医療法人

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日本医療機関(開設者別、2012年)[1]
病院 一般診療所 歯科診療所
274 585 3
公的医療機関 1,258 3,632 280
保険者 121 581 12
医療法人 5,172 36,859 11,074
個人 373 46,227 56,481
その他 867 11,663 306
8,605 99,547 68,156

医療法人(いりょうほうじん)とは、病院医師歯科医師が常勤する診療所、または介護老人保健施設の開設・所有を目的とする法人である。

根拠規定は医療法第6章(旧第4章)であり、その冒頭の39条において社団財団の2種類が認められている。銀行振込などで使用する略称は「イ」。医療法人社団、医療法人財団、社会医療法人の区別はされていない。

全国の病院の 約68%(病院分類中1位)、全国の診療所の 約40%(診療所分類中2位。最多は「個人」の約43%)、全国の歯科診療所の 約19%(歯科診療所分類中2位。最多は「個人」の約80%)が医療法人であり、数的には医療の根幹を支えている。(病院#制度も参照)

概要[編集]

医療法第三十九条
病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。
第四十条の二
医療法人は、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすよう努めなければならない。

1950年(昭和25年)8月に、前年に行なわれた医療法改正に伴い、医療法人制度が施行。2016年現在、施行後60年を越えている制度である。

日本全国では53,000の医療法人があり(2017年3月末)、持分の定めのある社団がそのうち約76%を占め、持分の定めのない社団は約23%、財団は約1%存在している。また、常勤医師を一人しか持たない「一人医師医療法人」は44,020で、医療法人全体の約83%に達している[2]

設立には主たる事務所の所在地の都道府県知事認可を必要とする(医療法第44条)。認可判断にあたっては、都道府県医療審議会の意見を聞かなければならない(医療法第45条第2項)。

なお、平成27年4月1日から地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(平成26年法律第51号)により廃止されたが、2つ以上の都道府県において病院等を開設する医療法人については、広域医療法人(厚生労働大臣所管の医療法人)と呼ばれ、認可権限が厚生労働大臣にあった(旧医療法第68条の2)。認可判断にあたっては社会保障審議会の意見を聞かなければならなかった(旧医療法第68条の2)。他県の事業者と合併した場合にも広域医療法人への移行が必要であった。

種類[編集]

医療法人の総数(2017年3月31日現在)[2]
財団 社団
総数 375 52,675 53,000
うち、特定医療法人 49 313 362
うち、社会医療法人 35 244 279

法人の一般的種類による分類[編集]

  • 医療法人社団
    2007年4月1日以降の医療法人 社団の類型は以下の通りとなる。
    • 持分の定めのない医療法人
      • 持分の定めのない法人
      • 基金拠出型法人(持分の定めのない社団医療法人がその資金調達手段として基金を選択したもの。なお、持分の定めのない社団のみこの基金制度を利用できる点に留意する。)
      • 社会医療法人(※都道府県の認定は2008年4月1日より)
      • 特定医療法人
    • 持分の定めのある医療法人
      • 持分の定めのある法人
      • 出資額限度法人(※出資額限度法人は、社員の退社及び残余財産の分配にあたりその出資額を払戻額を限度としたものであって、持分がないわけではない。)
  • 医療法人財団

法律により認定や承認された法人の分類[編集]

行政機関の所管による分類[編集]

  • 広域医療法人(厚生労働大臣所管法人)〔平成27年4月1日施行法により廃止。平成27年4月1日以降は、すべて都道府県知事所管法人〕
    • 2つ以上の都道府県において病院等を開設する医療法人。認可権限は厚生労働大臣にある。
  • 都道府県知事所管法人
    • 医療法人の主たる事務所の所在地の都道府県知事に認可権限がある。

実態に着目した法人の通称[編集]

医療法人に関係するその他の法人制度[編集]

  • 地域医療連携推進法人制度(医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢。これにより、地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保する事を目指す制度。ホールディングカンパニー(持株会社)制度のようなもの)

管理[編集]

医療法人社団においては、社員と呼ばれる株主に似た構成員からなる社員総会が、形式上、最高意思決定機関となり、理事の選任等を行う。実際に法人経営の最終的な意思決定を行うのは理事会であり、理事会で選任された理事長が法人代表者となり、経営を行う。

財団の場合、社員総会はなく、理事会が最高意思決定機関となる。また、評議員会を置かなければならない(医療法第46条の2第2項)。理事長は、医療法人が医療法で定める事柄や重要な事項として寄付行為で定める事項を行う前に評議員会の意見を聴かなければならないとされている(医療法第46条の4の5)

医療法人には、理事3人以上および監事1人以上を置かなければならない(医療法第46条の5第1項)。理事長は原則として医師又は歯科医師でなければならない(医療法46条の6第1項)。また、開設する病院の管理者(いわゆる院長)を原則として理事に加えなければならず(医療法46条の5第6項)、この院長たる理事が理事長を務めることが多い。法制度上、法人、成年被後見人等、医療法などで罰金刑以上を受けた者などは医療法人の理事になることができない。

業務の範囲[編集]

医療法人は、医療法第39条、第42条から本来業務、附帯業務、附随業務を行うことができるとされている。社会医療法人は、それらに加えて収益業務を行うことができるとされている(医療法第42条の2)[3][4]

本来業務[編集]

病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設・運営する業務のこと。地方自治法上の指定管理者として病院等を管理・運営する業務も含まれる。

附帯業務[編集]

本来業務以外の業務であって医療法第42条の規定により定款等で定めることで行うことができる業務のこと。看護師等の養成所の経営や有料老人ホームの設置など様々なものががある[4]。あくまでも、本来業務に支障のない限り行うことができるとされているものだが、医療サービスと福祉・介護・高齢者向け住居サービスなどの一体的な提供が求められる社会的状況の中、近年は附帯業務の範囲についても拡大される傾向にある。

附随業務[編集]

開設する病院等の業務の一部として又はこれに附随して行われる業務のこと。収益業務に含まれず、定款での定めも必要ない。例えば、病院内の売店や敷地内駐車場がこれにあたる。

収益業務[編集]

社会医療法人は、本来業務の経営に充てることを目的として、①農業 ②林業 ③漁業 ④製造業 ⑤情報通信業 ⑥運輸業 ⑦卸売・小売業 ⑧不動産業(「建物売買業、土地売買業」を除く。) ⑨飲食店、宿泊業 ⑩医療、福祉(病院、診療所又は介護老人保健施設に係るもの及び医療法第 42 条各号に 掲げるものを除く。) ⑪教育、学習支援業 ⑫複合サービス事業 ⑬サービス業を定款等で定めることで行うことができるとされているが、その業務のこと。

財務[編集]

医療法人は剰余金の配当ができない点(医療法第54条)で通常の営利法人とは区分されているが、残余財産分配(みなし配当)もできないために原則非課税となる公益法人等とはされていない。そのため社会医療法人を除く医療法人は、法人税等の税制面では原則的に営利法人と同じ扱い(法人税において23.4%)が適用される。更におこなえる事業の種類が非常に限定されていることから(医療法第42条の2)、比較的近い目的を持ち、税法上は公益法人等に当たる社会福祉法人(剰余金配当も残余財産分配も出来ないため法人税などは収益事業を行わないかぎり0%)とは法人資質が異なっている。

なお、旧医療法では、持分を定めた社団医療法人は出資持分を定めることが可能である。この場合、旧厚生省が通達したモデル定款によれば、出資割合に応じてその払い戻しが可能と解釈されていた。

したがって、その法人の社員が死亡等の事由により退社した際、その相続人が、その出資持分を承継した場合、課税庁により、純資産価額方式(又は純資産価額方式及び類似業種比準価額方式)により払戻し時の時価により評価が行われる(財産評価通達194-2)。この場合、その相続人等が、持分を定めた社団医療法人の多額の相続税の返還請求を求めるケースがある。このため、多額の払戻しを請求された法人が解散に至ることもあり、課税庁と医療法人側がその出資評価をめぐって昭和50年代から60年代にかけて訴訟が提起されていた(東京地裁昭和53年4月17日判決, 行集29巻4号538頁参照)。

現在は、医療法人の出資評価は、時価評価することが妥当であると説示されているため、課税実務では、依然として時価評価が行われている。

なお、改正医療法下(平成18年6月21日改正)においては、新たに医療法人を設立しようとする者は、社団形態は選択できるが、社員に対して持分の定めることはできない[5]。ただし、既に設立された持分を定めた社団医療法人については、改正医療法附則10条2項により「当分の間」存置されることとなった。この「当分の間」の解釈については、期限が設けられていないため、依然不透明である。

また、改正医療法が施行される2007年4月以降に医療法人を設立する際、解散時の残余財産の帰属先は「国、地方公共団体、公的医療機関の開設者、財団または持ち分の定めのない社団の医療法人」の中から選ぶことになる。

そのため、財団・持分の定めのない社団については、一定の要件を満たすことで、医療法第42条の2が規定する社会医療法人(旧医療法の特別医療法人)は廃止され、社会医療法人に移行することになるが、2012年3月31日までは存続可能)、あるいは、租税特別措置法67条の2に規定される特定医療法人(医療法の規定には存在せず税法の制度であるので留意する。)となることができる。社会医療法人(旧医療法では特別医療法人)になった場合には、医療法人の目的は医療に専念することが基本ではあるが、附帯業務だけでなく収益業務を行うことができる。但し、通常の医療法人についても最近では老人ホームの運営など附帯業務について緩和される傾向にある。特定医療法人となった場合には、相続税法人税の減免を受けることもできる(法人税19%)。但しどちらの場合にも収入要件や役員の給与要件、残余財産の原則国庫への帰属など公益法人等と同一視することとなっている。

社会医療法人については、公益法人制度改革(公益法人関連法令については、平成20年度施行)と併せて課税上の何らかの優遇措置が予定されていたが、公益法人制度改革においても、税制の優遇措置は長期課題とされているため、未だその措置については、不透明であった。 平成28年現在、社会医療法人は医療保健業の法人税は非課税、救急医療などに使っている病院等の固定資産については、固定資産税や都市計画税は非課税とされている。

私法上の建前からいうと、法人格を有するのはあくまで医療法人であり、病院はその所有の客体となる資産にすぎないが、行政法規等ではあたかも病院そのものが法人格を有するかのように扱われることが多い点、注意を要する。

個人経営の病院や診療所に比べて、医療法人の資産が個人の資産と分離ができて効率よく経営ができるメリットがある。また税制にも有利になるといわれていたが、この近年の個人の所得税率の低下・医療法人化による事務コストの増加を精査すると、税務以外も考慮した総コストでは医療法人のメリットは大きく減殺されている。

注・出典[編集]

  1. ^ 平成24年(2012)医療施設(動態)調査・病院報告の概況 (Report). 厚生労働省. (2012). http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/12/. 
  2. ^ a b 厚生労働省 医療法人数の推移について(H29.3.31) (平成29年6月27日掲載) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000172535.pdf
  3. ^ 厚生労働省 医療法人の業務範囲(平成28年5月27日現在) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000080767.pdf
  4. ^ a b 厚生労働省 医療法人の附帯業務について(平成28年5月27日) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000096727.pdf
  5. ^ 医療法人制度改革 ~定款変更など -医師のみなさまへ”. 日本医師会 (2011年9月5日). 2015年3月1日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]