スローボール

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スローボールは、野球における球種の1つ。大まかには球速100km/h未満で、大きな山なりの軌道を描くものを指す。英語ではイーファス・ピッチ(Eephus Pitch)と呼ばれる。

起源[編集]

打高投低の傾向があった1940年代のメジャーリーグベースボールにおいて、ピッツバーグ・パイレーツリップ・シーウェルが投げ始めたのが最初とされている。彼は1941年12月7日にフロリダ州オカーラで、狩りをしていた際に仲間から足に誤射を受け、大怪我を負って4週間にわたり入院した[1]。治療の結果、足の切断こそ避けられたものの、右足親指には血流障害が残った[2]。ちょうど12月7日に大日本帝国海軍による真珠湾攻撃が発生し、アメリカ合衆国第二次世界大戦に参戦することになったが、彼の足の怪我は徴兵検査で不適格とされるほどだった[1]。この怪我によって以前のような投球ができなくなった彼が考え出したのが、山なりの軌道を描くスローボールだった。

1942年春、デトロイト・タイガースとのオープン戦に登板した彼は、ディック・ウェイクフィールドを打席に迎えたときにそのスローボールを投げてみた。シーウェルによれば、そのときウェイクフィールドは「バットを振り出したかと思えば止め、また振り出したかと思えば止め、ようやく振り切ったときには空振りの勢いで転びかけていた」そうで、それを見ていた両軍ダグアウトとも笑いに包まれたという[1]。このスローボールを "イーファス・ピッチ" と名付けたのは、チームメイトの外野手モーリス・バンローベイスである。彼によれば「『イーファス』に意味はないよ、ありゃそういう球だ」ということでそう名付けたという[1]。シーウェルは1949年まで現役を続けたが、レギュラーシーズンではこのイーファス・ピッチを本塁打にされたことが一度もない。この球を本塁打にされたのはただ一度、1946年のオールスターゲームテッド・ウィリアムズと対戦したときだけだった[3]

軌道と効果[編集]

投げる際、通常の投球フォームとは異なるゆっくりした腕の振りになる。投じられた球は回転数が少なく、大きく縦に割れるような変化を伴う(「超スローチェンジアップ」と言う投手もいる)。また投げ方によっては回転がほとんどなくなり、ナックルボールのように揺れながら変化する。

投球フォームが通常と大きく異なるため、打者はスローボールが投じられることを事前に察知することができる。しかし、普段の打撃練習では山なりのスローボールを打ちこむ練習はやらないため、打者にとって「分かっていてもなかなか打てない」球種となる。また、山なりの軌道でバットの下に潜り込むように入ってくるためボールの上っ面を叩き、ゴロになりやすい。

試合の中で投げ続けると打者も球速に慣れてくるため、基本的に多投はされない。打者の打ち気を削ぐなどの心理的な動揺を誘うことが主な狙いである。投手対打者の対戦において、打者側が有利とされる状況で投じられることが多かったためか、投手が打者を打ち取るための配球が組み立てられなくなった(いわゆる「投げる球がない」という状態)際の、窮余の策と解釈されることが多い。

主な使い手[編集]

MLB[編集]

日本プロ野球[編集]

脚注[編集]