福祉

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OECD各国のGDPにおける社会的支出割合(公費および私費)[1]

福祉(ふくし、: Welfare)とは、「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉であり、すべての市民に最低限の幸福社会的援助を提供するという理念を指す。

概説[編集]

福祉という熟語は2200年以上前から用いられていたが、英語のwelfareの訳語として用いられるようになった語である[2]。英語のwelfareはwel(良い)とfare(状況)を組み合わせた造語である[2]

福祉問題[編集]

福祉問題とは人の人生や生活上の課題のうち、個々人の自力では解決できない問題をいう[3]

個々人の自力で解決できない問題の多くは家族やコミュニティ(地域社会や職場社会)の内部で解決が図られ、専門的な社会福祉サービスが成立していなかった時代にはこの段階での解決しかなかった[4]

しかし、家族やコミュニティでは解決できない問題や、障害や幼老年などの要因で自力では生活上の問題を解決できない問題については社会的支援が必要となる[5]

社会福祉[編集]

社会福祉 (social-welfare) は、未成年者高齢者障害者で生活上なんらかの支援や介助を必要とする人、経済的困窮者ホームレスなどに対し、生活の質を維持・向上させるためのサービスを社会的に提供すること、あるいはそのための制度や設備を整備することを指す。

福祉問題は多岐にわたり児童福祉問題、障害者福祉問題、高齢者福祉問題、医療福祉問題、司法福祉問題、学校・職業・地域福祉問題などに分類される[5]

いわゆる福祉国家政策を展開した国を中心に「社会福祉」については、社会保障と公衆衛生の政策も含む理解や定義がされることが多い。国によっては教育も含む場合がある。日本においても「広義の社会福祉」とした場合、社会保障と公衆衛生の政策を含み、それを「公共の福祉」と説明する場合がある。

狭義には、障害者一人親家庭(父子家庭、母子家庭)など社会的ハンディキャップがあると考えられる国民に対して公的な支援を行う制度を指す社会保障の一分野である。

社会福祉の歴史[編集]

日本の社会福祉の歴史は、聖徳太子が建立し現在もその名が残る「悲田院」などの救済施設まで溯ることができる。また律令時代には天皇による賑恤(賑給)制度も存在した[6]

ただ当時は貧民救済の性格が強く、福祉という言葉は使われていなかった。その後仏教的な精神(慈悲など)を背景として、僧侶による救済や共同体での相互扶助が行われてきた。一方、ヨーロッパ大陸ではキリスト教の精神(アガペー友愛など)により古くから慈善事業が行われてきた。

国連は、1981年国際障害者年とすることを決議した(1980年1月30日)。テーマは「完全参加と平等」とされた。障害に対する考え方を「助けるもの」から「自立を支援するもの」への大転換を目指すものであった。1983年から1992年を国連障害者の10年とし、その行動計画を充実させ、さらにアジア・太平洋各国は1993年から2002年までをアジア太平洋地域障害者の10年としてその定着を進めた。この中で、福祉の理念の一つとしてノーマライゼーションという言葉が強調され始めた。その後、インクルージョン(包摂)という言葉が新しい理念として強調され始める。

供給主体[編集]

福祉レジーム論[7]
福祉レジーム 社会民主主義 自由主義 保守主義
モデル国家 ノルディック アングロサクソン コンチネンタル
主たる福祉供給源 政府 市場 家族

社会福祉の供給主体は「家族」「政府」「市場」があり、3つに大きく分けることができる[7]。政府以外の担い手として、コミュニティ企業活動のうち収益活動以外の活動、生活協同組合労組社会福祉法人医療法人宗教団体NPO、その他の公益法人ボランティアなど多様な主体があるが、捉え方や位置づけは、国によって異なる。

  • アングロサクソン諸国(アメリカなど)では、それらは市場の一員とみなされる[7]。公共部門が嫌悪され、民間が賛美される風潮がある上に、財源が寄附金で賄われているということも大きい。
  • 北欧諸国(ノルディック)では、それらは政府の役目であるとみなされる[7]。高福祉政策に肯定的な雰囲気とともに、財源が政府一般税収に依存していることもある。
  • 大陸ヨーロッパ諸国(コンチネンタル)では、市民社会の一員であるとされる。福祉の供給の大部分を担っているのは「家族」である。家族や親族・近隣の相互扶助で機能を果たせなくなった部分を、制度や機構として政府などが担う。
  • 日本では、自由主義・保守主義の両方を混合して構成されている[7]

社会的支出の分類[編集]

OECD各国のGDPにおける社会的支出割合(%、種類別)[1]

OECD Social Expenditure Databaseに於いては、社会的支出を以下の9分類にて集計している[1][8]

高齢者 (Old-age)
老齢年金、早期退職年金、在宅および施設介護サービス
遺族 (Survivors)
遺族年金および葬儀支出
障害者(Incapacity-related benefits)
ケア、障害者援助、労災傷病援助、傷病手当金
保健 (Health)
外来および入院ケア、医療用品、疾病予防
家族 (Family)
児童手当と融資、育児支援、育児休業支援、片親支援
積極的労働政策 (Active labour market policies)
雇用サービス、職業訓練、障害者就業支援、直接雇用創出、起業支援
失業 (Unemployment)
失業給付、早期退職支援
住宅 (Housing)
住宅手当、賃貸住宅補助金
その他 (Other social policy areas)
その他、低収入家庭への補助、食料補助金など

公的支出[編集]

OECD各国の公的社会的支出のGDP比率%(2011年)[1]
メキシコ 韓国 チリ カナダ 豪州 米国 スイス OECD平均 ノルウェー 英国 日本 オランダ ドイツ スペイン スウェーデン イタリア フィンランド デンマーク フランス
高齢者 1.6 2.1 2.6 4.0 5.0 6.0 6.5 7.4 7.1 6.1 10.4 6.2 8.6 8.9 9.4 13.4 10.6 8.4 12.5
遺族 0.3 0.3 0.7 0.3 0.2 0.7 0.3 1.0 0.3 0.1 1.4 0.2 2.0 2.3 0.4 2.6 0.9 0.0 1.7
障害者 0.1 0.5 0.8 0.8 2.6 1.4 2.6 2.2 3.9 2.5 1.0 3.3 2.0 2.6 4.3 1.8 4.0 4.7 1.7
保健 2.8 4.0 3.2 7.2 5.8 8.0 6.5 6.2 5.6 7.7 7.7 7.9 8.0 6.8 6.7 7.0 5.7 6.7 8.6
家族 1.1 0.9 1.3 1.2 2.8 0.7 1.4 2.2 3.1 4.0 1.4 1.6 2.2 1.4 3.6 1.5 3.2 4.0 2.9
積極的労働政策 0.0 0.3 0.3 0.2 0.3 0.1 0.6 0.5 0.6 0.4 0.2 1.1 0.8 0.9 1.2 0.4 1.0 2.2 0.9
失業 N/A 0.3 0.0 0.7 0.5 0.8 0.6 1.0 0.4 0.4 0.3 1.5 1.2 3.5 0.4 0.8 1.7 2.2 1.6
住宅 1.1 N/A 1.0 0.3 0.3 0.3 0.1 0.4 0.2 1.5 0.1 0.4 0.6 0.2 0.4 0.0 0.5 0.7 0.8
その他 0.8 0.6 0.3 2.6 0.3 0.9 0.7 0.5 0.7 0.2 0.5 1.3 0.2 0.2 0.7 0.0 0.8 1.0 0.6
7.7 9.0 10.1 17.4 17.8 19.0 19.3 21.4 21.8 22.7 23.1 23.5 25.5 26.8 27.2 27.5 28.3 30.1 31.4

私的支出[編集]

OECD各国の私的社会的支出のGDP比率%(2011年)[1]
メキシコ スペイン イタリア ノルウェー スウェーデン フィンランド 韓国 ドイツ イスラエル OECD
平均
スウェーデン 豪州 日本 フランス カナダ デンマーク 英国 オランダ 米国
高齢者 N/A 0 0.3 0.7 0 0.2 0.1 0.8 N/A 1.6 2.6 2.1 2.7 0.1 3.3 4.7 4.5 4.3 4.5
障害者 N/A N/A 0 0.2 0 0.7 0 0.1 N/A 0.3 0.2 N/A N/A 0.8 N/A 0 0.4 0.4 0.3
保健 0.2 0.5 0.1 N/A 0.9 0.2 0.1 1.1 0.8 0.7 0 0.8 0.2 1.5 1.3 0.2 0.3 0.6 5.8
その他 N/A N/A 0.4 N/A 0.1 0.1 1.4 0 N/A 1 0 0 0 0.9 0 0 0 1.4 0
0.2 0.5 0.8 0.9 1.0 1.2 1.5 2 2.1 2.2 2.8 2.9 3 3.3 4.6 4.9 5.3 6.8 10.5

年表[編集]

脚註[編集]

  1. ^ a b c d e OECD Social Expenditure Statistics (Report). OECD. (2011). doi:10.1787/socx-data-en. http://www.oecd.org/els/soc/expenditure.htm. 
  2. ^ a b 川廷宗之、宮嶋淳 『社会福祉をはじめて学ぶあなたへ2訂版』 ヘルスシステム研究所、2008年、143-144頁。
  3. ^ 川廷宗之、宮嶋淳 『社会福祉をはじめて学ぶあなたへ2訂版』 ヘルスシステム研究所、2008年、38頁。
  4. ^ 川廷宗之、宮嶋淳 『社会福祉をはじめて学ぶあなたへ2訂版』 ヘルスシステム研究所、2008年、38-39頁。
  5. ^ a b 川廷宗之、宮嶋淳 『社会福祉をはじめて学ぶあなたへ2訂版』 ヘルスシステム研究所、2008年、39頁。
  6. ^ 日本の社会福祉史・時代区分による特徴。2012年8月8日閲覧、http://www.kbc.gr.jp/ai/study/rekishi.htm
  7. ^ a b c d e 平成24年版厚生労働白書 (Report). 厚生労働省. (2012). pp. 81-82. http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/. 
  8. ^ 社会保障給付費(平成21年度) (Report). 国立社会保障・人口問題研究所. (2011-10). 付録、OECD基準の社会支出の国際比較. http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h21/kyuuhu_h21.asp. 
  9. ^ http://www.yofuen.com/profile/history.html 陽風園のご案内 / 沿革
  10. ^ http://www.hiruda.or.jp/outline100.htm 社会福祉法人 聖ヒルダ会
  11. ^ 高齢者介護研究階報告書「2015年の高齢者介護」厚生労働省老健局総務課企画法令係

関連項目[編集]