生活保護法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
生活保護法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 生保法
法令番号 昭和25年5月4日法律第144号
効力 現行法
種類 社会保障法
主な内容 生活保護について
関連法令 なし
条文リンク 総務省法令データ提供システム
テンプレートを表示

生活保護法(せいかつほごほう、昭和25年5月4日法律第144号)は、生活保護について規定した日本法律である。社会福祉六法の1つ。

生活保護法の目的は、「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」(第1条)とされている。

沿革[編集]

一連の社会福祉立法はイギリス救貧法を参考につくられた。かつての救貧法としては、以下のものがあった。

昭和21年に生活保護法は各種救貧立法を統一する形で成立したが、その後に成立した日本国憲法の下では受給権の面など、不十分な点があり、昭和25年に全面改正して現行の生活保護法となった。

GHQ主導のもと旧法全面改正の陣頭指揮を取ったのは終戦直前に滋賀・山口両県警特高課長だった小山進次郎だった。終戦後、政治的、公民的及宗教的自由制限の除去に関する覚書一、e項により一端は罷免すなわち公職追放された小山はすぐに厚生省に呼び戻された。新法制定にGHQが大きく関与していた事実は第27条の記述に現れており、第27条が保護の実施機関に与えた被保護者への指導または指示権限は、第28条の場合とは異なり、第62条の中に「隠す形で」その法的効力を与えられた。

第27条及び第62条は制定当時と同じく以下の通りである。

(指導及び指示)

第27条

保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。

2  前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。

3  第1項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

(指示等に従う義務)

第62条

被保護者は、保護の実施機関が、第30条第1項ただし書の規定により、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、若しくは私人の家庭に養護を委託して保護を行うことを決定したとき、又は第27条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない。

2  保護施設を利用する被保護者は、第46条の規定により定められたその保護施設の管理規程に従わなければならない。

3  保護の実施機関は、被保護者が前2項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。

4  保護の実施機関は、前項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。

5  第3項の規定による処分については、行政手続法第3章 (第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。

第28条は現在以下のようになっている。

(報告、調査及び検診)

第28条

保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第77条若しくは第78条(第3項を除く。次項及び次条第1項において同じ。)の規定の施行のため必要があると認めるときは、要保護者の資産及び収入の状況、健康状態その他の事項を調査するために、厚生労働省令で定めるところにより、当該要保護者に対して、報告を求め、若しくは当該職員に、当該要保護者の居住の場所に立ち入り、これらの事項を調査させ、又は当該要保護者に対して、保護の実施機関の指定する医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨を命ずることができる。

2 保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第77条若しくは第78条の規定の施行のため必要があると認めるときは、保護の開始又は変更の申請書及びその添付書類の内容を調査するために、厚生労働省令で定めるところにより、要保護者の扶養義務者若しくはその他の同居の親族又は保護の開始若しくは変更の申請の当時要保護者若しくはこれらの者であつた者に対して、報告を求めることができる。

3 第1項の規定によつて立入調査を行う当該職員は、厚生労働省令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

4 第1項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

5 保護の実施機関は、要保護者が第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨の命令に従わないときは、保護の開始若しくは変更の申請を却下し、又は保護の変更、停止若しくは廃止をすることができる

この第27条の法的効力を第62条で与えた理由につき、小山は、編著645頁~646頁で以下のように述べている。

2 理由

(1) 保護の実施機関(市町村長)が権限に基いて被保護者に命じ得る事項としては、法27条の「指導及び指示」第28条の「調査及び検診」、第30条の「収容保護の決定」等があるが、このうち第28条の「調査及び検診」については、その「受忍」を保障する強い規定が同条第4項に設けられているが、他の二つの事項についてはそのような規定が夫々の条項に設けられていないので、本条においてこれらにつき「受忍」を実質的に保障する為の規定を設ける必要があつたので、これを本条において「指示等に従う義務」として纏められたのである。

本条について先ず問題となつたととは、このような事項につきその受忍を求めることが果して必要であるか、或いは適当であるかということである。

これらの事項の受忍を実力をもつて強制すること、即ち、直接強制することが、新憲法の下では許されないことであることについては議論の等しく一致したところであつたが(この点については【参考】の記述参照。)、その受忍強制を心理的な範囲の問題に止めて置くか、或いは間接的な法的措置で間接に強制するととろまで進めるかという点は意見の最も岐れたところである。

これら二つの事項がいずれも本法に規定するところに従い、保護の実施機関(市町村長)が権限に基いて行う事項である以上、それに従う、従わないか、全く任意であるとする意見はなかつたが、「個人の自由を守る」という考の極めて強い方面(連合軍総司令部公衆衛生部福祉局及び法制局)から保護の実施機関(市町村長)のした決定又は措置に被保護者が従うべきものであることは当然であるが、その一つ前の段階として保護の実施機関(市町村長)がかかる決定又は措置をするに当つては、「個人の自由を最大限に尊重して行うものである趣旨を明かにしておかないと本条がその立法の趣旨に反して極めて暗いものになるおそれがある。」という有力なる意見が開陳されたので、厚生省当局としては改めて法務府(法制意見局、人権擁護局)及び連合軍総司令部公衆衛生福祉局、法制局の意見を徴しつつ検討を重ねた結果、法第27条に第3項を、同じく法第30条に第2項を、又法第33条には用語の類似性からくる誤解をさける意味で、第3項を設け、この間の微妙な気持を表現することとしたのである。

次にこのような事項の受忍を法的措置で間接に強制する権限を保護の実施機関(市町村長)に与えるかどうかについてであるが、これについての実務家側の意見は市町村、都道府県、厚生省を通じこのような権限を保護の実施機関(市町村長)に与えることは少くとも生活保護制度の現状ではどうしても必要であるということに意見が一致して居つた。

特に新法においては、保護を受けることが権利となり、決定された保護の理由なき不利益変更は禁止され、且つ、不服申立の制度が設けられ、被保護者の地位が画期的に強化されている以上、他面生活保護制度の秩序ある運営を保つために必要な最少限度においては、いわば規約違反に対する制裁はどうしても必要であるというのが立案者側の見解であつた。

以上の如き経緯を経て第1項及び第3項が設けられたのである。従つて、これが先に述べたような旧法第36条の如き含みの広い表理を採らなかつた理由も自ら理解されているとおもう。

(2) 本条第3項については、前に説明した見解が了承され、その設置に関係方面の同意が得られたのであるが、その運用についてはいやが上にも慎重を期し、仮にも社会福祉主事等の個人的判断でその濫用の行われるようなことが絶対に起らないようにしなければならないという厳重な注意が与えられたのである。

施行規則第18条の規定は、このような注意に対応して設けられたものであつて、この規定は本条文の審議の際その具体的内容が既に内定されていた意義ある規定である。

上に記載されている施行規則第18条とは編著892頁に付録として掲載された以下の記述を指している。

二、改正生活保護法施行規則(昭和25年5月20日厚生省令第21号)

改正(昭和26年5月1日厚生省令第18号、昭和26年9月13日厚生省令第38号)

(保護の変更等の権限)

第18条

法第62条第3項に規定する保護の実施機関の権限は、法第27条第1項の規定により保護の実施機関が書面によつて行つた指導又は指示に、被保護者が従わなかつた場合でなければ行使してはならない。

この第18条は、現在では、第19条にそのまま移動されている。

構成[編集]

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 保護の原則(第7条―第10条)

第3章 保護の種類及び範囲(第11条―第18条)

第4章 保護の機関及び実施(第19条―第29条の2)

第5章 保護の方法(第30条―第37条の2)

第6章 保護施設(第38条―第48条)

第7章 医療機関、介護機関及び助産機関(第49条―第55条の3)

第8章 就労自立給付金(第55条の4・第55条の5)

第9章 被保護者就労支援事業(第55条の6)

第10章 被保護者の権利及び義務(第56条―第63条)

第11章 不服申立て(第64条―第69条)

第12章 費用(第70条―第80条)

第13章 雑則(第81条―第86条)

附則

生活保護の原理・原則[編集]

原理[編集]

  • 国家責任の原理
  • 無差別平等の原理
  • 最低生活維持の原理
  • 補足性の原理

原則[編集]

  • 申請保護の原則(生活保護法第7条)
生活に困窮する国民はこの法律で保護を請求する権利が保障されており、この権利の実現は申請に基づいて保護が開始されるという原則。これは一身専属権である。要保護者本人と要保護者の扶助義務者または要保護者と同居している親族が申請できる。また、急迫の場合の職権保護が補完的に規定されている。

この「保護を請求する権利」を、現行制度制定の主軸にいた小山進次郎は、「保護請求権」とも「申請権」とも表現し、今日の各種通知では省略して後者を用いている。(小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会、162~163頁)

  • 基準及び程度の原則
  • 必要即応の原則
  • 世帯単位の原則

下位法令[編集]

  • 生活保護法施行令
  • 生活保護法施行規則(厚生労働省令)
  • 生活保護法施行細則(地方自治体が定める)

関連項目[編集]