ストライクゾーン

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ストライクゾーンとは、野球において、打者が投球を自然体でバットに当てることのできる範囲を示す。

定義[編集]

ストライクゾーンの説明。打者はイチロー

公認野球規則では、ストライクゾーンを「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである。」と定めている[1]

この空間は、すなわち本塁の形を底面とした五角柱と考えればよい。球審は、この空間を通過したと判定した投球(一部分でもかすめればよい)を打者が打たなかった場合はストライクを、通過していないと球審が判定した場合はボールを宣告する。

ストライクゾーンの上部、およびストライクゾーンより上方を「高め」と呼び、ストライクゾーンの下部、およびストライクゾーンより下方を「低め」と呼ぶ。また、ストライクゾーンの打者に近い部分(投手から見て、右打者の場合右側、左打者の場合左側)、およびストライクゾーンより打者に近い方を「内角(インコース)」と呼び、ストライクゾーンの打者から遠い部分(投手から見て、右打者の場合左側、左打者の場合右側)、およびストライクゾーンより打者から遠い方を「外角(アウトコース)」と呼ぶ。
  • 日本のアマチュア野球では、アマチュア野球内規により、低めに関してはボール全てがストライクゾーンを通過しないとストライクにはならない(要するに低めはボール1個分ストライクゾーンが高い)と決められていたが、2009年よりこの規則が廃止され、アマチュア野球でも公認野球規則に規定の通りにストライクが判定される


投球判定における実際[編集]

実際の試合においては、投球を判定する球審の裁量で決定される。当然ながら、現実にストライクゾーンの枠や線が設けられているわけではないので、公認野球規則に示されている基準と球審の判断との間に誤差が生じたり、球審を担当する者の間に個人差が生じたりすることもありうる。

公認野球規則の原書であるOfficial Baseball Rulesにおいては、「The STRIKE ZONE is that area over home plate」と書かれている。2000年シドニーオリンピックIBAFワールドカップ世界大学野球選手権大会などでも審判員を務めた経験のある小山克仁によれば、エリアとは「おおむねこの周辺」という意味で、つまり「打者が自然体で打てる範囲がストライク」と言うかなりアバウトな考え方であって、審判員が「そこは打てるだろう、打てよ」とジャッジした場合は、ストライク・コールが可能だとしている[2]

平林岳らによると、2000年以前は、打者がガンガン打って行くスタイルを好むアメリカMLBでは、日本プロ野球(NPB)よりストライクゾーンが外角にボール1個分広いといわれていたが、2001年度からクエステック・システムが導入されたこともあり、2008年現在ではルールブック通りのストライクゾーンを適用しているという。これは、同システムによってジャッジの正否を一球ずつ査定されるようになったからであるとされており、それゆえにそう広く取ることはできず、実際1990年代と比較すると大分狭くなっている[2][3]。とは言え、完全に画一化されたわけではなく、依然として外側を良く取る球審が居ることもまた事実である。特にラズ・ディアズジム・ウルフジェフ・ネルソンらはストライクゾーンが広く、投手有利(打者不利)な球審として広く知られている[4]。一方、教育・育成の場でもあるマイナー(特に低レベルなルーキーや1A)では、かなり広目にストライクを取って行く傾向がある[3](外角にボール1個半広い)。

日本プロ野球においても、それまではベルト付近が上限だったストライクゾーンを2002年に公認野球規則の通りに改めたが[注釈 1]翌年には見直される[6]パ・リーグでは、2007年度から外角にボール1個半広がった新しいストライクゾーンを採用した。交流戦によって違うリーグの審判の判定を受けるケースが多くなり、選手からセントラル・リーグと比べてストライクゾーンが狭いという意見が出たためである。また、オリンピックなどの国際大会において「日本独自のやり方や解釈は通用しなくなっており、国際基準を視野に入れながら思考・行動する必要がある」という日本野球規則委員会の判断から[7]、ストライクゾーンも含め、さまざまな面で野球規則適用上の解釈の修正が行われている。

ただし、前述の小山克仁によると、「外国人ジャッジのゾーンが広いとはさして思えず、むしろ狭いと感じることすらある、そもそもゾーンの広さが話題に上がるのは日本だけで海外ではまずありえない」と言う。また、視点をひるがえして外国人ジャッジから日本選手を見た場合、正直評判は芳しくない、とも述べている。その理由として、「日本人捕手はボールをストライクに見せかけようとしてミットを頻繁に動かしたり、逆に際どいコースをボール判定された時、無言の抗議としてしばらく動かないことが良く見受けられるが、そのような行いは海外では審判員に対する侮辱行為と解釈されている、心証を悪くするだけでメリットは何一つない、更に日本は試合時間が長過ぎる(打者が打席に入るまでが遅い、投手の間合いも長い、牽制球も多い)こともネックだ」と説いている。なお、ジャッジの正確さと言う点ではNPBが一番ではないか、とも付け足している[2]

打者の体格や打撃姿勢とストライクゾーン[編集]

球審は、「打者が投球を打つための姿勢」を基準にストライクゾーンを判断する。日本野球規則委員会が公認野球規則2.74に加えた【注】では、「投球を待つ打者が、いつもと異なった打撃姿勢をとってストライクゾーンを小さく見せるためにかがんだりしても、球審は、これを無視してその打者が投球を打つ姿勢に従って、ストライクゾーンを決定する」としている。すなわち、どんなにかがんで構えたとしても、あるいは低い姿勢でバントの構えをとっていても、球審は、打者が通常の打撃姿勢で構えたときの姿勢を基準にして投球判定を行うので、構え方によってストライクゾーンが大きくなったり小さくなったりすることはない。

しかしながら、ストライクゾーンは打者の体格を基準とするので、打者の身長や体格等による個人差はある。1951年、メジャーリーグにおいて、小人症エディ・ゲーデルという109cmの選手が代打として出場した。 捕手は両膝を地面につけ、できる限り低く構えたが、投球はゲーデルのストライクゾーンを通過しなかった。ゲーデルはストレートの四球で出塁し、その直後に代走に交代した。

ユニフォームとストライクゾーン[編集]

ストライクゾーンは前述の通り、ユニフォームのパンツの上部を基準としている。

原則として着こなしはルールに抵触しない限り、自由であるものの丈の長いパンツを用いることで、誤審も生じやすいと見ているコラムニストや審判もいる[8]1950年代には、ビル・スチュワートという審判が、「ストッキングをひざ下まで上げてもらえないだろうか」と要望書を出した事例も存在している[要出典][9][10]

こういった例をあげ、木本大志は、イチロー選手のように、短い丈のパンツを穿くことによって、誤審も少なくなり、それによって投手も低目に投げやすくなるとした上で、短い丈のパンツの選手は不利だと結論づけている。

その他[編集]

以上の意味より転じて、異性や趣味などの好みの範囲を指す場合にも使われる[11]。最近では、漫才やギャグなどの「笑いのツボ」の範囲に用いられることもある。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 当時大阪近鉄バファローズがチーム防御率5点台で優勝した初めてのチームになるなど打者有利に傾いたことと、投手が打ちこまれ交代が多くなり試合時間が長くなることへの反省から行なわれた[5]。ゾーン変更の甲斐あってか2002年はセ・リーグ、パ・リーグともに防御率が大幅に良化している。

出典[編集]

  1. ^ 2009公認野球規則2.74
  2. ^ a b c 大利実 「シドニー五輪の主審経験者 ・ 小山克仁氏が"世界基準"を解説」 『野球小僧 2008年8月号』 白夜書房、190 - 195頁。
  3. ^ a b MLBコラム 米国のストライクゾーン、その実態と背景 <平林 岳>”. MAJOR.JP (2007年4月16日). 2008年8月5日閲覧。
  4. ^ 「MLBアンパイア最前線」 『ウェルカム・メジャーリーグ 2008』 白夜書房〈白夜ムック 315〉、56-57頁。ISBN 978-4861913983
  5. ^ ストライクゾーン変更——あらためて、日本の審判について考える。”. Number Web. 2002年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月28日閲覧。
  6. ^ もらった松坂ライズボール”. 報知ベースボールパーク. 2003年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月21日閲覧。
  7. ^ 日本野球規則委員会 『公認野球規則2006』、はしがき。
  8. ^ 木本大志「ICHIRO STYLE 2006」
  9. ^ 木本大志「ICHIRO STYLE 2006」
  10. ^ イチローのストッキングは打者に不利?
  11. ^ 出典:米川明彦編『日本俗語大辞典(第3版)』東京堂出版 2006年 312頁

関連項目[編集]