アレクサンドル・ドゥーギン

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アレクサンドル・ゲレビッチ・ドゥーギン
Aleksandr Gelyevich Dugin
Алекса́ндр Ге́льевич Ду́гин
Дугин, Александр Гельевич.jpg
アレクサンドル・ゲレビッチ・ドゥーギン
生年月日 (1962-01-07) 1962年1月7日(57歳)
出生地 ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
Flag of the Russian Soviet Federative Socialist Republic.svg ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国モスクワ[1]
現職 ユーラシア党党首
所属政党 国家ボリシェヴィキ党
ユーラシア党
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アレクサンドル・ドゥーギンロシア語: Александр Гельевич Дугин, ロシア語ラテン翻字: Aleksandr Gel'evich Dugin, 1962年1月7日 - )はソビエト連邦(現・ロシア連邦)モスクワ出身の政治活動家地政学者政治思想家哲学者2008年から2014年[2][3][4]までモスクワ大学で教授を務めた。クレムリンに影響力を持つ存在とされ、レフ・グミリョフに始まるネオ・ユーラシア主義の代表的な思想家の一人とされる。

経歴[編集]

1980年代は反体制活動家だったものの[5]ソ連崩壊後のロシアに対してアレクサンドル・ソルジェニーツィンのように幻滅してヨシフ・スターリンの再評価とソ連の再興[6]を掲げる保守派となり[7]1990年代に同じ元反体制活動家のエドゥアルド・リモノフとともに1920年代白系ロシア人(ソ連から亡命したロシア人)の間で流行したユーラシア主義の復活を掲げる国家ボリシェヴィキ党(当初は国家ボリシェヴィキ戦線)を結成した[8]。これはジョージ・オーウェルの小説「1984年」に登場する国家「ユーラシア」の「ネオ・ボルシェヴィズム」に着想を得たとも評されている[9]ボリス・エリツィン大統領の打倒を目指すゲンナジー・ジュガーノフ共産主義者とセルゲイ・バブーリン民族主義愛国主義者によって創設された野党連合「救国戦線」に加わるも[10]、その後はリモノフとの党内対立で離れ、ロシア政府エフゲニー・プリマコフウラジミール・プーチンを支持し始めた[11]。また、ロシア連邦議会でユーラシア主義を推進[12]していたゲンナジー・セレズニョフ下院国家会議議長(当時ロシア連邦共産党所属)に顧問として起用され[13]、ロシア政界と関わりを持つこととなった。

2002年にユーラシア党、2005年にはユーラシア青年連合を設立し、ネオ・ユーラシア主義を国際的な運動にすることを目指して活動を続けている。

主張[編集]

自由民主主義資本主義個人主義グローバリゼーションなど西側諸国リベラルな価値や理念を強く批判・攻撃し、20世紀に衰退してしまった共産主義とファシズム、21世紀に標準化した自由主義に代わる第四の政治的理論としてネオ・ユーラシア主義を主張する。ドゥーギンは有史以来の世界構造は海の秩序をコントロールする海洋国家と陸の秩序をコントロールする大陸国家に分けられるとし、ソ連崩壊後のアメリカ一極支配の世界においても地球規模の市場原理主義の下でグローバル化を主導するシーパワーのアメリカと、独裁宗教を統治論理としたランドパワーのロシアの新冷戦構造により当てはまるとした。

ドゥーギンによると、北大西洋条約機構(NATO)のような欧米の「大西洋主義」政策はハートランドを奪うためのロシアの封じ込めとリベラルな価値観が支配する世界の構築を狙いとするものであり、これに対抗してロシアは地政学的な戦略に基づいてユーラシア大陸多極体制を築く外交戦略を取るべきだという。ユーラシア帝国をつくるためにもロシアは領土問題を避けるべきとし、まずNATO陣営のドイツカリーニングラードを返還して中央ヨーロッパ東ヨーロッパに目を向けさせて欧州全体をフィンランド化させ、中東ではイランと同盟を組んでクルド人などイラン系民族を使って反露的でNATO陣営のトルコを揺さぶることで脅威度を減らし、アジアでは日本クリル列島を譲渡して反米を煽動して日米同盟を解体させ、ロシア極東への脅威度を減らすためにベトナムを除くインドシナ半島中国を南下南進するよう支援してフィリピンオーストラリアなど米国の同盟国と対峙させるべきと主張している[14]。また、上海協力機構(SCO)をNATOと対決できる多極的なブロックとして重視してる[15][16]

脚注[編集]

  1. ^ Борис Исаев (2005). Геополитика Геополитика: Учебное пособие (in Russian). Издательский дом "Питер". p. 329. ISBN 5469006514.
  2. ^ ru:Дугин хочет с помощью Путина прояснить свой статус в МГУ” (Russian). BBC Russian Service (2014年6月30日). 2018年6月23日閲覧。
  3. ^ Ben Hoyle (2014年7月3日). “Putin accused of betraying and abandoning Ukraine separatists”. The Australian. http://www.theaustralian.com.au/news/world/putin-accused-of-betraying-and-abandoning-ukraine-separatists/story-fnb64oi6-1226976223365 
    “Rebel leaders in Ukraine feel 'abandoned' by Putin”. The Australian. (2014年7月4日). http://www.theaustralian.com.au/news/world/rebel-leaders-in-ukraine-feel-abandoned-by-putin/story-fnb64oi6-1226976988427 
    Paul Sonne (2014年7月4日). “Russian Nationalists Feel Let Down by Kremlin”. The Wall Street Journal. https://www.wsj.com/articles/russian-nationalists-feel-let-down-by-kremlin-again-1404510139 
  4. ^ Fitzpatrick, Catherine A (2014年6月27日). “Russia This Week: Dugin Dismissed from Moscow State University? (23–29 June). Entry at 2002GMT”. The Interpreter. http://www.interpretermag.com/russia-this-week-what-will-be-twitters-fate-in-russia/ 2015年1月12日閲覧。 
  5. ^ Charles Clover (2011年10月5日). “Putin's grand vision and echoes of '1984'”. Financial Times. http://www.ft.com/intl/cms/s/2/2917c3ec-edb2-11e0-a9a9-00144feab49a.html  In Russian: Чарльз Кловер (2011年10月6日). “ru:Грандиозные планы Путина и отголоски "1984"” (Russian). inoSMI. 2018年6月24日閲覧。
  6. ^ Иван Зуев (31 October 2012). Александр Дугин: Уроки религии – это великая победа над русофобами (in Russian). Nakanune.ru.
  7. ^ Дугин (28 September 2012). Мы должны забрать у либералов как минимум половину медийного поля! (in Russian). Nakanune.ru.
  8. ^ Декларация о создании НБП
  9. ^ Charles Clover (2011年10月5日). “Putin's grand vision and echoes of '1984'”. Financial Times. http://www.ft.com/intl/cms/s/2/2917c3ec-edb2-11e0-a9a9-00144feab49a.html 2018年6月24日閲覧。  In Russian: Чарльз Кловер (2011年10月6日). “ru:Грандиозные планы Путина и отголоски "1984"” (Russian). inoSMI. 2018年6月24日閲覧。
  10. ^ Lee, The Beast Reawakens, p. 321
  11. ^ Mankoff, Jeffrey (2009). Russian Foreign Policy: The Return of Great Power Politics. Rowman & Littlefield. pp. 66–67.
  12. ^ archive/GWASHU_DEMO_12_1/John Dunlop Aleksandr Dugin's Foundations of Geopolitics.pdf “Aleksandr Dugin's Foundations of Geopolitics”. Demokratizatsiya. (2004年1月31日). https://www.gwu.edu/~ieresgwu/assets/docs/demokratizatsiya archive/GWASHU_DEMO_12_1/John Dunlop Aleksandr Dugin's Foundations of Geopolitics.pdf 2016年5月12日閲覧。 
  13. ^ “The Long Path: An Interview With Alexander Dugin”. Open Revolt. (2009年6月28日). https://openrevolt.info/2014/05/17/alexander-dugin-interview/ 2016年1月19日閲覧。 
  14. ^ Dunlop, John (January 31, 2004). "Aleksandr Dugin's Foundations of Geopolitics" . Demokratizatsiya: The Journal of Post-Soviet Democratization. Institute for European, Russian and Eurasian Studies (George Washington University). 12 (1): 41. ISSN 1074-6846. OCLC 222569720.
  15. ^ “The Long Path: An Interview With Alexander Dugin”. Sputnik. (2017年6月10日). https://sputniknews.com/politics/201706101054515679-eurasia-russia-china/ 2018年6月23日閲覧。 
  16. ^ “SCO SUMMIT: CHINESE DRAGON AND RUSSIAN BEAR AS MULTIPOLARITY FORCES”. geopolitica. (2018年6月14日). https://www.geopolitica.ru/en/article/sco-summit-chinese-dragon-and-russian-bear-multipolarity-forces 2018年6月23日閲覧。 

参考文献[編集]

黒岩幸子 「アレクサンドル・ドゥーギン, 『地政学の基礎 ロシアの地政学的未来/空間をもって思考する』, モスクワ, 1999年, 928ページ」Journal of policy studies 2002-10-01[1]

ゲンロン6 特集ロシア現代思想Ⅰ 「アレクサンドル・ドゥーギン, 『第四の政治理論の構築にむけて』,乗松亨平訳,93ページ」