生活保護法

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生活保護法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 なし
法令番号 昭和25年5月4日法律第144号
効力 現行法
種類 社会保障法
主な内容 生活保護について
関連法令 なし
条文リンク 総務省法令データ提供システム
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生活保護法(せいかつほごほう、昭和25年5月4日法律第144号)は、生活保護について規定した日本法律である。社会福祉六法の1つ。

生活保護法の目的は、「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」(1条)とされている。

沿革[編集]

一連の社会福祉立法はイギリス救貧法を参考につくられた。かつての救貧法としては、以下のものがあった。

恤救規則と救護法の歴史的関連につき、小山は、編著第1章日本における公的扶助制度の発展第1節明治以前における公的救済制度の概観で、以下のように記述している。

日本における公的扶助制度は、昭和21年(1946年)総司令部指導の下に制定、実施した生活保護法により有史以来の画期的発展をとげたといわれているが、この法律はその法技術的構成の範を昭和4年(1929年)の救護法に採つており、この救護法はその萌芽を明治7年(1874年)の恤救規則に持つている。

而して、この恤救規則は当時明治新政府が外国制度の影響を全然受けることなく制定したものであつて、これには大宝律令以来日本に行われてきた各種の公的救済制度の実践が強い影響を与えている。

小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』(1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会)3頁

昭和21年に生活保護法は各種救貧立法を統一する形で成立したが、その後に成立した日本国憲法の下では受給権の面など、不十分な点があり、昭和25年に全面改正して現行の生活保護法となった。

現行生活保護法案提出の理由につき、当時の衆参本会議で、厚生委員会委員長として、衆院では、自由党の青柳一郎議員が、参院では、山下義信議員が、報告した。

青柳一郎氏は、現行法の慈恵的、恩恵的色彩の一掃いたさなければ社会保障制度の基礎たるを得ない、憲法第25条の定める理念にふさわしい、国民が権利として保護を要求し得る生活保護制度を樹立せんとするのが、政府の本法案提出の理由だ、と報告している。

山下義信氏は、憲法第25条の精神に基き、これを具現化し、以て国民の生存権を保障することを本法の目的とした、救貧法でなく生活保障法の性格とされた、これらの保護を受けますることは、国民の権利でありまして、決して恩恵的、慈善的に与えられるものでないことを明記された、と報告している。

以下当該部分を抜粋引用する。

(2) 委員会における審議の経過及び結果については本会議における厚生委員会委員長報告が要を尽していると思うから次にその全文を掲げておこう。(官報号外昭25年4月23日衆議院会議録第40号1030及び1031頁)

[青柳一郎君登壇]

○青柳一郎君

ただいま議題となりました生活保護法案について、厚生委員会における審議の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。

生活保護制度、すなわち国民の最低生活を保障する公共の扶助制度は、いかなる形の社会保障制度においても、その基礎の一つであります。

現行生活保護法が、昭和21年10月1日施行以来今日に至るまで、公共の扶助に関する根本法として果して来た重大かつ効果的なる役割については、あらためて申すまでもないところであります。

しかしながら、現行法の慈恵的、恩恵的色彩を一掃いたさなければ社会保障制度の基礎たるを得ないのであります。

さらにまた、わが国現下の情勢は、本制度による保護を要する人々の増加が予想せらるるのでありまして、この際本制度を急速に整備強化することが必要となつで参つたのであります。

特に昨年以来、本院においてきわめて緊要な問題として取上げられました未亡人対策あるいは遺族援護の問題等の審議を通じて、本制度の欠陥がしばしば指摘せられ、第5国会において満場一致をもつて可決せられました。

遺族援護に関する決議においても、本制度の拡充強化が強く要望せられたのであります。

さらに昨年1月現内閣によつて設置せられました社会保障制度審議会は、去る6月、内関総理大臣に対して、現行の生活保護制度の改善強化に関する勧告を行うに至つたのであります。

これらの要請に応じ、現行の生活保護制度を廃止し、新たに憲法第25条の定める理念にふさわしい、国民が権利として保護を要求し得る生活保護制度を樹立せんとするのが、政府の本法案提出の理由であります。

小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』(1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会) 59~60頁

(二) 委員会における審議の経過及び結果については、本会議における厚生委員長報告が要を尽していると思うから、次にその全文を掲げておこう (官報号外昭25年4月30日参議院会議録第48号1029及び1030頁)

[山下義信君登檀、拍手]

○山下義信君

只今議題となりました生活保護法案の厚生委員会における審理の経過並びに結果につきまして御報告申上げます。

先ず法案の大体を御説明申上げますと、本法は本文84ケ条と附則9項目から成つておりまして、現行法に比べますと、条文の数は約2倍になつております。更にその内容におきましては画期的の大改正が行われたのでありまして、我が国公的扶助の制度におきましては誠に重大なる立法であります。

注目すべき諸点を申上げますと、第1点は、憲法第25条の精神に基き、これを具現化し、以て国民の生存権を保障することを本法の目的とした点であります。

法案の冒頭にこのことが明らかにされております。即ち救貧法でなく、生活保障法の性格とされたものでございます。

従いまして、第2点は、保障せらるべき国民の最低生活とは、健康にして文化的なる最低生活でなくてはならない旨を明らかにした点であります。第3条はそれが示されてあります。

第3点は、国民は尽くこの法の保護が受けられる、即ち無差別平等の原則を掲げまして、旧法のごとき欠格条項は一掃いたしました。

一方保護世帯の実際に即応いたしまして、実情に即して保護が与えられまするよう法の運用に弾力性を持たせたのであります。これによつて従来保護の実施が画一的、形式的に流れておりました点が是正せられまして、今後は十分実情に即しての保護がなされるわけでございます。

第4点は、これらの保護を受けますることは、国民の権利でありまして、決して恩恵的、慈善的に与えられるものでないことを明記された点であります。第7条に、申請保護の原則を掲げ、第64条乃至69条で不服申立の制度を認めたのであります。

小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』(1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会) 66頁

旧生活保護法を全面改正し新生活保護法を制定するに当たり日本共産党のみが反対した。日本共産党を代表した衆院議員苅田氏は修正案を除く法案に全面的に反対した。この事実を当時自由党衆院議員で厚生委員会委員長だった青柳一郎氏は本会議で次のように報告した。

さらに日本共産党を代表して苅田委員よりは、第一、生活保護の基準が低く、本法案は欺瞞的である、第二、民生委員の活動を制限し、保護が官僚化する等の理由をもつて、修正案を除く本法案に全面的に反対する旨の意見が述べられたのであります。(小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』(1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会、64頁、官報号外昭25年4月23日衆議院会議録第40号1030及び1031頁)

構成[編集]

生活保護法第6条はこの法律における5つの用語につき定義を与えている。

このうち第1項と第2項において、被保護者と要保護者の区別を与えている。

第6条

この法律において「被保護者」とは、現に保護を受けている者をいう。

2 この法律において「要保護者」とは、現に保護を受けているといないとにかかわらず、保護を必要とする状態にある者をいう。

この区別を行った理由につき小山は編著で概略以下のように述べている。

二 理由

(一)被保護者と要保護者という言葉は、旧法においては、区別されることなく「保護を受ける者」という言葉で一括して現わされていたが、法文の表現を正確にするためにはこれを区別して使い別ける必要がある場合が少くないので、定義して具体的な場合、いずれの意義において「保護を受ける者」が使用されているかを明かにした。

この場合被保護者という言葉については一般に使用される場合と全く同一の内容を与えたが、要保護者という言葉について、一般の用法が多少乱れているのでこれを整理して用いることにした。即ち、一般には要保護者という言葉はこの法律における用語例の外に、所謂ボーダーラインに属する人々を含める意義において用いられる場合があるからである。(156頁)

ところが、要保護者の定義を与えた法第6条第2項の解釈につき、小山は以下のように述べている。

(1)「現に保護を受けているといないとにかかわらず、」とは、「現に被保護者であるとないとにかかわらず。」というに同じ。(2)「保護を必要とする」とは、この法律による保護を必要とすることであるから、相談と指導とだけを必要とする場合は含まれない。具体的に云えば、第3章に掲げる範囲のものについての金銭給付又は現物給付を必要とすることをいう。(158頁)

ここで小山は要保護者に被保護者を含めて両者の定義を「意図的に」曖昧にした。

定義を与えるというのであれば、被保護者と要保護者とは明確に区別されなければならない。

たとえば、被保護者とは、現に保護を受けている者であり、要保護者とは、保護の必要がありながらいまだ保護を受けていない者である、と言うが如きである。

この被保護者と要保護者の区別の曖昧さは、各種通知で踏襲されていると同時に、とりわけ、法第28条が保護実施機関に与えた被保護者宅への立入調査権と、その権限を裏付けるために、保護の開始若しくは変更の申請を却下し又は保護の変更停止若しくは廃止をすることができる強力な権限行使を可能にしている。

法第28条の適用対象は法文上は飽くまでも「要保護者」であるが、法第6条による被保護者との区別の消滅により、被保護者に対しても行使され、この結果、保護実施機関の男性職員による女性被保護者の強姦事件が多発している事実は厚生労働省社会・援護局保護課も認識しているところである。

もし小山が旧法で用いられていた「保護を受ける者」を明確に定義し直したかったのなら、要保護者に被保護者を含ませた事実は、説明がつかない。「保護を受ける者」を維持しつつ、それを第28条の適用対象にすれば、法文の整合性は取れたのである。

そして、この法第28条に記載された、保護の開始若しくは変更の申請を却下し又は保護の変更停止若しくは廃止をすることができる強力な権限は、生活保護行政を適正に運営するための手引について(平成18年3月30日、社援保発第0330001号各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長宛厚生労働省社会・援護局保護課長通知)による同意書の提出強要に見事に利用されている。

以下に紹介するように、4 関係先調査の実施(1)収入状況等の把握及び同意書の徴取②において、課長通知は、保護申請中の者につき、法第28条の規定に基づき保護申請を却下することについて検討する必要がある、と記述しているが、法第28条は飽くまでも立入調査を忌避した場合に保護実施機関に保護申請却下権限を付与しているに過ぎない。

しかし、同意書の提出強要をめぐるこの種の法治国家ではあり得ない国家事務は実際に行われている。

論理的現実的に保護申請却下したり保護を停廃止したりすれば要保護者及び被保護者は死ぬしかない。

4 関係先調査の実施

(1)収入状況等の把握及び同意書の徴取

収入状況については、勤労収入、年金、仕送り、保険金、相続等による資産の取得等収入ごとに克明に記入したうえ、当該記入内容が事実に相違ない旨を附記し署名した書面、当該記入内容を証明するに足る資料の提出を求めることが必要である。

また、訪問調査や提出資料によっても収入状況等に不明な点が残る場合には、必要に応じ関係先調査を行うとともに関係官署とも連携を図り事実を把握することが必要であることから、申請の際に、保護の実施機関が行う収入状況に関する関係先照会に同意する旨を記し署名捺印した書面(同意書)を申請者から提出させるようにする。

なお、同意書が提出されないため、関係先調査ができない場合には、

①保護受給中の者については、法第27条による文書指示を行い、これに従わない場合には指導指示違反として法第62条の規定に基づく保護の停止等の措置を行うこと

②保護申請中の者については、同意書を提出しなければ適切な保護の決定が困難となることや、生活保護法の趣旨、内容等につき十分に説明を行うとともに、それでもなお同意書の提出を拒む場合には、法第28条の規定に基づき保護申請を却下すること

について検討する必要がある。

生活保護法第8条(基準及び程度の原則)は、保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする、と規定し、保護の基準決定を厚生労働大臣裁量にした。

この経緯につき小山は編著で当時の国会での審議及び公聴会での意見を踏まえ以下のように述懐している。

(四)保護の基準を法文上明確に規定することができないとすれば、その決定に対し国民の声を反映させるために特別の審議会を設けよという意見が極めて強力に衆参両院から述べられた。両院の公聴会における意見にもこれに触れているものが多かつた。

この意見には傾聴に値するものがあつたが、厚生省当局側としては、保護の基準は飽く迄合理的な基礎資料によりて算定さるべく、その決定に当り政治的色彩の混入することは厳に避けらるべきこと、及び合理的な基礎資料は社会保障制度審議会の最低生活水準に関する調査研究の完了によつて得らるべきことを説明し、且つ、社会事業審議会に部会を設け実際の運用に当りその趣旨を生かすことを言明して了解を得た次第であるが、問題は残つているようである。小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』(1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会)168頁

  • 第3章 保護の種類及び範囲

生活保護法第15条(医療扶助)第6項は「移送」を定めている。これは被保護者が居宅から指定医療機関まで公共輸送機関を利用して通院などする際の費用を保護実施機関が認定し原則として現物給付する事を意味している。

この現物給付につき、第34条は、医療扶助は、現物給付によつて行うものとする、但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、金銭給付によつて行うことができる、と規定しており、現物給付でも金銭給付でも構わない。

そして、以下に紹介する局長通知は、給付の時期を特に定めていないから、指定医療機関を受診する事前に受け取ることも出来るし、とつぜん受診した場合には事後に受け取ることも出来る。また、タクシーを利用する場合には、タクシー会社に対して保護実施機関が直接支払うから、被保護者は運転手に目的地を伝えるだけで済む。

医療扶助移送の具体的給付方法については、下位法令である「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日、社発第727号、各都道府県知事・各指定都市市長宛厚生省社会局長通知)第三医療扶助実施方式9「移送の給付」で詳細に規定しているが、現在のところでは第150次改正後の局長通知(平成26年4月25日社援発0425第12号)が適用される。

以下の文面は中央法規出版編集部「生活保護関係法令通知集平成26年度版」(平成26年9月10日)からの抜粋である。

ネット上に当該局長通知の最新版が掲載されていないので、スキャナーで読み取りデジタル化した。

この点につき、厚生労働省社会・援護局保護課医療係秋山氏に対して、法令等データベースを整備すると同時に、保護課から中央法規出版編集部に対してお願いし、CD-Rでの販売を行うよう要望しておいた。

それは、中央法規出版編集部は、書籍版を作成するに当たり、デジタル化された原稿で書籍版を作成しているからである。

内容物は公文書であり著作権法で守られるべき対象ではないから、わざわざ利用しにくい書籍版に限定する必要はない。

厚生労働省社会・援護局保護課職員および保護実施機関の社会福祉主事その他に対して生活保護制度に対する質問をした場合、彼らが最初に取る行動は、これら紙媒体をペラペラ調べることであり、問題の箇所を発見するに多大の時間を要する。

CD-Rにしパソコンに入れておけば鍵言葉で瞬時に当該箇所に辿り着くことが出来るのである。

以下に最新の局長通知を紹介する。

生活保護法による医療扶助運営要領について

(昭和36年9月30日社発第727号各都道府県知事・各指定都市市長宛厚生省社会局長通知)

第150次改正平成26年4月25日社援発0425第12号

9 移送の給付

(1) 給付方針

移送の給付については、個別にその内容を審査し、次に掲げる範囲の移送について給付を行うものとする。

また、給付については、療養に必要な最小限度の日数に限り、傷病等の状態に応じて経済的かつ合理的な経路及び交通手段によって行うものであること。

経済的かつ合理的な経路及び交通手段についての判断に当たっては、同一の病態にある当該地域の他の患者との均衡を失しないようにすること。

(2) 給付の範囲

アからクまでに掲げる場合において給付を行う。

受診する医療機関については、原則として要保護者の居住地等に比較的近距離に所在する医療機関に限るものであること。

ただし、傷病等の状態により、要保護者の居住地等に比較的近距離に所在する医

中央法規出版編集部「生活保護関係法令通知集平成26年度版」(平成26年9月10日、845頁)

療機関での対応が困難な場合は、専門的治療の必要性、治療実績、患者である被保護者と主治医との信頼関係、同一の病態にある当該地域の他の患者の受診行動等を総合的に勘案し、適切な医療機関への受診が認められる。

ア 医療機関に電車・バス等により受診する場合で、当該受診に係る交通費が必要な場合

イ 被保護者の傷病、障害等の状態により、電車・バス等の利用が著しく困難な者が医療機関に受診する際の交通費が必要な場合

ウ 検診命令により検診を受ける際に交通費が必要となる場合

エ 医師の往診等に係る交通費又は燃料費が必要となる場合

オ 負傷した患者が災害現場等から医療機関に緊急に搬送される場合

カ 離島等で疾病にかかり、又は負傷し、その症状が重篤であり、かつ、傷病が発生した場所の付近の医療機関では必要な医療が不可能であるか又は著しく困難であるため、必要な医療の提供を受けられる最寄りの医療機関に移送を行う場合

キ 移動困難な患者であって、患者の症状からみて、当該医療機関の設備等では十分な診療ができず、医師の指示により緊急に転院する場合

ク 医療の給付対象として認められている移植手術を行うために、臓器等の摘出を行う医師等の派遣及び摘出臓器等の搬送に交通費又は搬送代が必要な場合(ただし、国内搬送に限る。)

なお、福祉事務所において審査の結果、なお疑義がある場合及び上記の範囲で対応が困難な場合については、都道府県本庁に技術的助言を求めた上で、移送の給付が真に必要であると認められる場合には、給付を認めて差し支えないこと。

(3) 給付手続き

ア 給付手続きの周知

要保護者に対し、移送の給付について、その内容と原則として事前の申請や領収書等の提出が必要であることを周知すること。

イ 給付決定に関する審査

被保護者から申請があった場合、給付要否意見書(移送)により主治医の意見を確認するとともに、その内容に関する嘱託医協議及び必要に応じて検診命令を行い、福祉事務所において必要性を判断し、給付の対象となる医療機関、受診日数の程度、経路及び利用する交通機関を適正に決定すること。

ただし、医療要否意見書等により、移送を要することが明らかな場合であり、かつ、移送に要する交通費等が確実に確認できる場合は、給付要否意見書(移送)の提出を求める必要はないこと。

なお、移送の際に利用する交通機関については、地域の実態料金や複数事業者の見積等により検討を行った上で、最も経済的な交通機関を福祉事務所において決定すること。

また、福祉事務所において給付を決定する以前に交通機関を利用した際の交通費や、福祉事務所において決定した医療機関、受診日数の程度、経路、交通機関

中央法規出版編集部「生活保護関係法令通知集平成26年度版」(平成26年9月10日、846頁)

と異なることにより生じた交通費については、原則として給付の対象にならないものであること。

ウ 事後申請の取扱い

緊急の場合等であって、事前の申請が困難なやむを得ない事由があると認められる場合であって、当該事由が消失した後速やかに申請があったときは、事後の申請であっても内容確認の上、給付を行って差し支えないこと。

エ 継続的給付の場合の手続

翌月にわたって移送の給付を必要とするときは、引き続き移送の給付を行って差し支えないが、その者が3か月を超えて移送の給付を必要とするときは、第4月分の移送を決定する前にあらかじめ給付要否意見書(移送)等を参考に、継続の要否を十分に検討すること。

ただし、被保護者の傷病等の状態により、3か月を超えて移送の給付を必要とすることが明らかである場合は、第7月分の移送を決定する前に、給付要否意見書(移送)等を参考に、継続の要否を検討することとして差し支えないこと。

(4) 費用

ア 移送に要する費用は、傷病等の状態に応じ、経済的かつ合理的な方法及び経路により移送を行ったものとして算定される最小限度の実費(医学的管理等のため付添人を必要とする場合に限り、当該付添人の日当等も含む。)

なお、身体障害者等の割引運賃が利用できる場合には、当該割引運賃を用いて算定した額とすること。

イ 当該料金の算定にあたっては、領収書、複数業者の見積書、地域の実態料金等の挙証資料に基づき、額の決定を行うこと。

中央法規出版編集部「生活保護関係法令通知集平成26年度版」(平成26年9月10日、847頁)

生活保護の原理・原則[編集]

原理[編集]

  • 国家責任の原理

国家責任の原理につき小山は「国家事務」という概念を用い費用負担者を「国」としながらも、他方で、地方公共団体に一部を分担させることにより「濫救が自ら抑制される」と述べている。これが保護実施機関による水際作戦その他の根源である。

二 第一の問題点は、この制度の運営に要する費用の主なる負担者を誰にするかということである。国とするか、都道府県とするか、或いは市町村とするかは、抽象的にはそのどれでも可能であるように見えるけれども、過去の経験の結果は「国とせざるを得ない。」というところに落ちついていることは世界の大勢の教えるところである。このような歴史的必然性に基き、この制度は旧法以来、その費用の主なる負担者を国とし、その一部分を都道府県と市町村に分担させる建前を採つているのであるが、この方式が余りに複雑なものとして屡々(しばしば)批判の的となつているのである。

そもそも、この法律による保護が国家事務であるとの建前を機械的に貫けば、その費用も亦原則として国がその全額を負担すべしということになるのであるが、他面、都道府県及び市町村もその管内の住民の保護について当然責任を負うべきものであるということを考えると、これらの団体も亦適当な割合においてその費用を分担することが適当だということになるのである。更に、この法律の施行につき特に国の出先機関を設けることなく地方公共団体の長をしてこれに当らせている現状の下では、この事務処理の適否が地方公共団体の財政に影響を及ぼすようにしておく方がその取扱を慎重ならしめ、濫救が自ら抑制される点において効果的であるという利点があるのである。小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』(1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会、772頁)

  • 無差別平等の原理
  • 最低生活維持の原理
  • 補足性の原理

原則[編集]

  • 申請保護の原則(7条)
生活に困窮する国民はこの法律で保護を請求する権利が保障されており、この権利の実現は申請に基づいて保護が開始されるという原則。これは一身専属権である。要保護者本人と要保護者の扶助義務者または要保護者と同居している親族が申請できる。また、急迫の場合の職権保護が補完的に規定されている。

現行生活保護制度制定の主軸におり終戦直前に滋賀・山口県警特高課長を歴任し戦後に厚生省社会局保護課課長となった小山進次郎は、その唯一の編著第一節申請保護の原則第7条二理由(2)において、急迫職権保護義務を保護実施機関に課した理由につき、以下のように述べている。

それにもかかわらず急迫した事由がある場合に職権保護の行われる余地を残したのは、要保護者の中には保護請求権を行使することのできない者或いは困難な者が少くないこと及びこの制度に対する国民の考え方が、(1)に述べた原則に徹する迄には若干の時日を要すること等から見て、(1)の原則だけを機械的に墨守すれば議論倒れに終り、結果においては却つて国民の最低生活保障に欠くることとなるに至るおそれあることを考慮したためである。小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』(1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会)163頁)

生活保護法第7条(申請保護の原則)の本文は、保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする、と規定している。

この実務において、保護実施機関は、要被保護者に対して、申請書の提出を強要してきた過去がある。

この点について、申請書の提出ではなく、「口頭による保護開始申請」の可能性につき日本共産党衆参国会議員の質疑に対して村木厚子現事務次官が「可能」だと答弁した時点から保護実施機関も実務に取り入れるようになった。厚生労働委員会で村木厚子事務次官は自らの答弁の根拠を示さなかったが、それが、小山編著「生活保護法の解釈と運用」にあることは明らかである。

以下に、まず、平成27年3月31日社援発0331第6号各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局長通知において、村木厚子事務次官の国会答弁が反映されている事実を証明する。

「生活保護法による保護の実施要領について」の一部改正について(通知)(平成27年3月31日社援発0331第6号各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局長通知)

第9 保護の開始申請等

1 保護の相談における開始申請の取扱い

生活保護の相談があった場合には、相談者の状況を把握したうえで、他法他施策の活用等についての助言を適切に行うとともに生活保護制度の仕組みについて十分な説明を行い、保護申請の意思を確認すること。

また、保護申請の意思が確認された者に対しては、速やかに保護申請書を交付し、申請手続きについての助言を行うとともに、保護の要否判定に必要となる資料は、極力速やかに提出するよう求めること。

なお、申請者が申請書及び同意書の書面での提出が困難である場合には、申請者の口頭によって必要事項に関する陳述を聴取し、書面に記載したうえで、その内容を本人に説明し署名捺印を求めるなど、申請があったことを明らかにするための対応を行うこと。

次に、村木厚子現事務次官の国会答弁の根拠たる小山編著の当該部分を紹介する。

口頭による保護開始申請につき小山は、第一節申請保護の原則第7条【運用】二本条の趣旨を生かすための執務方法について、において、以下のように記述している。

申請保護の原則を生かす為には一般の国民からみて申請がし易いように保護の実施機関側でも工夫すべきである。

(一)この為に最善の方法は、福祉事務所等に練達堪能な面接員を置き、落付いて対話のできる(特に他の人から見透しのきかない)面接室を設け、福祉事務所等を訪れた要保護者から直接に詳細な事情をきく制度を採用する事であろう。新法施行当時に大阪市、京都市、名古屋市、神戸市及び大阪府下の各市その他和歌山、奈良等の諸都市で実施されている制度がこれに当るものである。このような制度にあつては本人に意志能力がありさえすれば(筆記能力がなくても)有効な申請ができるから、第7条の精神が最高度迄生かされることになる。

(二)右の制度を採用していない福祉事務所等でも次の事項は必す実行すべきである。

(1)筆記能力のない申請者が福祉事務所等を訪れ申請の希望を表明したら係員(社会福祉主事であることが望ましい)が本人に代つて必要事項を記載し本人に読みきかせた上でその書面に記名押印させこれを受理する。なお、申請書は予め印刷しておき必要事項の記載は最少限度に止めるととが望ましい。

(2)申請は要式行為ではないから、申請書の記載が整理されていなくても所要の事項が尽されて居れば、たとえそれが手紙の形を採つていても(このような場合にはその手紙に記載された事項の中から申請書の必要的記載事項を要約して作成しその旨明示しておけばよい)、申請として受理すべきである。

(3)申請書中に補正すべき個所があるときは、その旨申請者に通知して補正の機会を与えなければならない。書き替を必要とするときは、申請用紙に記載注意を添えて本人宛に送付し又は交付することが望ましい。

小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』(1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会)165~166頁

  • 基準及び程度の原則
  • 必要即応の原則
  • 世帯単位の原則

下位法令[編集]

  • 生活保護法施行令
  • 生活保護法施行規則(厚生労働省令)
  • 生活保護法施行細則(地方自治体が定める)

関連項目[編集]