電子ボルト
| 電子ボルト (エレクトロンボルト) | |
|---|---|
| 記号 | eV |
| 系 | SI併用単位(SI単位で表される数値が実験的に得られるもの) |
| 量 | エネルギー |
| SI | 1.602176634×10−19 J(正確に) |
| 定義 | 電子1個を1Vの電位差で加速したときに得るエネルギー |
物理学において、電子ボルト(エレクトロンボルト、英: electron volt、記号: eV[1])とはエネルギーの単位のひとつ。
素電荷(そでんか)(すなわち、電子1個分の電荷の符号を反転した値)をもつ荷電粒子が、1 V の電位差を抵抗なしに通過すると得るエネルギーが 1 eV。2019年のSI基本単位の再定義により、1 eVは正確に1.602176634×10−19 Jである。
概要[編集]
自由空間内で電子一つが 1 V の電圧で加速されるときに得るエネルギーを 1 eV と表記し、1 電子ボルト(エレクトロンボルト、electron volt)と呼ぶ[2]。素粒子物理学をはじめ、原子核物理学、物性物理学、高エネルギー物理学、あるいは化学、半導体工学などの幅広い分野でも使用されるエネルギーの単位である。
eVを千倍するごとの単位は、keV(ケブ)、MeV(メブ)、GeV(ジェブ)(米 BeV; ベブ)、TeV(テブ)、PeV(ペブ)、EeV、ZeV である(カッコ内は習慣的な発音)。また、千分の1倍ごとに、meV、μeVとなる。
物性物理学分野では数 meV - 数 eV(もっと大きい場合もある)の範囲の議論が多く(1 meVが約10 Kに相当する)、高エネルギー物理学の分野では数 MeV - 数 GeV(あるいはそれ以上)の範囲の議論が多い。
宇宙物理学では、超新星の爆発などにより銀河系の中からやってくる宇宙線がTeV - PeVオーダー。また、銀河系の外の未知の起源によりあらゆる方向からやってきている宇宙線は、1粒が毎秒電球1個のエネルギーという超強力なZeVオーダーという[3]。
エネルギー単位間の換算[編集]
| ジュール (J = kg·m²/s²) |
キロワット時 (kWh) |
電子ボルト (eV) |
重量キログラムメートル (kgf·m) |
国際蒸気表カロリー (calIT) | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 J | = 1 | ≈ 2.778×10−7 | ≈ 6.242×1018 | ≈ 1.020×10-1 | ≈ 2.388×10-1 |
| 1 kWh | = 3.6×106 | = 1 | ≈ 2.247×1025 | ≈ 3.671×105 | ≈ 8.598×105 |
| 1 eV | ≈ 1.602×10−19 | ≈ 4.450×10−26 | = 1 | ≈ 1.634×10−20 | ≈ 3.827×10−20 |
| 1 kgf·m | = 9.80665 | ≈ 2.724×10−6 | ≈ 6.121×1019 | = 1 | ≈ 2.342 |
| 1 calIT | = 4.1868 | ≈ 1.163×10−6 | ≈ 2.613×1019 | ≈ 4.269×10-1 | = 1 |
質量との換算[編集]
エネルギーと質量の単位は、互いに変換できる。これは、アルベルト・アインシュタインによる特殊相対性理論の帰結として有名な、質量とエネルギーの等価性の式「E=mc2」による(E:エネルギー、m:質量、c:真空中の光速度)。
この関係から、素粒子の質量の単位として、eVを光速度の二乗で割った「eV/c2」が使われている(単位でありながら中に斜線が使われているのが一見紛らわしいが、慣れ親しんでいるkm/hと同様と考えればよい)。発音例は「ee-vee per see-squared」、「ee-vee over see-squared」など[4]。
キログラムへの換算は次のとおり。1 eV/c2 ≈ 1.782662×10−36 kg .[5](1eV = 1.602176634×10−19 J を光速度 c = 2.99792458×108 m/s の自乗で割って求められる。)
電子の質量は約 0.5109989500 MeV/c2[6]、陽子の質量は約 938.2720882 MeV/c2[7]、統一原子質量単位 1 u (ダルトンともいう)は陽子の質量に近く約 931.4941024 MeV/c2 [8]に相当する。
※自然単位系の元でeVはエネルギーそのものの次元と解釈できることに注意。
温度との換算[編集]
統計力学のボルツマンの公式に基づき、電子ボルト単位で表された値はボルツマン定数 kB (正確に1.380649×10−23 J/K)で割って温度(ケルビンを単位とする熱力学温度)に換算できる。
したがって、3/2 eV の平均運動エネルギーをもつ三次元単原子分子からなる理想気体の温度は 11604.5181 K となる。
典型的な磁場閉じ込め方式核融合炉のプラズマ温度として15 keVを例にとり、1 / ボルツマン定数 を掛けると、約170 MK(メガケルビン)(約1億7千万度)を得る。
主な利用場面[編集]
電子ボルトeVという単位は、日常生活ではあまり用いられないが、巨視的な物質や現象を素粒子1個単位から記述するには便利である。このため学問や産業の現場において、光子や電子、原子などの持つエネルギーの大きさを表す際に広く利用されている。以下、代表的な例をいくつか挙げる。
- 物質中の電子の持つエネルギーを表現する際に用いられる。たとえば外部から与えた電界によって全体の電位が 1 V 変化すると、電界中の電子の位置エネルギーがちょうど 1 eV 変化することになるため、計算上都合がよい。
脚注[編集]
- ^ ユニコード記号
記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称 ㋎ U+32CE-㋎㋎電子ボルト
electron volt - ^ 近角(2013) p.453
- ^ 宇宙の謎を解く三つの手法 同、PDFファイル - 東京大学宇宙線研究所
- ^ How to pronounce eV/c2 - _ Physics Stack Exchange
- ^ CODATA(evkg)
- ^ CODATA (electron mass)
- ^ CODATA (proton mass)
- ^ CODATA (uev)
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- 『理解しやすい物理 物理基礎収録版』近角 聰信, 三浦 登(編)、文英堂、2013年。
- S.グラストン, M. C. エドランド『原子炉の理論』伏見康治, 大塚 益比古(共訳)、1955年。
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