先発投手

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先発投手(せんぱつとうしゅ)とは、野球ソフトボールクリケットの試合開始時にスターティングメンバーとして最初に投球する投手をいう。スターターとも。1球でも投じた後に他の投手へ交代した場合、その交代投手を救援投手という。

概要[編集]

一般的に先発投手には、なるべく長いイニングを投球することが求められる。野球においては、先発投手が勝利投手となる権利を得るには最低5イニングを投球する必要がある[1]。このことから、先発投手は大量失点せずに5イニング以上投球するべきだと一般には考えられている。メジャーリーグでは6イニング以上を3自責点以内に抑えることをクオリティ・スタート(良好な先発)といい、先発投手の能力を測る重要な指標の一つとなっている。

現代野球では、投球過多による故障を防ぐために長くとも7回・8回で救援投手に交代することが多く、先発投手が完投することは以前に比べると少なくなってきている。アメリカでは先発投手の投球数の上限を100球前後とすることが一般的であり、この投球数を超えると好投している場合でも交代させる。そのため、救援投手の整備も早くから進んでおり、中継ぎ投手・セットアップ投手・抑え投手といった分業化が著しい。日本でも先発投手の投球数制限および救援投手の分業化が1990年代頃から導入され始めている。

救援投手と較べて長いイニングを投げるので、打者が投手に慣れやすい。これを防ぐ為に先発投手は多彩な球種を使用する。

プロ野球において先発投手は、4日から6日程度の登板間隔を空けることが通常である(1試合投げたら翌日から3日から5日間は休みで調整に当てる)。チームは複数の先発投手を数日おきに順番に起用していく。これを先発ローテーションという。アメリカでは登板間隔4日が通例であるが、日本では登板間隔6日の場合が多い。アメリカの先発投手は年間33試合前後に先発するが、日本の先発投手は年間25試合前後の先発にとどまる。

一方、アメリカの先発投手は勝ち試合でも100球を目途に6から7イニングで交代することが多いのに対し、日本の先発投手は試合の状況によっては9イニングを投げきることもあり、その場合の投球数はおおむね120球をこえる。

開幕戦で先発投手を務める投手は開幕投手と呼ばれる。

また、日本の高校野球においては、エース級の先発投手がほぼ全試合で完投することも少なくなく、特に春・夏の甲子園大会や夏の地方大会では終盤の日程が過密であるため、連日エース投手が先発し、その都度100球以上を投じることも決して珍しくない。このような起用方法・過密日程については故障防止などの観点から賛否両論がある[2][3][4]

試合当初[編集]

投手記録の「試合当初」は、先発して途中で交代した試合数をカウントしたものである。すなわち試合当初数と完投数を合計した数が先発登板数になる。

先発ローテーション[編集]

先発ローテーションは5人前後の投手から構成されることが一般的である。チーム内で優秀な投手を上位5人選出し、ローテーションに起用されることが多い。ローテーション入りされることは、投手にとって名誉なことである。先発ローテーションは、白星を稼ぐことで自チームを優勝へと導く役割を担う。

アメリカにおいて、1960年代に4人の投手が中3日で先発登板する方法が一般化し、1970年代中盤に至り5人の投手が中4日で先発する方法が登場すると、1980年代にはほとんど全てのチームに採用された。1980年のオークランド・アスレティックスは完投主義を貫き、チームで91完投を挙げたものの、翌年以降、各先発投手の成績が急速におちこんだ。これが契機となり、先発投手に完投させる考えは後退し、1先発あたりの投球数制限の導入および1970年代頃から始まっていた救援投手の分業化が一気に進んでいった。

日本では、長らく各チームのエースと呼ばれる投手が、多くの試合に先発し、非先発時は救援登板もするといった状態が続き、必ずしも先発投手という概念は成立していなかった。1980年代ごろから中5日の先発ローテーションが確立されていき、1990年代に入ると中6日が通常となった。

主な先発記録[編集]

いずれも2012年シーズン終了時。

メジャーリーグベースボール[編集]

通算先発登板数
順位 選手名 先発数
1 サイ・ヤング 815
2 ノーラン・ライアン 773
3 ドン・サットン 756
4 グレッグ・マダックス 740
5 フィル・ニークロ 716

日本プロ野球[編集]

通算先発登板数
順位 選手名 先発数 実働期間
1 米田哲也 626 1956 - 1977
2 小山正明 583 1953 - 1973
3 鈴木啓示 577 1966 - 1985
4 金田正一 569 1950 - 1969
5 東尾修 537 1969 - 1988
6 山本昌 509 1986 - 2013
7 梶本隆夫 487 1954 - 1973
8 別所毅彦 483 1942 - 1960
9 工藤公康 472 1982 - 2010
10 北別府学 460 1976 - 1994
通算先発勝利数
順位 選手名 勝利数 実働期間
1 鈴木啓示 288 1966 - 1985
2 小山正明 273 1953 - 1973
3 金田正一 268 1950 - 1969
4 別所毅彦 264 1942 - 1960
5 米田哲也 260 1956 - 1977
6 V.スタルヒン 255 1936 - 1955
7 山田久志 240 1969 - 1988
8 東尾修 220 1969 - 1988
9 工藤公康 216 1982 - 2010
10 山本昌 209 1986 - 2013
通算先発敗戦数
順位 選手名 敗戦数 実働期間
1 金田正一 229 1950 - 1969
2 米田哲也 226 1956 - 1977
3 東尾修 225 1969 - 1988
4 鈴木啓示 219 1966 - 1985
5 梶本隆夫 197 1954 - 1973
6 小山正明 195 1953 - 1973
7 平松政次 166 1967 - 1984
8 松岡弘 158 1968 - 1985
9 V.スタルヒン 157 1936 - 1955
別所毅彦 1942 - 1960
石井茂雄 1958 - 1979
坂井勝二 1959 - 1976
シーズン先発登板数
順位 選手名 所属球団 先発数 記録年
1 林安夫 朝日軍 51 1942
2 別所昭 南海 50 1947
3 真田重蔵 パシフィック 49 1946
4 野口二郎 大洋軍 48 1942
白木義一郎 ゴールドスター 1946
内藤幸三 ゴールドスター 1946
7 亀田忠 黒鷲軍 46 1940
藤本英雄 巨人 1943
9 野口二郎 セネタース 45 1939
白木義一郎 東急 1947
天保義夫 阪急 1948
渋谷誠司 国鉄 1963
シーズン先発勝利数
順位 選手名 所属球団 勝利数 記録年
1 須田博 巨人 32 1940
藤本英雄 巨人 1943
3 野口二郎 大洋軍 30 1942
4 V.スタルヒン 巨人 29 1939
別所昭 南海 1947
6 白木義一郎 セネタース 28 1946
権藤博 中日 1961
8 林安夫 朝日軍 27 1942
小山正明 阪神 1962
10 真田重蔵 松竹 26 1950
別所毅彦 巨人 1952
大友工 巨人 1955
小山正明 東京 1964
皆川睦男 南海 1968
シーズン先発敗戦数
順位 選手名 所属球団 敗戦数 記録年
1 望月潤一 イーグルス 25 1939
菊矢吉男 ライオン軍 1940
石原繁三 大和軍 1942
内藤幸三 ゴールドスター 1946
5 亀田忠 イーグルス 24 1939
6 真田重蔵 パシフィック 23 1946
小林恒夫 松竹 1952
8 亀田忠 黒鷲軍 22 1940
清水秀雄 南海 1940
白木義一郎 東急 1947
年度別最多先発登板投手
年度 セントラル・リーグ パシフィック・リーグ
選手名(所属球団) 先発数 選手名(所属球団) 先発数
1950 高野裕良(大洋)
田原基稔(国鉄)
長谷川良平(広島)
37 天保義夫(阪急)
阿部八郎(阪急)
沢藤光郎(近鉄)
37
1951 金田正一(国鉄) 44 阿部八郎(阪急) 36
1952 別所毅彦(巨人)
金田正一(国鉄)
41 野口正明(西鉄) 30
1953 梶岡忠義(大阪)
金田正一(国鉄)
33 米川泰夫(東急) 35
1954 金田正一(国鉄) 39 野村武史(高橋) 36
1955 金田正一(国鉄) 37 梶本隆夫(阪急) 34
1956 大崎三男(大阪) 37 島原幸雄(西鉄) 40
1957 秋山登(大洋) 40 牧野伸(東映) 38
1958 村田元一(国鉄) 41 米田哲也(阪急)
西田亨(東映)
36
1959 小山正明(大阪)
北川芳男(国鉄)
37 杉浦忠(南海) 35
1960 小山正明(大阪) 42 J.スタンカ(南海) 35
1961 権藤博(中日) 44 J.スタンカ(南海) 39
1962 小山正明(阪神)
柿本実(中日)
40 J.スタンカ(南海) 35
1963 渋谷誠司(国鉄) 45 山本重政(近鉄) 35
1964 稲川誠(大洋) 40 J.スタンカ(南海) 43
1965 城之内邦雄(巨人) 40 小山正明(東京) 39
1966 城之内邦雄(巨人) 35 池永正明(西鉄)
田中勉(西鉄)
米田哲也(阪急)
36
1967 石戸四六(サンケイ) 36 池永正明(西鉄) 40
1968 外木場義郎(広島) 40 米田哲也(阪急) 40
1969 外木場義郎(広島) 39 成田文男(ロッテ) 43
1970 平松政次(大洋) 38 成田文男(ロッテ)
鈴木啓示(近鉄)
36
1971 松岡弘(ヤクルト) 37 鈴木啓示(近鉄) 36
1972 松岡弘(ヤクルト) 36 東尾修(西鉄) 41
1973 江夏豊(阪神) 39 東尾修(太平洋) 37
1974 外木場義郎(広島) 38 江本孟紀(南海) 33
1975 外木場義郎(広島) 40 東尾修(太平洋) 31
1976 江本孟紀(阪神)
池谷公二郎(広島)
松本幸行(中日)
36 山内新一(南海) 33
1977 高橋里志(広島) 40 高橋直樹(日本ハム) 36
1978 高橋里志(広島) 33 鈴木啓示(近鉄)
東尾修(クラウン)
35
1979 小林繁(阪神) 36 村田兆治(ロッテ) 32
1980 江川卓(巨人)
小林繁(阪神)
34 東尾修(西武) 33
1981 西本聖(巨人) 34 今井雄太郎(阪急)
村田兆治(ロッテ)
31
1982 北別府学(広島) 35 山内孝徳(南海)
山内新一(南海)
30
1983 西本聖(巨人)
川口和久(広島)
小林繁(阪神)
32 山内和宏(南海) 33
1984 遠藤一彦(大洋) 37 東尾修(西武)
山内和宏(南海)
32
1985 R.ゲイル(阪神) 33 佐藤義則(阪急) 34
1986 遠藤一彦(大洋) 31 小野和義(近鉄) 30
1987 伊東昭光(ヤクルト) 31 山沖之彦(阪急) 31
1988 尾花高夫(ヤクルト) 31 小野和義(近鉄) 30
1989 斎藤雅樹(巨人)
桑田真澄(巨人)
西本聖(中日)
30 阿波野秀幸(近鉄)
渡辺久信(西武)
28
1990 川口和久(広島) 29 渡辺久信(西武) 29
1991 佐々岡真司(広島) 31 野茂英雄(近鉄) 29
1992 仲田幸司(阪神) 30 野茂英雄(近鉄) 29
1993 今中慎二(中日) 30 野茂英雄(近鉄) 32
1994 山本昌広(中日) 29 吉田豊彦(南海) 29
1995 R.チェコ(広島)
斎藤雅樹(巨人)
藪恵壹(阪神)
27 K.グロス(日本ハム) 31
1996 藪恵壹(阪神) 30 E.ヒルマン(ロッテ)
工藤公康(ダイエー)
29
1997 山本昌(中日) 28 K.グロス(日本ハム) 33
1998 N.ミンチー(広島) 35 武田一浩(ダイエー)
黒木知宏(ロッテ)
28
1999 野口茂樹(中日) 29 金田政彦(オリックス)
黒木知宏(ロッテ)
29
2000 N.ミンチー(広島) 31 前川勝彦(近鉄) 27
2001 井川慶(阪神) 28 松坂大輔(西武) 32
2002 K.ホッジス(ヤクルト) 32 J.パウエル(近鉄)
N.ミンチー(ロッテ)
32
2003 石川雅規(ヤクルト) 30 C.ミラバル(日本ハム) 31
2004 井川慶(阪神)
福原忍(阪神)
29 K.バーン(近鉄) 27
2005 三浦大輔(横浜)
黒田博樹(広島)
大竹寛(広島)
28 松坂大輔(西武)
JP(オリックス)
28
2006 三浦大輔(横浜) 30 一場靖弘(楽天) 30
2007 S.グライシンガー(ヤクルト) 30 杉内俊哉(ソフトバンク)
田中将大(楽天)
涌井秀章(西武)
28
2008 S.グライシンガー(巨人) 31 岩隈久志(楽天) 28
2009 石川雅規(ヤクルト)
大竹寛(広島)
前田健太(広島)
29 涌井秀章(西武) 27
2010 久保康友(阪神) 29 金子千尋(オリックス) 29
2011 M.ネルソン(中日)
前田健太(広島)
31 ダルビッシュ有(日本ハム) 28
2012 B.バリントン(広島)
前田健太(広島)
メッセンジャー(阪神)
29 武田勝(日本ハム)
成瀬善久(ロッテ)
28
先発登板連続無完投

脚注[編集]

  1. ^ 職業野球当時の日本はこの規定が曖昧で、先発投手が5イニング以上投球し、且つ先発投手の登板中に自チームがリードして、自チームがリードを最後まで守りきって勝った場合でも、勝利投手の記録がリリーフについたケースも存在していた。
  2. ^ 済美・安楽の熱投が問いかけたもの。高校野球における「勝利」と「将来」。 - 2013年4月4日 Number Web
  3. ^ 甲子園でエースは連投すべきなのか?“経験者”土肥義弘が語る - 2013年8月3日 スポーツナビコラム
  4. ^ エースの酷使、サイン伝達騒動……。熱戦に沸いた甲子園の“影”を考える。 - 2013年8月25日 Number Web

関連項目[編集]