方位磁針
方位磁針(ほういじしん)は、磁石の作用を用いて方位を知るための道具である。
用いられる場面や仕様の違いにより、単に「磁針」と呼ばれたり、「方位磁石」「コンパス」「磁気コンパス」「羅針盤(らしんばん)」などとも呼ばれることもある。
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[編集] 概略
方位磁針は磁石を自由に回転できるようにしたものである。磁石は地磁気に反応してN極が北(磁北)を、S極が南(磁南)を向く。最も単純なものとしては、非常に軽く作った磁石を針の上に乗せたり、磁石を水に浮かべるだけで実現する。
上記の原理からも判るように、方位磁針は厳密に見れば真北を指しているわけではない。真北と、方位磁針が示している北、それら2つの差は「コンパスエラー」「コンパス誤差」「コンパス違差」などと呼ばれる。記号では「C.E.」と略記される。
[編集] 真北と磁北のズレ(偏角)
方位磁針が示すのは、地磁気の北(磁北)であり、厳密な北(地軸の北、真北)からは、ずれている。この差を「磁気偏角」または単に「偏角(へんかく)」と呼ぶ[1]。日本では磁北が真北より西側にあるので、偏角は「西偏(せいへん)」していると言う。偏角の大きさは、時間や場所によって異なり、常に変化している[2]。西暦2010年現在の偏角は、沖縄で 西偏4度、九州・四国・本州では 西偏6度から西偏8度、北海道で最大 西偏10度である。日本国外では、地域によっては数十度に達する。日本国内の偏角は、国土地理院地磁気測量ホームページで概算できるし、地形図の縁に記入されている[3]。
また航海においては磁気偏角を「偏差」「バリエーション」とよび、その大きさは海図などに記載されている。記号では「Var.」と略記される。
地磁気の北極(北磁極)はグリーンランド付近に、地磁気の南極(南磁極)は南極大陸近辺の海上にある。この近辺では方位磁針の誤差が大きい。なおバイカル湖の北にはあたかも磁極があるかのような地磁気の異常分布が存在し、これが1800年頃から顕著になっている。
[編集] 自差
デビエーション。偏移のこと。近くに鉄器類があったりすると方位磁針は狂い、東西のどちらかに偏ることがある。船舶の世界ではこの偏りは「自差」と呼ばれており、具体的には船搭載のエンジンやモーター類などがその原因となる。正確な航海のためには自差を補正する必要が出てくる。記号では「Dev.」と略記される。
[編集] 上下(伏角)
磁力線は赤道付近以外では地面と平行に走っているわけではなく、北半球の多くの地域の場合、地面の中に向かって突き進むような方向に走っている。そのため針が斜めになってしまわないように、S極側を重くすることで釣り合わせている[1]。
[編集] 歴史
11世紀の中国の沈括の『夢渓筆談』、正確には「真貝日誌送」にその記述が現れるのが最初だとされる。沈括の記述した方位磁針は24方位であったが、後に現在と同じ32方位に改められた。ヨーロッパの方位磁針の最初の記述は12世紀に現われた。ヨーロッパの方位磁針は独立した発明だったとされる。
方位磁針の改良によって航海術は著しく発達し、大航海時代が始まった。
実用的な方位磁針として最初に出現したのは、容器に入れた水の上に磁針を浮かせることで自由な回転と水平面の確保を同時に実現する方法だった。この方位磁石の欠点は、激しく揺れる船上で正確に方位を知るのが難しい点である。揺れる船上で方位を知る装置として、宙吊り式羅針盤が開発された。
[編集] 最近のコンパス
- 磁石の性質を利用した方位磁針では、透明な油(ダンパオイル)によって振れを低減したものがある。気圧・気温により気泡を生じることがあるが、機能・特性への影響はない。気泡を消そうとして加熱したりするとケースが変形する原因となる。
- 磁石を用いないコンパスとして、2つの磁気センサで磁束密度を測定し、方位を割り出すものもある。
- 離れた2つのGPS受信機を使って方位を割り出すものもある。大掛かりなため、磁気以外の冗長手段として用いられる。運動方向の情報を使えるなら、簡易な方法として異なる時点の位置情報から運動の方角が得られる。
- 高性能なジャイロによって、地球の自転を測定し、方位を割り出す方式もある。これも大掛かりになる
詳細は「ジャイロコンパス」を参照
- 軍用品は、軍用地図(縮尺5万分の1で格子が入っている)と組み合わせての砲撃目標や進軍方向の決定等に使われる。「レンザティックコンパス」という。単位としてミルを使用することがある。
- レンザティックコンパス(Lensatic Compass )は眼の高さに持ち、照準(蓋に抜かれている長方形の穴に張られた針金の線)を目標物に合わせつつ、レンズで盤面を見て、外周の目盛りを磁針の指す方位に一致させる(目標物が1つの場合は、磁針の方位を覚えるだけでも良い)。目盛り線の指す方角が進むべき方向。
- 登山やオリエンテーリングでは、透明なプレートと、手で回転させられる方位目盛がついたコンパスがよく用いられる。
[編集] 本針と逆針
方位磁針は、その用法と縁への方位の記し方により、本針と逆針とに分類される。
[編集] 本針
本針(ほんばり)とは、針の示す方向に縁に記してある北が合致するよう、手に持って水平に回転して方位を確認する形態の方位磁針である。方位磁針の縁には、上に北、右に東、下に南、左に西と記してある。
[編集] 逆針
逆針(さかばり)とは、船体などに固定して、針の示す方向の縁に記してある方位を進行方向の方位として確認する形態の方位磁針である。方位磁針の縁には、船首方向には北(子)、右舷方向には西(酉)、船尾方向には南(午)、左舷方向には東(卯)と記してある。
揺れる海上では、手に持って体を水平に回転させるよりも、船に固定したほうが使い易い。針上に記されているN極と縁に記されている方位が合致したとき、その船はその縁に記された方位に向かっていることとなる。例えば、船が東に向かっている場合には、針のN極は左舷方向である東(卯)を指しているので、船が東(卯)の方向に向かっていることが判る。羅針儀にも類似する仕組みが見られる。
日本の航海用語で船の右方向への旋回のことを「面舵」と言うが、これは元来「卯の舵」であり、舵の柄を左舷壁(逆針の縁に卯と記されている)方向へ寄せることを意味している。同様に、左方向への旋回を指す「取舵」は「酉舵」、つまり舵の柄を右舷壁(逆針の縁に酉と記されている)方向へ寄せることに由来する[2]。
[編集] 参考文献
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク