SI基本単位
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SI基本単位(エスアイきほんたんい、フランス語: fr:unités de base du Système international、英語: base units of the SI 又はSI base units)とは、国際単位系(SI)において、基本単位として位置付けられている7つのSI単位である。これらは国際量体系(ISQ)において基本量として位置付けられている7つの物理量のSI単位である。
概要[編集]
全ての物理量は、次元解析により基本量の組み合わせにより表現することができる。これと対応して、すべての一貫性のあるSI単位はSI基本単位の組み合わせのみによって表現することができる。
SI基本単位は、SIの前身であるメートル法において、一つの量に対して数ある大きさの単位が存在する状況から、一つの量に対して一つの単位に一本化する、という事を目的として選ばれたものである。
以前の定義では、SI基本単位を通してSI組立単位が定義されており、SI基本単位はSIの基本となる単位であったが、2018年の改定によりSIは7つの定義定数により定義されるようになり、全ての一貫性のあるSI単位が7つの定義定数の組み合わせにより直接に構築されるため、SI基本単位とそれ以外のSI単位(SI組立単位)との区別の必要性は原則として不要となった[1]。
一覧[編集]
SI基本単位は、以下の7つである[2]。これらの単位は、それぞれ数値が固定された7個の定義定数(defining constants)をもとに定義されており、次元的に独立している。定義中に基本単位ではない単位が含まれるものもあるが、いずれも基本単位に由来するものであり、循環定義ではない。
基本単位の列挙順序は2019年に、以下の表のとおり、時間・長さ・質量・・・となった[3]。これは時間の基本単位である秒の定義が他のどの基本単位にも依存しておらず、最初に掲げられるべき物理量であるからである。それ以前には、18世紀以来の伝統的な列挙順序である、長さ・質量・時間・・・の順序であった。単位の定義は、それぞれの項目を参照のこと。
物理量 | 単位 | 定義[4] | かつての定義 | |
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時間 | 秒 | s | セシウム133原子の基底状態の2つの超微細構造準位間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍に等しい時間 | 平均太陽日の1/86400 |
長さ | メートル | m | 真空中で1秒間の299792458 分の1の時間に光が進む行程の長さ | 地球のパリを通る北極点から赤道までの長さの1000万分の1 |
質量 | キログラム | kg | プランク定数を6.62607015×10−34 ジュール秒とすることによって定まる質量 | 最大密度温度での1 Lの水の質量 |
電流 | アンペア | A | 電気素量を1.602176634×10−19 クーロンとすることによって定まる電流 | 真空中に1メートルの間隔で同じ大きさの電流が流れているとき、両者の間に働く力が1メートルにつき2×10−7ニュートンであるときの電流 |
熱力学温度 | ケルビン | K | ボルツマン定数を1.380649×10−23 ジュール毎ケルビンとすることによって定まる温度 | 水の標準大気圧下での融点と沸点の温度差の100分の1 |
物質量 | モル | mol | 6.02214076×1023(アボガドロ数)の要素粒子で構成された系の物質量 | 1 g/molの原子量または分子量 |
光度 | カンデラ | cd | 周波数 540テラヘルツの単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が 1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度 | 燭(ろうそく1本の光度) |
2019年の再定義[編集]
上記のうち、キログラム、アンペア、ケルビン、モルは、2018年11月16日に第26回国際度量衡総会において、新しい定義に置き換えられ、2019年5月20日から施行された。秒、メートル、カンデラについては、定義の本質は変わらないが、文言が変更された[5]。
計量法の定義の変更[編集]
第26回国際度量衡総会の決議に基づき、日本の計量単位令におけるSI基本単位の定義が改正された。この改正では、必要最小限の簡潔な定義となっている[6]。なお、秒、メートル、カンデラの定義文は改正されていない。
脚注[編集]
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.98、「2018年に七つの定義定数の数値を定めることによって SIを定義することになり、この基本単位と組立単位の区別の必要が原則として不要となった。あらゆる単位、すなわち基本単位と組立単位は定義定数から直接構築できるようになったためである。とは言え、基本単位と組立単位という概念は保持されている。これは、この概念が有用かつ歴史的に定着したものであるためのみならず、ISO/IEC80000規格シリーズが、ここで定義されるSIの基本単位と組立単位に必然的に対応する基本量と組立量を規定しているからである。」産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.98、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- ^ 表1 SIの七つの基本単位 国際単位系(SI)第9版(2019)要約 日本語版、計量標準総合センター、産総研、経済産業省
- ^ "Table 1: The seven base units of the SI" (PDF). A concise summary of the International System of Units, SI (英語). p. 2. 2021年6月21日閲覧。
- ^ A concise summary of the International System of Units, SI Table 1 The seven base units of the SI
- ^ 計量単位令の一部を改正する政令案新旧対照条文 経産省 産業技術環境局 計量行政室、2019年5月14日
参考文献[編集]
- 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- 臼田 孝、”新しい1キログラムの測り方 - 科学が進めば単位が変わる”、ブルーバックスB-2056、講談社、2018年4月20日第1刷、ISBN 978-4-06-502056-2
- 安田 正美、”単位は進化する - 究極の精度をめざして”、DOJIN選書 078、化学同人、2018年8月20日第1版第1刷、ISBN 978-4-7598-1678-5