生活保護法

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生活保護法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 生保法
法令番号 昭和25年5月4日法律第144号
効力 現行法
種類 社会保障法
主な内容 生活保護について
関連法令 なし
条文リンク 総務省法令データ提供システム
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生活保護法(せいかつほごほう、昭和25年5月4日法律第144号)は、生活保護について規定した日本法律である。社会福祉六法の1つ。

生活保護法の目的は、「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」(第1条)とされている。

沿革[編集]

一連の社会福祉立法はイギリス救貧法を参考につくられた。かつての救貧法としては、以下のものがあった。

昭和21年に生活保護法は各種救貧立法を統一する形で成立したが、その後に成立した日本国憲法の下では受給権の面など、不十分な点があり、昭和25年に全面改正して現行の生活保護法となった。

日本政府が提出した「救済福祉に関する件」に対してGHQは以下に紹介する指令第775号をもって回答しそれに基づき旧法が制定された。それに続き旧法に対する小山の評価も記述されているので紹介する。(編著15~17頁)

(2) 越えて翌昭和21年2月27日付をもつて、先に日本政府から提出した「救済福祉に関する件」につき、次のような回答が総司令部から日本政府に対して与えられた。これが有名な指令第775号と称せられるもので、救済福祉に開する基本指令として、今日においてもなお、救済福祉政策の最高規範となっているものである。

連合国最高司令部SCAPIN775(昭21.2.27)覚書

日本帝国政府宛

経由 C・L・O 主題 社会救済

(一) 「救済福祉計画」に関する件1945年12月13日付C・L・O覚書1484に関しては提出計画案を次の条件に合する様変更の処置をとらば日本帝国政府に対し何等異議あるものに非ず

(イ) 日本帝国政府は都道府県並に地方政府機関を通じ差別又は優先的に取扱をすることなく平等に困窮者に対して適当なる食糧、衣料、住宅並に医療措置を与えるべき単一の全国的政府機関を設立すべきこと

(ロ) 日本帝国政府は1946年4月30日までに本計画に対する財政的援助並に実施の責任態勢を確立すべきこと

従って私的又は準政府機関に対し委嘱され又は委任さるべからざること

(ハ)困窮を防止するに必要なる総額の範囲内において与えられる救済の総額に何等の制限を設けざること

(二) 日本帝国政府は本司令部に次の報告を提出すべし

(イ) 此の指令の条項を完遂する為めに日本帝国政府によつて発せられたあらゆる法令並に通牒の写

(ロ) 1946年3月の期間に始まり次の月25日までに届けられたる救助を与えられたる家族並に個人の数及び都道府県により支出されたる資金の額を記載したる月報

右の覚書に接し政府としては、ここにその構想を根本的に練り直す必要に迫られたので、取り敢えす緊急の必要に応ずるため、先に決定した「生活困窮者緊急生活援護要綱」を右の覚書の趣旨に適うように工夫を加えつつ4月1日から実施すると共に、鋭意研究を進めた結果、ここに強力なる統一的公的扶助の基本法規としての生活保護法案を準備し得るに至つたので、これを第90回帝国議会に提出し、その協賛を得、同年9月9日法律第17号として公布し、10月1日から実施するに至つたのである。

この法律は総司令部の熱心な指導と示唆とによつて推進されたものであるが、日本の救済制度の歴史において、正に劃期的な意義を有するものであつた。それは統一的救済法規の建前を操つて居り、これ迄の分散的救済法規の建前を採つていたものと比較して格段と整備補強されているだけでなく、その立法精神において最も注目すべきものを持つていた。即ち、救護法以来の救済法規においても既に市町村長や都道府県知事による公的扶助責任の萌芽は示されていたが、生活保護法においては、国家責任による要保護者の生活保護の原則が明文を以て確立され、且つ、保護費についてもその8割を国庫負担とするという破格の措置が採られている。更に保護対象についても一切の制限を排除して、所謂無差別平等の原則を採用している。これは保護の要件を要保護性という単一の原因に集約するものであり、貧困を社会的責任として認める趣旨を徹底したものであつて社会保障制度への接近を示すものである。これを要するに生活保護法は日本国憲法第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と宣言された生存権保障の理念を具現し、促進するものであつて、本法制定を契機として日本の救済制度は、従来の救貧法的な伝統を打ち破り、国家責任による近代的な社会保障制度への前進を示したものである。

GHQ主導のもと旧法全面改正の陣頭指揮を取ったのは終戦直前に滋賀・山口両県警特高課長だった小山進次郎だった。終戦後、政治的、公民的及宗教的自由制限の除去に関する覚書一、e項により一端は罷免すなわち公職追放された小山はすぐに厚生省に呼び戻された。新法制定にGHQが大きく関与していた事実は第27条の記述に現れており、第27条が保護の実施機関に与えた被保護者への指導または指示権限は、第28条の場合とは異なり、第62条の中に「隠す形で」その法的効力を与えられた。

第27条及び第62条は制定当時と同じく以下の通りである。

(指導及び指示)

第27条

保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。

2  前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。

3  第1項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

(指示等に従う義務)

第62条

被保護者は、保護の実施機関が、第30条第1項ただし書の規定により、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、若しくは私人の家庭に養護を委託して保護を行うことを決定したとき、又は第27条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない。

2  保護施設を利用する被保護者は、第46条の規定により定められたその保護施設の管理規程に従わなければならない。

3  保護の実施機関は、被保護者が前2項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。

4  保護の実施機関は、前項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。

5  第3項の規定による処分については、行政手続法第3章 (第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。

第28条は現在以下のようになっている。

(報告、調査及び検診)

第28条

保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第77条若しくは第78条(第3項を除く。次項及び次条第1項において同じ。)の規定の施行のため必要があると認めるときは、要保護者の資産及び収入の状況、健康状態その他の事項を調査するために、厚生労働省令で定めるところにより、当該要保護者に対して、報告を求め、若しくは当該職員に、当該要保護者の居住の場所に立ち入り、これらの事項を調査させ、又は当該要保護者に対して、保護の実施機関の指定する医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨を命ずることができる。

2 保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第77条若しくは第78条の規定の施行のため必要があると認めるときは、保護の開始又は変更の申請書及びその添付書類の内容を調査するために、厚生労働省令で定めるところにより、要保護者の扶養義務者若しくはその他の同居の親族又は保護の開始若しくは変更の申請の当時要保護者若しくはこれらの者であつた者に対して、報告を求めることができる。

3 第1項の規定によつて立入調査を行う当該職員は、厚生労働省令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

4 第1項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

5 保護の実施機関は、要保護者が第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨の命令に従わないときは、保護の開始若しくは変更の申請を却下し、又は保護の変更、停止若しくは廃止をすることができる

この第27条の法的効力を第62条で与えた理由につき、小山は、編著645頁~646頁で以下のように述べている。

2 理由

(1) 保護の実施機関(市町村長)が権限に基いて被保護者に命じ得る事項としては、法27条の「指導及び指示」第28条の「調査及び検診」、第30条の「収容保護の決定」等があるが、このうち第28条の「調査及び検診」については、その「受忍」を保障する強い規定が同条第4項に設けられているが、他の二つの事項についてはそのような規定が夫々の条項に設けられていないので、本条においてこれらにつき「受忍」を実質的に保障する為の規定を設ける必要があつたので、これを本条において「指示等に従う義務」として纏められたのである。

本条について先ず問題となつたととは、このような事項につきその受忍を求めることが果して必要であるか、或いは適当であるかということである。

これらの事項の受忍を実力をもつて強制すること、即ち、直接強制することが、新憲法の下では許されないことであることについては議論の等しく一致したところであつたが(この点については【参考】の記述参照。)、その受忍強制を心理的な範囲の問題に止めて置くか、或いは間接的な法的措置で間接に強制するととろまで進めるかという点は意見の最も岐れたところである。

これら二つの事項がいずれも本法に規定するところに従い、保護の実施機関(市町村長)が権限に基いて行う事項である以上、それに従う、従わないか、全く任意であるとする意見はなかつたが、「個人の自由を守る」という考の極めて強い方面(連合軍総司令部公衆衛生部福祉局及び法制局)から保護の実施機関(市町村長)のした決定又は措置に被保護者が従うべきものであることは当然であるが、その一つ前の段階として保護の実施機関(市町村長)がかかる決定又は措置をするに当つては、「個人の自由を最大限に尊重して行うものである趣旨を明かにしておかないと本条がその立法の趣旨に反して極めて暗いものになるおそれがある。」という有力なる意見が開陳されたので、厚生省当局としては改めて法務府(法制意見局、人権擁護局)及び連合軍総司令部公衆衛生福祉局、法制局の意見を徴しつつ検討を重ねた結果、法第27条に第3項を、同じく法第30条に第2項を、又法第33条には用語の類似性からくる誤解をさける意味で、第3項を設け、この間の微妙な気持を表現することとしたのである。

次にこのような事項の受忍を法的措置で間接に強制する権限を保護の実施機関(市町村長)に与えるかどうかについてであるが、これについての実務家側の意見は市町村、都道府県、厚生省を通じこのような権限を保護の実施機関(市町村長)に与えることは少くとも生活保護制度の現状ではどうしても必要であるということに意見が一致して居つた。

特に新法においては、保護を受けることが権利となり、決定された保護の理由なき不利益変更は禁止され、且つ、不服申立の制度が設けられ、被保護者の地位が画期的に強化されている以上、他面生活保護制度の秩序ある運営を保つために必要な最少限度においては、いわば規約違反に対する制裁はどうしても必要であるというのが立案者側の見解であつた。

以上の如き経緯を経て第1項及び第3項が設けられたのである。従つて、これが先に述べたような旧法第36条の如き含みの広い表理を採らなかつた理由も自ら理解されているとおもう。

(2) 本条第3項については、前に説明した見解が了承され、その設置に関係方面の同意が得られたのであるが、その運用についてはいやが上にも慎重を期し、仮にも社会福祉主事等の個人的判断でその濫用の行われるようなことが絶対に起らないようにしなければならないという厳重な注意が与えられたのである。

施行規則第18条の規定は、このような注意に対応して設けられたものであつて、この規定は本条文の審議の際その具体的内容が既に内定されていた意義ある規定である。

上に記載されている施行規則第18条とは編著892頁に付録として掲載された以下の記述を指している。

二、改正生活保護法施行規則(昭和25年5月20日厚生省令第21号)

改正(昭和26年5月1日厚生省令第18号、昭和26年9月13日厚生省令第38号)

(保護の変更等の権限)

第18条

法第62条第3項に規定する保護の実施機関の権限は、法第27条第1項の規定により保護の実施機関が書面によつて行つた指導又は指示に、被保護者が従わなかつた場合でなければ行使してはならない。

この第18条は、現在では、第19条にそのまま移動されている。

第27条の解釈と運用に関して小山は編著413~416頁で以下のように記述している。

第27条

保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。

2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。

3 第1項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

【趣旨】

一 要旨

(1) 保護の実施機関の被保護者に対する生活指導の権能及びその限界について規定したもので、保護の実施機関が被保護者に規律ある生活を維持させ、これが健全な社会の一員として自立して行くために必要と認める指導及び指示をなし得ることを定めたものである。

(2) 改正法においては、本条第1項の「市町村長」が「保護の実施機関」に改められただけであって、その趣旨には変更はないものである。

二 理由

(1) 本法の保護は、実質的には経済保護であるため、その効果は保護金品の給付に最も集約、具体化されるのであるが、このことは決して保護の実施機関が規定通りに保護金品の給付をして行いさえすればよいということを意味するものでないことは云うまでもないところである。

若し、このような機械的な態度で保護を行つてゆくものとすると漏救、濫救の発見、防止、是正は勿論のこと、給付された保護金品が真に本法の目的とするところの最低生活の維持のために十分に利用、消費されているか否かも把握し得ない結果となるだけでなく、この保護によつて被保護者の自立を助長しようとする本法の目的が完全に没却されることになるのである。

従って、保護の実施機関当局としては被保護者の日常生活の中にまで接近して有益な助言、勧告を与え、生活状態を規整するための指導、指示を具体的に適切に行うことが極めて必要であつて、これによりはじめて本法の目的が実を結ぶに至るのである。

(2) 従来、ともすると生活保護を恩恵的、慈恵的とする風潮が社会の各層においてみられたのであつて、そのため保護の実施機関側も被保護者の人格を軽視して必要以上の指導、指示を行い、これがために被保護者の全生活分野にとつて好ましからざる影響を与え、被保護者も亦卑屈感に流れ唯々面々としてこれに盲従するという極めて好ましくない傾向に陥ることがないではなかつたが、この点特に注意し、指導、指示が濫用されぬようにする必要があるのである。

換言すれば、生存権の保障は、個人の人格権の侵害を許容するものでは決してないのであるにもかかわらず、ともすると「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。」(第11条)。「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする。」(第13条)と明瞭に宣言されている憲法上の趣旨が公的扶助の実施において十分考慮されない危険性を多分に持つているのである。

旧法第16条は、「市町村長は、保護を受ける者に対して、勤労その他の生計の維持に必要なことに関して指示をなすことができる。」と規定しており、厚生省当局の新法原案もこれに近いものであつたが、この点に関し有力なる注意を受けたので、このような規定にしておくとその解釈及び運用の如何によつては全能的な指示権の行使ともなるので、その行使の目的と共に、内容及び限界を明確に法律において規定し濫用の起る余地をなからしめたのである。

【解釈】

(1) 「生活の維持、向上」

法第4条(保護の補足性)第1項に掲げる維持よりもやや広く自立助長の趣旨から向上を含めている。

(2) 「その他保護の目的達成に必要な」

例えば、法第60条(生活上の義務)に規定するところの「能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図る」こと、法第28条に規定する調査又は検診に応ずべきこと、或いは保護金品の計画的利用又は保健衛生に関する事項等の如きである。

(3) 「指導又は指示」

(1) 指導とは、ある目的を達するために行われる強制的な性質を有しない行為をいい、指示とは、ある事項を端的に示す強制的性質を有する行為をいう。

(2) 指導又は指示の如きは、一般には単に事実行為とされているが、本法にあつては法第62条に規定する被保護者の服従又はその違反に対する制裁という法律的効果を随伴するものであるから一つの行政処分であることが多い。

この点が、社会奉仕者としての民生委員が「保護を要する者を適切に保護指導する。」又は「必要に応じて、生活の指導を行う。」(民生委員法第14条)ということと相違するところである。

(4) 「自由を尊重」

当該被保護者の能力、社会的関係等の具体的事情からみて、その者が人間として存在する上において必要とする人格を確保するに足る自由を維持しつつ、指導、指示に服従し得るものでなければならない。

当該被保護者の諾否は必ずしも自由尊重の基準とはならない。

(5) 「必要の最小限度」

全然保護に関係のない事項については指導、指示をなすことはできない。例えば、宗教上の信仰、子弟の教育或いは家庭内の紛議の如きは、勤労、家計に影響のある部分について、その面からしても差し支ないが、信仰、教育或いは紛議そのものについて直接に指導、指示をすることは違法である。

然し、現に受けている扶助の内容に限定されるものではない。即ち、生活扶助の単給を受けている被保護者について医療扶助に関係ある保健衛生の事項に関して指導、指示することは固より差し支ない。

(6) 「強制し得るものと解釈してはならない。」

(1)指導、指示を受けた被保護者は自由意思により、その指導、指示を随時拒否して本法の保護の関係より離脱し得ることは当然である。

(2) なお、本条第2項及び第3項の規定の趣旨は、第1項の解釈上当然であるが、指導、指示の実施の如何がもたらす影響が甚大にして複雑であるのに鑑み、特に入念に設けたものであつて、法律的に云えばこの義務を履行させるために行政上の強制執行の手段を用いる余地が全然ないことを明らかにしている。

(3) 被保護者の自由を侵害し、必要の最少限度を越えた指導、指示は、保護の実施機関の無権限に基く無効であり、取り消し得べき行為に止まるものではなく、被保護者はこれに従う必要はなく、又その違反の由をもつて保護の変更、停止又は廃止の処分をすることはできない。

【運用】

一 指導又は指示の方法について

(1) 指導、指示の内容が複雑であり、又は日常実施すべき必要があるものについては、その具体的要領を詳細に記載した書面を交付して被保護者に十分に熟知、徹底せしめる必要がある。

指導、指示の法律上の効果については前述した如く法第62条第1項の規定により被保護者はこれに服従する義務を有し、同条第3項の規定によりその違反に対しては保護の変更、停止、廃止の処分がなされるのであるが、この場合においては施行規則第18条の規定により書面によつて行つた指導又は指示であることが必要である。

これはこのように重要な決定は、社会福祉主事だけの判断によつて行つてはならないという趣旨に基いているものであるから、社会福祉主事自身がかりにも感情によつて事を運ぶようなことがあつてはならないことは勿論、かかる決定的意義を有する指示を行う場合には、必ず実質的にも上司と十分協護した上でことを運ぶようにしなければならない

(2) 指導、指示は単純にして形式的なものに止めることなく、社会福祉主事等をして被保護者の家庭訪問を励行せしめ、指導、指示の結果を常に具体的に把握してこれを検討し、更によりよき適切、妥当な指導、指示を行うことが必要である。

構成[編集]

第1章 総則(第1条―第6条)

小山は編著88~104頁において第1条の解釈と運用につき以下のように述べている。

第1節 この法律の目的

第1条

この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

【趣旨】

一 要旨

この条文は、生活保護法という法律の内在目的を定めたものであつて、その要旨とするところは、次の三点である。

第一

この法律は、国民で生活に困窮するものの最低生活を保障しようとするものであること。

第二

この法律による保護は、国の直接責任において行われるものであること。

第三

この制度の目的は、この法律により保護される者の最低生活を保障すると共に、自立を助長しようとするものであること。

二 理由

(一) 法律の内容目的を法律の冒頭に掲げて規定することは、最近の立法においては、一般に見受けられる傾向であるが、生活保護法が旧法以来、その建前を採つているのは、(註一)必ずしもこの傾向に漠然と従つているためではない。

蓋し、生活保護制度の如くその制度創設の目的が達せられるためには行政・機関の善意且つ積極的な発意と行動とを必要とする制度においては、法律の技術的構成を如何に精密に組み立てても行政機関の裁量の余地を全然無くする訳にはゆかず、且つ、又そうすることが必ずしも制度創始の由来に対し合目的的でないからである。

かくてこの制度においては、旧法以来その目的を法律の冒頭に明記し、制度運用の基本方針を明かにするの方針を堅持しているのである。

従つて、この条文は、単なる装飾的条文ではなく、最も実動的な条文であつて、凡そこの制度の運用に当つては、常に、その指針となる性質のものであつて、例えば、この法律の第27条に定められている保護の実施機関の指示権に基いて行われた保護の実施機闃の指示が違法であつたかどうかを判定する実質的根拠条文は、この条文となるという類である。

(2) この法律で、生活に困窮する国民の最低限度の生活を保障することとしたのは、憲法第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という表現で述べられている生存権保障の理念の一端をこの生活保護制度によつて具現しようとする趣意に出ずるものである。

先ず、第一に、この法律は生活保護制度を名実共に社会保障制度の一環たらしめようとする明確なる意図に基いて制定されている。

この点は、今回の新法の制定が沿革的には昭和24年9月30日附の社会保障制度審議会会長の内閣総理大臣宛勧告「生活保護制度の改善強化に関する件」に応ずるものとして計画された点から見ても(註2)、或いは又生活保護法案の提案理由及び厚生大臣の提案理由説明(註3)から見ても疑を容れる余地がないと思う。

更に、条文の表現においても、旧法が「……社会の福祉を増進することを目的とする。」と謳い、それが性格的には社会福祉の法であるに止ることを示していたのに対し、新法は「……その最低限度の生活を保障する……目的とする。」と謳い、それが社会保障の法であることを明かにしている。

而して、この目的における相違がその法律の性格全体に明確な相違を生ぜしめていることは改めて申す迄もない所である。

第二に、この法律による生活保障は生活に困窮するものに対し、その最低限度の生活を保障する限度において行われるという建前を採つている。

周知の如く社会保障制度は、社会保険、無醵出年金、保険サービス、公的扶助(註4)等の綜合において成り立つものであつて、その国の社会経済的構造の相違によつて、これらの比重は若干異るが、少くとも資本主義国家における公的扶助制度の役割は、社会保障を最後的に締め括る補足的のものであるべきものとされている(註5)。

我が国における公的法助の大宗(たいそう・おおもと)(註6)である生活保護制度においてもこれに従い、生活保護制度による生活保障は、その対象を生活に困窮する者に限定し、その限度を最低限度の生活を保障する程度に止めることとしたのである。

固よりこれは単にこれらの制度相互間の基本的な関係を述べたに止まるから、実際上の問題としては社会保険その他の部門が十分に整備されていなかつたり、或いは公的扶助によつて保障する生活水準が国民の一般的生活水準との関係から見て、相対的に高い場合には公的扶助に相対的に大きな負担がかかり、原則の通りにゆかぬことは勿論である(註7)(註8)。

第三に、この制度はその対象を日本国民に限定した。

形式的にはこの制度が憲法第25条に淵源するからであるが、実質的には新法が単なる社会福祉の法ではなくして社会保障の法であること、従つて、この法律の適用を受ける者はすべてこの法律の要件を満たす限り保護の請求権を有することに基く。

但し、この点は国際連合憲章及び国際人権宣言との関係において研究さるべき問題であろう(註9)。

なお、昭和26年10月10日公布の政令第319号(ポツダム政令)出入国管理令がその第5条で「貧困者、放浪者、身体障害者等で生活上国又は地方公共団体の負担となる虞のある外国人は本邦に上陸することができない。」旨を定め、且つ、その第24条で「本邦に在留する外国人で貧困者、放浪者、身体障害者で生活上国又は地方公共団体の負担になつているもの」に本邦からの退去を強制し得ることを定めていることは、この問題に対する現段階における我が国の基本的な考え方を示しているものと理解することができよう。

朝鮮人、台湾人等所謂第三国人を特に排除しなかつたのは(註10)、保護請求権には選挙権のような政治的色彩がそれ自体としてはなく、且つ、これの行使を排除することは死を要求する結果ともなる虞なしとしないからである。

(三) 保護を国が直接その責任において行うこととしたのは、地方公共団体の責任において保護を行わせ、国は単にその費用について財政援助をするという制度では生活保障の目的が達せられないからである。

地方公共団体に保護の責任を持たせよという主張は、地方公共団体は、住民の福祉増進を目的とする団体であり、生活保護の如きは正しくその代表的なものであるという所に根拠があり、シャウプ勧告(註11)は、かかる考を前提としているといわれているが、この法律はこれと正反対の考に立つて立案されている。

今立案の基礎となつた考え方を要約してみると次の通りである。

第一に、救護法のように救護の対象を労働能力のない者に限定するならば格別(註12)、生活保護法のように保護の対象を労働能力の有無を問うことなく、生活の困窮という事実を保護の要件とする建前の下では、被保護者の態様はその時々の経済事情により大巾に変動することは申す迄もない。

而して、経済の運行が市町村という小区域は勿論のこと、都道府県という区域をも遥かに超えた広域を単位として営まれている以上、経済変動のまにまに発生する生活困窮者の生活保障を、地方公共団体の責任において実施することは不可能と申すの外はない。

このことは、例えば、住民の大半がある特定の会社、工場等に依存して生活している場合に、不況のためその会社、工場が大巾に事業を縮少した場合について考えれば容易に理解されるであろう。

要するに失業による生活困窮をも保護の原因に採り入れたことが、かかる生活保護の実施を全国的規模において実施することを不可避的たらしめているのである。

第二に、生活保護制度を単なる社会福祉の制度としてではなく、社会保障の制度として実施する以上、その保障の内容に相違があつてよい筈はない。而して、経済変動のまにまに発生する生活困窮者の生活保障が地方公共団休の力に余る負担だとすれば、生活保護制度が社会保障制度としての要請を貫こうとする限り、必然的に全国的規模において実施されることを要請する。

第三に、例えば、地方財政平衡交付金制度の如きものを通じ高率の財政援助を行つても、なお且つ、不可能かという問題があるが、我々の経験はこれに対しても不可能に近いという解答を与えている。

蓋し、かかる制度によつて処理し得るためには生活保護の経費について比較的単純な測定基準が作られなければならないが、或る一定の時期をおさえても、同一府県の市町村間に30乃至50の段階があり、且つ、これが時期的に変動し、而も、一方が減じつつあるのに、他方が増しつつあるというように方向が乱雑であるために測定基準の決定が技術的に不可能であるからである。従つて、このような実情の下でこのやり方を強行すれば、市町村のあるものを財政的に破綻させるか(恐らくはそのようなことは起らないで)、或いは社会保障制度としての生活保護制度を崩壊させることになるであろう。

第四に、実際上の問題として現在保護を受けている人々の中の過半は、戦災等による疎開者、戦争未亡人等所謂戦争犧牲者であつて、現在居住している市町村にとつては云わば地つきの人でない人が少くない。

これらの人々の保護の責任を偶々(たまたま)その人が保護を要する状態に陥つた当時、その市町村に居住していたからという理由でその市町村に負わせて了うことには、特に町村においては感情的に無理があるであろう。この点は、市町村民共同の福利増進というもこの場合には、結局ある特定の対象に対し、或る期間固定的に少からざる費用(市町村歳出の10%強)が使用されるのであることを考えれば、戦争中疎開を繞(めぐ)つて生じたいくつかの不揄快な記憶に徴しても思い半ばに過ぎるものがあると申さねばならない。

第五に、憲法は第25条第2項において「国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなけれぱならない。」と規定し「すべての国民が健康で文化的な、最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国家の責務」(註13)とすることを明らかにしている。

このことは必ずしもこれらの部面の事務がすべて国家事務として行われなければならないことを要求するものと解すべきではないかも知れないが、少くともこれらの部面の事務に対する究極的責任は、国がこれを負担すべきことを要求していることだけは否定すべくもない所である。

然るに、平衡交付金制度は財源の賦与のみを考えかかる財源の賦与により、地方団体をして果さすべき事務の実行を確保する手段については何等考える所がない。

従つて、現段階において考える限り、国がその責任を果さんとするには直接責任の建前を採らざるを得ないのである。

(四) 最低生活の保障と共に、自立の助長ということを目的の中に含めたのは、「人をして人たるに値する存在」たらしめるには単にその最低生活を維持させるというだけでは十分でない。

凡そ人はすべてその中に何等かの自主独立の意味において可能性を包蔵している。

この内容的可能性を発見し、これを助長育成し、而して、その人をしてその能力に相応しい状態において社会生活に適応させることこそ、真実の意味において生存権を保障する所以である。

社会保障の制度であると共に、社会福祉の制度である生活保護制度としては、当然此処(ここ)迄を目的とすべきであるとする考えに出でるものである。

従つて、兎角誤解され易いように隋民防止ということは、この制度がその目的に従つて最も効果的に運用された結果として起ることではあらうが、少くとも「自立の助長」という表現で第一義的に意図されている所ではない。

自立の助長を目的に謳つた趣旨は、そのような調子の低いものではないのである。

【解釈】

(一) 「日本国憲法第25条に規定する理念に基き」

すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国家の責務としている趣旨に基くものである(第2条の(註2)参照)。

(二) 「国」

統治組織としての国家を指している。従つて、行政組織のみならず立法及び司法の組織も含まれる。

但し、地方公共団体は含まれない。

(三) 「生活に困窮する」

(一) 人間としての生活に必要な最低限度の需要が充足されないために苦しむことである。

従つて、この場合における判定の重点は、最低限度の需要が充足されているかどうかという事実の認定に置かれる。

(二) 一般論として「人間生活に必要な最低限度の需要」ということが考えられるかどうか、若し考えられるとすればどんなものかということについては議論の存する所であるが、最近における傾向としては理念型としては存在し得るとするものが有力で、我が国における生活保護制度や米国における公的扶助制度の運用の実際も理論的にはかかる考え方を前提としているように見受けられる。

(三) 生活水準を現わす言葉としては、色々の言葉が用いられ、又生活水準は色々の型に分類されている。

最も多く行われる分類は、貧困水準、最低生存維持水準、最低保健及び体面維持水準、最低愉楽水準に四大別するものであるが(註14)、我が国の生活保護制度の前提している最低水準は恐らく右の最低生存維持水準に近いものであろう。

(四) 「国民」

国籍法に定められた要件を具備する者である(憲法第10条)。

然し、実定制度上日本国民という言葉を必ずしも右の厳格な意義において使用せず、制度の性質上の必要に基き、朝鮮人(註15)を外国人として取り扱う例もあるが、生活保護法においては最も標準的な意義において国民という言葉を使用し、且つ、その運用においても朝鮮人、台湾人等を特に排除する取扱をしていない。

但し、伝えられる如く平和条約の成立後日本に居住する朝鮮人に韓国籍が与えられることになれば本法の達用においても朝鮮人が外国人として取り扱われることとなることは勿論である。

(五) 「その困窮の程度に応じ」

最低生活の需要に基いて客観的、具体的に認定されたその人の困窮の程度に応じ、即ち、その人の資力その他で満たすことのできない最低生活の需要の態様及び程度に応ずるものである。

(六) 「必要な保護」

(1) その人の客観的に必要とする保護。

その人の満たされない需要の態様及び程度が客観的に認定されるから、これに対応し必要な保護も客観的に決定し得る理である。

従つて、必要な保護を認定する行為の法律上の性質は覊束(きそく・束縛)裁量である(註16)。

但し、実際問題としては困窮の程度とこれに必要な保護の認定は極めて困難な問題であつて、そのためには高度の技術的知識が必要とされている。

又生活保護が社会保障の問題でありながら、同時に社会事業の問題である理由もここにある。

(2) この法律では、保護という言葉を特に定義していないが、「国がこの法律の定める所によつて被保護者に対して行う金銭給付又は物品給付」(第6条)を指す最狭義において使用している。

従つて、我々が通常保護として行つているケースワークの多くはこの中には含まれていない。

(七) 「最低限度の生活を保障する」

(1) 最低限度の生活とは、最低限度の需要の充足される生活((三)「生活に困窮する」の項参照)をいう。

(2) 保障するとは。最低生活の維持を脅かす原因を排除して、最低生活が必ず営めるようにすることである。

(八) 「自立を助長する」

公私の扶助を受けず自分の力で社会生活に適応した生活を営むことのできるように助け育てて行くことである。

助長という以上そういう内在的可能性を有つている者に対し、その限度において云われるものであつて、そのような可能性の態様や程度を考えず、機械的画一的に一つのことを強制するものでないことは申す迄もない。

【運用】

一 今後における制度改善の重点について

最低生活保障法と言い得るためには、保護の要件が明確に定められ、保護の内容が最低生活を保障し得る程度のものであり、その実施方法が国民の側から見て安全性のあるものであつて、且つ、権利に対する救済手段が与えられているものでなければないとされているが、新法は概ね右の要件を具えていると思われる。

併し(しかし)、保護の内容については貧弱に過ぎるとする意見が多く、今後に於けるこの制度改善の最重点の一つは保護の基準をこの制度の目的に相応する程度にまで引き上げることであらう。

二 機関委任の方式によることを適当とすることについて

生活保護の国家責任を形式的に最も明瞭にする方法は、国の官吏によつて生活保護の事務を処理させることであるが、能率の点から見ても経費の点から見ても得策とは言い難い。

この意味においてシャウプ勧告とは異るが、我が国においては生活保護についてはこれ迄通り国家事務の機関委任という方式を採ることが適当だと思う。

三 生活保護制度運営の積極化について

生活保護制度の実施が現状ではいささか消極的に過ぎるとは、この制度の運営に対する定評と考えてよいようである(註18)。従つて、今後はこの制度の基本的性格を考え、その枠内で一段と運用に積極性を持たせ、この制度が防貧自立の機能を発揮するよう創意工夫しなければならない。

四 生活保護制度における社会福祉性について

生活保護制度の運営を考える場合、特に注意しなければならないことは、生活保護法の法律的理解を深めるだけでは十分でないということである。

この法律が社会保障法としての建前を採つていること、もう一つは法律技術上の制約によりケースワークを法律で規定することが至難であることのために、この法律の上では金銭給付と現物給付とだけが法律上の保護として現われている。

従つて、現実には保護として行われ、且つ、被保護者の自立指導の上に重要な役割を演じているケースワークの多くが法律上では行政機関によつて行われる単なる事実行為として取り扱われ法律上何等の意義も与えられていない。

これはともすれば生活保護において第一義的なものは金銭給付や現物給付のような物質的扶助であるとの考を生じさせ勝ちであるけれども、ケースワークを必要とする対象に関する限り、このように考えることは誤りだと言わなければならない。

例えば、身体も強健で労働能力もあり、労働の意思もある人が一時的に失業し、生活が困窮した場合には、この人に必要なものは就職の機会とそれ迄の生活費の補給であるから、生活扶助費の給与ということがこの場合の解決策であろう。

然しながら、同じく生活扶助費の給与ということを法律上の保護の形としては採りつつも、若しもこれが労働を怠る者の場合であるとしたら問題は全然異るであろう。

このような者も社会生活に適応させるようにすることこそ正しくケースワークの目的とする所であるが、この場合には恐らく金銭給付は全体の過程の単なる一部分であるに過ぎず、寧ろ、保護の実体的部分は法外の事実行為として行われるであろう。

従つて、この制度の運営に当る者は、常に、事実行為をも含めた広い意義の保護を念頭に置いて事に当る必要があろう。

五 外国人の保護救済について

外国人で生活に困窮する者が生じた場合にはどうすればよいか。

この法律は憲法第25条の規定との関係上その対象を日本国民に限定した。

従つて、厳格に云えば外国人はこの法律による保護を受けることはできない筈である。

然しながら、現にこの制度による保護を受けている外国人が少からず存在する事実(註19)、前述の国際連合憲章との関係及び旧法以来国籍に関係なく保護すべしとする指導方針の採られてきたこと(註20)、等を考えると講和条約が成立し、この間題が確定的に解決される迄はこれ迄通り、生活に困窮する外国人があつたならば一応その国の外交機関に連絡し、それで解決しない場合はこの制度によつて保護すべきであろう(註21)。

(註1)旧法

第1条

この法律は、生活の保護を要する状態にある者の生活を、国が差別的又は優先的な取扱ななすことなく、平等に保護して、社会の福祉を増進することを目的とする。

(註2)小山進次郎編「生活保護の基本問題」(昭和24年)」225頁以下参照

(註3)生活保護法案の提案理由は、次のようになつている。

「現下の社会情勢にかんがみ、生活に困窮するすべての者を無差別平等に保護する生活保護の制度を拡充強化し、国民の最低生活の保障に遺憾なからしめるために現行生活保護法を廃止し、新たに生活保護法を制定する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」

又林厚生大臣はこの点を衆参両院の厚生委員会で概ね次のように説明している。

「抑々(よくよく)、現行の生活保護制度は、生活の困窮と言う事実を唯一の要件として、凡そ生活に苦しむものあらぱ、これを無差別平等に保護すると云う極めて進歩した建前の上に成り立つているのでありまして、世界に於けるこの種の制度中最も進歩したものの一つに属しているのであります。

従いまして、今回の改正におきましても、この制度の基調をなしまするこの理念を益々明瞭にすることに重点が置かれたのであります。

御承知の如く現行の生活保護制度は、終戦直後の国内情勢の極めて混乱しておりまする際に、急遽発足せざるを得ませんでしたために、各般の基礎的研究の完成を侯つ暇なく、取敢ず当時存在いたしました救護法等の形式を利用し、これを換骨奪胎(かんこつだったい・焼き直し)して新たなる制度といたしましたために、新しい理念をもるに相応しい新しい形式を十分に整備することが出来なかったのであります。

固より法の実施に当るものが最善の努力を払いこの間隙の生ずることを未然に防止して参つたのでありますが、特に、昨年以来当国会に於ても極めて緊急なる問題として取上げられた未亡人母子援護の問題或は遺族援護の問題等を通じまして、はしなくも現行制度に於けるこの欠陥が指摘せられ、遂に昨年9月13日内閣に設けられました社会保障制度審議会から現行の生活保護制度を緊急に改善強化し、以つて当面の緊迫せる情勢に対応すべき旨の勧告を受けるに至つたのであります。

政府におきましては、これらの要請に応じまして現行の生活保護制度を、真に憲法第25条の定める理念に相応しいものたらしめるよう、ここに生活保護法の全面的改正を提案することといたしたのであります。」

(註4)前掲・小山 208・209頁参照

(註5)前掲・小山 219-225頁参照

(註6)我が国の公的扶助制度においては、その扶助人員の点においても、そのために使用されろ費用の点においても、生活保護制度が圧倒的な比重を占めている。金額の点については自信をもつては公表し得る資料を欠くので人員についてだけ示すと次のようにになつている。

         公的扶助人員   被保護人員   %

昭和24年4月   1,651,116人    1,590,121人 96.3

    5    1,650,109     1,586,488  96.1

    6    1,661,223     1,607,747  96.8

    7    1,668,172     1,607,240  96.4

    8    1,681,166     1,618,067  96.3

    9    1,990,547     1,633,582  82.1

    10    1,697,186     1,638,339  96.5

    11    1,723,369     1,637,838  95.0

    12    1,725,728     1,666,576  96.5

昭和25年1月   1,726,812     1,673,121  96.9

    2    1,772,728     1,724,107  97.2

    3    1,843,861     1,790,961  97.1

    4    1,849,868     1,793,036  97.2

    5    1,912,365     1,849,386  96.7

    6    1,978,839     1,911,532  96.6

(註7)前者の例としては、我が国の生活保護制度を挙げることができよう。

先ず被保護世帯の中に狭義の未亡人母子世帯に属するものが約48%あり、その中の過半が所謂戦争未亡人母子の世帯であるとされている事実は、本来年金制度等でなさるべきこれらの人々の生活保障を、当事者にとつてはより不利なこの制度によつて代位さしているものと考えられる。

次に医療扶助を受けてる者の殆ど全部が健康保険の加入者でない事実と医療扶助を受けている者の中の34.6%が結核患者である事実(昭25年2月)とは、健康保険の加入者たり得ない者に対する医療に関する社会保険の役割の一部をこの制度が代替させられていることを物語るものと云うことができよう。

(註8)アメリカ合衆国の社会保障にも構造的にはこのような傾向があるように感ぜられる。

例えば、1947年12月における同国の社会保障法に基く老齢扶助受給者数が、次表に示す通り同一の年齢区間の人口1,000人に対し219人であることは同国の社会保障制度における構造上の特色を示すものということができる。

我が国においては、この数は男子については36.6人、女子については46.3人、総体については42.7人となつている。

合衆国 219人 オくラホマ州 581人 テキサス州 487人

コロラド州 424 ジョルジア州 418 アラスカ州 382

ルイジアナ州 381 アリゾナ州 365 ワシントン州 362

アルカンサス州 353 フロリダ州 345 サウスカロライナ州 332

モンタナ州 319 ミシシッピー州 316 ユタ州 312

ニユーメキシコ州 305 アイダホ州 276 カリフォルニア州 257

テネシー州 255 ケンタッキー州 243 モンタナ州 240

ワイヲミング州 238 サウスダゴ夕州 236 ミシガン州 232

ネヴアダ州 230 ノースカロライナ州 225 ミネソタ州 220

マサチュウセット州 210 ネブラスカ州 199 オレゴン州 199

カンサス州 198 オハイヲ州 197 ノースダゴ夕州 190

アイオワ州 189 イリノイ州 187 ウェストヴアージニヤ州 185

メイン州 176 ウィスコンシン州 171 ヴイルモント州 162

インデイアナ州 159 ロードアイラソド州 139 ニユー・ハンプシャー州 131

ペンシルヴアユヤ州 113 コネチカツト州 100 ニユー・ヨーク州 98

ヴアージニヤ州 91 メリー・ランド州 83 ニユー・ジアーシィ州 68

デイラウエア州 56 コロンビヤ区(ワシントンD・C) 45

(註9)国際連合憲章(1945年6月16日)は、この点につき、内外人平等の原則の採らるべきことを期待していることを推測させるいくつかの条項を設けている。参考のため関係条文を次に引用して置こう。

国際連合憲章

第一章 目的及び原則

第1条 (目的)

国際連合の目的は次の通りである。

③ 経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際的問題を解決すること。人種、性、言語又は宗教に関する差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の尊重を助長奨励することについて国際協力を達成すること。

④ これらの共同目的の達成に当つて諸国の行動の調和の為の中心となること。

第2条 (原則)

この機関及びそれら加盟国は、第1条に掲げられていろ目的を達成しようとするに当つては、次の原則に従つて行動しなければならない。

⑥ この機搆は、国際連合の加盟国でない国が、国際的平和及び安全の維持に必要なる限り、これらの原則に従つて行動することを確保しなければならない。

⑦ この憲章の如何なる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権の範囲内に在る事項に干渉するの権能を、国際連合に与えるものではなく、又、右の事項をこの憲章による解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。

第4章 総会

第131条 (国際協力)

① 総会は、次の目的の為研究を発議し、且つ、勧告する。

い 政治的分野において国際協力る促進すること並びに国際法の漸進的発達及び法典化を奨励すること。

ろ 経済的、社会的、文化的、数育的及び衛生的分野において国際協力を促進すること並びに人種、性、言語又は 宗教に関する差別はない、すべての者のための人権及び基本的自由の実現を援助すること。

② 前記の第1項「ろ」に掲げられている事項に関する総会の右以外の責任、任務及び権限は、第9章及び第16章に掲げられている。

第9章 各国間の経済的及び社会約協力

第55条 (目的)

人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎を置く諸国間の平和的且つ友好的関係の為に、必要なる安定と福祉の条件を創造するために、国際連合は、左記を促進しなければならない。

い 一層高き生活水準、完全雇用並に経済的及び社会的の進歩及び発展の条件

ろ 経済的、社会的、衞生的国際問題及びこれに関係のある問題の解決と文化的及び教育的国際協力

は 人種、性、言語又は宗教に関する差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の万人による尊重及び遵守

第10章 経済社会理事会

任務及び権限

第62条 (研究、報告及び勧告)

① 経済社会理事会は、経済的、社会的、文化的、教育的及び衛生的国際事項とこれに関係のある事項とに関す研究及び報告を行い、又はこれを発議することができるし、又右の事項に関して、総会、国際連合加盟国及び関係専門機関に勧告をすることができる。

② 理事会は、すべての者のための人権及び基本的自由の尊重及び遵守を助長するため勧告をすることができる。

③ 理事会は、自己の管轄に属している事項について、総会に提出するための条約案を作成することができる。

④ 理事会は、自己の管轄に属している事項について国際会議を、国際連合の定める規則に従って招集することができる。

国際人権宣言 (国際連合第3回総会)

第2条

何人も人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上又は他の意見、国民的又は社会的出身、財産、門地又は他の地位のようないかなる種類の差別も受けることなく、この宣言に定めたすべての権利と自由を享有する。

第3条

各人は、生活、自由及び身体の安全に対する権利を有する。

第6条

各人は、いかなる場所においても、法の前に一個の人格として承認される権利を有する。

第7条

すべての人は、法の前に平等であり、又、いかなる差別もなく、法の平等の保護を受ける権利を有する。この宣言に違反するいかなる差別に対しても、又このような差別をそそのかすいかなる行為に対しても平等な保護を受ける権利を有する。

第22条

各人は、社会の一員として、社会的保障を受ける権利を有し、且つ、国家的努力及び国際的協力を通じ、又各国の組織及び資源に応じ、自己の尊巌と自己の人格の自由な発達とに必要な経済的、社会的、文化的権利の実現を得る権利を有する。

第25条

各人は、住、医療及び必要な社会施設の便宜を含めて、自己とその家族の健康及び幸福のために適当な生活水準を得る権利並びに失業、疾病、不具、配偶者の喪失若しくは老齢の場合又は不可抗力に基く他の生計不能の場合には保障を受ける権利を有する。

母と子は、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての児童は、適当であるとないとを問わず同一の社会的保護を享有する。

(註10)地方自治法は、朝鮮人及び台湾省民の選挙権及び被選挙権の行使を事実上排除している。

地方自治法

第11条

日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通公共団体の選挙に参与する権利を有する。

附則第20条 ① 戸籍法の適用を受けない者の選挙権及び被選挙権は、当分の間、これを停止する。

(註11)シャウプ使節団日本税制報告書附録には、次のようなことが述べられている。

附録A 地方団体の財政B 強力なる地方団体の必要

「地方団体の事務は特に国民と密接なものがある。これらの行政事務のうちには教育、病院、疾病の予防衛生施設、救済母子厚生、警察、消防、街路、レクリエーション、住宅及び不具者の世話といつたような重大な行政及び施設が含まれている。……」

D 職務の分掌

「……地方自治のためにそれぞれの事務は適当な最低段階の行政機関に与えられるであろう。市町村の適当に遂行できる事務は都道府県又は国に与えられないという意味で、市町村には第一の優先権が与えられるであろう。第二には都道府県に優先権が与えられ、中央政府は地方の指揮下では有効に処理できない事務だけを引受けることになるであろう。」

(註12)救護法(昭和4年法律第39号)は、救護の対象を次のように限定している(同法第1条)。

左に掲げる者で貧困のため生活することのできないもの

1 65歳以上の老衰者

2 13歳以下の幼者

3 妊産婦

4 不具、癈疾、疾病、傷痍その他精神上又は身体上の障害により労務を行うに故障のある者

(註13)第2条(註2)参照

(註14)竹内愛二「ケース・ウォークの理論と実際」(昭24年)121頁及び藤本武「最低賃銀基準論」(昭24年)201頁にこの問題に関するダグラス教授、コミッシュ教授の意見が紹介されている。

(註15)外国人登録令(昭22年勅令第207号)

第11条

台湾人のうち法務総裁の定めるもの及び朝鮮人は、この勅令の適用については当分の間、これを外国人とみなす。

(註16)田上穣治「行政法総論」(昭25年)34頁参照

(註17)近藤文二「社会事業の近代的性格の六、生活保護制度の近代化」(「社会事業」33巻第1号)参照

(註18)社会保障制度審議会「生活保護制度の改善強化に関する勧告」(昭24年9月13日)実施要領第三の(2)(前掲・小山228頁)参照

(註19)昭和23年12月1日現在で生活保護を受けていた外国人の数は、次の通りである。

国籍   世帯数 人員 国籍     世帯数 人員

米国     3  10 蒙古人民共和国  3  1

英国     1  3 ポルトガル    1  1

ベルギー国  1  1 ポ-ランド    1  1

ブラジル国  1  4 ソヴィエ卜連邦  4  6

中華民国   46  89 トルコ      2  5

オランダ   1  1 白系ロシヤ    3  3

フィリピン  5  23 無国籍      2  10

台湾省    12  28 ドイツ      13  20

            合計       99  198

(註20)旧基本通知

第一「一般事項の5」には次のように述べられている。

「本法による保護は、差別的又は優先的な取扱をせず平等に保護するものであるから、宗教的社会的、又は国籍等の関係で不利な取扱をなさないこと。」

(註21)昭25.6.18社乙発第92号「生活保護法における外国人の取扱に関する件」各都道府県知事宛厚生省社会局長通知左記第二には次のように述べられている。

「右以外の日本国民でないすべての者は、本法の対象とはなり得ないものであること。但し、その困窮の状態が現に急迫、深刻であつで、これを放置することが社会的人道的にみて妥当でなく他の公私の救済の途が全くない場合に限り、当分の間、本法の規定を準用して保護して差支えないこと。この意味は、その者が一般国民に認められた保護を受ける権利はなく、恰かも旧法におけるが如き反射的利益を受けるに止まるものであること。なお、右に該当する者であつて、外国人登録令による登録をしていない者及び不正な登録をしているか、又は不正な登録証明書を有する者についてはすみやかに検察当局へ連絡すること。」

第2章 保護の原則(第7条―第10条)

第3章 保護の種類及び範囲(第11条―第18条)

第4章 保護の機関及び実施(第19条―第29条の2)

第5章 保護の方法(第30条―第37条の2)

第6章 保護施設(第38条―第48条)

第7章 医療機関、介護機関及び助産機関(第49条―第55条の3)

第8章 就労自立給付金(第55条の4・第55条の5)

第9章 被保護者就労支援事業(第55条の6)

第10章 被保護者の権利及び義務(第56条―第63条)

第11章 不服申立て(第64条―第69条)

第12章 費用(第70条―第80条)

第13章 雑則(第81条―第86条)

附則

生活保護の原理・原則[編集]

原理[編集]

  • 国家責任の原理
  • 無差別平等の原理
  • 最低生活維持の原理
  • 補足性の原理

原則[編集]

  • 申請保護の原則(生活保護法第7条)
生活に困窮する国民はこの法律で保護を請求する権利が保障されており、この権利の実現は申請に基づいて保護が開始されるという原則。これは一身専属権である。要保護者本人と要保護者の扶助義務者または要保護者と同居している親族が申請できる。また、急迫の場合の職権保護が補完的に規定されている。

この「保護を請求する権利」を、現行制度制定の主軸にいた小山進次郎は、「保護請求権」とも「申請権」とも表現し、今日の各種通知では省略して後者を用いている。(小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』1975年3月1日、社会福祉法人・全国社会福祉協議会、162~163頁)

  • 基準及び程度の原則
  • 必要即応の原則
  • 世帯単位の原則

下位法令[編集]

  • 生活保護法施行令
  • 生活保護法施行規則(厚生労働省令)
  • 生活保護法施行細則(地方自治体が定める)

関連項目[編集]

小山が編著902~907頁に付録三として旧生活保護法(昭和21年9月9日法律第17号)を掲載しているので紹介する。

附録

三、旧生活保護法(昭和21年9月9日法律第17号)

改正(昭和23年7月29日法律第198号)

(昭和24年5月21日法律第168号)

第1章 総則

第1条

この法律は、生活の保護を要する状態にある者の生活を、国が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して、社会の福祉を増進することを目的とする。

第2条

左の各号の一に該当する者には、この法律による保護は、これをなさない。

1 能力があるにもかかわらす、勤労の意思のない者、勤労を怠る者その他生計の維持に努めない者

2 素行不良な者

第3条 扶養義務者が扶養をなし得る者には、急迫した事情がある場合を除いては、この法律による保護は、これをなさない。

第2章 保護機関

第4条

保護は、保護を受ける者の居住地の市町村長(東京都の区のある区域においては東京都長官とする。以下同じ。)、居住地がないか、又は明かでないときは、現在地の市町村長がこれを行ふ。

第5条

民生委員法による民生委員は、命令の定めるところにより、保護事務に関して市町村長を補助する。

第三章 保護施設

第6条

この法律において保護施設とは、この法律による保護を目的とする施設又はこの法律による保護を受ける者の援護のために必要な施設をいふ。

前項の援護とは、宿所の提供その他この法律による保護を全うするため必要な事項で命令をもつて定めるものをいふ。

第7条

市町村が保護施設を設置しようとするときは、その設備について、地方長官の認可を受けなけれぱならない。

市町村以外の者(都道府県を除く以下同じ。)が保護施設を設置しようとするときは、地方長官の認可を受けなけれぱならない。

第8条

前条第2項の規定により設置した保護施設は、市町村長が保護又は援護のため行ふ委託を拒むことができない。

第9条

この法律で定めるものの外、保護施設の設置、管理、廃止その他保護施設に関して必要な事項は、命令でこれを定める。

第4章 保護の種類、程度及び方法

第10条

保護は、生活に必要な限度を超えることができない。

第11条

保護の種類は、左の通りである。

一 生活扶助

二 医療

三 助産

四 生業扶助

五 葬祭扶助

前項各号の保護の程度及び方法は、勅令でこれを定める。

第12条

市町村長は、必要と認めるときは、保護を受ける者を保護施設に収容し、若しくは収容を委託し、又は私人の家庭若しくは適当な施設に収容を委託することができる。

第13条

市町村長は保護を受ける者の親権者は後見人がその権利を適切に行はない場合は、その異議あつても、前条の規定による処分をなすことができる。

第14条

保護施設の長は、命令の定めるところにより、その施設に収容された者に対して、適当な作業を行はせることができる。

第15条

第12条の規定により収容され、又は収容を委託された未成年者について、親権者及び後見人の職務を行ふ者がないときは、市町村長又はその指定した者が、勅令の定めるところにより、後見人の職務を行ふ。

第16条

市町村長は、保護を受ける者に対して、勤労その他生計の維持に必要なことに関して指示をなすことができる。

第17条

保護を受ける者が死亡した場合は、勅令の定めるところにより、葬祭を行ふ者に対して、葬祭費を給することができる。

保護を受ける者が死亡した場合に、葬祭を行ふ者がないときは、保護をなした市町村長が、葬祭を行はなけれぱならない。

第5章 保護費

第18条

保護を受ける者が同一の市町村に一箇年以上引続いて居住する者であるときは、保護に要する費用は、その居住地の市町村がこれを支弁する。

保護を受ける者が東京都の区のある区域に居住する者であるときは、保護に要する費用は、東京都がこれを支弁する。

第19条

保護を受ける者が左の各号の一に該当する者であるときは、その居住期間が一箇年に満たない場合においても、保護に要する費用は、その居住地の市町村がこれを支弁する。

一 夫婦の一方が居住一箇年以上であるとき、同居の他の一方

二 父母その他の直系尊属が居住一箇年以上であるとき、同居の子その他の直系卑属

三 子その他の直系卑属が居住一箇年以上であるとき、同居の父母その他の直系尊属

第20条

第18条第1項及び前条に規定する期間の計算については、勅令の定めるととろによる。

第21条

保護に要する費用が第18条第1項及び第19条の規定により市町村が支弁しない場合は、その費用は、保護を受ける者の居住地の都道府県がこれを支弁する。

保護を受ける者の居住地がないか、又は明らかでないときは、保護に要する費用は、その者の現住地の都道府県がこれを支弁する。

第22条

第17条第1項の葬祭費及び同条第2項の規定による葬祭に要する費用の支弁に関しては、第18条乃至前条の規定を準用する。

第23条

第5条の規定により民生委員が職務を行ふため必要な費用は、市町村(東京都の区のある区域に置かれる民生委員については東京都とする)がこれを支弁する。

第24条

都道府県が設置した保護施設及び第7条の規定により市町村又は市町村以外の者が設置した保護施設の事務費は、勅令の定めるところにより、第18条、第19条及び第21条の規定によりその施設で保護又は援護を受ける者の保護に要する費用を支弁する市町村又は都道府県がこれを支弁する。

第25条

第21条及び第22条の規定により都道府県が支弁する費用は、保護を行つた地の市町村が、一時これを繰替支弁しなければならない。

第26条

都道府県は、勅令の定めるととろにより、第7条第2項の規定により市町村以外の者が設置した保護施設の設備に要する費用に対して、その四分の三を支出しなけれぽならない。

第27条

都道府県は、勅令の定めるところにより、左の費用に対して、その四分の一を負担しなければならない。

一 第23条の規定により市町村が支弁した費用

二 第7条第1項の規定により市町村が設置した保護施設の設備に要する費用

第28条

都道府県は、勅令の定めるところにより、第18条第1項、第19条、第22条及び第24条の規定により市町村が支弁した費用に対して、その十分の一を負担しなければならない。

第29条

国庫は、勅令の定めるところにより、第18条、第19条、第21条、第22条及び第24条の規定により市町村又は都道府県が支弁した費用に対して、その十分の八を負担する。

第30条

国庫は、勅令の定めるところにより、第26条の規定により都道府県が支出した費用に対して、その三分の二を負担する。

第31条

国庫は、勅令の定めるところにより、左の費用に対してその二分の一を負担する。

1 第23条の規定により市町村又は東京都が支弁した費用

2 都道府県が設置した保護施設及び第7条第1項の規定により市町村が支弁した保護施設の設置に要する費用

第32条

保護を受ける者に資力があるにもかかわらす保護をなしたときは、保護に要する費用を支弁した市町村又は都道府県は、その者から、その費用の全部又は一部を徴収するととができる。

第33条

保護を受けた者が保護に要した費用を弁償する資力を有するようになつたときは、保護の費用を支弁した市町村又は都道府県は保護を廃止した日から五箇年以内に、その費用の全部又は一部の償還を命するととができる。

第34条

保護を受ける者に対して民法により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは、その義務の範囲内において、保護に要する費用を支弁した市町村又は都道府県は、その費用の全部又は一部をその者から徴収することができる。

前項の規定による費用の徴収に関して争があるときは、民事訴訟による。

第35条

保護を受ける者が死亡したときは、市町村長は、命令の定めるところにより、遺留の金銭を保護に要した費用、第27条第1項の葬祭費及び同条第2項の規定による葬祭に要した費用に充て、なお足りないときは、遺留した物品を売却して、これに充てることができる。

第6章 雑則

第36条

保護を受ける者が左の各号の一に該当するときは、市町村長は、保護をなさないことができる。

1 この法律又はこの法律に基いて発する命令により市町村長又は保護施設の長が、なした処分又は指示に従はないとき。

2 正当な理由がなく保護に関する検診又は調査を拒んだとき。

第37条

第7条第2項の規定により設置した保護施設が、この法律若しくはこの法律に基いて発する命令又はこれに基いてなす処分に違反したときは、地方長官は、同項の認可を取り消すととができる。

第38条

この法律により給与を受けた保護金品を標準として、租税その他の公課を課すことはできない。

第39条

この法律による保護金品は、既に給与を受けたものであるとないとにかかはらず、これを差し押さへることができない。

第40条

都道府県、市町村その他の公共団体は、左の建物及び土地に対しては、有料で使用させるものを除いては、租税その他の公課を課すととができない。

1 主として保護施設のために使ふ建物

2 前項の建物の敷地その他の主として保護施設のために使ふ土地

第41条

詐偽その他不正の手段により保護受け、又は受けさせた者は6箇月以下の懲役又は500円以下のに罰金に処する。

第42条

その法律中町村に関する規定は、町村制を施行しない地において町村に準ずるものに、町村長に関す規定は、町村長に準する者にこれを適用する。

附則

第43条

この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める。(昭和21年9月20日勅令第437号により同年10月1日より施行)

第44条

救護法、軍事扶助法、母子保護法、医療保護法及び戦時災害保護法は、これを廃止する。

第45条

救護法第7条若しくは母子保護法第9条第2項の規定により設置した施設又は医療保護法第6条の規定により経営する施設(都道府県の施設を除く。)で、この法律施行の際現に存するものは、この法律施行の日か2箇月を限り、第7条の認可を受けなくても、同条の認可を受け保護施設とみなす。

前項の施設の設置者が同項の期間内に第7条の認可を申請した場合において、その申請に対する認可又は不認可の処分の日までも、また同項と同様である。

第46条

北海道旧土人保護法の一部を次のように改正する。

第4条乃至第6条 削除

第8条中「第4条乃至前条」を「前3条」に改める。

第47条

罹災救助基金法の一部を次のように改正する。

第15条ノ2中「救護法施行」を「生活保護法施行」に改める。