年金

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年金(ねんきん、: pension[1]、annuity)とは、毎年定期的・継続的に給付される金銭のことである。また、年金を保障する仕組み(年金制度)も指す。制度の運営手法によって、公的年金私的年金に分類される。また個人年金は私的年金とは別に分類する場合が多い。民間人を対象とした強制加入の年金制度は、1889年に世界で初めてドイツ帝国初代首相オットー・フォン・ビスマルクが始めた[2]

年金の主な給付事項は、老齢給付障害給付遺族給付の3つがある[3]。給付者は年金者(Pensioner)と呼ばれ、典型的には引退した高齢者を指す。

多くの国の公的年金は、一般税収を原資とする方式(ベバリッジ型)と、労使で保険料を拠出する方式(ビスマルク型, 社会保険方式)に分かれる[3][4]。支給開始には社会保険方式では各国平均で20年以上の払込が、全額支給には平均で26年以上の払込が求められる[5]

また、民間保険会社信託銀行、その他の会社や私的団体によって運営される年金においても、拠出制年金が採用される(養老保険など)。

給付事項[編集]

各国の65歳以上人口割合

年金の給付種類は以下の3つがある[3]

国際労働機関(ILO)128号条約では、給付開始決定の最低条件を以下と定めている[3]

  • 老齢給付 - 妻を有する男子、65歳以上、30年以上の保険料拠出もしくは20年以上の居住
  • 障害給付 - 妻および2子を有する男子、5年以上の保険料拠出もしくは居住
  • 遺族給付 - 2子を有する寡婦、5年以上の保険料拠出もしくは居住

拠出制と非拠出制[編集]

受給者が掛け金や保険料を負担せず(拠出を条件としない)、一般税収を原資とする年金を無拠出制年金という。これに対して、保険者が掛け金や保険料を負担(拠出)し、その収入によって確立される年金を拠出制年金という。

税方式と社会保険方式[3]
税方式(無拠出制 社会保険方式(拠出制)
利点
  • 徴収コストがかからない。年金未加入者が発生することがない
  • 保険料免除により、年金減額されるということがなくなる
  • 保険料拠出の見返りとして受給できるため、権利性が強い
  • 景気変動に対して、比較的安定した財源である
  • 所得比例年金制度と相性が良い
欠点
  • 国家財政とリンクしており、財源確保の必要がある
  • 所得比例年金制度への適応が難しい(給付と負担の関係がないため)
  • 低所得などで拠出できていない者は、給付対象外となる
  • 保険料の徴収コストがある[6]

各国の基礎年金においては税方式が一般的である[3]。日本は社会保険方式である[3]

老齢年金制度[編集]

各国における老年年金制度(第一階部分)は、種類として以下に分類される[2][7]

基礎年金(Basic pensions)
居住要件(residence-based)、もしくは拠出要件(contribution-based)を満たす者に給付される年金
最低年金(Minimum pensions)
年金基金への拠出がなくとも給付される年金
社会扶助(Social assistance)
ミーンズテスト対象者、特定階層向け(targeted)の年金

最低年金(老年給付)の支給額は、各国平均では平均所得の22%ほどであり、これは各国で韓国・トルコの6%から、ニュージーランドの40%まで幅がある[5]

各国の老年年金制度(第一階部分)[8]
基礎年金 最低年金 基礎年金 最低年金
オーストラリア 居住(10年) 日本 拠出(25年)
オーストリア 韓国
ベルギー あり(30年) ルクセンブルク 拠出(10年) あり(20年)
カナダ 居住(10年) メキシコ あり(24年)
チリ 居住(20年) オランダ 居住(1年)
チェコ 拠出(35年) あり(35年) ニュージーランド 居住(10年)
デンマーク 居住(10年) ノルウェー 居住(3年)
エストニア 拠出(15年) ポーランド あり(25年)
フィンランド 居住(3年) ポルトガル あり(15年)
フランス あり(1年) スロバギア
ドイツ スロベニア あり(15年)
ギリシャ 居住(15年) スペイン あり(15年)
ハンガリー あり(20年) スウェーデン 居住(3年)
アイスランド 居住(3年) スイス あり(1年)
アイルランド 拠出(10年) トルコ あり(15年)
イスラエル 居住/拠出(10年) 英国 拠出
イタリア あり(20年) 米国
※ 数字は、それを受け取るのに必要な居住年数、もしくは払込年数[9]

そのほか国によっては、年金受給者を対象として、住居、光熱費、保健、介護、社会扶助などの補助が実施されることもある[10]。社会的支援は、現金支給や、サービスの無料化や割引料金などである[10]。例えばオーストリアでは光熱費や住宅費を部分的に補助したりする[10]

各国の年金受給者に対する補助的給付[10]
住宅/光熱 医療 社会的支援 住宅/光熱 医療 社会的支援
豪州 あり あり あり 日本 あり
オーストリー あり 韓国 あり
ベルギー ルクセンブルク
カナダ メキシコ
チリ オランダ
チェコ あり ニュージーランド あり
デンマーク あり あり あり  ノルウェー
エストニア あり あり  ポーランド
フィンランド あり あり あり  ポルトガル
フランス あり あり あり  スロバギア あり あり
ドイツ スロベニア
ギリシャ スペイン あり
ハンガリー  あり  あり あり  スペイン あり
アイスランド  あり あり  スイス
アイルランド あり あり あり トルコ
イスラエル あり 英国 あり あり あり
イタリア 米国

歴史[編集]

各国の制度[編集]

アメリカ合衆国[編集]

アメリカ合衆国の公的年金は、職種などに関わらず「社会保障(Social Security)」に一本化されている。

なおアメリカ軍退役軍人のためには独自の公的年金制度が整備されている(後述)。

社会保障[編集]

社会保障カード。このサンプルは10桁だが、実際のカードは9桁

社会保障は、アメリカ合衆国内で所得のある国民、永住外国人などすべての納税者が加入しており、労役所得の一定割合(2015年現在課税上限年間所得118,500ドルまでの12.4%)を「社会保障税」として所得税などとともに内国歳入庁(IRS)に納付しなければならない直接目的税方式なので、日本の国民年金保険料未納のような問題は起きにくい。納付された社会保障税は、国庫とは別会計の社会保障基金で運用・運営される。

自営業者は社会保障税を全額自己負担(日本の国民年金に相当)、会社員は雇用者と折半(日本の厚生年金に相当、税率6.2%+6.2%)であるが、税率、年間納税上限、退職後の支給額との関係などに差はない。軍人の場合は軍が負担する。研修(J-1)ビザなどで一時的に滞在する外国人は国内で所得を得ても社会保障税は免除される。社会保障税は労役所得にのみ課税されるので、株や不動産の売買益や利子・配当所得には課税されないが、例えば株式トレーディングを職業としている場合は課税される。

支給年齢[編集]

満額支給年齢(Full Retirement Age、FRA)は2012年現在66歳であるが、生年が遅くなるにつれ二ヶ月単位で支給開始年齢が遅くなる(2012年現在、最高67歳まで)。満額支給年齢を待たずに62歳から繰り上げ減額受給(受給開始をFRAから1ヶ月繰り上げるごとに5/9%減額、36ヶ月を超える分は1ヶ月ごとに5/12%減額、最大30%(=5/9%×36ヶ月+5/12%×24ヶ月)減額)や、70歳まで受給開始を遅らせる繰り下げ加算受給制度(受給開始をFRAから1ヶ月遅らせるごとに2/3%受給額に加算、最大32%(=2/3%×48ヶ月)加算)もあるが、繰り上げ受給は減額が一生続く以外にもFRA以前に社会保障以外の所得(給与など)を得ている間は減額され、繰り下げ受給は加算分の累計が受給遅延分に追いつくのに繰り下げ期間の長短を問わず実際に受給開始から12年半を要するなどのデメリットがある。ただし、下記に示すように、勤労・事業所得やIRA401(k)からの引き出しなど社会保障以外に一定額以上の課税所得がある場合は社会保障受給額の一部が連邦所得税の課税対象となり、また累進課税の効果、未来の税率が予測不可能など、損得勘定にはかなり曖昧で大胆な予想・仮定を含む面倒な計算が必要で、加算分の累積が繰り下げ期間中の得べかりし受給額に追いつく時間だけを以て一概に繰り下げ受給が損または得とは断定できない。

保障の種類[編集]

社会保障は、社会保障税を納税してきた本人が高齢になり退職した後の生活保障のための老齢年金(Retirement Benefits)が基本であるが、以下のような様々な保障も社会保障の一部であり、総称して「OASDI(Old-Age, Survivors and Disability Insurance)」と呼ばれる。

  • 本人が障碍者になった直前の就労実績(24歳未満は3年中1.5年以上、24歳〜31歳は21歳以降少なくとも半分の期間、31歳以上は10年中5年以上)と総就労実績(28歳未満は1.5年以上、60歳以上は9.5年以上まで段階的に増加)を持つなら障碍年金(Disability Benefits)[11]
  • 本人が死亡した場合の60歳以上(障碍者は50歳以上、16歳未満の子持ちの場合は年齢制限なし)の配偶者(離婚した元配偶者を含む)と18歳未満の未婚の(18〜19歳の中等教育以下の教育課程にフルタイムで在籍の子、22歳以前に発症した18歳以上の障碍者の子を含む)実子・養子、生活費の半分以上を本人に依存していた62歳以上の親に支払われる遺族年金(Survivor Benefits)[12]
  • 親が老齢あるいは障碍年金を受け取っている18歳未満の未婚の実子・養子・被扶養継子に対する養育年金(18〜19歳の中等教育以下の教育課程にフルタイムで在籍の子、22歳以前に発症した18歳以上の障碍者である子を含む)[13]
  • 夫婦の一方が少額あるいはゼロ社会保障受給の場合、他方の配偶者の社会保障受給額の半額と本人の受給額のどちらか高額を支給する配偶者年金(年齢、結婚期間などの条件あり。離婚した元配偶者にも一定の条件で適用、Spousal Benefits)

日本の遺族年金や厚生年金の受給開始年齢の男女差のような性別にかかわる差別は一切ない。

受給資格[編集]

老齢年金の受給資格を得るには、最低40クレジットの加入実績が必要である。社会保障税の対象となる利子・配当などを除く年間所得の一定金額(2014年現在1,200ドル)ごとに1クレジットが加算されるも、各年度で最大4クレジットまでしか得られないので受給資格条件である40クレジットを得るには10年かかるが、日本の公的年金の最低加入実績の25年よりはるかに短い。日米社会保障協定などで外国の公的年金の加入期間と通算する場合は最低6クレジットの加入実績が必要である。1977年度までは所得申告は四半期毎だったので四半期=1クレジットだったが、1978年以降は年単位の所得申告になったのでクレジットの計算も1年単位になった[14]。日本語で社会保障について解説している弁護士事務所などのサイトの多くには、未だに四半期=1クレジットであるような誤解が見られる。

支給金額[編集]

支給金額(Primary Insurance Amount、PIA)は、過去に納付した社会保障税の対象所得金額と加入期間で計算される「平均補正月収(Average Indexed Monthly Earnings、AIME)」によって決まる。2015年に62歳になる人の支給金額の計算方法の概要は以下のとおり。

  • 62歳になった年(2015年)の前年(2014年)までの35年間の社会保障税対象所得金額(所得を得た年が36年以上ある場合は上位金額の35年)を選ぶ(各年度の上限金額あり)
  • 各年度の所得金額に物価上昇分を補正するための古い年ほど大きくなる重み係数(例えば2015年に計算する1954年の所得は14.2247405倍)を乗じで合計する
  • 上記合計金額を420カ月(35年)で除した金額がその人の「平均補正月収」になる
  • 上記平均補正月収額の最初の826ドルの90%、次(826ドルを超える分)の4,154ドルの32%、4,980(826+4,154)ドルを超える分の15%を和したものが支給額(PIA)になる(最初の「35年間の所得金額」の各年度に上限金額があるので「平均補正月収」も上限額があり、支給額が青天井になることはない)

支給金額の計算は62歳になった年に一旦確定し、その後毎年、生活費補正(Cost-of-Living Adjustment、COLA)と呼ばれる係数で補正され、例えば満額支給年齢(2015年現在66歳)から実際に受給を開始した場合は62歳になった年に確定した金額を4年間分のCOLAの累積で補正した支給金額になる[15]。実際の支給金額はこの金額に更に満額支給年齢からの繰り上げ受給あるいは繰り下げ受給の減額・加算分を乗ずる。1月1日に62歳になった人はその前年度の扱いになる。

日本の老齢基礎年金のように、所得に関係なく毎月一定の保険料を納付し続け、支給金額は保険料の支払い回数に完全正比例で決まる、言わば積み立て型の年金額計算とは違い、生涯労働年数35年をモデルとした所得保障指向である。ただし、日本の国民年金が40年あるいは60歳(高齢任意加入で65歳まで延長可、1965年4月1日以前生まれは70歳まで延長の特例あり)で保険料の払い込み終了となるのとは異なり、35年を超えても社会保障税の対象所得がある限り、既に社会保障受給中でも社会保障税が徴収される。

上記の最後のステップで分かるように、平均補正月収が少ない人ほど実際の支給額の平均補正月収に対する割合が大きい。例えば、平均補正月収額791ドルの人の受給金額は712ドル(90%)、4,768ドルの人のそれは2,004.80ドル(42%)である。これは、社会保障が所得再分配の性格を持っていることを意味する。2013年現在66歳の人の受給額は最低月額1ドルから最高2,685.50ドル(35年間毎年社会保障税対象上限金額の所得があり平均補正月収額9,066ドルの人)である。支給額は途中計算では10セント単位に切り下げられ、繰り上げ減額・繰り下げ加算補正をした最終的な支給額では1ドル単位に切り下げられる。ただし、所得税支払いが見込まれる人は社会保障から支給額の最高25%までの連邦所得税源泉徴収(任意)ができるので、源泉徴収後の実際の送金額にはセント単位の端数が生じることがある。

社会保障受給開始後も働き続け、社会保障税の対象となる所得があり、実際に社会保障税を納税し、もしその所得金額が平均補正月収額(AIME)を計算した35年間中の最低年次所得額より大きいと、その最低所得年度分がこのより多い所得金額で置き換えられるため結果的に平均補正月収が増加し、支給金額が(受給をしながら)その所得を得た年度に遡って増加する[16](ただし満額支給年齢=FRA以前の受給は減額あり、下記参照)。日本の厚生老齢年金が、受給開始後も雇用されていると給与の額と年金の額に応じて年金の一部または全部が支給停止されること(在職老齢年金)があり[17]、高齢者の勤労意欲を削ぐ要因の一つになっていることとは対照的である。

PIAは老齢年金の基礎額(FRAから受給開始する人の受給金額の基礎)となる。障碍年金や遺族年金額もPIAを基礎として本人や遺族配偶者の年齢や配偶者自身の社会保障などで補正される。

課税と他の所得の影響[編集]

社会保障とその他一切の課税所得(給与、自営、利子、配当、課税繰り延べ資金からの引き出しなど)の合計収入が一定額(2013年現在、社会保障受給額の半分とその他の所得の合計が単身者で年間34,000ドル、夫婦の合算申告で年間44,000ドル)を超えると、社会保障収入の最高85%も連邦所得税の対象となる[18](ただし非居住者の外国人については常に85%が課税対象――多くの国では租税条約により控除対象)。これらの所得には、通常401(k)や通常IRAのような課税繰り延べ老後資金の取り崩しも含まれるが、Roth 401(k)やRoth IRAのような課税老後資金の取り崩しは含まれない。社会保障収入そのものが更に社会保障税の対象になることはない。州の所得税は州により課税する州としない州がある。

他に所得があっても支給額そのものが減額されることはない[19]が、例外が二つある。一つは上記「支給年齢」で記した満額支給年齢(FRA)以前の受給の減額。2015年現在、FRA以前に受給しながら得た所得金額の15,720ドルを超える分の所得2ドル当たり1ドルが支給金額から減額される(FRAになる年度に限り誕生日以前の所得の41,880ドルを超える分の3ドル当たり1ドル減額、2015年現在)。もう一つの例外はWEP(Windfall Elimination Provision、タナボタ排除条項[20])と呼ばれる制度[21]で、外国の公的年金など社会保障税の対象とならない過去の所得に起因する年金所得のある場合、62歳あるいは障碍者になった年の前年までに一定額以上の社会保障税の対象となる所得を得た実績が30年未満であると、生年と一定額以上の社会保障税対象所得を得た年数によって上記支給金額の計算の「平均補正月収額(AIME)の最初の826ドル90%」の「90%」の部分が前記「一定金額以上の所得実績の年数」の30年からの不足年数1年あたり5%づつ、実績年数20年以下の場合の最低40%(=90%-(30-20)×5%)まで減少し、「満額」である90%の場合に比べて2015年現在最高月額413ドル(=826×(90%-40%))減額される(FRA=満額支給年齢から受給開始の場合。繰り下げ受給では加算額の分だけ減額上限も増える)[22]。例えば、社会保障と日本の公的年金(老齢厚生年金など)を併せて受給する場合、日本の公的年金受給額の一部が社会保障から減額されることがある。これは、前述のように社会保障の目的が老後の所得保障であり所得の再分配であるという理由による。ただし減額は外部年金額の1/2を超えることはない(為替レート変動などの影響は不明)。この減額は社会保障税の対象とならない過去の所得に起因する年金所得のある場合のみ適用され、そのようなものがない場合は「一定金額以上の所得実績の年数」は影響しない。

個人年金[編集]

個人年金は、確定拠出型のIRA(個人退職基金口座)、401(k)、403(b)などが代表的であり、いずれも課税繰延べ(拠出金額は所得から控除され、運用益とともに実際に口座から引き出されるまで課税されない)や運用益非課税などの税制上の優遇措置がある反面、原則一定年齢(59歳半)になるまで引き出せない(59歳半以前の生存中に引き出した場合は、引き出した額について繰り延べられていた所得税と罰金10%が課せられる)、口座間の資金の移動に制限がある、年間拠出額の上限がある、などの制約もあるが、年間拠出額の上限が比較的高く(2013年の401(k)の50歳以上拠出限度額は23,000ドル)、その分節税になることもあり、社会保障だけでは生活費を賄えない中間層の重要な老後資金である。資金の管理及び運用に政府は関与せず、民間の銀行証券会社などが開設する個人年金プログラムの下で口座を開き、複数の投資信託や個別株式などを組み合わせて個人の責任で運用するのが一般的である(複数口座、複数金融機関可)。

企業年金[編集]

企業年金は、伝統的には従業員が在職中に拠出した年金資金を元に企業が運用し、一定年齢に達した退職した従業員に終身支給する確定給付年金が主流であるが、近年は、より長生きする退職した従業員への巨額の年金支払いがGMなどの巨大企業の破綻の原因となり、また労働者の就職スタイルの変化(転職を繰り返す)などで、企業にとって負担額が予測可能で労働者にとってポータビリティがある確定拠出型個人年金にシフトしつつある。

公務員年金[編集]

連邦政府の職員などの公務員は、州ごとに公務員の年金基金がある。基金の運営は比較的自由度が高く、カリフォルニア州カルパースの様に積極的に投資を行う基金も存在する。

アメリカ国防総省では独自の年金制度を用意している[23]

勤務中に大事故に遭遇する可能性が高い鉄道職員のために鉄道退職者委員会が公的な障害・遺族年金を用意しており、これには退職者年金も含まれている[24]

退役軍人[編集]

アメリカ軍退役軍人に対しては、アメリカ合衆国退役軍人省から勤務した期間や階級に応じた額の恩給年金が支給される。また年金の受給資格があれば退役後にもアメリカ国防厚生管理本部が提供する軍人向けの医療保険「TRICARE」に継続して加入する資格がある。

パープルハート章善行章名誉除隊)などの勲章を受けた者には規定に応じて年金額が加算せされるが、一定以上の懲罰を受けた場合には逆に支給額が減らされることもある。また不名誉除隊の場合は年金の受給資格を失う。

その他[編集]

日本の「個人年金」に似た、保険会社などの民間会社が販売する、保険料を予め払い込んだ後、毎月一定額を有期契約期間または契約者が死亡するまで終身受け取る確定給付型の私的(個人)年金も存在し、アニュイティ(annuity)と呼ばれており、投資と保険の双方の特徴を兼ね備えている。

アニュイティ商品の形態は様々で、保険料の支払方法だけをとっても以下の二種類の代表的な方法がある。

  • 保険料を受給開始前に長期間積み立てる
  • 契約時に保険料を一括払いして即受給開始となる

また、受給期間については

  • 契約時に定める一定有期期間(5年、10年など)
  • 契約者が死亡するまでの終身期間

などがあり、さらに

  • 受給開始後最初の一定期間(5年、10年など)内に契約者が死亡した場合は割増の一時金

のように生命保険を兼ね備えているものもある。

一定金額を契約期間あるいは終身受給できるので、契約者のリスクが少なく一見安心に見えるが

  • 「純粋終身」と呼ばれる商品は、受給開始後に契約者が死亡すると払込保険料と累積総支給額の差は全て運営会社のものとなり、遺族などが受け取ることはできない(その分、払込保険料に対する毎月の受給金額の率が高い)
  • 固定受給金額の場合は物価上昇により受給金の価値が段々目減りする

などのリスクがある。一定金額の支払いを保証する見返りに(見込み)投資益は低く、どちらかというと投資知識も老後資金も乏しい階層が一定金額の終身受給という(見かけの)絶対的な安心のために利用することが多いと言われる[25]

アニュイティの運営会社は、積立あるいは一括に関わらず、契約者から払い込まれた保険料を基にして契約者に長期間に渡って支払いをするので、形の上では契約者から借金をしてその分割返済をすると見ることもできる。払い込まれた保険料に対する払い戻し率は、上記の契約期間、生命保険の有無、契約者の年齢など様々な条件によって異なり、当然、(アニュイティの運営会社にとって)リスクの低い契約ほど払い戻し率が高い傾向にある。

総じて言えばアメリカの年金政策は、個人が自分で将来必要となる退職資金を貯蓄する自助努力に期待し、そのために解りやすく、影響が大きく、利用しやすい永続的で安定したタックス・インセンティブ(優遇税制)で個人年金を奨励して、退職者が公的年金(社会保障)に対する相対的な依存度を低く抑えようとしていると言える。例外的に退役軍人には手厚い年金制度が用意されているのが特徴である。

イギリス[編集]

労働年金省が所管。社会保険方式の年金として、強制加入の定額型基礎年金(国家年金, State Pension)と、所得比例年金(国家第二年金,SPS)があり、これらに国庫負担はないが、週給109ポンド以下の者は加入を免除される[26][27][28]

加えて租税を原資とした無拠出制年金である年金クレジット英語版が存在し、これはミーンズテストにより実施され収入に比例して減額される[28][29]。さらに障害年金として、障害者生活扶助英語版(DLA)や、単身者自立手当英語版(PIP)が存在し、これは非拠出型・非ミーンズテスト型の公的扶助である。

オランダ[編集]

基礎年金制度による国民皆年金が達成され、支給額は一律定額[30]。財源は所得比例の保険料である[30]

シンガポール[編集]

人的資源省が所管。配下の中央積立基金(Central Provident Fund, CPF)への個人積立方式であり、CPFに雇用主と雇用者が共同で拠出する[31]。その積立プールは医療保険と共用である。

スイス[編集]

第一階部分は、雇用者と雇用主が拠出する賦課型の社会保険方式であり、所得比例年金だが最低額が設定されている[32]。1948年より全国民に加入義務があり、また2割ほどの税収も投入されている[32]

スウェーデン[編集]

スウェーデン保健・社会政策省が所管。賦課方式の所得比例年金(年金保険)と、ミーンズテストによる補助的な最低保証年金(一般税原資)の組み合わせである[2][27]。最低保証年金は3年以上の居住歴が必要で、月収が18万円を超えると支給されなくなる[3]

大韓民国[編集]

大韓民国では、1988年に導入され、1999年に国民皆年金が実現した[33]

台湾[編集]

中華民国台湾)では労働部労工保険局が所管。国民年金保険(National Pension)と、被用者年金である労保年金(旧制度)と労工退休金(2004年-)が存在する。旧制度は経過措置であり新規加入はできない[34]

日本[編集]

日本の年金制度(2015年(平成27年)3月末現在) [35]
国民年金(第1階)
第1号被保険者 1,742万人
第2号被保険者 4,039万人
第3号被保険者 932万人
被用者年金(第2階)
厚生年金保険 3,599万人
国家公務員共済組合 106万人
地方公務員共済組合 283万人
私立学校教職員共済 52万人
その他の任意年金
国民年金基金 / 確定拠出年金(401k)
/ 確定給付年金 / 厚生年金基金

厚生労働省が所管。公的年金では以下が強制加入であり、国民皆年金が達成されている。

  • 基礎年金(定額拠出型) - 国民年金として政府が政府が管掌。
  • 被用者年金(所得比例年金)- 政府管掌の厚生年金と、共済組合管掌の年金がある。

2006年(平成18年)3月末現在の公的年金の加入者数[36]

  • 第1号被保険者 -  自営業者:400万人、無業者:700万人、パートなど:600万人、その他:600万人
  • 第2号被保険者 - 厚生年金:3300万人、各種共済年金:500万人
  • 第3号被保険者 -  第2号被保険者の被扶養配偶者:1100万人

その他、以下の私的年金制度が存在し、税控除対象となっている。

脚注[編集]

  1. ^ 英語などでは年金をペンションと言い、また宿泊施設もペンションと言われるが、日本では「ペンション」と言えば宿泊施設を指す。
  2. ^ a b c OECD 2015, p. 46.
  3. ^ a b c d e f g h 平岡公一 『社会福祉学』 有斐閣、2011年12月、Chapt.17。ISBN 9784641053762 
  4. ^ 片山 信子 (2008-10). “社会保障財政の国際比較 : 給付水準と財源構造”. レファレンス (国立国会図書館) 58 (10): 73-103. 
  5. ^ a b OECD 2015, Executive Summary.
  6. ^ 日本の国民年金第1号加入者では、保険料の11%が徴収コスト
  7. ^ 内閣総理大臣 安倍晋三 (2016年2月23日), “内閣衆質一九〇第一二九号 衆議院議員大串博志君提出諸外国における一階部分の年金積立金の運用状況に関する質問に対する答弁書” (プレスリリース), 衆議院, http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b190129.htm 
  8. ^ OECD 2015, p. 48.
  9. ^ OECD 2015, p. 49,50.
  10. ^ a b c d OECD 2015, p. 58.
  11. ^ Social Security Disablity Benefits
  12. ^ Who can get Social Security survivors benefits and how do I apply?
  13. ^ Benefits For Children
  14. ^ Benefits Planner: How Credits Are Earned 2014年2月24日閲覧
  15. ^ pBenefit Calculation Examples for Workers Retiring in 2015 2015年2月25日閲覧
  16. ^ Retirement Planner: Getting Benefits While Working2015年3月27日閲覧
  17. ^ 【年金減額】働くと年金支給額が減る「28万円の壁」 2014年11月23日閲覧
  18. ^ [1]
  19. ^ Retirement Planner: Other Things To Consider 2014年2月24日閲覧
  20. ^ [2]
  21. ^ [3] 日本の年金をもらうとソーシャル・セキュリティが減額される? 2015年2月25日閲覧
  22. ^ Retirement Planner: How the Windfall Elimination Provision Can Affect Your Social Security Benefit 2015年2月25日閲覧
  23. ^ [4]
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  36. ^ 厚生労働省資料であるとして報道の読売新聞夕刊 2007年10月18日2版 4ページの記事から引用。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]