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死球

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死球(しきゅう)とは、野球において投手の投げたボール打者の身体に当たって一塁が与えられることである。デッドボール和製英語:dead ball)とも言う。英語ではhit by pitch(投球(pitch)が当たる(hit))と言う。日本語の「死球」及び「デッドボール」は、投球が打者に当たった結果ボールデッド(プレイが中断されること)が宣告されることを、「投球が打者に当たることをボールデッドという」と誤解したことに由来する、と言われる。

以下、本項を読む際には「デッドボール(死球)」と「ボールデッド(プレイ中断)」を混同しないよう注意。

死球を受ける打者、藤井淳志
死球を受ける打者、ジョー・クリーディ

概説

投手の投球が打者に触れた場合は、直ちにボールデッド(プレイ中断)となる(公認野球規則5.09(a))。球審はボールデッドのジェスチャー(両手を上方に広げる、ファウルボールと同じジェスチャー)をしてプレイを停止する。ここで「投球が打者に触れる」とは、直接身体に当たっていなくても、適正に着用していれば打者のユニフォームをかすった場合も含まれる。また、バウンドした投球が打者に触れた場合も含まれる。四球と同様に死球では打者には一塁が与えられる為誤解しやすいが、死球による出塁は四球とは異なり、投球が打者に触れた時点でボールデッド(プレイ中断)となる為、走者が盗塁したり暴投を利して進塁を試みたりすることは認められない

球審は、投手の投球が打者に触れ、後述のいずれかに該当しない場合と判断した場合には、これを死球と認めることになる。球審が死球と認め、打者に一塁を与える場合は、ボールデッドのジェスチャーとともに「デッドボール(日本のみ)」、あるいは「ヒットバイピッチ」と宣告し、打者に一塁へ進むよう、左手で一塁方向を指し示す。これにより打者は一塁への安全進塁権を得る。また、打者が一塁に進んだことで押し出される走者に限り、次の塁へ進む権利を得る(満塁の場合、三塁走者は本塁へ進む。いわゆる「押し出し」)。

以下の場合は、投球が打者の身体に当たっていても死球とならない(公認野球規則6.08(b))。ただし、ボールデッドにはなる。

  • 投球がストライクゾーンを通過している場合。ストライクが宣告される。
  • 打者がバットを振っている(バントも含まれる)場合。ストライクが宣告される。
  • 打者が故意にボールに当たった場合。ボールが宣告される。
  • 打者が避けようとせずにボールに当たった場合。ボールが宣告される。ただし、球審が避けられないと判断した場合は除く。

死球は怪我の元となるもので、特に硬式球でプレイする場合は、に当たって骨折するなどの例も多く、頭部に当たった場合には意識不明となることもあり、極めて稀であるが死亡例もある。このため、打者にはヘルメットの着用が義務付けられており、また日本のプロ野球では危険球の規定がある(次節を参照)。また、多くの試合をこなすプロ野球では、死球によるダメージを減らすための避け方をコーチに指導されることがある。死球その他の理由で打者が怪我をし、その治療のためプレイができなくなった場合、公認野球規則に基づくならば代走がこの打者に代わって出場し、打者は退くこととなるが、リーグや大会によっては臨時代走が認められる場合があり、これは各大会規定等に基づく(日本の高校野球では臨時代走の規定が設けられている)。

危険球

打者にぶつけることを狙って投球したり、ぶつけないまでも威嚇目的で打者に対して投球したり、味方打者が死球を蒙った事に対する報復をしたりするなど、危険性の高い投球を「危険球」という。なお「野球の不文律」を破ると、報復として「意図的な死球」が与えられることがある。アメリカでは胸元等のきわどいインコースをついた投球を「ブラッシュバック・ボール(brush-back ball)」、頭部を狙った投球を「ビーンボール(beanball)」と呼んでいる(beanは古い英語の俗語で、頭を指す)。日本ではこれらを総称して、打者を狙った投球を一般にビーンボールと呼んでいる。

危険球の投球は公認野球規則8.02(d)で厳しく禁止されており、“これを投球した投手およびそのチームの監督には、審判員により退場を宣告もしくは同様の行為をもう一度行った場合は即刻退場させる旨の警告が発せられる”と定められている。

日本プロ野球では、頭部あるいは顔面への死球もしくはそれに準ずる投球がなされた場合には「投手の投球が打者の顔面 、頭部、ヘルメット等に直接当たり、また、頭部や顔面に当たらずとも意図的に打者を狙って投球した場合、その投手は審判員に危険球による退場処分が宣告され、試合から除かれる。審判員が避けられないと判断したとき(すっぽ抜けたゆるい変化球など)は、警告を発し、その後どの投手であろうと再び投球が頭部に当ったときは退場とする。危険球とは、打者の選手生命に影響を与える、と審判員が判断したものをいう。」 という形のアグリーメント(公認野球規則には書かないが合意された特別ルール)が規定されている。退場の記録はその試合が雨などでノーゲームになっても残る。

危険球制度が導入されたきっかけは、1994年5月11日ヤクルト巨人戦で発生した死球合戦と乱闘騒ぎから。事態を重く見たセントラル・リーグは緊急理事会を開き、さしあたって「故意・過失を問わず頭部に死球を与えた投手は退場」というアグリーメントを新規に規定した(最初の適用者は中日ドラゴンズ郭源治投手)。一方この件を受けたパシフィック・リーグでは、危険球の認定について審判が今まで以上に厳しい運用をするという見解にとどめた。このアグリーメントはその後も適用され続けた。

かようにセントラル・リーグとパシフィック・リーグでは危険球のペナルティに差違が見られていたが、2002年に上記のルールに統一された。最初の危険球で警告となるか即退場となるかは球審の裁量に委ねられる(この規則適用による退場の第1号は読売ジャイアンツ三浦貴投手で、広島東洋カープ緒方孝市選手の頭部に当てて退場。ちなみに、第2号は三浦の高校の先輩である横浜ベイスターズ木塚敦志投手で、当てた打者は同じく緒方である)。しかし、従来から一度でも危険球を投げた場合は即退場としていたセントラル・リーグでは現在でも即退場となる場合が多く、対照的に警告後退場のルールを運用していたパシフィック・リーグでは即退場処分が少ない傾向にある(パシフィック・リーグでの現行規則適用による退場の第1号は2003年吉武真太郎投手で、金子誠選手の左肩に当てて退場となった。セントラル・リーグではこの時既に三浦、木塚、東和政投手が危険球による退場宣告を受けている)。

2005年5月13・14日に行われたセ・パ交流戦西武巨人」(インボイスSEIBUドーム)の試合では、両日2戦合わせて6個の死球が出たことから、審判団が15日の第3回戦を「パ・リーグ アグリーメント」に基づいて「警告試合」とし、この試合で死球を与えた投手は即刻退場、また意図的にぶつけたなど悪質な場合はそのチームの監督も退場にするという警告を両チームに発した。

なお、2009年シーズン終了時点で、危険球による退場の最多記録は桑田真澄投手と浅尾拓也投手の3度である。桑田は1995年、1999年、2005年に1度ずつ記録したものに対し、浅尾は全て2008年の記録である。

プロ初登板で危険球退場になったのは、2005年9月1日小林正人投手(中日ドラゴンズ)、2010年4月18日矢地健人(中日ドラゴンズ)である。また1球で危険球退場になったのは、2009年4月30日岩瀬仁紀投手(中日ドラゴンズ)、2010年9月16日甲藤啓介投手(福岡ソフトバンクホークス)、2011年4月24日松井光介投手(東京ヤクルトスワローズ)である。

高校野球全国大会では、選抜・選手権のいずれもほとんど危険球による退場者は出ていないが、故意に打者にぶつけたり、打者を狙って投球した場合は球審によって退場処分が宣告される。

与死球

与死球(よしきゅう)は、投手が打者に死球を与えることで、投手に付けられる記録である。

上記の要領で打者に死球が記録されると同時に、投手には与死球が記録される。対戦打者の死球と対戦投手の与死球は必ず同数になる。

その他

死球数に関する記録

日本プロ野球

記録はいずれも2011年シーズン終了時点

通算記録

順位 選手名 死球 順位 選手名 死球
1 清原和博 196 11 城島健司 113
2 竹之内雅史 166 12 古田敦也 110
3 衣笠祥雄 161 13 グレッグ・ラロッカ 109
4 井上弘昭 137 14 井口資仁 108
5 稲葉篤紀 130 15 田宮謙次郎 104
6 田淵幸一 128 谷繁元信
7 野村克也 122 17 中島裕之 99
8 加藤俊夫 116 18 栗橋茂 96
9 松中信彦 115 19 土井正博 95
10 王貞治 114 高橋由伸
阿部慎之助

(備考)城島健司はNPBとMLBの通算で150死球、井口資仁は同120死球、イチローは同106死球を記録している。

シーズン記録

順位 選手名 所属球団 死球 記録年
1 グレッグ・ラロッカ オリックス・バファローズ 28 2007年
2 岩本義行 大洋ホエールズ 24 1952年
3 グレッグ・ラロッカ 広島東洋カープ 23 2004年
アーロン・ガイエル 東京ヤクルトスワローズ 2007年
5 城島健司 福岡ダイエーホークス 22 2004年
渡辺直人 東北楽天ゴールデンイーグルス 2008年
7 グレッグ・ラロッカ 東京ヤクルトスワローズ 20 2006年
8 三村敏之 広島東洋カープ 19 1972年
フリオ・ズレータ 福岡ダイエーホークス 2004年
飯原誉士 東京ヤクルトスワローズ 2010年
糸井嘉男 北海道日本ハムファイターズ 2011年
アーロム・バルディリス オリックス・バファローズ 2011年

その他の記録

チーム1試合記録
チーム 死球数 記録年月日 対戦相手 球場
日本ハムファイターズ 7 1979年5月12日 ロッテオリオンズ 後楽園球場
個人1試合記録
選手名 所属球団 死球数 記録年月日 対戦相手 球場
竹之内雅史 西鉄ライオンズ 3 1970年5月24日 阪急ブレーブス 小倉球場
関本賢太郎 阪神タイガース 2008年9月10日 ヤクルトスワローズ 阪神甲子園球場
1イニング同一選手への死球
選手名 所属球団 死球数 記録年月日 対戦相手 球場 イニング
衣笠祥雄 広島 2 1976年8月31日 中日 ナゴヤ球場 3回
アーロン・ガイエル ヤクルト 2007年8月1日 阪神 甲子園 5回
平野恵一 阪神 2010年8月25日 広島 京セラドーム大阪 7回

メジャーリーグベースボール

通算記録

順位 選手名 死球 順位 選手名 死球
1 ヒューイー・ジェニングス 287 11 アンドレス・ガララーガ 178
2 クレイグ・ビジオ 285 12 カート・ウェルチ 173
3 トミー・タッカー 272 ジェイソン・ジアンビ
4 ドン・ベイラー 267 13 カルロス・デルガド 172
5 ジェイソン・ケンドール 254 15 キッド・エルバーフェルト 165
6 ロン・ハント 243 16 デレク・ジーター 158
7 ダン・マッギャン 230 17 フェルナンド・ビーニャ 157
8 フランク・ロビンソン 198 アレックス・ロドリゲス
9 ミニー・ミノーソ 192 19 ブラディ・アンダーソン 154
10 ジェイク・ベックリー 183 フレッド・クラーク
  • 記録は2011年シーズン終了時点[1]

シーズン記録

順位 選手名 所属球団 死球 記録年
1 ヒューイー・ジェニングス ボルチモア・オリオールズ 51 1896年
2 ロン・ハント モントリオール・エクスポズ 50 1971年
3 ヒューイー・ジェニングス ボルチモア・オリオールズ 46 1897年
ヒューイー・ジェニングス ボルチモア・オリオールズ 1898年
5 ダン・マッギャン ボルチモア・オリオールズ 39 1898年
6 ダン・マッギャン スーパーバスセネタース 37 1899年
7 カート・ウェルチ ボルチモア・オリオールズ 36 1891年
8 ドン・ベイラー ボストン・レッドソックス 35 1986年
9 カート・ウェルチ アスレチックス→オリオールズ 34 1890年
クレイグ・ビジオ ヒューストン・アストロズ 1997年
  • 記録は2011年シーズン終了時点[2]

与死球数に関する記録

日本プロ野球

記録はいずれも2011年シーズン終了時点

通算記録

順位 選手名 与死球 順位 選手名 与死球
1 東尾修 165 11 村上雅則 113
2 渡辺秀武 144 12 小林繁 111
3 米田哲也 143 13 高橋一三 110
坂井勝二 14 小山正明 109
5 仁科時成 142 15 今井雄太郎 102
6 山田久志 135 16 若生忠男 100
7 足立光宏 130 17 野村収 99
8 村田兆治 124 北別府学
9 佐々木宏一郎 122 19 高橋重行 98
10 平松政次 120 20 江本孟紀 97

シーズン記録

順位 選手名 所属球団 与死球 記録年
1 森安敏明 東映フライヤーズ 22 1968年
2 ジェレミー・パウエル 大阪近鉄バファローズ 21 2002年
3 河原明 西鉄ライオンズ 20 1970年
村上雅則 南海ホークス 1972年
小林繁 阪神タイガース 1980年
6 秋山登 大洋ホエールズ 19 1956年
渋谷幸春 中日ドラゴンズ 1971年
河原明 西鉄ライオンズ 1972年
仁科時成 ロッテオリオンズ 1979年
10 河原明 西鉄ライオンズ 18 1971年
高橋一三 日本ハムファイターズ 1976年
仁科時成 ロッテオリオンズ 1980年
仁科時成 ロッテオリオンズ 1981年
深沢恵雄 ロッテオリオンズ 1982年
ブライアン・バリントン 広島東洋カープ 2011年

1試合記録

選手名 所属球団 与死球数 記録年月日 対戦相手
村上雅則 南海ホークス 5 1972年8月29日 西鉄ライオンズ

メジャーリーグベースボール

通算記録

順位 選手名 与死球 順位 選手名 与死球
1 ガス・ウェイング 277 11 クラーク・グリフィス 171
2 チック・フレーザー 219 12 サイ・ヤング 163
3 ピンク・ホーリー 210 13 ジム・バニング 160
4 ウォルター・ジョンソン 205 14 ロジャー・クレメンス 159
5 エディ・プランク 190 15 ノーラン・ライアン 158
ランディ・ジョンソン 16 ビック・ウィリス 157
7 ティム・ウェイクフィールド 186 17 バート・ブライレブン 155
8 トニー・マレーン 185 18 ドン・ドライスデール 154
9 ジョー・マクギニティ 179 19 アドニス・テリー 148
10 チャーリー・ハフ 174 バート・カンニンガム
  • 記録は2011年シーズン終了時点[3]

シーズン記録

順位 選手名 所属球団 与死球 記録年
1 フィル・ネル コロンバス・ソロンズ 54 1891年
2 フランク・フォアマン ワシントン・ステイツメン 43 1891年
3 ガス・ウェイング フィラデルフィア・アスレチックス 42 1888年
4 フランク・フォアマン ボルチモア・オリオールズ 40 1889年
ジョー・マクギニティ ブルックリン・スーパーバス 1900年
6 ダニー・フレンド シカゴ・コルツ 39 1896年
7 ガス・ウェイング フィラデルフィア・アスレチックス 37 1887年
エド・ヘイニー ニューヨーク・ジャイアンツ 1899年
9 ウィル・ホワイト シンシナティ・レッドストッキングス 35 1884年
10 ガス・ウェイング フィラデルフィア・アスレチックス 34 1889年
  • 記録は2011年シーズン終了時点[4]

脚注

  1. ^ Career Leaders & Records for Hit By Pitch” (英語). Baseball-Reference.com. 2012年4月28日閲覧。
  2. ^ Single-Season Leaders & Records for Hit By Pitch” (英語). Baseball-Reference.com. 2012年4月28日閲覧。
  3. ^ Career Leaders & Records for Hit By Pitch” (英語). Baseball-Reference.com. 2012年4月28日閲覧。
  4. ^ Single-Season Leaders & Records for Hit By Pitch” (英語). Baseball-Reference.com. 2012年4月28日閲覧。

関連項目