政治家

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政治家(せいじか、: Politician)とは、職業として政治に携わっている者のことであり、一般的に国会議員国務大臣並びに地方公共団体及び都道府県あるいは市区町村議会議員などが政治家と呼ばれる[1][2]

職業としての政治

マックス・ヴェーバーは、自身の講演 『職業としての政治』 の中で「政治家の本領は『党派性』と『闘争』である」と指摘している[要出典]

アメリカではジェイムズ・ポール・クラークが“A politician thinks of the next election and a statesman thinks of the next generation.”(政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の時代を考える)と喝破した[要出典]権力など利権を得ることに熱心な政治家を揶揄して「政治屋(せいじや)」と呼ぶこともある[3]

政治家は国家によって認定された資格に基づく職業ではない[4]。選挙結果によっては職を追われるため、不安定な職業である[4]。政治家は有権者の利益や意向を議会に反映させるが、その方法は有権者の具体的な要望を忠実に実現する方法と、自らが信じる方法で有権者に有益な結果をもたらす方法の2つがある[4]

世界的に政治家は嫌悪される職業になりつつある。アメリカでは職業政治家に対する嫌悪が広がっており、2016年の大統領選挙では非職業政治家および反職業政治家の候補が支持を伸ばしたとする分析がある[5]。タイでは、2014年のバンコク大学の調査によって、6歳~14歳の子供の80%前後が政治に関わる仕事に就きたくないと答えたことが分かった[6]

政治家と利権

政治家を仲立ちとする地方と国との利害関係やそれに起因する諸問題は、今も昔も政治の世界では避けて通ることができない。政治家を選出する側である有権者は、諸制度の改善や地元地方へのインフラ整備などによる社会的・福祉的な恩恵、あるいは国家的なイベントや企業誘致や公共事業受注などによる経済効果を求めるし、政治家も地元への便宜をはかることで次の選挙での再選を期そうとする。社会的な利益の還元として地元を潤す形であれば特に法を犯すこともないが、一部政治家の強烈な圧力によって公共事業の計画を大幅に変更させたり、公共事業をばらまいたりといった行為がしばしば非難の対象となる。こういったことは日本に限らずアメリカでも聞かれる話で、少し古い話だが、1950年代後半にアメリカ陸軍準中距離弾道ミサイルMGM-31 パーシングの主契約企業の選定作業で、元ミシガン州知事であった陸軍長官ウィルバー・ブラッカーが、契約ミシガン州の企業に与えるように地元から圧力をかけられていたことがあった。候補に挙がっていた企業の中でミシガン州の企業はクライスラーだけであったが、実際に受注したのはマーティン・マリエッタであった。

こういった政治家を仲立ちとする利権が、制度の不備の改善や交通網の整備といった公共の福祉を大幅に超えて特定の個人企業に対する不正な利益供与に至ると汚職事件にも発展していく。政治家の汚職は幾度となく問題となり、逮捕者が出たり、有罪判決が出て失職するような事件が起こっても後を絶つことがない。また、有罪判決を受けて失職してしまったにも関わらず、有権者の地元への恩恵の期待から、その政治家が次の選挙で再び当選してしまうことも決して珍しいことではない。

政治家のクオリティ

ヴェーバーは、『職業としての政治[7]』の中で、政治家にクオリティ(Qualitäten)として次の三つを挙げている[8][9][10]

  1. 情熱 (Leidenschaft) : Sacheへの情熱
  2. 責任感 (Verantwortungsgefühl
  3. 目(Augenmaß) : 距離をおくこと

日本の「政治家」

一般的に国会議員国務大臣並びに地方公共団体の長及び議会議員などが政治家と呼ばれる[1][2]公職選挙法政治資金規正法においては、その適用対象となる「候補者、立候補予定者、現に公職にある者」を総称して政治家と呼ぶ[1][2]

政治家は、国民の代表者として選挙によって選ばれた上で、有権者の意思を地方自治体の政策に反映させようと活動する[1][2]。主な仕事は、自らが所属する議会委員会での議案の審議に参加することで、修正などの作業に関わり最終的に表決することである[1][2]。また、陳情を聞いたり集会に参加することで有権者の意見を聞き政策に反映させる[1][2]地方自治体首長大臣など内閣の役職に就いた場合には、官僚機構全体を統括して調整し動かすことで政策を決定・実行する[1][2]

近年では、親族や親戚の後を継承した世襲政治家や、タレントとしての知名度を武器に当選したタレント政治家の割合が増えつつあるが、このような形で政治家となることに疑問を呈する意見もある[11][12][13]世襲議員に関しては、国会議員のうち、選挙における地盤や資源に恵まれるため、当選回数が多く、自分が代表する地域により多くの補助金をもたらしているという分析がある[14]タレント政治家に関しては、批判も多いが政党を牽引しているとする指摘もある[15]

評価

政治家を職業として見る時、日本国内での評価は芳しいものではない。村上龍13歳のハローワーク』では、「ひょっとしたら政治家ほどわかりにくい職業はこの世にないかもしれない。この本は職業を定義するためのものではないので結論を先にいうが、世の13歳はこんなにわかりにくい職業を目指すべきではない」「将来的には、NPONGOなどで国際的に活動してきて、利害調整の困難さと重要性を理解した人がやむにやまれず政治に参加するようになればいいと思う。あるいは企業活動と環境保護の調整に長く深く関わった人とか、企業や銀行を見事に再生させた人とか、地域社会や教育の活性化にたずさわった人とか、そういった分野から政治家が現れるようになるべきだ」と酷評されている[2]

精神科医斎藤環は、政治家の特徴として「どんな場所でも、どんな相手でも、とにかく自分の話しかしない」「ガサツで、押しが強く、明らかに後から植え込まれた強い自己肯定感を持っている」という特徴を挙げ、ドブ板選挙は「カルト自己啓発セミナーの洗脳」と同構造と指摘、「謙虚さと卑屈さを履き違え、駅前で土下座せんばかりに頭を垂れている政治家を見て、子どもたちが「あんなふうになりたい」と思うわけがないでしょう」と批判している[16]

事実、政治家自身の職業肯定感も低く、NHKによる地方議員2万人への調査では「生まれ変わっても議員になりたいですか」という質問に、現職の地方議員の7割近くが「NO」と回答している[17]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g 第2版, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “政治家とは” (日本語). コトバンク. 2021年12月13日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 「政治家」の職業解説【13歳のハローワーク】” (日本語). 13歳のハローワーク公式サイト(13hw) -中高生のための…未来のヒントに出会う場所。-. 2021年10月24日閲覧。
  3. ^ 政治家?政治屋?見極めよう ジャーナリスト・池上彰さん@町田市立成瀬中央小(東京)|好書好日” (日本語). 好書好日. 2020年5月3日閲覧。
  4. ^ a b c 遠藤晶久 (2014-04). “職業としての政治家”. 日本労働研究雑誌 56 (4): 26-29. https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2014/04/pdf/026-029.pdf. 
  5. ^ アメリカ人の職業政治家嫌いが顕著に”. WEDGE Infinity(ウェッジ) (2016年1月27日). 2021年6月27日閲覧。
  6. ^ Chaichalearmmongkol, Nopparat. “タイの子供たちにとって政治家は避けたい職業” (日本語). WSJ Japan. 2021年6月27日閲覧。
  7. ^ Wikisource reference Politik_als_Beruf. Politik_als_Beruf. - ウィキソース. 
  8. ^ "Man kann sagen, daß drei Qualitäten vornehmlich entscheidend sind für den Politiker: Leidenschaft – Verantwortungsgefühl - Augenmaß":Politik_als_Beruf
  9. ^ ウェーバー『職業としての政治』岩波文庫[1919=1980]
  10. ^ .政治家に求められる資質とは? ~マックス・ヴェーバー『職業としての政治』
  11. ^ 【出口治明との質疑応答15】なぜ、日本だけ、世界でも突出して世襲議員が多いのか?”. ダイヤモンド・オンライン. 2020年4月4日閲覧。
  12. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2019年7月22日). “参院選 今回も乱立の著名人候補者、当選はわずか…「“集票マシン”にしないで」 専門家からは苦言も” (日本語). 産経ニュース. 2020年4月4日閲覧。
  13. ^ 林克明. “安倍内閣、6割が世襲議員の異常さ…過去15年で国民の所得14%減、資産ゼロ世帯は2倍”. ビジネスジャーナル/Business Journal | ビジネスの本音に迫る. 2020年4月4日閲覧。
  14. ^ 飯田, 健; 上田, 路子; 松林, 哲也 (2011) (日本語), 世襲議員の実証分析, 日本選挙学会, doi:10.14854/jaes.26.2_139, https://doi.org/10.14854/jaes.26.2_139 2020年4月4日閲覧。 
  15. ^ 木之下裕泰 (2016年2月12日). “SPEEDの今井絵理子氏出馬へ タレント政治家の是非” (日本語). ZUU online. 2020年4月4日閲覧。
  16. ^ それでも政治家を目指す人間の精神構造” (日本語). GQ JAPAN. 2020年4月4日閲覧。
  17. ^ 日本放送協会. “議員なんて、もうやめたい ~地方議員2万人アンケート | 特集記事” (日本語). NHK政治マガジン. 2021年10月24日閲覧。

関連項目