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ノーマライゼーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ノーマライゼーション英語: normalization、ノーマリゼーション)とは、社会福祉をめぐる理念の一つであり、障害者健常者も同じように生活することができる社会を目指すもの。1950年代に北欧諸国で取組が始まった後に国際的に広がり、1981年の国際障害者年、2006年に採択された障害者の権利に関する条約の基礎的理念となった。同理念を拡張・発展させたものとして、インクルーシブ社会構想がある。

歴史

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ノーマライゼーション理念の出発点は知的障害者政策にあり、スウェーデン社会庁障害者雇用検討委員会が1946年にとりまとめた報告書の段階でその原型が見て取れる[1]。この報告書では、健常者との間での社会的不平等を解消するために、施設での生活を強制される状況からの脱却、障害者の生活の「ノーマル化」が必要であると示された[1]。また、同時期のデンマークでは、障害を持つ児童の親から施設での待遇や社会とのつながりの改善を求める動きが強まっており、この動きを同国の社会省の職員として後押ししたニルス・エリク・バンク=ミケルセンによって、具体的な政策立案が始まる[2]

バンク=ミケルセンは、ナチス・ドイツの侵略期に政治犯として強制収容所に投獄された経歴を持ち、収容所での生活経験と障害者の施設での生活を重ね合わせ、当時の知的障害者政策は非人道的であり、優生思想に基づいて本人や家族の了承なく不妊手術が行われている実態はナチスの強制収容所と同じであると非難した[2]。知的障害者の人間的尊厳・基本的人権を保護し、可能な限り、健常者と同じように生活を送れるようにするべきだと主張し、1959年にノーマライゼーションの実現を提唱した法令が制定される[2]。バンク=ミケルセンの主張は、北欧諸国に広がり、1960年代以降、スウェーデンベンクト・ニィリエフランス語版によって学術的な理念化・理論化が進められる[3]

1971年には、ノーマライゼーション理念を土台とした知的障害者の権利宣言が国際連合総会で採択される[3]。1976年の総会では1981年を国際障害者年とすることが決まり、2006年の障害者の権利に関する条約へとつながっていく[3]。日本においても、1981年の国際障害者年を契機に障害者政策の見直しが進んでいき、1993年に成立した障害者基本法に「完全参加と平等」の理念が盛り込まれ、2006年に障害者自立支援法が成立する[4]。また、2000年代以降も、同理念の拡張は進み、障害者以外の社会的弱者全般へと射程を拡げたインクルージョン理論、誰もが平等に受け容れられて参加できるインクルーシブ社会構想へと広がっていく[5][6]

ノーマルの実現

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バンク=ミケルセンの主張の根幹は、「ノーマルな暮らし」の実現と「ノーマルな社会」の実現にある[7]。「ノーマルな暮らし」とは健常者と同様の生活条件、「ノーマルな社会」とは障害者と健常者が平等でいられる社会を指す[7]。障害者の施設での生活待遇の低さを問題視することから出発しているが、バンク=ミケルセン自身は単純な施設解体論者ではなく、障害者が健常者と同様の生活条件を得るためには「特別な配慮」が必要であるとし、施設内・施設の退所後も含めた社会全体での取組を求めた[7]

また、ニィリエが1969年に発表した「ノーマライゼーションの原理とその人間的処遇とのかかわりあい」では、ノーマルな生活リズム、人生においてノーマルな社会経験の機会、ノーマルな経済水準の提供・保障の必要性も示される[3]。これらの理念がノーマライゼーションに向けた施策の基礎となり、たとえば、バンク=ミケルセンが主張した「特別な配慮」は、障害者の権利に関する条約で規定された「積極的差別是正措置」、「合理的配慮」として具体化される[8]。このほか、障害者の権利に関する条約では、健常者と同等の権利を保障するのみならず、その行使ができる環境の保障も重視しており、ユニバーサルデザインの推進を求めている[9]

脚注

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  1. 1 2 鈴木・田中 2019, pp. 28–29.
  2. 1 2 3 鈴木・田中 2019, pp. 29–31.
  3. 1 2 3 4 立花・波田埜 2017, pp. 174–175.
  4. 立花・波田埜 2017, pp. 176–177.
  5. 鈴木・田中 2019, p. 37.
  6. 立花・波田埜 2017, pp. 177–178.
  7. 1 2 3 鈴木・田中 2019, pp. 32–34.
  8. 鈴木・田中 2019, p. 39.
  9. 鈴木・田中 2019, pp. 37–38.

参考文献

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  • 鈴木勉; 田中智子 編『新・現代障害者福祉論』法律文化社、2019年。ISBN 978-4-589-04033-6 
  • 立花直樹; 波田埜英治 編『社会福祉概論 新・はじめて学ぶ社会福祉4』ミネルヴァ書房、2017年。ISBN 978-4-623-08084-7 

関連項目

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