盗塁

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盗塁(とうるい)は、野球における攻撃側の進塁方法の一つ。読んで字の如く塁を盗む為、盗みを表す英語に由来してスチール(steal)とも言う。野球記録における英略記は、"stolen base"の頭文字SBを使う。

目次

[編集] 概説・規定

塁上にいる走者は、打者打撃によらずに、次の塁への進塁を狙うことができる。走者が、安打失策ボーク野手選択犠牲バント内野ゴロなどでの他の走者の刺殺によらずに1個の塁を進むことができたとき、その走者に盗塁が1記録される。失敗した場合は、盗塁刺、盗塁死(とうるいし:caught stealing、英略記"CS")が1記録される。盗塁に関する駆け引きは野球の醍醐味のひとつであるが、高齢者同士による試合や障害者野球では禁止されている。

投手の投球が暴投捕逸になった場合、この投球が打者に達するより先に走者が次の塁に向かってスタートしていれば、盗塁とみなされる。盗塁を試みた際、送球がそれるなどで容易に1つの塁が奪えたときは、その送球を失策とせず、1盗塁を記録するが、この悪送球などで2つ以上の塁を奪えた場合は、1個の盗塁と失策による進塁が記録される。

二人以上の走者が同時に盗塁を試みることはできるが、うち一人の走者がアウトになった場合、他の走者には盗塁ではなく野手選択による進塁が記録される。

走者が盗塁を試みた際、打席に立つ打者がファウル、もしくはインプレーの打球を打った場合、盗塁は成立しない。飛球の場合は、走者の次塁への到達如何に関わらず野手が飛球を正規に捕球した時点で走者に帰塁義務が生じる(タッチアップの項を参照)。逆に盗塁によって得点した場合には、打点は誰にもつかず、走者の得点のみが記録される。

二塁から一塁への盗塁や三塁から二塁への盗塁といった逆走盗塁は禁止されている。アメリカで1920年に禁止が明文化されたが、それ以前は認められていた。メジャーリーグでは1902年ハリー・デービス1908年フレッド・テニー1911年ジャーマニー・シェーファーらが逆走盗塁の記録を残している。[1]

打者走者が1塁に出塁後、走者としてそのまま二盗、三盗、本盗と3つの盗塁を行ない得点を挙げることをサイクルスチール、パーフェクトスチール、ベーススチール・スウィーピングなどと言う。この際に記録される個人1イニング3盗塁は、甲子園の高校野球や日米のプロ野球では最高記録でありプロ野球では16選手が記録しているが、高校野球地方大会では1イニング4盗塁の記録も存在する。

メジャーリーグでは、試合中大量点差がついている局面などで、リードしている側のチームの盗塁をタブー視する見方がある(メジャーリーグの不文律参照、ルール上は問題無し)。また、"Official Baseball Rules" や、それを基にした公認野球規則では盗塁を試みても、守備側がそれを封じようとする動作を見せない場合に、『守備側の無関心 (defensive indifference)』として盗塁を記録せず、代わりに野手選択を記録することが定められている。

これまで日本のNPBのみこの規定を適用せず、守備側が無関心であった場合の進塁についても盗塁を記録していた。しかし2008年1月10日に行われたプロ・アマ合同規則委員会において2008年シーズンよりこの野球規則10.07(g)に「原注」をつけて無関心とみなす詳細な条件を加え、同規則を厳格に適用することを決定してこのような進塁を盗塁として記録しないことになり、1月28日に野球規則の改正が正式に発表された[2]。ただし、「無関心」なのか「投げても無理と判断」したのかの線引きは難しく、一律に動作や点差のみで適用することはできない。2008年4月2日の楽天ロッテ戦9回表、4点ビハインドの1死1塁2ストライクの場面でロッテの竹原直隆は盗塁を成功させたが、楽天の捕手嶋基宏は送球をしなかった。そのため、竹原の進塁は野手選択とみなされ盗塁と記録されなかった。これが、同改正適応第一号になった[3]

[編集] 技術・戦術

最も基本的な盗塁の方法は、投手が投球動作に入る前に、牽制球に対し安全に帰塁できる程度の距離だけ離塁し、投球動作を始めた瞬間に次の塁へ走り始めることである。対して投手は、走者の離塁を牽制するため、投球動作に入る前であれば、塁に牽制球を投げることができる。投球しなければならないモーションの段階で牽制球を投げた場合はボークと判定され、走者に安全進塁権が与えられる。

この他、守備側の牽制や送球の隙を衝いて盗塁を試みることもでき、これをディレイドスチールという。

二塁への盗塁を二盗、三塁への盗塁を三盗、本塁への盗塁を本盗ホームスチール)と言う。また、走者が一・二塁、一・三塁、二・三塁のいずれかにいる状況でこの2走者、あるいは満塁の状況で二塁、三塁の2走者が同時に盗塁することを重盗ダブルスチール)、満塁の状況で3走者が同時に盗塁することを三重盗トリプルスチール)と言う。重盗、三重盗の場合はすべての走者が安全に進塁した場合に限り、全員に盗塁が記録される。

[編集] 二盗

二盗が最も仕掛けられやすいのは、走者一三塁の場合の一塁走者である。捕手は二塁に無理な送球を行ってそれたりすると三塁走者が本塁に行ってしまうため、2塁送球を行わず盗塁を許すことも多く、きわめて盗塁成功率が高い。また、盗塁で1塁走者が2塁へ進むことにより、次打者での併殺のリスクの軽減。2点得点の可能性増大など攻撃側のメリットも大きい。

また比較的仕掛けるケースの多いのは、二死一塁の場合である。これは、無死や一死なら送りバントという別の手段の方が用いられやすいこともあるが、通常二死一塁から打撃のみで得点を狙う場合は単打2本か長打1本が必要であり、それよりは盗塁死の危険があっても盗塁+単打の実現可能性の方が高いということが理由として挙げられる。よく誤解されるが、1点差で負けている最終回に二盗失敗でゲームセット、という場面は決して無謀な作戦であったとは言えない。

[編集] 三盗

三盗が最も仕掛けられやすいのは、一死二塁の場合で、特に右打者の打席の場合である。もともと三盗は、右打者の場合は捕手の送球がしにくいとはいえ、捕手から三塁までの送球の距離が短く、リスクの高い作戦である(一方牽制を受ける二塁手・遊撃手は二塁から離れており、投手は二塁牽制時に体を大きく捻る必要があり、また一塁牽制ほど二塁牽制に長けている投手が少ないためにリードを大きくとりやすく、更に前述のリスクや企図の少なさによる守備側の油断のために二盗よりも成功しやすいという意見もある)。

また、二塁に走者がいれば安打1本でホームインできる可能性も充分考えられるので、リスクを考慮して無死や二死ではあまり用いられない(ただし、三塁に進むと相手にとって暴投捕逸ボークで点を取られるという可能性があるためにプレッシャーをかけることはできる)。それに対して、一死の場合は一死三塁となればスクイズや犠牲フライ、あるいは内野ゴロで1点を取ることができるようになるため、走者が三塁に進むメリットが大きい。

[編集] 本盗

単独での本盗が最も仕掛けられやすいのは、二死三塁の場合である。本盗はどうしても1点が欲しいが、打者に期待ができないような場合の作戦であり、バッテリーがこれに対して一定以上の警戒を払っていれば確実に失敗する作戦である。そのため、無死や一死の場合はより成功率の高いスクイズが通常用いられ、本盗は稀である。ただし、空振りによるスクイズ失敗の際、結果的に本盗を記録することはたまに見られる。

従来は、二死で三塁走者のみの場合は他の塁の走者と異なって盗塁の危険がほとんど無いため、投手がセットポジションではなくワインドアップポジションで投げることが多く、そのため大きなモーションの隙を突いた本盗が多く行われた。現在では捕手から投手への返球の隙に走り出す本盗が多く見られる。

なお、記録上最も多いタイプの本盗は、走者一塁三塁の状況からの重盗としてのものである。この多くはもともと重盗を企図したものではなく、一塁走者の単独盗塁に対しての送球の間に隙を見て三塁走者が走ったケースである。記録上重盗とするか失策とするかは微妙なケースも多い。

[編集] その他

自動スタートを切る走者
自動スタートを切る走者

二死でボールカウントが2ストライク3ボールになった場合、フォースの状態にある走者は打者の対応に関わらず投球と同時に次の塁に進塁を試みる。これは盗塁は決して成立しないが、投手対打者の対戦結果がストライクならば三振で攻守交代、四球死球ならそのまま進塁、打った場合はファウルボールでも安全に元の塁に戻ることができ、飛球が上がってこれが捕球されても三死で攻守交替なのでリタッチの義務が発生することもないため、打者が打った場合に少しでも次の塁に近づけるようにするメリットをノーリスクで得ることができるからである。この状態を実況では自動スタートオートマチックスタートなどと呼称する事がある。

また、走者の盗塁を成功させるために、打者が捕手の送球を邪魔することを目的とし、わざと大きな空振りやバントの構えをすることがある。これを、バッターアシストというが、審判員が「明白な故意」による行為であると判断すれば守備妨害となる。

[編集] 日本プロ野球

[編集] 最多盗塁

最多盗塁(さいたとうるい)は、プロ野球タイトルの一つ。盗塁王(とうるいおう)ともいう。1シーズンに記録した盗塁数が最も多い選手に与えられる。

[編集] 盗塁に関する記録

[編集] 通算記録

記録は2007年シーズン終了時点

順位 名前 盗塁 順位 名前 盗塁
1 福本豊 1065 11 高木守道 369
2 広瀬叔功 596 12 西村徳文 363
3 柴田勲 579 13 *石井琢朗 354
4 木塚忠助 479 14 島田誠 352
5 高橋慶彦 477 15 吉田義男 350
6 金山次郎 456 16 中登志雄 347
7 大石大二郎 415 17 坪内道典 344
8 飯田徳治 390 18 松本匡史 342
9 呉昌征 381 19 屋鋪要 327
10 古川清蔵 370 20 高木豊 321

*は現役選手

[編集] シーズン成功数記録

順位 名前 所属 盗塁 達成年
1 福本豊 阪急ブレーブス 106 1972
2 福本豊 阪急ブレーブス 95 1973
3 福本豊 阪急ブレーブス 94 1974
4 河野旭輝 阪急ブレーブス 85 1956
5 木塚忠助 南海ホークス 78 1950
6 松本匡史 読売ジャイアンツ 76 1983
7 福本豊 阪急ブレーブス 75 1970
8 金山次郎 松竹ロビンス 74 1950
9 高橋慶彦 広島東洋カープ 73 1985
10 広瀬叔功 南海ホークス 72 1964


[編集] シーズン成功率記録(30盗塁以上)

順位 名前 所属 成功率 盗塁 盗塁刺 達成年
1 広瀬叔功 南海ホークス .957 44 2 1968
2 大下剛史 東映フライヤーズ .943 33 2 1971
3 田宮謙次郎 阪神タイガース .938 30 2 1954
4 イチロー オリックス・ブルーウェーブ .921 35 3 1996
5 森本稀哲 北海道日本ハムファイターズ .912 31 3 2007
6 谷佳知 オリックス・ブルーウェーブ .911 41 4 2002
7 木塚忠助 南海ホークス .907 78 8 1950
8 イチロー オリックス・ブルーウェーブ .907 39 4 1997
9 簑田浩二 阪急ブレーブス .8974 35 4 1983
10 宮崎剛 大洋ホエールズ .8970 61 7 1950

※シーズン成功率100%では松井稼頭央(2001年)の26盗塁が最多、セリーグ記録は仁志敏久(2002年)の22盗塁。

[編集] 歴代盗塁王

最多盗塁 (日本プロ野球)を参照。

[編集] アメリカメジャーリーグ

アメリカメジャーリーグでは、現在と同じ盗塁規則は1898年に制定された。また1885年以前の盗塁数は現在判明していない。

[編集] 通算記録

記録は2007年終了時点[4]。*は現役選手。

順位 名前 盗塁 順位 名前 盗塁
1 リッキー・ヘンダーソン 1406 11 ジョー・モーガン 689
2 ルー・ブロック 938 12 ウィリー・ウィルソン 668
3 ビリー・ハミルトン 912 13 トム・ブラウン 657
4 タイ・カッブ 892 14 バート・キャンパネリス 649
5 ティム・レインズ 808 15 *ケニー・ロフトン 622
6 ビンス・コールマン 752 16 オティス・ニクソン 620
7 エディ・コリンズ 744 17 ジョージ・デイヴィス 616
8 アーリー・レイサム 739 18 ダミー・ホイ 594
9 マックス・キャリー 738 19 モーリー・ウィルス 586
10 ホーナス・ワグナー 722 20 ジョージ・ファン・アルトレン 583
19世紀の記録

※記録は1886年以降の判明分のみ。

[編集] シーズン記録

順位 名前 所属 盗塁 達成年
1 リッキー・ヘンダーソン オークランド・アスレチックス 130 1982
2 ルー・ブロック セントルイス・カージナルス 118 1974
3 モンテ・ウォード ニューヨーク・ジャイアンツ 111 1887
ビリー・ハミルトン フィラデルフィア・フィリーズ 111 1891
ビリー・ハミルトン カンザスシティ・カウボーイズ 111 1889
6 ビンス・コールマン セントルイス・カージナルス 110 1985
7 ビンス・コールマン セントルイス・カージナルス 109 1987
8 リッキー・ヘンダーソン オークランド・アスレチックス 108 1983
9 ビンス・コールマン セントルイス・カージナルス 107 1986
10 モーリー・ウィルス ロサンゼルス・ドジャース 104 1962
11 リッキー・ヘンダーソン オークランド・アスレチックス 100 1980
12 ロン・ルフロア デトロイト・タイガース 97 1980
13 タイ・カッブ デトロイト・タイガース 96 1915
オマー・モレノ ピッツバーグ・パイレーツ 1980

[編集] 歴代盗塁王

最多盗塁 (MLB)を参照。

[編集] 脚注

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  1. ^ Baseball Library
  2. ^ http://sportsnavi.yahoo.co.jp/baseball/npb/headlines/20080128-00000034-kyodo_sp-spo.html
  3. ^ 雑誌「週刊ベースボール」(ベースボールマガジン社刊)2008年5月19日号78-79ページ『2008年随想集2 4月のプロ野球から』
  4. ^ http://www.baseball-reference.com/leaders/SB_career.shtml

[編集] 関連項目