ピッチングマシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ホイール式ピッチングマシン

ピッチングマシン (pitching machine) は投手に代わり自動的に投球を行う機械である。野球ソフトボール打撃練習をする際に用いられ、機種によっては球速球種を変化させることができる。トスバッティング専用の機種のことはトスマシンと呼ぶ

歴史[編集]

チャールズ・ハワード・ヒントンが開発した火薬式ピッチングマシン(1897年ごろ)
同上

1897年、数学者のチャールズ・ハワード・ヒントン (en:Charles Howard Hintonプリンストン大学野球部のために火薬式ピッチングマシンを開発した[1]。しかしこの機械は数件の事故を起こしたため、ヒントンは同年の内に大学を免職になってしまった[2]。しかしながら、この機械は火薬量を調整することによって球速を調整することができ、さらに発射口にゴムで覆った鉄製の突起を取り付けることによってカーブを投げることもできた[3]。ヒントンはその後1900年まで助教授として働いたミネソタ大学にこの機械を紹介した。

1909年までにはアーム式の機構を持つクリケット練習用のものが開発されており[4]、1921年までにはエアー式のマシーンが開発された[5]。ただ、空気銃の応用の原理で、実用化には程遠いものであった。

1947年には当時ロサンゼルス・ドジャースGMであったブランチ・リッキーが、プロのキャンプにアーム式ピッチングマシーン「オーバーハンド・ジョー」を導入した[6]

1993年にはスクリーンに映し出されたプロ野球の投手の投球フォームに合わせてボールを発射し、あたかもプロ野球の投手と対戦しているかのような擬似体験ができる機種が開発された[7]

機構とデザイン[編集]

ピッチングマシンには様々な機構・デザインのものがある。最も一般的なタイプはアーム式のものと、ホイール式の二種類である。近年、圧縮空気を使用するエアー式のものが次世代型ピッチングマシンとして開発され、市販化に成功した。[8]

ばねを利用するアーム式のものは打撃タイミングが取りやすく、実際の投手の投球に近い感覚で打撃練習ができる。しかし、様々な球種を投げることができず、オーバーハンド投手の球筋しか再現できないという欠点がある。一方、一つから三つの車輪(ホイール)の回転力を利用するホイール式のものは様々な球種や球筋を再現することができ、また発射口の角度を変えることによってフライゴロの打球を再現し、守備練習を行うこともできるが、高速回転するホイールに指を巻き込んで怪我をするおそれがあったり、打撃タイミングが取りにくいという欠点がある。

これら従来型アーム式、車輪(ホイール)式の欠点を鑑みて開発されたエアー式ピッチングマシンは、ボールシューターによりタイミングが取りやすく、コントロールが格段に良い為、安全性に優れるとともに、多様な変化球も投げられることから、効果的・実践的な練習やゲームが可能になった。

具体例として、

  1. ボール1球毎に、球速や、回転数、回転軸、リリースポイントやコース(高低外内)等の変更ができる事等、調整が簡単で、使用用途や可能性が大幅に広がっている。
  2. 消耗部品が少なく、従来アーム式やホイール式の構造上の問題である金属疲労や、可動部分、振動・騒音が少なく、耐久性に大変優れ、ボールの痛み等も少ない事から、維持費が安価ですむ。
  3. マシン自体にかかる電力は、従来と比べ格段に少なく、またコンプレッサーは、動力である空気が足りなくなった時に稼働するので、常時電力を消費しない事から、省エネにもつながっている。
  4. スポーツ分野以外にもエアー式ピッチングマシンを応用活用したスポーツ器具耐久試験装置の開発要請や、公的機関等(主に防災・防衛・農学バイオ・芸術工学等)から新たな活用・事業化の要請があっている。

なお、エアー式ピッチングマシンの特許・開発は、共和技研株式会社が全て管理している。

使用法[編集]

ピッチングマシンは打撃投手を必要とせず、少人数でも打撃練習ができるため、野球とソフトボールの練習に広く使用されている。また、ピッチングマシンと網を設置した場所のことを「バッティングケージ」といい、娯楽用のバッティングケージのことをバッティングセンターと呼ぶ。打者はバッティングケージやバッティングセンターを利用することで野手の協力や球拾いをすることなく多くの投球を打ち返すことができる。

また、まだ肩やひじの関節や筋肉が発達段階にある小学校レベルにおいては、野球肘などのスポーツ障害を予防するためにピッチングマシンを用いて試合を行うこともある[9]

価格は数千円のものから、数百万円のものまで様々である。

メーカー[編集]

以下のメーカーがピッチングマシンの製造販売を行っている。

  • 共和技研株式会社 エアー式ピッチングマシン トップガン -TOPGUN-
  • エスエスケイ
  • オール・ルーターズ
  • キンキクレスコ
  • ジャイロ技研
  • 日本JUGS
  • シルバー精工
  • スナガ開発
  • ゼット
  • 田中電機
  • トーテム
  • ハイゴールド
  • ホーマー産業
  • ボールパークドットコム
  • ニッシンエスピーエム
  • ミズノ
  • ルイビル・スラッガー
  • スポーツワンインターナショナル株式会社

脚注[編集]

  1. ^ Hinton, Charles, "A Mechanical Pitcher", Harper's Weekly, March 20, 1897, p. 301 - 302
  2. ^ Physics in Higher-Dimensional Manifolds bottom page 5
  3. ^ Hinton, Charles, "The Motion of a Baseball", The Yearbook of the Minneapolis Society of Engineers, May, 1908, p. 18–28
  4. ^ "Popular Machine" - 1909年。
  5. ^ "Popular Machines"1921年。
  6. ^ "Speaking of pictures" - 『LIFE』1951年7月2日号。
  7. ^ 株式会社キンキクレスコ沿革
  8. ^ エアー式ピッチングマシントップガン
  9. ^ 安達勇治『子づれアメリカ留学落第記』文芸社、2005年、ISBN 978-4835588285、P57 - 58。

関連項目[編集]