エアスクープ

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スバル・インプレッサ WRXの上置きインタークーラー冷却用エアスクープ

エアスクープ(英語:Air Scoop)とは機械に外気を取り入れるため、車両航空機船舶などの外装表面に突出して取り付けられる部品の一つである。自動車ボンネット上に取り付けられる例も多くあり、英語圏では特にフードスクープ(hood scoop)やボンネットスクープ(bonnet scoop)と呼ぶ。

概要[編集]

エアスクープは空気中を移動する機械の周囲を流れる空気の動圧を利用して、内部に外気を積極的に取り込む装置である。インテークの一つの形態であり、取り込んだ空気はエンジンやその周辺部品、あるいは乗員室内に効果的に供給するために利用される。単なる装飾目的でエアスクープに似せた部品が設けられることもしばしばあり、ダミースクープとも呼ばれている。

エンジンの吸気系への外気導入[編集]

様々な理由により、車体や機体、船体の正面に開口部を設けられない場合は、エアスクープを利用してエンジンに空気を取り込む方法がとられることが多い。

あるいは自動車の場合、エンジンルーム内に配置された吸気管を通過するうちに、吸入空気がエンジンルームの熱を受けることを避けるためにエアスクープを利用して吸気管路を短縮する場合もある。あるいは吸気系を改造した結果として空気取り入れ口をエンジンルームに設けざるを得ない場合に、その付近に外気を取り入れる目的でエアスクープを利用する場合もある。空気は温度を下げることで密度が高くなるので、エンジンの出力を向上することができる。同様に、カウルを持つオートバイにも、エンジンやラジエターから離れたカウル前面に取り入れ口を持つエアスクープを備えた車種があり、後のラムエアインテークへと発展していった。

巨大なエアインダクションポッドを持つ2010年仕様インディカー
オートバイのラムエア過給スクープ(カワサキ・ニンジャZX-10R

適切に空力設計されたエアスクープは、航空機や自動車レースなどの非常に高い速度ではエンジンの吸入空気量を増加させることができる。こうしたエアスクープをラムエアインテークと呼ぶ。

レーシングカーや、最高速度が280-300km/h以上に達するような市販のオートバイでも採用されている。市販の自動車ではポンティアックラムエア(Ram Air)という商標でエンジン吸気口へのエアスクープを備えた車種を製造しているが、これらの車種はラムエアによる過給効果を期待できる速度域での使用を前提とした製品ではない。

冷却のための外気導入[編集]

エンジンや周辺部品の冷却を目的として積極的な外気の導入のために、エアスクープが設けられる場合もある。

空冷式のインタークーラーを備えた自動車で、インタークーラーを車両前面の開口部付近に配置できない場合にエアスクープを利用して冷却用の外気を導入するものもある。上置きインタークーラーの場合にはボンネットに、前置きインタークーラーの場合にはバンパー若しくは、バンパー下のフロントスポイラーにエアスクープが設けられる。

過熱したブレーキキャリパーブレーキローターを冷却する目的で利用される例もある。車輪が車体で覆われていないフォーミュラカーではホイールの内側に独立した形状のものが取り付けられているほか、車輪が車体で覆われている車両にはフロントフェンダーやリヤフェンダーに開口部を設けて用いられている。

マツダ・ポーターキャブのベンチレーター

自動車の空調装置の一つとして、外気を直接室内に取り込むために開閉式のエアスクープ(ベンチレーター)が採用された例もある。キャビン正面の中央部やウィンドシールドの下に設けられたもののほか、屋根の前端中央に備えられたものもある。

ダミースクープ[編集]

ダミースクープの一例(三菱・スタリオン

外気を導入する機能の目的とは別に、単なる装飾目的でエアスクープの形状をした部品がボディパネル上に取り付けられる場合もある。こうしたものは単に開口部のみが取り付けられ、実際にはその先は閉鎖されているものがほとんどである。

日本車では1970年代末から1980年代初頭に掛けて、ターボチャージャー搭載車両を中心にボンネットにダミースクープが設けられる例が見られた。ターボ車へのインタークーラー装着が一般化した1980年代後半以降は、ボンネットのダミースクープが廃れた一方で、リアフェンダーなどの車体側面に装着された車両が見られた。また、S12型シルビアなど、エンジンがボンネットに収まらない場合などに、ダミースクープを設けボンネットの高さを稼ぐ場合もあった。

エアスクープの設計[編集]

エアスクープが効率的に空気を取り込むように、開口部はできるだけ境界層[1]の外に出るように設計される。しかし開口部を高くしすぎると正面視界を遮るだけではなく空気抵抗が大きくなるほか、車体や機体から大きく突出した部品となり取り扱いに支障が発生する。エアスクープに取り込まれた空気が機械内部の目的の場所に導かれる経路で流れのエネルギーが失われないように、経路はできるだけ短く、抵抗の少ない内面となるように設計される。また、経路の周辺からの熱を受けないように断熱材が用いられる場合もある。

シェイカースクープの一例(1974年式ポンティアック・GTO

自動車用エンジンの吸気に用いられるエアスクープはエンジンに固定されていて、ボンネットに開けられた穴から突き出すデザインとなっているものもある。こうしたエアスクープはエンジンの揺動にあわせて、ボンネット上で著しく振動することから、シェイカースクープ(en:shaker scoop)と呼ばれている。
自動車で上置きインタークーラーを採用してボンネットにエアスクープを設ける組み合わせは、前置きインタークーラーに比較すると、前方で跳ね上げられた石(road debris)などによってインタークーラーが損傷するリスクが低い点で、特にラリーなどのオフロードのモータースポーツで有利な場合がある。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 物体の表面に付近にある流れの遅い領域

外部リンク[編集]