,静止して基底状態にある自由な炭素原子 12C の質量の 1/12 に等しい質量の別名(記号)である.大きな分子の質量を表す場合あるいは原子分子の小さな質量差を表す場合に,しばしばSI接頭語と組み合わせて,キロダルトン:kDa,メガダルトン:MDa,あるいはナノダルトン:nDa,ピコダルトン:pDa などの単位と記号が使われる.

(注)上記の数値は、2010CODATAに基づくものである。CIPMではまだ採用していないが、2014CODATAの数値が最新である。

表8 その他の非SI単位[編集]

表8は、特定の分野で使用される非SI単位を挙げたものである。これらの単位を使用するときは対応するSI単位による定義を明示しなければならない。表8のうち、ネーパ・ベル・デシベルはSIとの併用が国際度量衡委員会CIPM)により認められている。 バールとベルはSI接頭辞と併用される(ミリバール・デシベル)。特にベルは接頭辞なしではほとんど用いられないので、接頭辞つきのデシベルも掲載してある。

単位の名称 単位の記号 SI単位による値
圧力 バール(a) bar 1 bar = 0.1 MPa = 100 kPa = 105 Pa
水銀柱ミリメートル(b) mmHg 1 mmHg ≈ 133.322 Pa
長さ オングストローム(c) Å 1 Å = 0.1 nm = 100 pm = 10-10 m
距離 海里(d) M 1 M = 1852 m
面積 バーン(e) b 1 b = 100 fm2 = (10-12 cm)2 = 10-28 m2
速さ ノット(f) kn 1 kn = (1852/3600) m/s
比の対数 ネーパ(g,j) Np 脚注(j)参照
ベル(h,j) B 脚注(j)参照
デシベル(h,j) dB 脚注(j)参照

(a) 単位バールとその記号は第 9 回 CGPM の決議 7(1948; CR, 70)に示されている.1982年以降,1 バールは,すべての熱力学量を記載する際の基準圧力とされている.1982より前は,基準圧力は標準大気圧である1.013 25 bar または 101 325 Pa であった.

(b) いくつかの国では水銀柱ミリメートルの単位を血圧を測る際の法定単位としている.

(c) 単位オングストロームはX線結晶学や構造化学の分野で広く使用されている.すべての化学結合の長さが1ないし3オングストロームの範囲に入るからである.しかし国際度量衡委員会も国際度量衡総会もこの単位の使用を公式には認めていない.

(d) 海里は,航海及び航空における距離を表すのに使用される特別な単位である.協約値として用いられる値は「国際海里」の名称のもとに,1929 年モナコでの第 1 回水路学臨時大会で採用された.しかしいまだに国際的に承認された記号はなく,M, NM,Nm, nmi などが使用されている.この表では M を使っている.この値は,地球中心からみた角度1分に対応する地球表面の距離に相当するので,緯度・経度を度・分の単位で測る際に便利であるという理由で採用され,使われている.

(e) バーンは核物理学で断面積を表す単位として使われている.

(f) ノットは 1 時間に 1 海里進む速さである.国際的に合意された記号はないが,kn がよく使われる.

(g) LA = nNp とは,正弦波信号の振幅を A1,A2 としたとき ln(A2/A1) = n であることを意味する.したがって,LA = 1 Np のとき A2/A1 = e である.LAはネーパによる振幅比の対数(neperian logarithmic amplitude ratio)またはネーパによる振幅レベル差(neperian amplitude level difference)とよばれる.

(h) LX = m dB = (m/10)B とは X を平均2乗信号あるいはパワーに対応する量としたとき,lg(X/X0) = m/10 であることを意味する.したがって,LX = 1 B のとき X/X0 = 10,LX = 1 dBのとき X/X0 = 101/10である.LXは X0を基準とするパワーレベルとよばれる.

(i) これらの単位を使用するときは,量の内容および基準とする値を特定しなければならない.これらは SI 単位ではないが,国際度量衡委員会により SI と併用することが認められている.

(j) ネーパ,ベル,デシベルの SI 単位による数値,またベル,デシベルとネーパの関係式は通常,必要とされない.これらはどのように対数量を定義するかに依存する.

表9 CGS単位系およびCGSガウス単位系に属する非SI単位[編集]

表9も特定の分野で使用される非SI単位を挙げたものである。これらの単位を使用するときは対応するSI単位による定義を明示しなければならない。 表 8 と表 9 を区別したのは、表 9 の単位が、古い CGS 電気単位を含む CGS(センチメートル・グラム・秒)単位系に関係するという理由からである。

単位の名称 単位の記号 SI単位による値
エネルギー エルグ(a) erg 1 erg = 10-7 J
ダイン(a) dyn 1 dyn = 10-5 N
粘度 ポアズ(a) P 1 P = 1 dyn·s/cm2 = 0.1 Pa·s
動粘度 ストークス St 1 St = 1 cm2/s = 10-4 m2/s
輝度 スチルブ(a) sb 1 sb = 1 cd/cm2 = 104 cd/m2
照度 フォト ph 1 ph = 1 cd·sr/cm2 = 104 lx
加速度 ガル(b) Gal 1 Gal = 1 cm/s2 = 10-2 m/s2
磁束 マクスウェル(c) Mx 1 Mx = 1 G·cm2 = 10-8 Wb
磁束密度 ガウス(c) G 1 G = 1 Mx/cm2 = 10-4 T
磁界の強さ エルステッド(c) Oe 1 Oe ≈ (103/4π) A/m

(a) この単位および記号は第 9 回 CGPM の決議7(1948; 報告 70)に示されている.

(b) ガルは測地学及び地球物理学で重力加速度を表すための加速度の特別な単位である.

(c) これらの単位は有理化されていない関係式に基礎を置いたいわゆる 3 元 CGS 電磁単位系の一部である.したがって,四元四量の有理化された電磁気学の方程式に基礎をおいた SI 単位に対応させるときは注意する必要がある.磁束 Ф および磁束密度 Bは CGS と SI で同様な式で定義されるので,表のように対応する SI の数値を示すことができる.しかし,磁場の場合は H(非有理化) = 4π ´ H(有理化)であるので,H(非有理化) = 1 Oe は H(有理化) = (103/4π) A m−1に対応するという意味で,表中に記号 =ˆが使われている.

参考文献[編集]

  1. ^ 国際単位系(SI) 国際文書第8版 2006年(日本語訳) pp.35-36の本文の記述
  2. ^ [1] の、Supplement 2014: updates to the 8th edition of the SI Brochure (French and English)、p.4(フランス語)又はp.13(英語)など
  3. ^ 国立天文台編、理科年表2016、p.373、2015年11月30日発行、丸善出版(株)、ISBN 978-4-621-08966-8
  4. ^ 「SIパンフレット」(https://www.nmij.jp/public/pamphlet/ 「国際単位系(SI)は世界共通のルールです」2015年12月改定)の、第5ページ、「表-E SIに属さないが、SIと併用される単位」の最後の行・天文単位
  5. ^ 国際単位系(SI) 国際文書第8版 2006年(日本語訳)、訳・監修 (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター p.38の第7表、長さ 天文単位の欄
  6. ^ 国際単位系(SI) 国際文書第8版 2006年(日本語訳)、訳・監修 (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター p.36の第6表