ユニバーサルデザイン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

ユニバーサルデザイン(Universal Design/UD)とは、文化言語国籍や年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のことである。

概説[編集]

世界初のユニバーサルデザインの提唱は、米ノースカロライナ州立大学デザイン学部・デザイン学研究科(College of Design)のロナルド・メイスによるものである。カリフォルニアにあるユニバーサルデザインセンターの長でもあった彼が1985年に公式に提唱した概念[1]とされる。

「できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインにすること」が基本コンセプトである。デザイン対象を障害者に限定していない点が「バリアフリー」とは異なる。これは、バリアフリーが「障害者のための特別扱い」という新たな心理的障壁を生んでいると考えたロナルド・メイス自身の批判的態度が反映されたことによっている。しかしながら、日本国内においては「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」はしばしば混同されており、ロナルド・メイスの思想は必ずしも正しく理解されていない。

ユニバーサルデザインの7原則[編集]

The Center for Universal Design, NC State University による。

  1. どんな人でも公平に使えること。(公平な利用)
    Equitable use
  2. 使う上での柔軟性があること。(利用における柔軟性)
    Flexibility in use
  3. 使い方が簡単で自明であること。(単純で直感的な利用)
    Simple and intuitive
  4. 必要な情報がすぐに分かること。(認知できる情報)
    Perceptible information
  5. うっかりミスを許容できること。(失敗に対する寛大さ)
    Tolerance for error
  6. 身体への過度な負担を必要としないこと。(少ない身体的な努力)
    Low physical effort
  7. アクセスや利用のための十分な大きさと空間が確保されていること。(接近や利用のためのサイズと空間)
    Size and space for approach and use

ユニバーサルデザインの具体例[編集]

  • 車椅子利用者でも、健常者でも、誰もが心地よく、余裕を持って通過することのできる幅の広い改札
  • 障害者向けに計画されたが、多くの人が心地よいと感じたために普及したシャワートイレ。
  • 緩やかな傾斜でデザインされた身体的負担の少ないスロープ。
  • 絵文字(ピクトグラム)による視覚的・直感的な情報伝達。
  • ユーザーが自由に選択できる、多様な入力および出力装置(キーボードマウス、トラックパッド、ジェスチャー、音声など)。
  • 視認性やユーザーの感情に与える効果に配慮した配色計画。
  • マニュアルを熟読することなく、直感的に使用できる製品のデザイン。
  • 頭を洗っているときは目が見えないので、シャンプーのボトルに印をつけ、リンスやその他のボトルと区別する。
  • 読みやすさ、視認性を向上させるため自治体や教育現場でUDフォントの採用が広がりつつある[2][3]

ユニバーサルデザインの市場規模は、2008年現在で3兆3千億円を超えている[4]

2003年4月には静岡県浜松市で日本国内で初めて「ユニバーサルデザイン条例」が施行された。

具体例が掲載された外部リンクとして、以下を挙げる。

日本におけるユニバーサルデザイン[編集]

流行のきっかけとなったグッドデザイン賞[編集]

1997年のグッドデザイン賞(Gマーク)において「ユニバーサルデザイン賞」が設置されたのを契機に、日本国内において流行語化した。

グッドデザイン賞において審査委員長を務めた川崎和男は、「ハートビル法、ノーマライゼーション、バリアフリーなどの呼称は、少数派といわれてきた領域を、デザインの対象にしているようだが、実は、デザインそのものの本質を語り直しただけにすぎない。デザインの本質を浮かび上がらせるという点においては、確かに行政から市場経済に対して、一般的な認識を促すことができた。しかし、流行語となったことで、以降、現在に至るまで、その本質は見失われてしまった。[5]」と日本国内におけるユニバーサルデザインの状況を批判している。

アメリカとユニバーサルデザイン[編集]

アメリカでユニバーサルデザインが誕生した社会的背景として、公民権運動の流れから施行されたADA(アメリカン・ディザビリティーズ・アクト)という法律の存在がある。ロナルド・メイスは、この法律の限界を踏まえたうえで、あらゆる人が快適に暮らすことができるデザインとしてユニバーサルデザインを提唱した。一方、傷痍軍人や障害者といった人々の自立と雇用を促進し、納税者へと変えることによって低コストな社会を実現して国力低下を防ぎたいアメリカの思惑とも合致したことが、アメリカ社会においてユニバーサルデザインが受け入れられていく土壌ともなった。

また、川崎和男は「彼(ロナルド・メイス)による7原則論が基本と考えられているが、それは米国中心の考え方にすぎない。日本では、1989年の世界デザイン会議で、NASAのデザイナーであった、故マイケル・カリルが初めて提唱している。元々は、WHOの国際障害者年(1980年)のための、メイスンのレポート「バリアフリーをめざして」(1970年)で登場した言葉といわれているが、一方では、カリルによる、先進国家特有の消費経済主義に偏った訴訟社会批判の意味を持った言葉であり、メイスンにも影響を与えたと私は考えている。[5]」と、ユニバーサルデザインが生まれた背景について解説している。

ユニバーサルデザインの問題点[編集]

川崎和男は日本におけるユニバーサルデザインの問題点を次のように指摘する。

「日本では、高齢化社会を迎えるにあたって、商業的・行政的に最もふさわしい言葉として重宝されている。「誰もが使いやすいモノやコトのデザイン」という定義が一般化してしまったことは、この言葉の本質を訴求するうえでは、大きな誤用であったと指摘しておきたい。(中略)『誰もが使えるモノ』などあるわけがなく、高齢者や幼児、障害者すべてに対するデザインが、いわゆるユニバーサルデザインそのものの本質において、デザインの理想主義の確信を強調させた意味を持っているだけである。[5]

学校教育とユニバーサルデザイン[編集]

文部科学省は、インクルーシブな教育環境を実現するための手立てとしてユニバーサルデザインの考え方を積極的に取り入れている[6]。読みやすさ、視認性を向上させるため教育現場でUDフォントの採用が広がりつつある[7]

AI(人工知能)など、コンピューターの技術革新によって2030年には約49%の仕事が自動化されるリスクが指摘されている[8]。こういった社会で生き抜くために、資質・能力を着実に育む学校教育への転換が求められている[9]。そのひとつの例として、教師による教師のための「研究授業」から、学習主体である児童・生徒、保護者や地域の人々等と共に考える「授業改善」へと転換を進める学校も現れはじめ、児童・生徒が主役の、言い換えれば「ユーザー中心」の授業のリデザインが進められている(※「社会に開かれた教育課程」「カリキュラム・マネジメント」等の観点に基づく[10])。

ユニバーサルデザインから、ヒューマン・センタード・デザインへ[編集]

川崎和男は、「必要なのは、この流行語を、「ヒューマン・センタード・デザイン」という言葉による再定義によって、その本質をもっと訴求することである。[5]」と述べている。

ユニバーサルデザインとの関連[編集]

理論や手法[編集]

関係する用語[編集]

資格等[編集]

  • ユニバーサルデザインコーディネーター資格

脚注[編集]

関連項目[編集]