始球式

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始球式(しきゅうしき)とは、スポーツ(主に球技)における試合開始前のセレモニーである。投手役を主催者や来賓など現役選手以外の人物が務めることが多い。

野球[編集]

1916年、当時のウィルソン大統領の始球式
2005年4月14日、当時のブッシュ大統領の始球式
1969年、客席から始球式を行う当時のニクソン大統領

野球における始球式(Ceremonial First Pitch)では、試合開始前に来賓が投手役として1球(稀に数球)投球を行う。

アメリカ合衆国における始球式[編集]

アメリカ合衆国では、試合開始前に投手役の人がマウンドまたはマウンド前方から捕手役に向けて1球投球する。基本的に打席に打者は立たない。捕手役には試合に出場する選手(あるいは監督・コーチ)でその来賓にゆかりのある人物が務めることがある(例えば、仰木彬マリナーズの始球式に招かれた際には愛弟子のイチローが捕手を務めた)。以前は、客席の来賓からグラウンド上の選手へボールを投げ渡す方式が取られていた。

アメリカ合衆国第27代大統領だったウィリアム・ハワード・タフトが、1910年MLBワシントンDCにある地元球団『ワシントン・セネタース』の開幕式で行なった始球式が最初である。これは、当時太りすぎのタフトを見かねた側近が、タフトに運動をさせようとして野球での始球式を思いついたことがきっかけと言われている。これ以降歴代の大統領が、同球団の開幕式で始球式を行うことが恒例行事となった。

日本における始球式[編集]

日本では、投手役の人がマウンドから打者に対して1球(稀に数球)投球する。試合開始直前に始球式が行われるケースが多く、この場合投手役の人は先攻チームの1番打者に対して投球し、また捕手を含めた守備も後攻チームの先発メンバーが務めることになる(例外として、2006年8月6日夏の甲子園の始球式では、前年に人命救助をした久美浜高校の野球部員4名が始球式を務めたため、投手役のほか、打者役と捕手役も同校の選手が務めた。このほか、上空のヘリコプターから投下されたボールをグラウンドで拾って投手役に渡す役も設定された)。

記録に残っている最古の始球式は1908年11月22日にアメリカの大リーグ選抜チームと早稲田大学野球部の試合における大隈重信の始球式とされる[1]。大隈重信の投球はストライクゾーンから大きく逸れてしまったが、早稲田大学の創設者、総長、政治家である大先生の投球をボール球にしてはいけないと考えた早稲田大学の1番打者がわざと空振りをしてストライクにした。これ以降、打者は投手役に敬意を表すため、投球がボール球でも絶好球でも空振りをすることが慣例となった[1]。これらの日本式の始球式はその後アジアの国々だけでなく、アメリカでもこの方式で実施するケースが出てきている。

しかし、始球式の投球を空振りしない事もある。北海道日本ハムファイターズ時代の新庄剛志(SHINJO)の数例や2010年6月5日福岡ソフトバンクホークス川﨑宗則等のように打ちにいった例、1964年7月22日オールスター第3戦での山内和弘による見逃し(捕手との雑談が原因)[1]、など。また、2014年9月13日オリックス・バファローズ平野恵一のように空振りをしたつもりが結果的にはバットに当たってしまったというハプニングもある[2]。始球式の投球を空振りしなくても特に罰則規定はない(※ただし投手役はスポーツ選手でない場合も多く、ピッチャー返しを打つと危険であるため、わざと空振りするのは投手役の負傷を防ぐ目的もあるともいわれている)。

センバツ大会は開幕試合の始球式では1975年第47回選抜高等学校野球大会以降文部省(2001年以降は文部科学省)の大臣が投手役を務める(ただし、何度か始球式が中止になったことがある)。夏の甲子園大会の始球式では1997年第79回全国高等学校野球選手権大会までは文部省(2001年以降は文部科学省)の大臣が投手役を務めることが多かった。1998年第80回全国高等学校野球選手権大会以降は高校球児が務めることが多い。旧制中学時代野球部に所属していた愛知揆一が文部大臣時代に行った始球式では、外角低めにストライクとなる球を投げた[3]。また第85回全国高等学校野球選手権大会2003年)で小泉純一郎高校野球大会史上初となる現職首相による始球式を行い、ど真ん中へのストライクを投じた。

近年の日本プロ野球では中継テレビ局で放送しているバラエティ番組ドラマ、または球団スポンサーのCMの出演者をはじめ、芸能人宣伝の一環として行うケースが増えている。球団のレトロ企画として往年の名選手(投手出身者に限らない)が行う場合や、異競技交流の名目として野球以外のアスリートが行う場合、地域密着を目指して球団ファンクラブの会員が行うケースもあり、多様化が進んでいる。引退選手の最終試合の始球式を選手の子息などが務めることもある。また打者が打席に立たないアメリカ方式や、来賓が投手役ではなく打者役(あるいは両方)になる始球式が行われるケースもある。

独立リーグ四国アイランドリーグplus愛媛マンダリンパイレーツは、2011年8月26日の徳島戦(松山中央公園野球場)の試合前にファンやスポーツ少年団の選手らにより「最大人数で行う始球式」に挑戦した。111組222人が成功を収め、ギネス世界記録に認定された[4]

それ以外の球技[編集]

アイスホッケーでは、センターライン中央のフェイスオフ・スポットでフェイスオフを行う。

ゴルフでは、最初のパーティーがラウンドをはじめる前に、招待者がスモークボールを1番グラウンドのティーグラウンドから打つことが多い(行われない場合も多い)。

サッカーでは、コート外からボールを蹴ってコート内の審判にパスをする。正式には「キックイン」と呼ばれる(PKを蹴る場合もある)。スポンサー関係者、地元自治体の首長、チームゆかりの有名人、サポーター代表などが務める。

バスケットボールでは、ティップ・オフを行う(ティップ・オフ・セレモニー)。来賓が選手のひとりにパスを渡し、ドリブルしてシュートを決めるのが通例である。来賓によってはフリースローを投げる場合もある。

バレーボールでは、サーブを行う。人によってサーブライン(自信有りの人)かアタックライン(自信無しの人)のどちらかに分かれる。

ラグビーではペナルティキックを行う。キック力を要する事からサッカー選手などが招待される事が多い。

アメリカンフットボールではキックオフを行う。1948年の第1回ライスボウルでは来日したポール・ラッシュが行った。

その他[編集]

モータースポーツにおいて、新しいサーキットが完成した時には始球式ならぬ「始走式」でサーキットの完成を祝う。

空手・テコンドーでは、大会の開始前セレモニーとして板を割る「試し割演武」を始球式に引っ掛け「始割式」と呼ぶこともある。

脚注[編集]

  1. ^ a b c 幸運社 『意外と知らないもののはじまり』 PHP文庫、2002年、p.249。ISBN 4-569-57841-1
  2. ^ “こじるりノーバン 平野恵バット当てる”. デイリースポーツ. (2014年9月13日) 
  3. ^ 朝日新聞1975年8月
  4. ^ プレス・パイレーツ2011年9月19日付

関連項目[編集]