クリミア危機・ウクライナ東部紛争

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クリミア危機・ウクライナ東部紛争 (2014年〜)
目的 ロシアの領土併合・ウクライナの脱占領
発生現場  ウクライナ
期間 2014年2月23日現在進行中
行動 侵略占領テロ活動人権侵害
死者 5,000人以上[1]
クリミア危機・ウクライナ東部紛争(2014年〜)
戦争:クリミア危機・ウクライナ東部紛争(2014年〜)
年月日2014年2月23日-現在
場所ウクライナ東部ドンバス地方・ウクライナ南部クリミア半島
結果:現在継続中
交戦勢力
 ウクライナ ロシアの旗 ロシア

Flag of the Donetsk People's Republic.svg ドネツク人民共和国
Flag of Lugansk People's Republic.svg ルガンスク人民共和国

戦力
約50,000人 約10,000-20,000人
損害
戦死:1,268-2,180名
負傷:4079名
捕虜:1,684-2,484名
戦死:1,044名
負傷:450名
捕虜:733名

クリミア危機・ウクライナ東部紛争(2014年〜)[2]は、2014年2月下旬に発生したウクライナ騒乱以後、クリミア自治共和国ウクライナ本土の東部2州(ドネツィク州ルハーンシク州)で起こっているウクライナ政府軍と、親ロシア派武装勢力や反ウクライナ政府組織、ロシア連邦軍との軍事衝突や対立である。

ウクライナ系メディアでは、ロシアの正規軍の関与が広く見られることからロシアによる侵略ロシアによる占領、またはウクライナ・ロシアの戦争と呼んでいる。ポロシェンコ大統領もしばしば現状説明として「ロシアとの戦争」という用語を用いる。ただしウクライナ、ロシアともに宣戦布告は行っていない。一方、ロシア系メディアでは、この紛争初期にはロシアの春と表現する場合もあったが、以降は「ロシア軍は関与していない」との立場から、今次紛争をウクライナ国民同士の対立であるウクライナ内戦であると表現している。他方で、欧米諸国からは、派兵や兵器・燃料の供給をはじめ、ロシアの直接的関与は明白だとして、対露制裁を科すなどの措置を取っており、「内戦」という用語は用いず、代わりに紛争占領侵略軍事侵攻等の用語を使用する。

クリミア自治共和国では、衝突初期の2014年2月下旬-3月にかけて行われたロシアによる軍事干渉と、国際的な非難を浴びながら行われた住民投票の結果、3月17日にロシアへの編入を求める決議を採択したと宣言。ロシア軍の支配下に置かれ、さらにロシアへの編入が宣言された。その後、ウクライナ本土の東部2州(ドネツィク州ルハーンシク州)での抗議運動が、武装した分離主義勢力による反乱へと広がった結果、ウクライナ政権が軍事的反攻に乗り出すことになった。

概要[編集]

クリミア半島[編集]

クリミアに展開する「リトル・グリーンメン」と呼ばれる国籍を隠した部隊

2014年2月26日の初め、後にロシアのプーチン大統領が指示したロシア連邦軍と確認される武装勢力は、クリミア半島の主導権を徐々に握り始めていた。この間、クリミア半島でロシア連邦への併合についていわゆる「住民投票」が行われた結果、83%の投票者で96%の賛成が得られたが、この住民投票は、EUアメリカウクライナ人、クリミア半島のクリミア・タタール人によって、「ウクライナ憲法国際法に違反している」として非難されている。3月17日、クリミア議会はウクライナからの独立を宣言し、ロシア連邦への併合について呼びかけた。3月18日、ロシアとクリミア自治共和国最高会議は、"クリミアとセヴァストポリの編入に関する条約"に署名した。3月21日に編入条約は批准され、ロシア連邦の2つの新しい連邦構成主体として発足した。国連総会は、公表された国民投票は無効であり、ロシアによるクリミア併合は違法に行われたとし、現状を「ロシアによる占領」と国連総会決議により定めている。

2014年4月1日までに約3,000人の住民がクリミア半島から逃れたとされ、その80%はクリミア・タタール人だったとされる。"Ivano-Frankivsk Oblast"と"Chernivtsi Oblast"の欧州安全保障協力機構(OSCE)のチームは、クリミアから西ウクライナへ移住した国内避難民を補助した。主にクリミア・タタール人だった多くの難民は避難を続け、UNHCRは5月20日までに約1万人の人々が移住したと発表している。

東部2州[編集]

ドネツィクの親ロシア派(2014年3月8日)

2014年3月1日-3月6日にかけて、ロシアが主導したとされる親露派武装勢力はドネツィク州ドネツィクの政府庁舎を占拠したが、ウクライナ保安庁によって排除された。ウクライナ当局によると政府庁舎での押収物の一部に、ウクライナを不安定化させるよう、ロシア語で書かれたメモがあったほか、明確なロシア語のアクセントを話す1,500人の過激派を拘束している。

3月13日、ドネツィクではウクライナ支持派と親露派の暴力的な衝突が起き、親露派の大群が警察の非常線を壊して乗り越え、少数の反対派への襲撃を始めた。 欧州安全保障協力機構(OSCE)による取材調査では、30人程度の政権支持派は警察のバスへ逃げ込んだが、反政権支持派により囲まれて襲撃され、バスの窓を打ち破って刺激性のガスがまき散らされ、バスの出口から出てきた政権支持派を叩いて暴言を浴びせたとしている。また、OSCEの報告では、警察は政権支持派を守る適切な処置を取っておらず、反政権支持派を好ましい形で処理しているのを目撃されている。この衝突の日の後、取材を受けた人はOSCEに、ドネツィクの住民は安全のため、平和的な政権支持派のデモを組織しないことに決めたと述べている。

4月6日、約1,000-2,000人の武装勢力は、ドネツィクでの集会に参加し、ウクライナからの独立を問う法的根拠のない「国民投票」の要求を行った。その後、200人の分離主義者(ドネツィク現地警察のスポークスマン"Igor Dyomin"によると約1,000人)と親露派勢力が行政庁舎になだれ込み、ドアと窓を打ち壊していったが、政府当局者は日曜日で不在だった。分離主義者は、いわゆる「臨時議会」が政府当局によって開かれない場合、ロシアへの併合を問う「国民投票」を呼びかけ、国民の権限により全ての地方議員を無視して、4月7日の正午に一方的管理措置を宣言するとした。ロシアのタス通信によるとこの宣言は地方議員によって投票されたとしているが、他のメディアではドネツィク市や近郊地域のどの地方議員も会議に代表として派遣されていないと報告している。同じ4月6日、分離主義勢力"ドネツク共和国"の指導者は、ドネツィク州のロシア連邦への併合に関する国民投票を遅くとも2014年5月11日までに実施すると発表した。加えて、平和維持に必要な部隊をドネツィク州へ送るようプーチン大統領に訴えた。

カラシニコフ自動小銃とRPG-26 ロケットランチャーを装備した武装勢力に占拠されるスロヴヤンシク市議会

4月12日防弾チョッキ野戦服カラシニコフ自動小銃を備えてマスクをした武装勢力がスロヴヤンシクの執行委員会建物とウクライナ保安庁事務所を占拠した。ウクライナ内務相アルセン・アヴァコフは、この武装勢力をテロリストと判断し、ウクライナ特殊部隊により建物を奪回すると発表した。警察署や政府庁舎の分離主義勢力による強奪は、ドネツィク州ドネツィク、クラマトルシク、ホルリウカ、マリウポリ、エナキエヴェを含むその他の都市でも発生した。ウクライナ政権のトゥルチノフ大統領代行は、建物奪回に向けた全面的な反テロ作戦を開始すると発表した。

4月16日までにドネツィク州での暫定政権によって行われた対テロ軍事作戦は、クラマトルシクで武装勢力がウクライナ軍装甲車を奪取し、兵士がスロヴヤンシクまで追いやられるなどのいくつかの障害にぶち当たった。4月16日の夜、約300人の親ロシア派武装勢力は、マリウポリのウクライナ軍部隊火炎瓶を投げるなどの攻撃を行った。アヴァコフ内務相は、「ウクライナ軍が発砲し、3人の襲撃者が殺害された」と発表した。

4月17日の停戦協定"Geneva Statement"によって、ドネツィク州での政府庁舎の占拠は終了せず、マリウポリの2つの親ロシア派武装勢力は「この協定発効により裏切られたと感じる」と発表した。しかし、4月23日においても地域一帯の政府庁舎の占拠などの緊張状態は続いており、さらに、宣言された停戦は、スロヴヤンシクでの分離主義勢力による検問所で起きた襲撃により破られた。

欧州安全保障協力機構(OSCE)は、スロヴヤンシクの市庁舎、ウクライナ保安庁庁舎、警察署は自動火器で武装した勢力により要塞化されており、抗議する人もおらず町全体が静かになっていると報告している。しかしOSCEは「スロヴヤンシクは制服を着た軍や覆面の武装勢力だけでなく、市民と同じ服装の多くの人々によって厳しい監視態勢に置かれていることは確かだ」としている。スロヴヤンシクの一住人は「占拠している勢力について議論するのは恐ろしい」と語っている。

自称スロヴヤンシクの分離主義勢力のポノマリョフ自称市長は、"我々は町の外にスターリングラードを設立する"と宣言した。ウクライナ政権は、4月25日にスロヴヤンシクを完全に封鎖し、反テロ作戦を継続すると宣言した。4月26日ドネツク人民共和国によってチラシが配布され、共和国による州統治権の宣言を支持するかどうかの国民投票を5月11日に開かれることが周知された。

その後も、両州におけるウクライナ政府軍及びウクライナ政府及びその支持派と、親露派の衝突・対峙は続いている。2018年1月18日、ウクライナ最高会議(議会に相当)は、東部2州を「再統合」を目指すべき「占領地」、ロシアを「侵略国」と規定し、ウクライナ大統領に「東部解放」の軍事行動を認める法案を可決した[3]

国際社会の反応[編集]

親露勢力がウクライナ本土東部2州で独立を宣言したドネツク人民共和国ルガンスク人民共和国によるノヴォロシア人民共和国連邦は、ロシアを含め、いずれの国からも国家承認されていない。ロシアのクリミア半島併合もロシア以外の国は認めていない。

欧米による調停や対ロ制裁[編集]

米国欧州連合(EU)加盟国などはロシアに対して経済制裁を実施する一方で、外交交渉を継続している[4]

ドイツフランスは東部ウクライナ2州についてウクライナとロシアを仲介し、2015年2月に停戦に合意したが(ミンスク合意)、その後も散発的に戦闘が続いている[5]

欧州安全保障協力機構(OSCE)が2014年から停戦を監視している。2017年4月、OSCEの装甲車がルガンスク州の親露派支配地域で地雷によるとみられる爆発に巻き込まれ、アメリカ人救急医療隊員1名が死亡、ドイツ人女性とチェコ人男性が負傷した。OSCEメンバーの犠牲は初めて[6]

ICJは2017年4月19日、ウクライナ政府が求めていた「ロシアによる親露勢力への支援の認定」を、証拠不十分として退ける決定をした。ロシア外務省は「(ロシアによる)『侵略』や『占領』といったウクライナ側の主張は支持されなかった」とコメントした[7]

EUは2017年6月19日、ロシアのクリミア編入宣言に関する制裁の1年延長を発表[8]アメリカ財務省は2017年6月20日、ウクライナ東部紛争への関与を理由とする制裁対象に、ロシア政府当局者を含む38の個人・団体を追加した[9]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ モスクワ真野森作 (2015年1月24日). “ウクライナ:紛争死者5000人超える 最悪の増加ペース”. 毎日新聞 (毎日新聞社). オリジナル2015年2月26日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/2015.02.26-061606/http://mainichi.jp/select/news/20150124k0000e030258000c.html 2016年12月3日閲覧。 
  2. ^ ロシア政府は同戦闘を「内戦」と呼び、自らの関与を否定するが、現地世論調査によると、ウクライナ国民の57%が「ロシアとウクライナの戦争」だと感じており、「内戦」(13%)だと見なす国民より圧倒的に多い(ロシア語)Большинство украинцев считают ситуацию в Донбассе войной с Россией 2014年10月6日
  3. ^ ウクライナ議会、東部2州の「再統合」法案可決『毎日新聞』朝刊2018年1月19日
  4. ^ “EU露外相会談 ウクライナ問題を協議”. 毎日新聞ニュース. (2016年4月24日). https://mainichi.jp/articles/20170425/k00/00m/030/044000c?ck=1 
  5. ^ “ウクライナ紛争解決ほど遠く 停戦合意1年”. 毎日新聞朝刊. (2016年2月12日). https://mainichi.jp/articles/20160212/k00/00m/030/090000c 
  6. ^ “OSCE監視団に初の犠牲 ウクライナ東部で爆発”. 産経新聞ニュース. (2017年4月24日). http://www.sankei.com/photo/daily/news/170424/dly1704240010-n1.html 
  7. ^ “国際司法裁判所 ウクライナ紛争の露支援を「証拠不十分」”. 毎日新聞朝刊. (2017年4月21日). http://mainichi.jp/articles/20170421/k00/00m/030/063000c 
  8. ^ “EU、クリミア制裁を1年延長”. 『日本経済新聞』夕刊. (2017年6月20日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM20H06_Q7A620C1EAF000/ 
  9. ^ “米、対ロシア制裁 強化ウクライナ巡り”. 『日本経済新聞』夕刊. (2017年6月21日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H0T_R20C17A6EAF000/ 

関連項目[編集]