ラムエアインテーク

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ラムエアインテーク(: ram-air intake)とは、乗り物が移動する際に発生する空気の流れを利用して、エンジンインテークの内側に静的な圧力が発生するように設計された外気導入経路の一種である。

目次

概要 [編集]

1973年式ポンティアック・ファイヤーバードトランザムの455CIDラムエアーIVエンジン車。ボンネット上の後ろ向きに開口部を持つリバースドシェイカースクープが特徴で、市販車両へのラムエアインテーク導入の最初期の例でもある。

ラムエアインテークは、外気導入経路(インテーク)の入り口で発生する空気の運動エネルギーを静的な圧力に換える構造である。航空機のように高速で空中を移動する乗り物では発生する圧力が高く、燃焼室内への空気充填率を向上し出力が向上する。ラムエアー(ram-air)は「衝突する空気」という意味で、空気密度の薄い上空を時速500km/h以上の速度で飛行するジェット機においては登場した当初から標準的に[要出典]用いられた。

ラムエアインテークの概念は自動車やオートバイなどような陸上輸送機器の分野にも応用されるようになったが、陸上輸送機器の速度域においては空気充填率を高くする効果はほとんどない[要出典]。自動車やオートバイなどのラムエアインテークは走行風を積極的に利用した外気導入構造で、インテークの管内を流れる空気の流体抵抗による損失、すなわちポンピングロスを低減することができる。なおアメリカ車においてはポンティアック世界に先駆けてラムエアー商標[要出典]同様の形態のインテークを採用していた。

ラムエアインテークは、吸入口の断面積を狭くした上で吸気ダクト内部の断面積を急激に増やすことで、吸気流速を減速させることによって動作する。動的な空気の流れがダクト内で速度が落とされることで、ダクト内の静的な圧力が増大する。これはプレナム室(en:Plenum_chamber)の原理と同じものであり、圧力の増大と空気密度の増加の両方の効果によってエンジンパワーの増大が図られる。同様の概念そのものはキャブレターインテークマニホールド間のプレナムチャンバー、2ストローク機関の吸排気チャンバー、ターボエンジンのサージタンク等でも用いられているが、ラムエアインテークはチャンバー内の加圧に車体の外部で高速度で動く大気を直接用いる点が異なっている。[要検証 ]

ラムエアインテークは高性能なオートバイやレーシングカーに用いられる。市販自動車では1960年代に幾つかの高性能キャブレターを採用するアメリカ車に搭載され、1970年代燃料噴射装置を伴うターボチャージャーの普及などによって一度姿を消したが、近年再び市場に姿を現す例が見られた。

近代的なパラシュートでは、パラシュートのセルを加圧して翼状に広げるためにラムエアインテークの概念が用いられている。[独自研究?]

ラムエアインテークは低速度(厳密には亜音速以下の全ての速度域で)でも静的な圧力の上昇が図れるが、その数値は数パーセント程度にとどまる。外気の風速が速い場合かつ車体の進行方向に対して向かい風の場合には、ラムエアインテークはより小さな圧力損失で外気を取り込めることになる。圧力損失が少ないということは、圧縮による空気の加熱が少なくなることも意味している為、ラムエアインテークはコールドエアインテーク(en:Cold air intake)の役割も同時に果たすということにもなる。いくつかの自動車ではインテークの吸気口がラジエーターの後部に配置されている[1]場合があり、圧力自体は外部の大気圧とそれほど変わらないものの、吸気口からは熱く密度の低い空気が吸い込まれることになりやすい。このような状況の改善のためだけであればラムエアインテークの効果は小さくても構わない。極論を言えばボンネットに穴をあけて導風板を設けるだけでも十分である。しかしラムエアインテークに最大限の過給効果を発揮させたい場合には、ラムエアインテークと併用していくつかの吸気系統の軽度なチューニングを行うことで、シリンダー充填効率を改善させることができる。例を挙げると、新品且つ吸入損失の少ない素材を使用したエアクリーナーへの交換、大流量のエアフロメーターへの交換、エアクリーナーボックスとインテークチューブを大径化するなどして、フィルターからエンジンの間で吸気流速の損失が起こらない改善を行うことである。さらにはヘルムホルツ共鳴による慣性過給効果を狙った形状のインテークマニホールドや吸気ポート加工、排気スカベンジングによるシリンダー内の掃気性向上を狙った形状のエキゾーストマニホールドの採用など、総合的なチューニングがラムエアインテークの効果を真に発揮するためには必要不可欠である。[要検証 ]

航空機での利用 [編集]

航空機ではピトー管が飛行中のラム圧の測定に利用され、大気圧との対比によって航空機の対気速度を測定するのに用いられている。

エンジンの吸気デバイスとしては、対地相対速度が極めて高速なジェットエンジン航空機では、ラムエアインテークはごくありふれた装備である。むしろ、飛行中の胴体に対する動的な空気の流れを積極的に利用したインテークを用いなければ、ジェットエンジンはたちまちストールしてしまうため、最高速度の頭打ちの要因となる開口部を減少させて空気抵抗を抑えつつも、より効率の良い吸入空気量を得るために流体力学を駆使したインテークの研究は古くから非常に盛んに行われた。その中で生まれた古典的なインテークの一つであるNACAダクト(en:NACA_duct)のように、陸上の乗り物にその概念が応用された例も見られる。

なお、飛行中の吸入空気量を増大させる目的で機首側に開口部を持つエアスクープそのものは、第二次世界大戦前後のレシプロエンジン機にすでに見られたが、大戦中は出力増大の手法としてはスーパーチャージャーやターボチャージャーなど機械的な過給機の装着が主流となり、ラムエアインテークの概念のみで過給を行うことはあまり多くはなかった。


自動車での利用 [編集]

トヨタ・TF108ヤルノ・トゥルーリ車、フォーミュラカーは古くからこのような巨大なエアインテークを用いた空力設計が行われていた。

自動車においてはラムエアインテークは二つの傾向が見られる。フォーミュラ1インディカーを始めとするモータースポーツ参加車両では、ラムエアインテークは今日でも極めてポピュラーな装備である。特にフォーミュラカーにおいてはレギュレーション(車両規定)によって、機械的な過給機の装着が禁止されている例が多いため、インダクションポッドなどの大口径ラムエアインテークを装着することで、最高速度域での最大限の過給効果と効率的な外気導入を狙った空力設計が行われている。

市販車両においては、1960年代にポンティアックポンティアック・GTOなどにおいて、本来ダミーであったボンネットエアスクープを、キャブレターの吸入口に直接接続する機構をラムエアーの商標でディーラーオプションとして設定したことが始まりとされる。ポンティアック・ラムエアーは当初は単なるコールドエアインテークの域を出ないものであり、当時のGM内の内規に配慮して[2]カタログスペックも非ラムエアーエンジンと変わらないものとされていたが、GTOのモデルイヤーが進むごとに改良と性能向上[3]が図られていき、1970年代のポンティアック・ファイヤーバードの時代にオプション設定されたラムエアーIVでは、車体全体のエアフローが考慮され、フロントウインドウ直前の高圧域の空気を積極的に利用することを目的に、車体の後ろ向きに開口部が設けられたリバースドエアスクープを、ボンネットを貫通させる形で直接エアクリーナーボックスに接続するシェイカースクープ(en:shaker scoop)の形態が採られていた。

市販車両のラムエアインテークは、1970年代末に電子制御式燃料噴射装置で制御されたターボチャージャースーパーチャージャーが台頭し、1980年代に爆発的な普及を見せたことで一度姿を消してしまったが、2004年オーストラリアホールデンによってGTOが復活して以降、再びオプションとしてラムエアインテークが散見されるようになった。しかし、自動車における過給機は、かつてのような高速域での仮想排気量向上と出力アップを狙った、大きなタービンで低圧縮比、大ブースト圧のいわゆるドッカンターボのものはほぼ姿を消し、仮想排気量ではなく低回転域のトルク向上を狙った比較的小さなタービンで高圧縮比低ブースト圧の立ち上がりの良いものが主流となっているため、特性が前者の過給機に近いラムエアインテークは市販車両に搭載される事例は今後もごく限られたものに留まるとみられる。

なお、アフターマーケットパーツのエアクリーナーの中には、純正エアクリーナーボックスやコールドエアインテークをすべて取り外す形態をとるものがあり、その中の一部に専用のインテークパイプと導風板を併用することでラムエアインテークの効果を期待するように設計されたものが存在する。このようなエアクリーナーをショートラムエアインテーク(en:Short ram air intake)と呼ぶ場合がある。

オートバイでの利用 [編集]

2003年式カワサキ・ZX-6RR。ウインドシールド直下の穴がラムエアインテークである。

オートバイにおいては、現在では最高時速300km/h台を誇示するスーパースポーツを象徴する装備として、ラムエアインテークが広く用いられている。オートバイでは一般にラムエアシステムという名称で言われており、カタログスペック上に(あくまで理論値ではあるが)最大効果発揮時の出力を喧伝している車種もある。効率の良い設計がされているものの中には、ブースト比が1.2以上[4]に達する物もみられる。ただしこのブースト圧はあくまでインテーク経路内での数値である(後述)。

オートバイへの過給機の搭載は、1980年代初頭に電子式燃料噴射装置とターボチャージャーを搭載するオートバイが一部に見られたが、当時の燃料噴射装置の信頼性の問題や、低速度から過給が掛かることでかえって出力の過渡特性に問題が生じること、何よりも機構が複雑化して重量増大とコストアップに直結することから、自動車とは対照的にほとんど普及することなく終わった。

その後1980年代の2ストロークレーサーレプリカにおいて、カウル正面からエアクリーナーボックスへの冷気導入効果を狙ったコールドエアインテークが装着され始め、後に4ストロークレーサーレプリカなどにおいては、吸気用インテークとは別に、車速に感応するソレノイドバルブによってキャブレターフロート室内を高圧化する吸気経路を別途開くことで、より適正な燃料混合比を実現する工夫がなされたラムエアインテークが登場する。その後オートバイへの電子式燃料噴射装置の普及と共に今日のごくシンプルなラムエアインテークへと移行していった。電子式燃料噴射装置とラムエアインテークとの適合は吸気温センサーや外気圧センサーを用いたフィードバック制御が一般的である。なお加速時においてより安定した出力過渡特性を実現するために簡素なブローオフバルブをエアクリーナーボックスに取り付ける例もある。

ラムエアインテークによる過給は概ね時速200km/h以上の高速域で効果を発揮するために、機械的な過給装置のような低速域の出力特性に対する影響度はほとんどない上に最高速域においても理論上3~5%程度の出力向上に留まる。一般にラムエアインテークは過給システムの一種と認識されることが多いが、とりわけノーマル市販車の場合はインテーク経路およびエアクリーナーエレメント手前までの過給しかできないため、ターボチャージャーやスーパーチャージャーのような混合気の充填効率向上効果はさほど見込めない。そのため技術者の間では「ラムエアインテークのみでは厳密な意味での過給装置ではない」という見解が常識である。 ただし前述された冷気導入効果という点においては確実に効果が期待できる。同じ大気圧中ならば吸気温度が低いほど吸気中の酸素密度がより高密度なので、より多くの燃料を効率的に燃焼するためには有効なシステムである。実際のところ出力向上に関しては冷気導入効果の働きによる割合が大半である。

市販の高性能車の大半にラムエアインテークが採用される理由としては前述の冷気導入効果を見込んでいることはもちろん、「ラムエアインテーク採用車=高性能マシン」という外観上の商品価値を考慮している面も大きい。車両によってはカウリングにダミーのラムエアインテーク(実際はただの穴)を備えた車両もあるほどで、消費者に訴える視覚的アピールは大きいギミックだと言える。

脚注 [編集]

  1. ^ いわゆるキャブレターのファンネル仕様などではこの状況が避けられない場合も多い。
  2. ^ 当時のGMではフラッグシップシボレー・コルベット以外の他部門の車種では、過剰な性能宣伝を行うことが抑制されていた。
  3. ^ 1966年ごろのラムエアーIIで5馬力前後、1969年頃のラムエアーIIIでは10-15馬力前後向上
  4. ^ 過給圧で換算した場合0.2kg-mm相当となる。

関連項目 [編集]

参考資料 [編集]