マックス・ヴェーバー

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マックス・ヴェーバー
歴史学派
1894年のマックス・ヴェーバー
生誕 1864年4月21日
死没 1920年6月14日
研究分野 経済学を含む社会科学全般
影響を
与えた人物
カール・ヤスパースルカーチ・ジェルジタルコット・パーソンズ
実績 唯物論への反証、社会科学におけるさまざまな方法論の整備
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マックス・ヴェーバー(中央の人物)

マックス・ヴェーバー(Max Weber、1864年4月21日 - 1920年6月14日)は、ドイツ社会学者経済学者である。マックス・ウェーバーと表記されることもある(正式な名前はカール・エミール・マクスィミリアン・ヴェーバー (Karl Emil Maximilian Weber)。マックスはマクスィミリアンの省略形である)。同じく社会学者経済学者アルフレート・ヴェーバーの兄である。

社会学の黎明期のコントやスペンサーに続く、第二世代の社会学者としてエミール・デュルケームゲオルグ・ジンメルなどと並び称される。

略年譜[編集]

臨終の床に伏すヴェーバー

主な業績[編集]

ヴェーバーは、西欧近代の文明を他の文明から区別する根本的な原理は「合理性」であるとし、その発展の系譜を「現世の呪術からの解放(die Entzauberung der Welt)」と捉え、それを比較宗教社会学の手法で明らかにしようとした。そうした研究のスタートが記念碑的な論文である「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1904年-1905年)である。この論文の中で、ヴェーバーは、西洋近代の資本主義を発展させた原動力は、主としてカルヴィニズムにおける宗教倫理から産み出された世俗内禁欲と生活合理化であるとした。この論文は、大きな反響と論争を引き起こすことになったが、特に当時のマルクス主義における、「宗教は上部構造であって、下部構造である経済に規定される」という唯物論への反証としての意義があった。

その後、この比較宗教社会学は、「世界宗教の経済倫理」という形で研究課題として一般化され、古代ユダヤ教ヒンドゥー教仏教儒教道教などの研究へと進んだ。しかし、原始キリスト教カトリックイスラム教へと続き、プロテスタンティズムへ再度戻っていくという壮大な研究計画は、本人がインフルエンザで命を落としたことで未完に終わった。特に、イスラム教については、ほとんど手を付けることはなかった。

妻マリアンネと(1894年)

一連の宗教社会学の論文と並んで、ヴェーバーが行っていたもう一つの大きな研究の流れは、「経済と社会」という論文集としてまとめられている。これは、ヴェーバーが編集主幹となり、後に「社会経済学綱要」と名付けられた社会学経済学の包括的な教科書に対し、1910年から寄稿された論文集である。この論文集も、最終的にはヴェーバー自身の手によって完成することなかった。彼の没後、妻であったマリアンネ・ヴェーバーの手によって編纂・出版されたが、このマリアンネの編纂については、批判が多い。その後、ヨハネス・ヴィンケルマンによる再編纂版も出ているが、本来ヴェーバーが目指していたと思われる、あるべき全体構成については、今なお議論が続いている。この「経済と社会」は、教科書的・体系的な社会学を構築しようとしたのと同時に、宗教社会学における「合理化」のテーマを、比較文明史・経済史的なケーススタディ(Kasuistik、決疑論)の巨大な集積を通じて検証しようとしたものと位置づけられよう。また、「経済と社会」の中の「支配の社会学」における、支配の三類型、すなわち「合法的支配」「伝統的支配」「カリスマ的支配」は有名である。

また、ヴェーバーは、社会学という学問の黎明期にあって、さまざまな方法論の整備にも大きな業績を残した。特に、人間の内面から人間の社会的行為を理解しようとする「理解社会学」の提唱が挙げられる。さらには、純理論的にある類型的なモデルを設定し、現実のものとそれとの差異を比較するという「理念型(Idealtypus)」も挙げられる。[10]また、政治的価値判断を含む、あらゆる価値判断を学問的研究から分離しようとする「価値自由(Wertfreiheit)」の提唱も、大きな論争を引き起こした。

ヴェーバーは、ハイデルベルクでの知的サークルを通じて、年長の法学者ゲオルグ・イェリネック、哲学者ヴィルヘルム・ヴィンデルバント、同世代の神学者エルンスト・トレルチや哲学者ハインリヒ・リッケルト、さらには若年の哲学者カール・ヤスパースや哲学者ルカーチ・ジェルジ(ゲオルク・ルカーチ)らと交わり、彼らに強い影響を与えた。また社会学者タルコット・パーソンズもヴェーバーの著作を通じて強い影響を受けている。タルコット・パーソンズがハイデルベルク留学中に師事した社会学者・経済学者のアルフレート・ヴェーバーは実弟である。

日本においては、丸山眞男大塚久雄をはじめとして、多くの社会学者に強い影響を与えた。ヴェーバーの日本における受容は、日本が太平洋戦争で敗北したのは「合理主義」が欠けていたためであるという問題意識と、社会科学におけるマルクス主義との対置という文脈、という2つの理由が大きかった。

著書[編集]

  • 職業としての学問』(Wissenschaft als Beruf)(講演)
  • 職業としての政治』(Politik als Beruf)(講演)
  • 『宗教社会学論集』(Gesammelte Aufsätze zur Religionssoziologie)
    • プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(Die protestantische Ethik und der 'Geist' des Kapitalismus)
    • 『プロテスタンティズムの諸信団(ゼクテ)と資本主義の精神』(Die protestantische Sekten und der Geist des Kapitalismus)
    • 『世界宗教の経済倫理』(Die Wirtschaftsethik der Weltreligionen)
    • 『序論』(Einleitung)
    • 『儒教と道教』(Konfuzianismus und Taoismus)
    • 『中間考察』(Zwischenbetrachtung)
    • 『ヒンドゥー教と仏教』(Hinduismus und Buddhismus)
    • 『古代ユダヤ教』(Das antike Judentum)
  • 『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』(Die 'Objektivität' sozialwissenschaftlicher und sozialpolitischer Erkenntnis)
  • 『ロッシャーとクニース』(Roscher und Knies)
  • 『アメリカ合衆国における教会とゼクテ』("Kirchen" und "Sekten" in Nordamerika)
  • 『東エルベ・ドイツにおける農業労働者の状態』(Die Verhältnisse der Landarbeiter im ostelbischen Deutschland)
  • 『国民国家と経済政策』(Der Nationalstaat und die Volkswirtschaftspolitik)
  • 『新秩序ドイツの議会と政府』(Parlament und Regierung im neugeordneten Deutschland)
  • 『歴史学の方法』(Kritische Studien auf dem Gebiet der kulturwissenschaftlichen Logik)
  • 『古代社会経済史 古代農業事情』(Agrarverhaltnisse im Altertum)
  • 『理解社会学のカテゴリー』(Über einige Kategorien der verstehenden Soziologie)
  • 『遺稿集 経済と社会』(Wirtschaft und Gesellschaft)(※「経済と社会」は遺稿なので、本来あるべき全体構成については、今なお議論されており確定していない)。
     以下は、邦訳出版された部分訳での題名の一部。
    • 社会学の基礎概念
    • 『経済行為の社会学的基礎範疇』
    • 『支配の諸類型』
    • 『経済と社会集団』
    • 『種族的共同社会関係』
    • 『宗教社会学』
    • 『法社会学』
    • 『権力と支配』
    • 支配の社会学
    • 『都市の類型学』
    • 『国家社会学』
    • 『音楽社会学』

伝記・書簡集[編集]

  • マリアンネ・ウェーバー『マックス・ウェーバー』(大久保和郎 訳、みすず書房、新装版1987年) ISBN 4622019493
  • マリアンネ・ウェーバー『マックス・ウェーバー青年時代の手紙』(阿閉吉男・佐藤自郎 訳(上・下、新訳版)、文化書房博文社、1995年)ISBN 4830107294、 ISBN 4622019493
  • バウムガルテン『マックス・ウェーバー:人と業績』(生松敬三 訳、福村書店、1971年)
  • A・ミッツマン『鉄の檻 マックス・ウェーバー 一つの人間劇』(安藤英治 訳、創文社、1975年) ISBN 4423800152
  • 長部日出雄『二十世紀を見抜いた男 マックス・ヴェーバー物語』(新潮社、2000年/新潮選書、2008年) ISBN 4106036088
  • 今野元『マックス・ヴェーバー ある西欧派ドイツ・ナショナリストの生涯』(東京大学出版会、2007年)ISBN 9784130362306

入門書[編集]

  • 青山秀夫『マックス・ウェーバー』(岩波新書、1951年)
  • 安藤英治編『ウェーバー プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(有斐閣新書、1977年) ISBN 4641087369
  • 折原浩『デュルケームとウェーバー』(三一書房、1981年)
  • 住谷一彦、小林純、山田正範『マックス=ヴェーバー』(清水書院、1987年) ISBN 4389410784
  • 徳永恂、厚東洋編『人間ウェーバー ― 人と政治と学問』(有斐閣、1995年) ISBN 4641058334
  • 山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』(岩波新書、1997年) ISBN 4004305039
  • 安藤英治『マックス・ウェーバー』(講談社学術文庫、2003年) ISBN 4061595873
  • 折原浩『ヴェーバー学の未来 「倫理」論文の読解から歴史・社会科学の方法会得へ』(未來社、2005年) ISBN 4624400577
  • 牧野雅彦『マックス・ウェーバー入門』(平凡社、2006年) ISBN 4582853102
  • 羽入辰郎『マックス・ヴェーバーの犯罪』(ミネルヴァ書房、2002年)

関連書籍[編集]

  • タルコット・パーソンズ(稲上毅・厚東洋輔訳)『社会的行為の構造』(木鐸社、1976年、原著初版1937年)
  • 金子栄一『マックス・ウェーバー研究―比較研究としての社会学』(創文社、1957年)
  • カール・レーヴィット(柴田治三郎他訳)『ウェーバーとマルクス』(未來社、1966年)
  • レイモン・アロン(北川隆吉他訳)『社会学的思考の流れ 2巻』(法政大学出版局、1984年) ISBN 4588000535
  • Hartmut Lehmann, Guenther Roth eds., Weber's Protestant Ethic: origins, evidence, contexts(Cambridge University Press、1987).ISBN 0521558298
  • R・ベンディクス(折原浩訳)『マックス・ウェーバー――その学問の包括的一肖像(上・下)』(三一書房、1987年-1988年) ISBN 4380872122
  • 折原浩『マックス・ウェーバー基礎研究序説』(未來社、1988年) ISBN 4624400305
  • W・J・モムゼン(安世舟五十嵐一郎田中浩訳)『マックス・ヴェーバーとドイツ政治 1890-1920』1(未來社、1993年) ISBN 4624300785
  • W・J・モムゼン(安世舟、五十嵐一郎、小林純、牧野雅彦訳)『マックス・ヴェーバーとドイツ政治 1890-1920』2(未來社、1994年) ISBN 4624300793
  • 牧野雅彦『ウェーバーの政治理論』(日本評論社、1993年)ISBN 4535580979
  • 佐野誠『ヴェーバーとナチズムの間』(名古屋大学出版会、1993年)ISBN 4815802114
  • W・J・モムゼン(中村貞二他訳)『マックス・ヴェーバー――社会・政治・歴史』(未來社、1994年)
  • W・J・モムゼン、J・オースターハメル、W・シュベントカー編(鈴木広・米沢和彦・嘉目克彦監訳)『マックス・ヴェーバーとその同時代人群像』(ミネルヴァ書房、1994年) ISBN 4623023915
  • F・H・テンブルック(住谷一彦小林純山田正範訳)『マックス・ヴェーバーの業績』(未來社、1997年) ISBN 4624011376
  • ヴォルフガング・シュルフター,折原浩(鈴木宗徳・山口宏訳)『『経済と社会』再構成論の新展開――ヴェーバー研究の非神話化と『全集』版のゆくえ』(未來社、2000年) ISBN 4624400518
  • 橋本努橋本直人矢野善郎編『マックス・ヴェーバーの新世紀――変容する日本社会と認識の転回』(未來社、2000年) ISBN 462440050X
  • フリードリッヒ・ヴィルヘルム・グラーフ編著『ヴェーバー・トレルチ・イェリネック――ハイデルベルクにおけるアングロサクソン研究の伝統』(フリードリッヒ・ヴィルヘルム・グラーフ他、聖学院大学出版会、2001年)ISBN 4915832457
  • 犬飼裕一『マックス・ウェーバーにおける歴史科学の展開』(ミネルヴァ書房、2007年)ISBN 978-4623048915
  • 雀部幸隆『公共善の政治学――ウェーバー政治思想の原理論的再構成』(未來社、2007年)ISBN 4624301056
  • 佐野誠『ヴェーバーとリベラリズム――自由の精神と国家の形』(勁草書房、2007年)ISBN 9784326351404
  • 橋本努矢野善郎編『日本マックス・ウェーバー論争――プロ倫読解の現在』(ナカニシヤ出版、2008年)ISBN 9784779502736
  • W.=シュルフター(佐野誠林隆也訳)『マックス・ヴェーバーの研究戦略――マルクスとパーソンズの間』(風行社、2009年)ISBN 9784862580252

脚注[編集]

  1. ^ エアフルトは、宗教改革者マルティン・ルターが大学生活を送り、卒業後、アウグスティヌス会の修道院に入って、真摯な修道生活を送ったところ。町中の至る所に大小さまざまな尖塔がある。中心の丘の上に、この町を象徴する大聖堂が聳え立っていて、宗教的な雰囲気を醸し出している。また、東独に属していたので、ソ連の宇宙飛行士の名を取ってユリ・ガガーリン環状路10・12番がヴェーバーの生まれた家跡の番地である。生家跡であることを示す金属製の案内板が取り付けられていて、マックスと弟アルフレットの名前が浮き彫りにされている。(長部日出雄著 『マックス・ヴェーバー物語 -二十世紀を見抜いた男- 』 新潮社 《新潮選書》 2008年 30-31ページ)
  2. ^ a b c 長部日出雄著 『マックス・ヴェーバー物語 -二十世紀を見抜いた男- 』 新潮社 《新潮選書》 2008年 30ページ
  3. ^ 長部日出雄著 『マックス・ヴェーバー物語 -二十世紀を見抜いた男- 』 新潮社 《新潮選書》 2008年 39ページ
  4. ^ 学制仲間と祝杯挙げる、浮かれ騒ぐ、そのうちに(みぞれ)の道に滑って足の骨を折って入院などで、結局大学の講義を大して聞かないままハイデルブルクを去り、家帰ると母親ヘレーネにいきなり平手打ちを食うような状態であった。(長部日出雄著 『マックス・ヴェーバー物語 -二十世紀を見抜いた男- 』 新潮社 《新潮選書》 2008年 68-70ページ
  5. ^ アルザス地方の中心都市でフランス名ストラスブール、アルホンス・ドーテの短編『最後の授業』で有名
  6. ^ プロイセンで高級官僚になるための道程としては大学生活の内一年間の兵役を済ませておかねばならなかった。そこでこれまで経験したことのないような屈辱と辛酸を味わった。しかし、身体は疲労困憊していても、頭脳は疲れていないので目が冴えハイネツルゲーネフを読んだ。この一年志願兵の衛兵勤務ははなはだ金のかかるものだった。送金依頼の手紙二は軍隊生活の実態をときにはユーモアを交えて書き、シュトラスブルクの親戚の様子も報告する長文の手紙を書いた。(長部日出雄著 『マックス・ヴェーバー物語 -二十世紀を見抜いた男- 』 新潮社 《新潮選書》 2008年 76、80・82ページ)
  7. ^ 長部日出雄著 『マックス・ヴェーバー物語 -二十世紀を見抜いた男- 』 新潮社 《新潮選書》 2008年 90ページ
  8. ^ a b 長部日出雄著 『マックス・ヴェーバー物語 -二十世紀を見抜いた男- 』 新潮社 《新潮選書》 2008年 22ページ
  9. ^ a b 長部日出雄著 『マックス・ヴェーバー物語 -二十世紀を見抜いた男- 』 新潮社 《新潮選書》 2008年 23ページ
  10. ^ 面白いほどよくわかる現代思想のすべて34頁

関連項目[編集]

関連人物[編集]