コンテンツにスキップ

「ヨーガ」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
MICCAgo (会話 | 投稿記録)
機関リポジトリへのリンクを追加など
11行目: 11行目:


;初期仏教 - 大乗仏教におけるヨーガ
;初期仏教 - 大乗仏教におけるヨーガ
個体の精神的至福を追求するヨーガの行法は、初期仏教において重視された{{sfn|立川|2012}}。ヒンドゥー教(バラモン教)の古典ヨーガの発展にやや先行し、3 - 5世紀のインドの[[大乗仏教]]では、ヨーガの実修を好む瑜伽師(ゆがし、ヨーガ行者)によって、[[般若]]の[[空 (仏教) |空]]の思想と修行者のヨーガの最中の体験をベースに、徹底した主観的観念論の哲学体系を構築した[[瑜伽行唯識派]](瑜伽行派、ヨーガチャーラ)が生まれた<ref name="ニッポニカ"/>{{sfn|川崎|1993|pp=95-96}}<ref name="空海"/>。彼らはヨーガの実習を通じ、人間が日常的に経験する事象はすべて心が作り出したイメージでしかなく、心そのものは存在せず、根源的な心識のみが唯一の実在である([[唯識]])と説き、この唯識観を理解し己のものとし最終的に悟りの境地に到達するには、ヨーガによる段階的な実践があってはじめて可能になるとした<ref>{{cite web| publisher= 企業OBペンクラブ|author=斉藤征雄| title = 唯識思想 8.悟りは、瑜伽行の実践によってはじめて可能| url = http://www.obpen.com/essay/20180518_01.html| accessdate = 2020-08-14|date=}}</ref>。
個体の精神的至福を追求するヨーガの行法は、初期仏教において重視された{{sfn|立川|2012}}。ヒンドゥー教(バラモン教)の古典ヨーガの発展にやや先行し、3 - 5世紀のインドの[[大乗仏教]]では、ヨーガの実修を好む瑜伽師(ゆがし、ヨーガ行者)によって、[[般若]]の[[空 (仏教) |空]]の思想と修行者のヨーガの最中の体験をベースに、徹底した主観的観念論の哲学体系を構築した[[瑜伽行唯識派]](瑜伽行派、ヨーガチャーラ)が生まれた<ref name="ニッポニカ"/>{{sfn|川崎|1993|pp=95-96}}<ref name="空海"/>。彼らはヨーガの実習を通じ、人間が日常的に経験する事象はすべて心が作り出したイメージでしかなく、心そのものは存在せず、根源的な心識のみが唯一の実在である([[唯識]])と説き、この唯識観を理解し己のものとし最終的に悟りの境地に到達するには、ヨーガによる段階的な実践があってはじめて可能になるとした<ref>{{cite web| publisher= 企業OBペンクラブ|author=斉藤征雄| title = 唯識思想 8.悟りは、瑜伽行の実践によってはじめて可能| url = http://www.obpen.com/essay/20180518_01.html| accessdate = 2020-08-14|date=}}</ref>。


;ヒンドゥー教(バラモン教)の古典ヨーガ
;ヒンドゥー教(バラモン教)の古典ヨーガ
29行目: 29行目:


;ヨーガの身心観
;ヨーガの身心観
ハタ・ヨーガとチャクラの理論が密接に結びついているのに対し、古典ヨーガとチャクラの理論に直接の関係はない<ref name="Bryant">{{cite book |author=Edwin Francis Bryant |title=The Yoga sūtras of Patañjali: a new edition, translation, and commentary with insights from the traditional commentators |url=https://archive.org/details/yogastrasofpataj0000brya |url-access=registration |year=2009 |publisher=North Point Press |isbn=978-0-86547-736-0 |pages=[https://archive.org/details/yogastrasofpataj0000brya/page/358 358]–364, 229–233}}</ref><ref name="Syman">{{cite book |author=Stefanie Syman |title=The Subtle Body: The Story of Yoga in America |url=https://archive.org/details/subtlebodystoryo0000syma |url-access=registration |year=2010 |publisher=Farrar, Straus and Giroux |isbn=978-1-4299-3307-0 |pages=[https://archive.org/details/subtlebodystoryo0000syma/page/72 72]–74}}</ref>。
ハタ・ヨーガとチャクラの理論が密接に結びついているのに対し、古典ヨーガとチャクラの理論に直接の関係はない<ref name="Bryant">{{cite book |author=Edwin Francis Bryant |title=The Yoga sūtras of Patañjali: a new edition, translation, and commentary with insights from the traditional commentators |url=https://archive.org/details/yogastrasofpataj0000brya |url-access=registration |year=2009 |publisher=North Point Press |isbn=978-0-86547-736-0 |pages=[https://archive.org/details/yogastrasofpataj0000brya/page/358 358]-364, 229-233}}</ref><ref name="Syman">{{cite book |author=Stefanie Syman |title=The Subtle Body: The Story of Yoga in America |url=https://archive.org/details/subtlebodystoryo0000syma |url-access=registration |year=2010 |publisher=Farrar, Straus and Giroux |isbn=978-1-4299-3307-0 |pages=[https://archive.org/details/subtlebodystoryo0000syma/page/72 72]-74}}</ref>。


;現代のヨーガ
;現代のヨーガ
今日ヨーガと呼ばれるものの多く動的なヨーガだが、伝統的なハタ・ヨーガの流れとは別である。1990年代後半から、身体的ポーズ([[アーサナ]])に重点を置いたヨーガがアメリカ、イギリスなどの英語圏を中心に世界的に流行している<ref name="伊藤">{{Cite journal|和書|author=伊藤雅之 |date=2011-03-30 |title=現代ヨーガの系譜 : スピリチュアリティ文化との融合に着目して |journal=宗教研究 |volume=84(4) |publisher=日本宗教学会 |naid=110008514008 |pages=417-418}}</ref>。現代では、一般に“ヨーガ(ヨガ)”または“ハタ・ヨーガ“と呼ばれるものの多くは、このヨーガを指している。この近現代のヨーガは、日本においてもアメリカなどの影響により、今世紀に入って爆発的な広がりを見せている。その特徴は「アーサナ(ポーズ)」の実践にある。宗教学者のエリザベス・ド・ミシェリスはこうしたヨーガを「現代体操ヨーガ(Modern Postural Yoga)」と呼んでいる<ref>De Michelis, Elizebeth,2004,『A History of Modern Yoga : Patanjali and Western Esotericism』,London:Continuum</ref>。この現代の「ヨーガ教室」等で教えられているヨーガは、20世紀前半のインドで西洋の[[体操]]やボディビルディングなどの外来の{{仮リンク|身体鍛錬|en|Physical culture}}を取り入れてインド人のための国産エクササイズを作ろうとする動きから生まれた「[[創られた伝統]]」を直接的な起源としており、{{仮リンク|マーク・シングルトン|en|Mark Singleton (yoga scholar)}}は、現代のヨーガと元来のヨーガにおける「yoga」とは似て非なる「同音異義語」であると評している{{sfn|シングルトン|2014}}。
今日ヨーガと呼ばれるものの多く動的なヨーガだが、伝統的なハタ・ヨーガの流れとは別である。1990年代後半から、身体的ポーズ([[アーサナ]])に重点を置いたヨーガがアメリカ、イギリスなどの英語圏を中心に世界的に流行している<ref name="伊藤">{{Cite journal|和書|author=伊藤雅之 |date=2011-03-30 |title=現代ヨーガの系譜 : スピリチュアリティ文化との融合に着目して(第十二部会,<特集>第六十九回学術大会紀要) |url=https://doi.org/10.20716/rsjars.84.4_1255 |journal=宗教研究 |volume=84 |issue=4 |publisher=日本宗教学会 |naid=110008514008 |pages=417-418 |doi=10.20716/rsjars.84.4_1255}}</ref>。現代では、一般に“ヨーガ(ヨガ)”または“ハタ・ヨーガ“と呼ばれるものの多くは、このヨーガを指している。この近現代のヨーガは、日本においてもアメリカなどの影響により、今世紀に入って爆発的な広がりを見せている。その特徴は「アーサナ(ポーズ)」の実践にある。宗教学者のエリザベス・ド・ミシェリスはこうしたヨーガを「現代体操ヨーガ(Modern Postural Yoga)」と呼んでいる<ref>De Michelis, Elizebeth,2004,『A History of Modern Yoga : Patanjali and Western Esotericism』,London:Continuum</ref>。この現代の「ヨーガ教室」等で教えられているヨーガは、20世紀前半のインドで西洋の[[体操]]やボディビルディングなどの外来の{{仮リンク|身体鍛錬|en|Physical culture}}を取り入れてインド人のための国産エクササイズを作ろうとする動きから生まれた「[[創られた伝統]]」を直接的な起源としており、{{仮リンク|マーク・シングルトン|en|Mark Singleton (yoga scholar)}}は、現代のヨーガと元来のヨーガにおける「yoga」とは似て非なる「同音異義語」であると評している{{sfn|シングルトン|2014}}。


このヨーガは、アメリカで「[[スピリチュアリティ|スピリチュアル]]な実践」とも解釈されている<ref name="伊藤"/>。多くの現代人はヨーガに「インド古来の、何か難しいポーズをとる、健康に良いらしいもの」というイメージを持っており、現代ヨーガは流派によって練習内容が異なりはしても、「古代インドの修行法」「アーサナ(ポーズ)・呼吸([[プラーナーヤーマ]]=調息)・瞑想」」、「科学的に検証された健康に良い効果」という3点から構成され、この神話的要素ともいえる3つの絡み合いが魅力になり、人気を博していると思われる{{sfn|河原|2014|p=90}}。ヨーガの歴史は、古来より続く、時代を超越した一つの伝統的な修行法というロマンティックな物語として、一般に(特にマーケティング戦略として)かなり広まっているが、こうした物語は西洋人のロマンティックな[[オリエンタリズム]]や東洋学の影響を受けている<ref name="Bishop"/>。
このヨーガは、アメリカで「[[スピリチュアリティ|スピリチュアル]]な実践」とも解釈されている<ref name="伊藤"/>。多くの現代人はヨーガに「インド古来の、何か難しいポーズをとる、健康に良いらしいもの」というイメージを持っており、現代ヨーガは流派によって練習内容が異なりはしても、「古代インドの修行法」「アーサナ(ポーズ)・呼吸([[プラーナーヤーマ]]=調息)・瞑想」」、「科学的に検証された健康に良い効果」という3点から構成され、この神話的要素ともいえる3つの絡み合いが魅力になり、人気を博していると思われる{{sfn|河原|2014|p=90}}。ヨーガの歴史は、古来より続く、時代を超越した一つの伝統的な修行法というロマンティックな物語として、一般に(特にマーケティング戦略として)かなり広まっているが、こうした物語は西洋人のロマンティックな[[オリエンタリズム]]や東洋学の影響を受けている<ref name="Bishop"/>。
96行目: 96行目:
『ヨーガ・スートラ』には、後のハタ・ヨーガのような、個我と真我(アートマン)が合一し全ての観念が消え去った状態という明確で普遍性を持った解脱の感覚は見られない{{sfn|吉田|1995|pp=122-123}}。一章を丸々使ってヨーギーに備わる超自然力(シッディ)の説明がされているが、ヨーガの目的はあくまで「心の作用を止滅すること」とされており、超自然力の習得が最重視されているわけではない<ref name="ヨガジャーナル2020"/>。
『ヨーガ・スートラ』には、後のハタ・ヨーガのような、個我と真我(アートマン)が合一し全ての観念が消え去った状態という明確で普遍性を持った解脱の感覚は見られない{{sfn|吉田|1995|pp=122-123}}。一章を丸々使ってヨーギーに備わる超自然力(シッディ)の説明がされているが、ヨーガの目的はあくまで「心の作用を止滅すること」とされており、超自然力の習得が最重視されているわけではない<ref name="ヨガジャーナル2020"/>。


『ヨーガ・スートラ』は、現代のヨーガへの理解に多大な影響を与えている。国内外のヨーガ研究者や実践者のなかには、この『ヨーガ・スートラ』をヨーガの「基本教典」であるとするものがあるが、マーク・シングルトンはこのような理解に注意を促している。『ヨーガ・スートラ』は当時数多くあった修行書のひとつに過ぎないのであって、かならずしもヨーガに関する「唯一」の「聖典」のような種類のものではないからである{{sfn|シングルトン|2014|p=35}}。佐保田鶴治は、サーンキヤ・ヨーガの思想を伝えるためのテキストや教典は、同じ時期に多くの支派の師家の手で作られており、そのなかでたまたま今日に伝えられているのが『ヨーガ・スートラ』であると述べている{{sfn|佐保田|1973|p=35}}。『ヨーガ・スートラ』は15世紀にはほとんど忘れ去られていたが、イギリス人インド学者の[[ヘンリー・トーマス・コールブルック]](1765年 - 1837年)の著作によってふたたび知られるようになった<ref name="Bishop">{{cite web| publisher= The Religious Studies Project | title = Timeless Yoga and Sinister Yogis: David Gordon White’s Brief History of Yoga|author=Sammy Bishop| url = https://www.religiousstudiesproject.com/response/timeless-yoga-and-sinister-yogis-david-gordon-whites-brief-history-of-yoga/| accessdate = 2020-08-08
『ヨーガ・スートラ』は、現代のヨーガへの理解に多大な影響を与えている。国内外のヨーガ研究者や実践者のなかには、この『ヨーガ・スートラ』をヨーガの「基本教典」であるとするものがあるが、マーク・シングルトンはこのような理解に注意を促している。『ヨーガ・スートラ』は当時数多くあった修行書のひとつに過ぎないのであって、かならずしもヨーガに関する「唯一」の「聖典」のような種類のものではないからである{{sfn|シングルトン|2014|p=35}}。佐保田鶴治は、サーンキヤ・ヨーガの思想を伝えるためのテキストや教典は、同じ時期に多くの支派の師家の手で作られており、そのなかでたまたま今日に伝えられているのが『ヨーガ・スートラ』であると述べている{{sfn|佐保田|1973|p=35}}。『ヨーガ・スートラ』は15世紀にはほとんど忘れ去られていたが、イギリス人インド学者の[[ヘンリー・トーマス・コールブルック]](1765年 - 1837年)の著作によってふたたび知られるようになった<ref name="Bishop">{{cite web| publisher= The Religious Studies Project | title = Timeless Yoga and Sinister Yogis: David Gordon White’s Brief History of Yoga|author=Sammy Bishop| url = https://www.religiousstudiesproject.com/response/timeless-yoga-and-sinister-yogis-david-gordon-whites-brief-history-of-yoga/| accessdate = 2020-08-08
}}</ref>。
}}</ref>。


108行目: 108行目:
インドでは[[グプタ朝]](320年から550年頃)以後ヒンドゥー教が興隆し、仏教の勢力は下降していたが、ヒンドゥー教と重複する様々な民衆宗教の要素を取り入れる仏教再興への挑戦が起こり、ヒンドゥーの思想やタントラ、土着の信仰を取り込んだ[[密教]]が大乗仏教から生じた<ref name="野口"/>。[[密教]]では、修行者自らが象徴的に仏そのものになり、仏と合一することがヨーガ(瑜伽)であるとされ、中期インド密教では、[[真言]](マントラ)、[[印契]](ムドラー)や[[マンダラ]]を用いる[[三密]]行を通して仏となることができるとする瑜伽の思想と実践がみられた<ref name="瑜伽"/>。大乗仏教・特に密教では、超自然力を得た者による儀礼の執行、呪術的な密教儀式が非常に隆盛したが、ヨーガの修行で超自然力(シッディ、神通力、呪術的能力)を得た人間が行うことで呪術的儀礼が効果を持つと考えられ、修行による超自然力の獲得が重視され{{sfn|湯浅|1977|pp=118-119}}、ハタ・ヨーガのチャクラの理論を含む擬似生理学的な行法や性的行法が密教に取り入れられた。密教(仏教タントラ)がヒンドゥー教のタントラの様々な教派より先行して発展おり、密教の神々がのちにヒンドゥーの神々に同化されたと考える学者が多い<ref>{{cite web| publisher= NIERIKA| title = チベット仏教のダーキニー| url = http://mikiomiyamoto.bake-neko.net/femininprinciple0101.htm| accessdate = 2020-08-16|date=}}</ref>。
インドでは[[グプタ朝]](320年から550年頃)以後ヒンドゥー教が興隆し、仏教の勢力は下降していたが、ヒンドゥー教と重複する様々な民衆宗教の要素を取り入れる仏教再興への挑戦が起こり、ヒンドゥーの思想やタントラ、土着の信仰を取り込んだ[[密教]]が大乗仏教から生じた<ref name="野口"/>。[[密教]]では、修行者自らが象徴的に仏そのものになり、仏と合一することがヨーガ(瑜伽)であるとされ、中期インド密教では、[[真言]](マントラ)、[[印契]](ムドラー)や[[マンダラ]]を用いる[[三密]]行を通して仏となることができるとする瑜伽の思想と実践がみられた<ref name="瑜伽"/>。大乗仏教・特に密教では、超自然力を得た者による儀礼の執行、呪術的な密教儀式が非常に隆盛したが、ヨーガの修行で超自然力(シッディ、神通力、呪術的能力)を得た人間が行うことで呪術的儀礼が効果を持つと考えられ、修行による超自然力の獲得が重視され{{sfn|湯浅|1977|pp=118-119}}、ハタ・ヨーガのチャクラの理論を含む擬似生理学的な行法や性的行法が密教に取り入れられた。密教(仏教タントラ)がヒンドゥー教のタントラの様々な教派より先行して発展おり、密教の神々がのちにヒンドゥーの神々に同化されたと考える学者が多い<ref>{{cite web| publisher= NIERIKA| title = チベット仏教のダーキニー| url = http://mikiomiyamoto.bake-neko.net/femininprinciple0101.htm| accessdate = 2020-08-16|date=}}</ref>。


8世紀になると、ヒンドゥー教[[シャークタ派]]のタントラや[[シャクティ]](性力)信仰から影響を受けたとされる、男性原理(精神・理性・方便)と女性原理(肉体・感情・般若)との合一を目指す密教が登場した。これを後期密教といい、後期密教は無上瑜伽密教、タントラ仏教と呼ばれる。なお、後期密教は儒教の強い中国では左道密教と批判され受け入れられなかったため、日本には伝わっていない{{sfn|関|1996}}。後期密教は、解脱のためにあらゆる手段が肯定される解脱至上主義であったため、酒と肉食(悪食)、糞や尿といった不浄物の摂取、貪欲行(性ヨーガ)などの儀礼を行う秘密集会が仏教の正統な修法・行法として定期的に行われた。貪欲行は、男女の集団で、または師と弟子とマハームドラー(明妃、ヨーギニー。性ヨーガの相手として選別された被差別階級([[不可触民]]、アウトカースト)出身の若く美しい女性)、修行者とマハームドラーによって行われた。[[秘密集会タントラ|秘密集会]]に専心することで死後ではなく生きている間に悟ることができると説かれ、象徴を用いた儀礼が悟りに有用であるとされ、象徴するものと象徴されるものとは同一であり、自己の構造を象徴操作を通じて絶対者と相似な状態に再構築することで自己が絶対者と合一(ヨーガ)することができると考えられた<ref name="野口"/>。男性と女性の性的ヨーガの状態が、そのまま悟り([[菩提]])を象徴されるようになり、[[チベット密教]]では悟りそのものを男女の性行為の形態で象徴的に表現する像や図が作成された<ref name="野口">{{cite web| publisher= 野口圭也| title = インド仏教とマンダラ| url = https://www.kongohin.or.jp/wp-content/uploads/column_mandara02.pdf| accessdate = 2020-08-14|date=}}</ref>。出家者が行う性ヨーガは性的な観念を用いたもので実際の性行為は伴わないと考えられるが、こうした性行為の形態の仏像の姿を再現し性行為を伴う性ヨーガを行うこともあったといわれる<ref name="徳法寺"/>。性的実践は主に在家の密教行者によって行われていたと考えられているが、出家者が女性在家信者に性ヨーガの相手を強要することもあった<ref name="徳法寺">{{cite web| publisher= 徳法寺 |author=| title = インド仏教史16 仏教の変遷8 大乗仏教の思想的展開| url = http://tokuhou-ji.com/t_Info_detail_news_tokuhouji.php?InfoID=479&EMPID=26&InfoStageID=11| accessdate = 2020-08-19|date=}}</ref>。
8世紀になると、ヒンドゥー教[[シャークタ派]]のタントラや[[シャクティ]](性力)信仰から影響を受けたとされる、男性原理(精神・理性・方便)と女性原理(肉体・感情・般若)との合一を目指す密教が登場した。これを後期密教といい、後期密教は無上瑜伽密教、タントラ仏教と呼ばれる。なお、後期密教は儒教の強い中国では左道密教と批判され受け入れられなかったため、日本には伝わっていない{{sfn|関|1996}}。後期密教は、解脱のためにあらゆる手段が肯定される解脱至上主義であったため、酒と肉食(悪食)、糞や尿といった不浄物の摂取、貪欲行(性ヨーガ)などの儀礼を行う秘密集会が仏教の正統な修法・行法として定期的に行われた。貪欲行は、男女の集団で、または師と弟子とマハームドラー(明妃、ヨーギニー。性ヨーガの相手として選別された被差別階級([[不可触民]]、アウトカースト)出身の若く美しい女性)、修行者とマハームドラーによって行われた。[[秘密集会タントラ|秘密集会]]に専心することで死後ではなく生きている間に悟ることができると説かれ、象徴を用いた儀礼が悟りに有用であるとされ、象徴するものと象徴されるものとは同一であり、自己の構造を象徴操作を通じて絶対者と相似な状態に再構築することで自己が絶対者と合一(ヨーガ)することができると考えられた<ref name="野口"/>。男性と女性の性的ヨーガの状態が、そのまま悟り([[菩提]])を象徴されるようになり、[[チベット密教]]では悟りそのものを男女の性行為の形態で象徴的に表現する像や図が作成された<ref name="野口">{{cite web| publisher= 野口圭也| title = インド仏教とマンダラ| url = https://www.kongohin.or.jp/wp-content/uploads/column_mandara02.pdf| accessdate = 2020-08-14|date=}}</ref>。出家者が行う性ヨーガは性的な観念を用いたもので実際の性行為は伴わないと考えられるが、こうした性行為の形態の仏像の姿を再現し性行為を伴う性ヨーガを行うこともあったといわれる<ref name="徳法寺"/>。性的実践は主に在家の密教行者によって行われていたと考えられているが、出家者が女性在家信者に性ヨーガの相手を強要することもあった<ref name="徳法寺">{{cite web| publisher= 徳法寺 |author=| title = インド仏教史16 仏教の変遷8 大乗仏教の思想的展開| url = http://tokuhou-ji.com/t_Info_detail_news_tokuhouji.php?InfoID=479&EMPID=26&InfoStageID=11| accessdate = 2020-08-19|date=}}</ref>。


『バガヴァッドギーター』にも『ヨーガスートラ』にもアーサナの記述はあるものの、10世紀に入ってからアーサナの詳しい説明のある文献が現れた<ref name="ヨガジャーナル2020"/>。ハタ・ヨーガは、ちょうど後期密教と同時期に現れた。ヒンドゥー教でもタントラが隆盛し、[[12世紀]]-[[13世紀]]には、[[タントラ]]的な身体観を基礎として、動的なヨーガが出現した。これは[[ハタ・ヨーガ]](力〔ちから〕ヨーガ)と呼ばれている。内容としては印相(ムドラー)や調気法(プラーナーヤーマ)などを重視し、超自然力([[超能力]])や三昧を追求する傾向もある。教典としては『[[ハタ・ヨーガ・プラディーピカー]]』、『[[ゲーランダ・サンヒター]]』、『[[シヴァ・サンヒター]]』がある。15世紀までに、ハタ・ヨーガにおいて84のアーサナが体系化された<ref name="ヨガジャーナル2020"/>。
『バガヴァッドギーター』にも『ヨーガスートラ』にもアーサナの記述はあるものの、10世紀に入ってからアーサナの詳しい説明のある文献が現れた<ref name="ヨガジャーナル2020"/>。ハタ・ヨーガは、ちょうど後期密教と同時期に現れた。ヒンドゥー教でもタントラが隆盛し、[[12世紀]]-[[13世紀]]には、[[タントラ]]的な身体観を基礎として、動的なヨーガが出現した。これは[[ハタ・ヨーガ]](力〔ちから〕ヨーガ)と呼ばれている。内容としては印相(ムドラー)や調気法(プラーナーヤーマ)などを重視し、超自然力([[超能力]])や三昧を追求する傾向もある。教典としては『[[ハタ・ヨーガ・プラディーピカー]]』、『[[ゲーランダ・サンヒター]]』、『[[シヴァ・サンヒター]]』がある。15世紀までに、ハタ・ヨーガにおいて84のアーサナが体系化された<ref name="ヨガジャーナル2020"/>。
144行目: 144行目:


[[File:AYUSH Logo.jpg|thumb|アーユルヴェーダ・ヨーガ・伝統医学を担当する「AYUSH省」{{refn|group=†|name="AYUSH"|AYUSHは、次の頭文字をとった略語。AはAyurveda([[アーユルヴェーダ]])、YはYoga&Naturopathy(ヨーガとナチュロパシー=自然療法)、UはUnani([[ユナニ医学]])、SはSiddha([[シッダ医学]])、HはHomeopathy([[ホメオパシー]])。}}のロゴ]]
[[File:AYUSH Logo.jpg|thumb|アーユルヴェーダ・ヨーガ・伝統医学を担当する「AYUSH省」{{refn|group=†|name="AYUSH"|AYUSHは、次の頭文字をとった略語。AはAyurveda([[アーユルヴェーダ]])、YはYoga&Naturopathy(ヨーガとナチュロパシー=自然療法)、UはUnani([[ユナニ医学]])、SはSiddha([[シッダ医学]])、HはHomeopathy([[ホメオパシー]])。}}のロゴ]]
2016年、[[ユネスコ]]が推進する[[無形文化遺産]]にインド申請枠で登録された<ref>[http://www.unesco.org/culture/ich/en/RL/yoga-01163 Yoga India Inscribed in 2016 (11.COM) on the Representative List of the Intangible Cultural Heritage of Humanity] Intangible Heritage UNWSCO</ref>。それに先立つ2014年、[[ナレンドラ・モディ|モディ政権]]は政府に「ヨーガ・アーユルヴェーダ・伝統医学担当省」(AYUSH省){{refn|group=†|name="AYUSH"}}を設立するとともに、[[国際連合|国連]]加盟各国に働きかけて[[夏至]]の6月21日を「国際ヨガの日」として国連総会で定めることに成功した<ref>{{Cite web |publisher=東京財団|date=2015-03-31 |url=https://www.tkfd.or.jp/research/eurasia/a00750 |title=「ヨガの日」を国連に採択させたインドのソフトパワー外交|accessdate= 2018-03-16}}</ref>。インドの身体文化の世界的盛況は、年間約450万人の外国人観光客が訪れるインド国内の[[観光業|観光産業]]にも波及しており、インド政府は[[観光資源]]の最大の目玉と位置づけ、「国家プロジェクト」として、旅行者の誘致をしている<ref name="加瀬澤">加瀬澤雅人 「身体と医療」『南アジア社会を学ぶ人のために』 世界思想社、2010年。pp. 243-245.</ref><ref name="竹村">{{Cite journal|和書|author=竹村嘉晃 |year=2008 |title=グローバル時代における現代インドのヨーガ受容 |journal=スポーツ人類学研究 |volume=2007(9) |publisher=日本スポーツ人類学会 |naid=130004184353 |pages=29-52}}</ref>。インド政府観光局のキャンペーン・ポスターには、ヨーガのポーズをした女性の写真が使われることが多くなっている<ref name="竹村"/>。
2016年、[[ユネスコ]]が推進する[[無形文化遺産]]にインド申請枠で登録された<ref>[http://www.unesco.org/culture/ich/en/RL/yoga-01163 Yoga India Inscribed in 2016 (11.COM) on the Representative List of the Intangible Cultural Heritage of Humanity] Intangible Heritage UNWSCO</ref>。それに先立つ2014年、[[ナレンドラ・モディ|モディ政権]]は政府に「ヨーガ・アーユルヴェーダ・伝統医学担当省」(AYUSH省){{refn|group=†|name="AYUSH"}}を設立するとともに、[[国際連合|国連]]加盟各国に働きかけて[[夏至]]の6月21日を「国際ヨガの日」として国連総会で定めることに成功した<ref>{{Cite web |publisher=東京財団|date=2015-03-31 |url=https://www.tkfd.or.jp/research/eurasia/a00750 |title=「ヨガの日」を国連に採択させたインドのソフトパワー外交|accessdate= 2018-03-16}}</ref>。インドの身体文化の世界的盛況は、年間約450万人の外国人観光客が訪れるインド国内の[[観光業|観光産業]]にも波及しており、インド政府は[[観光資源]]の最大の目玉と位置づけ、「国家プロジェクト」として、旅行者の誘致をしている<ref name="加瀬澤">加瀬澤雅人 「身体と医療」『南アジア社会を学ぶ人のために』 世界思想社、2010年。pp. 243-245.</ref><ref name="竹村">{{Cite journal|和書|author=竹村嘉晃 |year=2008 |title=グローバル時代における現代インドのヨーガ受容 |journal=スポーツ人類学研究 |volume=2007 |issue=9 |publisher=日本スポーツ人類学会 |naid=130004184353 |doi=10.7192/santhropology.2007.29 |pages=29-52 |url=https://doi.org/10.7192/santhropology.2007.29}}</ref>。インド政府観光局のキャンペーン・ポスターには、ヨーガのポーズをした女性の写真が使われることが多くなっている<ref name="竹村"/>。


グローバルに展開する現代のヨーガの流行は、ヨーガの発祥地であるインドにも影響を与えている<ref name="竹村"/>。インドでは修行者のような一部の人々に実践され、一般の人々には近寄りがたいイメージであったヨーガは、近年、欧米の流行からの逆輸入としてヨーガが再評価され、肥満問題の深刻化する都市部の新興富裕層や中産階級を中心に、ヨーガのリバイバルが起きている<ref name="竹村"/><ref name="加瀬澤"/>。欧米で改良されたエクササイズ的なヨーガは、今日ではインドでも広く受け入れられており、「NY 直輸入」などと謳ったヨーガ教室の看板も多数見られる<ref name="竹村"/><ref name="加瀬澤"/>。
グローバルに展開する現代のヨーガの流行は、ヨーガの発祥地であるインドにも影響を与えている<ref name="竹村"/>。インドでは修行者のような一部の人々に実践され、一般の人々には近寄りがたいイメージであったヨーガは、近年、欧米の流行からの逆輸入としてヨーガが再評価され、肥満問題の深刻化する都市部の新興富裕層や中産階級を中心に、ヨーガのリバイバルが起きている<ref name="竹村"/><ref name="加瀬澤"/>。欧米で改良されたエクササイズ的なヨーガは、今日ではインドでも広く受け入れられており、「NY 直輸入」などと謳ったヨーガ教室の看板も多数見られる<ref name="竹村"/><ref name="加瀬澤"/>。
181行目: 181行目:


=== 近代ヨーガの受容 ===
=== 近代ヨーガの受容 ===
アメリカから書籍で日本に紹介され影響のあったヨーガは自称インド人も多く、戦前はアメリカ白人のものが中心だった<ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/110007701175 吉永進一 『近代日本における神智学思想の歴史] 宗教研究 84(2), 579-601, 2010-09-30 日本宗教学会</ref>。
アメリカから書籍で日本に紹介され影響のあったヨーガは自称インド人も多く、戦前はアメリカ白人のものが中心だった<ref>吉永進一, 「[https://doi.org/10.20716/rsjars.84.2_579 近代日本における神智学思想の歴史(<特集>スピリチュアリティ)]」『宗教研究』 2010年 842 p.579-601, 日本宗教学会, {{naid|110007701175}}, {{doi|10.20716/rsjars.84.2_579}}</ref>。


近代日本におけるヨーガの受容は、1919年に[[中村天風]]が天風会を設立し、ヨーガを「心身統一法」として各界で説法したことに始まる{{sfn|すべて|2006|p=14}}。その後、1940-50年代に[[神智学|神智学者]]の[[三浦関造]]が竜王会を主宰し、「綜合ヨガ」の研修会でアーサナや呼吸法を指導した{{sfn|すべて|2006|p=14}}。この二人が、日本のヨーガの「草分け的存在」とされる{{sfn|すべて|2006|p=14}}。
近代日本におけるヨーガの受容は、1919年に[[中村天風]]が天風会を設立し、ヨーガを「心身統一法」として各界で説法したことに始まる{{sfn|すべて|2006|p=14}}。その後、1940-50年代に[[神智学|神智学者]]の[[三浦関造]]が竜王会を主宰し、「綜合ヨガ」の研修会でアーサナや呼吸法を指導した{{sfn|すべて|2006|p=14}}。この二人が、日本のヨーガの「草分け的存在」とされる{{sfn|すべて|2006|p=14}}。
315行目: 315行目:
[[File:YogaClass.jpg|thumb|ハタ・ヨーガの練習をする人々]]
[[File:YogaClass.jpg|thumb|ハタ・ヨーガの練習をする人々]]
[[File:Yoga Class at a Gym.JPG|thumb|250px|right|スポーツジムのヨーガ教室]]
[[File:Yoga Class at a Gym.JPG|thumb|250px|right|スポーツジムのヨーガ教室]]
近現代に創られた、新たな「[[ハタ・ヨーガ]]」にフィットネス等の要素を取り入れ改良を加えたものが、現代人に人気である。[[B.K.S.アイアンガー]](1918年 - 2014年)によって、滑らない個人用のマット上で実施することや、補助具を利用して安全性や運動の効果を高める工夫がなされた<ref>古田瑞穂「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110008151328 ヨーガの方法とその潮流 : 心身一体となるための身体トレーニング法とは何か]」筑紫女学園大学・筑紫女学園大学短期大学部紀要 6, 265-274, 2011</ref>。
近現代に創られた、新たな「[[ハタ・ヨーガ]]」にフィットネス等の要素を取り入れ改良を加えたものが、現代人に人気である。[[B.K.S.アイアンガー]](1918年 - 2014年)によって、滑らない個人用のマット上で実施することや、補助具を利用して安全性や運動の効果を高める工夫がなされた<ref>古田瑞穂「[http://id.nii.ac.jp/1219/00000126/ ヨーガの方法とその潮流 : 心身一体となるための身体トレーニング法とは何か]」筑紫女学園大学・筑紫女学園大学短期大学部紀要 6 p.265-274, 2011, {{naid|110008151328}}</ref>。


{{Anchors|現代のハタ・ヨーガ}}
{{Anchors|現代のハタ・ヨーガ}}
345行目: 345行目:
==論争・問題==
==論争・問題==
===オウム真理教におけるヨーガによる自己変容体験の悪用===
===オウム真理教におけるヨーガによる自己変容体験の悪用===
[[オウム真理教]]には、ヨーガがきっかけになって入信した信者が多かった。教祖の[[麻原彰晃]]は、[[阿含宗]]での修行ののちに『ヨーガ・スートラ』に出合い、『[[ハタ・ヨーガ・プラディーピカー]]』、『[[ゲーランダ・サンヒター]]』、『[[シヴァ・サンヒター]]』(いずれも[[佐保田鶴治]]訳)と教典をもとに独学し、空中浮揚するまでに至ったという。[[新宗教]]を研究する[[沼田健哉]]は、このように正規の[[グル]]につかずに修行をしていたことで、いわゆる「[[魔境]]」に陥った可能性を指摘し、のちに様々な問題を生ぜしめた要因のひとつであると述べている<ref name=numata>沼田健哉 「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004700873 マインド・コントロールとセルフ・コントロール : オウム真理教事件と関連して]」 桃山学院大学社会学論集 29(2), 61-94, 1995-12-20 桃山学院大学</ref><ref name=numata2>沼田健哉 「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004088027 オウム真理教の研究 : 科学と宗教の関係に関連して]」 総合研究所紀要 22(1), 93-128, 1996-09-30 桃山学院大学</ref>。オウム真理教ではヨーガによる[[クンダリニー]]覚醒の実践が中心的な位置を占めており、沼田は、「ヨーガによる自己変容としての[[解脱]]体験こそ、80年代前半の麻原の宗教的アイデンティティの柱の一つとみなしうる」と述べている。本来ヨーガや瞑想によって常人にない能力を得ることは否定されてはいないが、オウム真理教の信者には[[超能力]]を獲得することを主な目的とする者も少なくなかった<ref name=numata/>。
[[オウム真理教]]には、ヨーガがきっかけになって入信した信者が多かった。教祖の[[麻原彰晃]]は、[[阿含宗]]での修行ののちに『ヨーガ・スートラ』に出合い、『[[ハタ・ヨーガ・プラディーピカー]]』、『[[ゲーランダ・サンヒター]]』、『[[シヴァ・サンヒター]]』(いずれも[[佐保田鶴治]]訳)と教典をもとに独学し、空中浮揚するまでに至ったという。[[新宗教]]を研究する[[沼田健哉]]は、このように正規の[[グル]]につかずに修行をしていたことで、いわゆる「[[魔境]]」に陥った可能性を指摘し、のちに様々な問題を生ぜしめた要因のひとつであると述べている<ref name=numata>沼田健哉 「[http://id.nii.ac.jp/1420/00005686/ マインド・コントロールとセルフ・コントロール : オウム真理教事件と関連して]」桃山学院大学社会学論集 29(2), p.61-94, 1995-12-20 桃山学院大学, {{naid|110004700873}}</ref><ref name=numata2>沼田健哉 「[http://id.nii.ac.jp/1420/00008717/ オウム真理教の研究 : 科学と宗教の関係に関連して]」 総合研究所紀要 22(1), 93-128, 1996-09-30 桃山学院大学, {{naid|110004088027}}</ref>。オウム真理教ではヨーガによる[[クンダリニー]]覚醒の実践が中心的な位置を占めており、沼田は、「ヨーガによる自己変容としての[[解脱]]体験こそ、80年代前半の麻原の宗教的アイデンティティの柱の一つとみなしうる」と述べている。本来ヨーガや瞑想によって常人にない能力を得ることは否定されてはいないが、オウム真理教の信者には[[超能力]]を獲得することを主な目的とする者も少なくなかった<ref name=numata/>。


ヨーガや瞑想などの修行法、断食などの苦行も、本来は真の自己を見出すためのセルフ・コントロールの一種である。沼田は、破壊的[[カルト]]と呼ばれるような新宗教の教団で行われている行為と、東洋の伝統的なヨーガや瞑想などの修行法は似ている部分が少なくないが、行われるコンテクストが異なっていると反対の結果を生じうると述べている。またオウム真理教にみられる強固な教祖 = グル崇拝は、麻原や幹部による洗脳やマインドコントロールをより容易にしたことを指摘している<ref name=numata/>。
ヨーガや瞑想などの修行法、断食などの苦行も、本来は真の自己を見出すためのセルフ・コントロールの一種である。沼田は、破壊的[[カルト]]と呼ばれるような新宗教の教団で行われている行為と、東洋の伝統的なヨーガや瞑想などの修行法は似ている部分が少なくないが、行われるコンテクストが異なっていると反対の結果を生じうると述べている。またオウム真理教にみられる強固な教祖 = グル崇拝は、麻原や幹部による洗脳やマインドコントロールをより容易にしたことを指摘している<ref name=numata/>。
353行目: 353行目:


===指導者の低収入===
===指導者の低収入===
全米ヨガアライアンスの調べでは、ヨーガの指導が主要な収入源となっているインストラクターは30%にも満たない。そのため、コロラド州議会では、ヨーガ講師は職業として認められないという論争があった。<ref name=YTT/>
全米ヨガアライアンスの調べでは、ヨーガの指導が主要な収入源となっているインストラクターは30%にも満たない。そのため、コロラド州議会では、ヨーガ講師は職業として認められないという論争があった。<ref name=YTT/>


===女性への性的虐待===
===女性への性的虐待===
360行目: 360行目:
後期密教で行われた女性を性ヨーガの相手に行う貪欲行について、高野山大学密教文化研究所の静春樹は、性ヨーガの相手を務める女性にとって貪欲行は男性修行者と同じ意味を持つのか、貪欲行は女性が理論構築しイニシアチブを取るわけではなく、性ヨーガの相手の女性は男性修行者が悟るための手段としてだけでなく、彼女にとっても成就の手段であるのか、女神崇拝の大きな潮流の影響を受け女性性を重視しているが、むしろそれが男女の権力関係、男性による女性支配、女性差別を隠す装置になっていないかと問いかけている{{sfn|静|2008}}。後期密教で、出家者は性的ヨーガを主に性的イメージを用いる観想として行ったと考えられているが、時には男性出家者が在家の女性信者に対し、「我が身を捧げる無上の供養」として性ヨーガの相手を強要する破戒行為に及ぶこともあった<ref name="徳法寺"/>。
後期密教で行われた女性を性ヨーガの相手に行う貪欲行について、高野山大学密教文化研究所の静春樹は、性ヨーガの相手を務める女性にとって貪欲行は男性修行者と同じ意味を持つのか、貪欲行は女性が理論構築しイニシアチブを取るわけではなく、性ヨーガの相手の女性は男性修行者が悟るための手段としてだけでなく、彼女にとっても成就の手段であるのか、女神崇拝の大きな潮流の影響を受け女性性を重視しているが、むしろそれが男女の権力関係、男性による女性支配、女性差別を隠す装置になっていないかと問いかけている{{sfn|静|2008}}。後期密教で、出家者は性的ヨーガを主に性的イメージを用いる観想として行ったと考えられているが、時には男性出家者が在家の女性信者に対し、「我が身を捧げる無上の供養」として性ヨーガの相手を強要する破戒行為に及ぶこともあった<ref name="徳法寺"/>。


現代のヨーガの世界でも、男性指導者を教祖や聖者であるかのように思わせる、カリスマ的な物語があふれている<ref name=REMSKI>{{cite web |publisher=The Walrus| title = Yoga's Culture of Sexual Abuse: Nine Women Tell Their Stories(ヨーガのカルチャーにおける性的虐待:9人の女性が語った彼女たちの話)| author=MATTHEW REMSKI|url = https://thewalrus.ca/yogas-culture-of-sexual-abuse-nine-women-tell-their-stories/| accessdate = 2019-01-12|date=2018-04-25}}</ref>。
現代のヨーガの世界でも、男性指導者を教祖や聖者であるかのように思わせる、カリスマ的な物語があふれている<ref name=REMSKI>{{cite web |publisher=The Walrus| title = Yoga's Culture of Sexual Abuse: Nine Women Tell Their Stories(ヨーガのカルチャーにおける性的虐待:9人の女性が語った彼女たちの話)| author=MATTHEW REMSKI|url = https://thewalrus.ca/yogas-culture-of-sexual-abuse-nine-women-tell-their-stories/| accessdate = 2019-01-12|date=2018-04-25}}</ref>。


現代ハタ・ヨーガの一種である{{仮リンク|アヌサラ・ヨーガ|en|Anusara School of Hatha Yoga}}の創始者{{仮リンク|ジョン・フレンド|en|John Friend (yogi)}}は、[[ウイッカ]]の[[カヴン|カブン]]で[[性魔術|魔術的な性関係]]を持ち(セックス・ヨーガを含む[[タントラ]]・ヨーガ([[ネオタントラ]])を指導していたと言われるが、伝統的なものではないと言われる<ref>{{cite web|last=Pitzl-Waters|first=Jason|title=Details of John Friend’s "Blazing Solar Flames" Coven Emerge|url=http://www.patheos.com/blogs/wildhunt/2012/04/details-of-john-friends-blazing-solar-flames-coven-emerge.html/|publisher=Patheos|accessdate=2012-04-16}}</ref><ref>{{cite web| last = YOGA SPOT : Love Live Yoga| title = ジョン・フレンドとアヌサラヨガの暗転からヨガコミュニティーが学べる事| url = http://loveliveyoga.blogspot.jp/2012/02/blog-post.html| accessdate = 2012-02-16 }}</ref><ref name=masala>{{cite web| last = masala life‐ヨガは人生、人生はヨガ| title = アヌサラヨガ:混沌の光と影| url = http://blog.livedoor.jp/masalalife/archives/1647079.html| accessdate = 2012-02-15 }}</ref>)、既婚者を含む関係者や生徒と不適切な性関係を持っていると告発された。このスキャンダルで教師は次々辞職し、ジョン・フレンドは指導者の地位を退いている<ref name=WP>{{cite web| last = WashingtonPost| title = Scandal contorts future of John Friend, Anusara yoga| url = https://www.washingtonpost.com/lifestyle/style/scandal-contorts-future-of-john-friend-anusara-yoga/2012/03/28/gIQAeLVThS_story.html?hpid=z2| accessdate = 2012-03-28 }}</ref><ref>{{cite web| last = YogaDark| title = Running Timeline of Anusara Controversy, Updates and Teacher Resignations| url = http://yogadork.com/2012/02/15/running-timeline-of-anusara-controversy-updates-and-teacher-resignations/| accessdate = 2011-11 }}</ref><ref name=masala>{{cite web| last = masala life‐ヨガは人生、人生はヨガ| title = アヌサラヨガ:混沌の光と影| url = http://blog.livedoor.jp/masalalife/archives/1647079.html| accessdate = 2012-02-15 }}</ref>。(加えて、被雇用者の年金等の雇用条件に関する違法行為の疑惑がある<ref name=WP/><ref name=masala/>。)
現代ハタ・ヨーガの一種である{{仮リンク|アヌサラ・ヨーガ|en|Anusara School of Hatha Yoga}}の創始者{{仮リンク|ジョン・フレンド|en|John Friend (yogi)}}は、[[ウイッカ]]の[[カヴン|カブン]]で[[性魔術|魔術的な性関係]]を持ち(セックス・ヨーガを含む[[タントラ]]・ヨーガ([[ネオタントラ]])を指導していたと言われるが、伝統的なものではないと言われる<ref>{{cite web|last=Pitzl-Waters|first=Jason|title=Details of John Friend’s "Blazing Solar Flames" Coven Emerge|url=http://www.patheos.com/blogs/wildhunt/2012/04/details-of-john-friends-blazing-solar-flames-coven-emerge.html/|publisher=Patheos|accessdate=2012-04-16}}</ref><ref>{{cite web| last = YOGA SPOT : Love Live Yoga| title = ジョン・フレンドとアヌサラヨガの暗転からヨガコミュニティーが学べる事| url = http://loveliveyoga.blogspot.jp/2012/02/blog-post.html| accessdate = 2012-02-16 }}</ref><ref name=masala>{{cite web| last = masala life‐ヨガは人生、人生はヨガ| title = アヌサラヨガ:混沌の光と影| url = http://blog.livedoor.jp/masalalife/archives/1647079.html| accessdate = 2012-02-15 }}</ref>)、既婚者を含む関係者や生徒と不適切な性関係を持っていると告発された。このスキャンダルで教師は次々辞職し、ジョン・フレンドは指導者の地位を退いている<ref name=WP>{{cite web| last = WashingtonPost| title = Scandal contorts future of John Friend, Anusara yoga| url = https://www.washingtonpost.com/lifestyle/style/scandal-contorts-future-of-john-friend-anusara-yoga/2012/03/28/gIQAeLVThS_story.html?hpid=z2| accessdate = 2012-03-28 }}</ref><ref>{{cite web| last = YogaDark| title = Running Timeline of Anusara Controversy, Updates and Teacher Resignations| url = http://yogadork.com/2012/02/15/running-timeline-of-anusara-controversy-updates-and-teacher-resignations/| accessdate = 2011-11 }}</ref><ref name=masala>{{cite web| last = masala life‐ヨガは人生、人生はヨガ| title = アヌサラヨガ:混沌の光と影| url = http://blog.livedoor.jp/masalalife/archives/1647079.html| accessdate = 2012-02-15 }}</ref>。(加えて、被雇用者の年金等の雇用条件に関する違法行為の疑惑がある<ref name=WP/><ref name=masala/>。)
386行目: 386行目:
現代の一般的なヨーガは、十分に訓練されたインストラクターの指導の下で適切に行われる場合、健康な人にとっては安全な身体運動であるとみなされているが、他の運動同様に怪我のリスクはあり、スポーツ障害と同様の肉体的な損傷が生じうるポーズがある<ref name="IJOY2012No2" /><ref name="NTYM01512">{{cite news|title=How Yoga Can Wreck Your Body|url=https://www.nytimes.com/2012/01/08/magazine/how-yoga-can-wreck-your-body.html|accessdate=29 August 2012 |newspaper=The New York Times Magazine|date=5 January 2012 |first=William J. |last=Broad |authorlink=William Broad}}</ref><ref name="Science of Yoga">{{cite book |title=The Science of Yoga The Risks and the Rewards |publisher=Simon & Schuster |isbn=978-1-4516-4142-4 |page=336 |first=William J. |last=Broad |edition=1st |type=hardcover |date=7 February 2012}}</ref><ref name="Guardian011412">{{cite news |title='Yoga can damage your body' article throws exponents off-balance: A $5bn industry is outraged over a New York Times article saying that the keep fit regime is bad for your body |url=https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2012/jan/14/yoga-can-damage-body-row |accessdate=29 August 2012 |newspaper=The Guardian, The Observer|date=14 January 2012|first=Joanna |last=Walters}}</ref>。ヨーガが原因の怪我で最も一般的なものは捻挫と肉離れである<ref name="アメリカ国立補完統合衛生センター"/>。65歳以上の怪我の割合は、若年者より多い<ref name="アメリカ国立補完統合衛生センター"/>。衝撃の大きなスポーツより怪我のリスクは低く、重傷はまれである<ref name="アメリカ国立補完統合衛生センター"/>。
現代の一般的なヨーガは、十分に訓練されたインストラクターの指導の下で適切に行われる場合、健康な人にとっては安全な身体運動であるとみなされているが、他の運動同様に怪我のリスクはあり、スポーツ障害と同様の肉体的な損傷が生じうるポーズがある<ref name="IJOY2012No2" /><ref name="NTYM01512">{{cite news|title=How Yoga Can Wreck Your Body|url=https://www.nytimes.com/2012/01/08/magazine/how-yoga-can-wreck-your-body.html|accessdate=29 August 2012 |newspaper=The New York Times Magazine|date=5 January 2012 |first=William J. |last=Broad |authorlink=William Broad}}</ref><ref name="Science of Yoga">{{cite book |title=The Science of Yoga The Risks and the Rewards |publisher=Simon & Schuster |isbn=978-1-4516-4142-4 |page=336 |first=William J. |last=Broad |edition=1st |type=hardcover |date=7 February 2012}}</ref><ref name="Guardian011412">{{cite news |title='Yoga can damage your body' article throws exponents off-balance: A $5bn industry is outraged over a New York Times article saying that the keep fit regime is bad for your body |url=https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2012/jan/14/yoga-can-damage-body-row |accessdate=29 August 2012 |newspaper=The Guardian, The Observer|date=14 January 2012|first=Joanna |last=Walters}}</ref>。ヨーガが原因の怪我で最も一般的なものは捻挫と肉離れである<ref name="アメリカ国立補完統合衛生センター"/>。65歳以上の怪我の割合は、若年者より多い<ref name="アメリカ国立補完統合衛生センター"/>。衝撃の大きなスポーツより怪我のリスクは低く、重傷はまれである<ref name="アメリカ国立補完統合衛生センター"/>。


オーストラリアのヨーガ関係者の調査によると、回答者の約20%が練習中に何らかの身体的傷害を負っていた<ref name="IJOY2012No2">{{cite journal |last=Penman |first=Stephen |first2=Marc |last2=Cohen |first3= Philip |last3=Stevens |first4= Sue |last4=Jackson|title=Yoga in Australia: Results of a national survey|journal=IJOY, International Journal of Yoga |year=2012 |volume=5 |issue=2 |pages=92–101 |doi=10.4103/0973-6131.98217 |pmid=22869991|pmc=3410203}}</ref>。 過去12か月間で、回答者の4.6%が長期的な痛みのある、または医療による治療が必要な怪我を負っていた<ref name="NTYM01512" />。頭立ち、肩立ち、[[結跏趺坐|蓮華座]]及び半蓮華座、前屈、後屈、倒立が最も多く負傷者を出していた<ref name=IJOY2012No2/>。
オーストラリアのヨーガ関係者の調査によると、回答者の約20%が練習中に何らかの身体的傷害を負っていた<ref name="IJOY2012No2">{{cite journal |last=Penman |first=Stephen |first2=Marc |last2=Cohen |first3= Philip |last3=Stevens |first4= Sue |last4=Jackson|title=Yoga in Australia: Results of a national survey|journal=IJOY, International Journal of Yoga |year=2012 |volume=5 |issue=2 |pages=92-101 |doi=10.4103/0973-6131.98217 |pmid=22869991|pmc=3410203}}</ref>。過去12か月間で、回答者の4.6%が長期的な痛みのある、または医療による治療が必要な怪我を負っていた<ref name="NTYM01512" />。頭立ち、肩立ち、[[結跏趺坐|蓮華座]]及び半蓮華座、前屈、後屈、倒立が最も多く負傷者を出していた<ref name=IJOY2012No2/>。


専門家が指摘するヨーガの悪影響は、初心者の競争心とインストラクターに資格がないことが理由として挙げられる<ref name="NTYM01512" />。教室の需要が高まるにつれて、多くの人が各々の組織や教室でヨーガ・インストラクターとして独自に認定されたが、インストラクターになるのに特別な資格は必要なく、骨格や筋肉など、体の仕組みについての専門知識を学ぶことは義務づけられていない<ref name="NHK2018"/>。新しいインストラクターのすべてが、教室の初心者全員に十分目を配り、けがを防ぐのに適切な指導を行えるわけではない<ref name="NTYM01512" />。同様に初心者は、自分の身体能力を過大評価し、ポーズを行うの十分な柔軟性や筋力を備える前に、高度なポーズができるよう間違った努力をしがちである<ref name="NTYM01512" />。『メディカルヨガ(原題:Yoga as Medicine)』の著者で、「ヨガジャーナル」の編集者である医学博士のティモシー・マッコールは、生徒は怪我をしても「先生を慕っているから、歯を食いしばって大丈夫だと言う。だがひそかに[[整形外科]]に通っているんだ」、そのため、指導者は生徒の怪我の問題を把握できず、生徒を管理しきれないだろうと語っている<ref name=YTT/>。なお、初心者や生徒だけでなく、指導する方・される方の双方がベテランの指導者であっても、不適切なアジャストで大怪我を負うこともある<ref name="大怪我"/>。
専門家が指摘するヨーガの悪影響は、初心者の競争心とインストラクターに資格がないことが理由として挙げられる<ref name="NTYM01512" />。教室の需要が高まるにつれて、多くの人が各々の組織や教室でヨーガ・インストラクターとして独自に認定されたが、インストラクターになるのに特別な資格は必要なく、骨格や筋肉など、体の仕組みについての専門知識を学ぶことは義務づけられていない<ref name="NHK2018"/>。新しいインストラクターのすべてが、教室の初心者全員に十分目を配り、けがを防ぐのに適切な指導を行えるわけではない<ref name="NTYM01512" />。同様に初心者は、自分の身体能力を過大評価し、ポーズを行うの十分な柔軟性や筋力を備える前に、高度なポーズができるよう間違った努力をしがちである<ref name="NTYM01512" />。『メディカルヨガ(原題:Yoga as Medicine)』の著者で、「ヨガジャーナル」の編集者である医学博士のティモシー・マッコールは、生徒は怪我をしても「先生を慕っているから、歯を食いしばって大丈夫だと言う。だがひそかに[[整形外科]]に通っているんだ」、そのため、指導者は生徒の怪我の問題を把握できず、生徒を管理しきれないだろうと語っている<ref name=YTT/>。なお、初心者や生徒だけでなく、指導する方・される方の双方がベテランの指導者であっても、不適切なアジャストで大怪我を負うこともある<ref name="大怪我"/>。


[[File:Vertebral artery.png|right|110px|thumb|ヨーガの練習で裂傷が生じる可能性のある頸部動脈]]
[[File:Vertebral artery.png|right|110px|thumb|ヨーガの練習で裂傷が生じる可能性のある頸部動脈]]
血液を脳に供給する頸部動脈の裂傷である{{仮リンク|椎骨動脈解離|en|Vertebral artery dissection}}は、首を伸ばしながら回すことで起こる可能性があり、幾つかのヨガのポーズで起こりうる。これは非常に深刻な症状であり、血管の裂ける場所や程度によっては、[[脳梗塞]]、[[脳卒中]]、[[くも膜下出血]]等を引き起こすこともある<ref name="AS2000">{{cite journal |last=Biffl |first=Walter L.|first2=Ernest E. |last2=Moore|first3= J. Paul |last3=Elliott |first4= Charles |last4=Ray |first5= Patrick J. |last5=Offner|first6= Reginald J. |last6= Franciose |first7= Kerry E. |last7=Brega |first8=Jon M. |last8=Burch|title=The Devastating Potential of Blunt Vertebral Arterial Injuries |journal=Annals of Surgery|date=May 2000 |volume=231 |issue=5 |pages=672–681 |pmc=1421054 |doi=10.1097/00000658-200005000-00007 |pmid=10767788}}</ref><ref name="PMJ1984">{{cite journal |title=Non-atheromatous causes of cerebral infarction |journal=Postgraduate Medical Journal |date=June 1984 |volume=60 |issue=704 |pages=386–390 |url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2417905/pdf/postmedj00124-0008.pdf |first=E. M. |last=Critchley |pmc=2417905|doi=10.1136/pgmj.60.704.386|pmid=6379628}}</ref><ref>{{cite web |publisher= 済生会| title = 椎骨動脈解離|url = https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/vertebral_artery/| accessdate = 2019-01-13| author=楠勝介}}</ref>。
血液を脳に供給する頸部動脈の裂傷である{{仮リンク|椎骨動脈解離|en|Vertebral artery dissection}}は、首を伸ばしながら回すことで起こる可能性があり、幾つかのヨガのポーズで起こりうる。これは非常に深刻な症状であり、血管の裂ける場所や程度によっては、[[脳梗塞]]、[[脳卒中]]、[[くも膜下出血]]等を引き起こすこともある<ref name="AS2000">{{cite journal |last=Biffl |first=Walter L.|first2=Ernest E. |last2=Moore|first3= J. Paul |last3=Elliott |first4= Charles |last4=Ray |first5= Patrick J. |last5=Offner|first6= Reginald J. |last6= Franciose |first7= Kerry E. |last7=Brega |first8=Jon M. |last8=Burch|title=The Devastating Potential of Blunt Vertebral Arterial Injuries |journal=Annals of Surgery|date=May 2000 |volume=231 |issue=5 |pages=672-681 |pmc=1421054 |doi=10.1097/00000658-200005000-00007 |pmid=10767788}}</ref><ref name="PMJ1984">{{cite journal |title=Non-atheromatous causes of cerebral infarction |journal=Postgraduate Medical Journal |date=June 1984 |volume=60 |issue=704 |pages=386-390 |url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2417905/pdf/postmedj00124-0008.pdf |first=E. M. |last=Critchley |pmc=2417905|doi=10.1136/pgmj.60.704.386|pmid=6379628}}</ref><ref>{{cite web |publisher= 済生会| title = 椎骨動脈解離|url = https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/vertebral_artery/| accessdate = 2019-01-13| author=楠勝介}}</ref>。


[[大腿骨]]と[[股関節]]を結ぶ股関節唇(こかんせつしん:臼蓋部分を覆う軟骨の一種)損傷は、股関節を大きく開く動きをするスポーツなどで多く見受けられるが、ヨーガの練習で生じたという報告がある<ref name="CiOS2009">{{cite journal |last=Kang |first=Chan |first2=Deuk-Soo |last2=Hwang |first3=Soo-Min |last3=Cha |title=Acetabular Labral Tears in Patients with Sports Injury|journal=Clinics in Sports Injury |date=December 2009 |volume=1|issue=4 |pages=230–235 |doi=10.4055/cios.2009.1.4.230|pmc=2784964 |pmid=19956481}}</ref><ref>{{cite web |publisher= 人工関節と関節痛の情報サイト 【関節が痛い.com】| title = 先生があなたに伝えたいこと / 【後藤 公志】老後まできれいな姿勢で、健康的に歩いてほしいと願って治療にあたっています。|url = https://www.kansetsu-itai.com/doctor/doc084.php| accessdate = 2019-01-13|date=2018-10-14}}</ref>。ヨーガの練習で股関節に筋断裂、大腿骨骨挫傷、股関節唇損傷の大怪我を負った現役講師は、原因はポーズの指導で受けた強いアジャストであり、指導者によるアジャストの負荷が自分の限界を超えていたことはわかったが、強い力で固定されて逃げ場がなく、痛みを訴える言葉も聞き流されてしまったと語っている<ref name="大怪我">{{cite web |publisher= ヨガジャーナルオンライン| title = アジャストメントに潜む罠 現役ヨガ講師が大怪我を通して感じたこと|url = https://yogajournal.jp/2300| accessdate = 2019-01-13|date=2018-10-14}}</ref><ref name="NHK2018"/>。
[[大腿骨]]と[[股関節]]を結ぶ股関節唇(こかんせつしん:臼蓋部分を覆う軟骨の一種)損傷は、股関節を大きく開く動きをするスポーツなどで多く見受けられるが、ヨーガの練習で生じたという報告がある<ref name="CiOS2009">{{cite journal |last=Kang |first=Chan |first2=Deuk-Soo |last2=Hwang |first3=Soo-Min |last3=Cha |title=Acetabular Labral Tears in Patients with Sports Injury|journal=Clinics in Sports Injury |date=December 2009 |volume=1|issue=4 |pages=230-235 |doi=10.4055/cios.2009.1.4.230|pmc=2784964 |pmid=19956481}}</ref><ref>{{cite web |publisher= 人工関節と関節痛の情報サイト 【関節が痛い.com】| title = 先生があなたに伝えたいこと / 【後藤 公志】老後まできれいな姿勢で、健康的に歩いてほしいと願って治療にあたっています。|url = https://www.kansetsu-itai.com/doctor/doc084.php| accessdate = 2019-01-13|date=2018-10-14}}</ref>。ヨーガの練習で股関節に筋断裂、大腿骨骨挫傷、股関節唇損傷の大怪我を負った現役講師は、原因はポーズの指導で受けた強いアジャストであり、指導者によるアジャストの負荷が自分の限界を超えていたことはわかったが、強い力で固定されて逃げ場がなく、痛みを訴える言葉も聞き流されてしまったと語っている<ref name="大怪我">{{cite web |publisher= ヨガジャーナルオンライン| title = アジャストメントに潜む罠 現役ヨガ講師が大怪我を通して感じたこと|url = https://yogajournal.jp/2300| accessdate = 2019-01-13|date=2018-10-14}}</ref><ref name="NHK2018"/>。


日本でもヨーガのブームによる教室の急増で被害の訴えが増加しており、[[国民生活センター]]には、「肩の腱板(肩甲骨と腕の骨をつなぐ重要な腱)を損傷した」、「運動中に圧迫骨折した」など、重大な怪我をしたという相談があり、ホットヨーガで「アレルギー症状が出た」、「じんましんになった」、「皮膚がただれた」等の訴えもある<ref name="NHK2018"/>。
日本でもヨーガのブームによる教室の急増で被害の訴えが増加しており、[[国民生活センター]]には、「肩の腱板(肩甲骨と腕の骨をつなぐ重要な腱)を損傷した」、「運動中に圧迫骨折した」など、重大な怪我をしたという相談があり、ホットヨーガで「アレルギー症状が出た」、「じんましんになった」、「皮膚がただれた」等の訴えもある<ref name="NHK2018"/>。
412行目: 412行目:
* [[中村天風]](1876年 - 1968年、男性):ヨーガ行者、自己啓発講演家。日本のヨーガの「草分け的存在」の一人。
* [[中村天風]](1876年 - 1968年、男性):ヨーガ行者、自己啓発講演家。日本のヨーガの「草分け的存在」の一人。
* {{仮リンク|ミラ・アルファッサ|en|Mirra Alfassa}}(ミラ・リチャード、1878年 - 1973年、女性):オーロビンド・ゴーシュの後継者でインテグラル・ヨーガを普及。フランス人。
* {{仮リンク|ミラ・アルファッサ|en|Mirra Alfassa}}(ミラ・リチャード、1878年 - 1973年、女性):オーロビンド・ゴーシュの後継者でインテグラル・ヨーガを普及。フランス人。
* {{仮リンク|レクラージ・クリバラーニ|en|Dada Lekhraj}}(1876年 1969年、男性):元宝石商。[[ブラーマ・クマリス]]を創始。
* {{仮リンク|レクラージ・クリバラーニ|en|Dada Lekhraj}}(1876年 - 1969年、男性):元宝石商。[[ブラーマ・クマリス]]を創始。
* {{仮リンク|ヘレナ・レーリヒ|en|Helena Roerich}}(1879年 - 1955年、女性):ロシア人神智学徒。夫とともにアグニ・ヨーガを創始。
* {{仮リンク|ヘレナ・レーリヒ|en|Helena Roerich}}(1879年 - 1955年、女性):ロシア人神智学徒。夫とともにアグニ・ヨーガを創始。
* [[ラマナ・マハルシ]](1879年 - 1950年、男性):南インドの聖者。
* [[ラマナ・マハルシ]](1879年 - 1950年、男性):南インドの聖者。
* {{仮リンク|スワーミー・クヴァラヤーナンダ|en|Swami Kuvalayananda}}(1883年 1966年、男性):現代ヨーガとヨーガの科学的研究のパイオニアの一人。 {{仮リンク|カイヴァリヤダーマ健康・ヨーガ研究所|en|Kaivalyadhama Health and Yoga Research Center}}を設立。
* {{仮リンク|スワーミー・クヴァラヤーナンダ|en|Swami Kuvalayananda}}(1883年 - 1966年、男性):現代ヨーガとヨーガの科学的研究のパイオニアの一人。{{仮リンク|カイヴァリヤダーマ健康・ヨーガ研究所|en|Kaivalyadhama Health and Yoga Research Center}}を設立。
* [[三浦関造]](1883年 - 1960年、男性):神智学徒。日本のヨーガの「草分け的存在」の一人。
* [[三浦関造]](1883年 - 1960年、男性):神智学徒。日本のヨーガの「草分け的存在」の一人。
* {{仮リンク|シヴァーナンダ|en|Sivananda Saraswati}}(1887年 - 1963年、男性):{{仮リンク|シヴァナンダ・ヨーガ|en|Sivananda yoga}}を創始し、ヴェーダーンタ思想やヨーガの本を多数執筆。
* {{仮リンク|シヴァーナンダ|en|Sivananda Saraswati}}(1887年 - 1963年、男性):{{仮リンク|シヴァナンダ・ヨーガ|en|Sivananda yoga}}を創始し、ヴェーダーンタ思想やヨーガの本を多数執筆。
* {{仮リンク|ティルマライ・クリシュナマチャーリヤ|en|Tirumalai Krishnamacharya}}(1888年 - 1989年、男性):「現代ヨーガの父」と呼ばれる。
* {{仮リンク|ティルマライ・クリシュナマチャーリヤ|en|Tirumalai Krishnamacharya}}(1888年 - 1989年、男性):「現代ヨーガの父」と呼ばれる。
* {{仮リンク|マルグリット・アニエル|en|Marguerite Agniel}}(1891年 1971年、女性):ブロードウェイの女優・ダンサー。女性が裸でアーサナをするヌード作品を発表。
* {{仮リンク|マルグリット・アニエル|en|Marguerite Agniel}}(1891年 - 1971年、女性):ブロードウェイの女優・ダンサー。女性が裸でアーサナをするヌード作品を発表。
* [[パラマハンサ・ヨガナンダ]](1893年 - 1952年、男性):{{仮リンク|クリヤー・ヨーガ|en|Kriya Yoga}}を西洋に紹介し、アメリカのヨーガ文化に多大な影響を与える。
* [[パラマハンサ・ヨガナンダ]](1893年 - 1952年、男性):{{仮リンク|クリヤー・ヨーガ|en|Kriya Yoga}}を西洋に紹介し、アメリカのヨーガ文化に多大な影響を与える。
*{{仮リンク|アーナンダ・マイー・マー|en|Anandamayi Ma}}(1896年 1982年、女性{{sfn|山下|2009|pp=184-185}}):ベンガルの聖者。
*{{仮リンク|アーナンダ・マイー・マー|en|Anandamayi Ma}}(1896年 - 1982年、女性{{sfn|山下|2009|pp=184-185}}):ベンガルの聖者。
*[[A・C・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダ]](1896年 - 1977年、男性):[[クリシュナ意識国際協会]]の創設者。クリシュナへのバクティ運動を世界的に展開。
*[[A・C・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダ]](1896年 - 1977年、男性):[[クリシュナ意識国際協会]]の創設者。クリシュナへのバクティ運動を世界的に展開。
*{{仮リンク|シュリー・ヨーゲーンドラ|en|Shri Yogendra}}(1897年 1989年、男性):現代ヨーガのパイオニアの一人で、現代ハタ・ヨーガ成立の立役者。{{仮リンク|ヨーガ研究所|en|The Yoga Institute}}を設立。
*{{仮リンク|シュリー・ヨーゲーンドラ|en|Shri Yogendra}}(1897年 - 1989年、男性):現代ヨーガのパイオニアの一人で、現代ハタ・ヨーガ成立の立役者。{{仮リンク|ヨーガ研究所|en|The Yoga Institute}}を設立。
*{{仮リンク|K・V・アイヤー|en|KV Iyer}}(1897年 1980年、男性):[[ボディビルダー]]、体操選手。シータラマン・スンダラムと共に、運動のシステムとして現代ヨーガを発展させ、普及に貢献。
*{{仮リンク|K・V・アイヤー|en|KV Iyer}}(1897年 - 1980年、男性):[[ボディビルダー]]、体操選手。シータラマン・スンダラムと共に、運動のシステムとして現代ヨーガを発展させ、普及に貢献。
* [[佐保田鶴治]](1899年 - 1986年、男性):インド哲学の権威で日本のヨーガの「草分け的存在」の一人。
* [[佐保田鶴治]](1899年 - 1986年、男性):インド哲学の権威で日本のヨーガの「草分け的存在」の一人。
* {{仮リンク|シータラマン・スンダラム|en|Seetharaman Sundaram}}(1901年 - 1994年、男性):現代ヨーガのパイオニアの一人、弁護士。写真でアーサナを示す初のヨーガガイド本を出版。
* {{仮リンク|シータラマン・スンダラム|en|Seetharaman Sundaram}}(1901年 - 1994年、男性):現代ヨーガのパイオニアの一人、弁護士。写真でアーサナを示す初のヨーガガイド本を出版。
* [[ゴーピ・クリシュナ]](1903年 - 1984年、男性):クンダリニーの覚醒体験を西洋に紹介し、クンダリニー・ヨーガへの興味を掻き立てた。
* [[ゴーピ・クリシュナ]](1903年 - 1984年、男性):クンダリニーの覚醒体験を西洋に紹介し、クンダリニー・ヨーガへの興味を掻き立てた。
*{{仮リンク|ヴィシュヌ・チャラン・ゴーシュ|en|Bishnu Charan Ghosh}}(1903年 - 1970年、男性):パラマハンサ・ヨガナンダの弟でハタ・ヨーギー、ボディビルダー。
*{{仮リンク|ヴィシュヌ・チャラン・ゴーシュ|en|Bishnu Charan Ghosh}}(1903年 - 1970年、男性):パラマハンサ・ヨガナンダの弟でハタ・ヨーギー、ボディビルダー。
* {{仮リンク|テオス・カシミール・バーナード|en|Theos Casimir Bernard}}(1908年 1947年、男性):ヨーガとチベット仏教をテーマにした探検家・著作家。アメリカ人。
* {{仮リンク|テオス・カシミール・バーナード|en|Theos Casimir Bernard}}(1908年 - 1947年、男性):ヨーガとチベット仏教をテーマにした探検家・著作家。アメリカ人。
* {{仮リンク|サッチナンダ|en|Satchidananda Saraswati}}(1914年 - 2002年、男性):インテグラル・ヨーガの創始者{{refn|group=†|オーロビンド・ゴーシュのインテグラル・ヨーガとは別。}}。シヴァーナンダの弟子。
* {{仮リンク|サッチナンダ|en|Satchidananda Saraswati}}(1914年 - 2002年、男性):インテグラル・ヨーガの創始者{{refn|group=†|オーロビンド・ゴーシュのインテグラル・ヨーガとは別。}}。シヴァーナンダの弟子。
* {{仮リンク|パッタビ・ジョイス|en|K. Pattabhi Jois}}(1915年 2009年、男性):アシュターンガ・ヴィニヤーサ・ヨーガの創始者。クリシュナマチャーリヤの弟子。
* {{仮リンク|パッタビ・ジョイス|en|K. Pattabhi Jois}}(1915年 - 2009年、男性):アシュターンガ・ヴィニヤーサ・ヨーガの創始者。クリシュナマチャーリヤの弟子。
* {{仮リンク|シュリー・マータージー・ニルマラー・デーヴィー|en|Nirmala Srivastava}}(ニルマラー・スリヴァスターヴァ、1915年 2009年、女性):クンダリニーの覚醒を目指す新宗教運動{{仮リンク|サハジャ・ヨーガ|en|Sahaja Yoga}}を設立。元ラジニーシの弟子。
* {{仮リンク|シュリー・マータージー・ニルマラー・デーヴィー|en|Nirmala Srivastava}}(ニルマラー・スリヴァスターヴァ、1915年 - 2009年、女性):クンダリニーの覚醒を目指す新宗教運動{{仮リンク|サハジャ・ヨーガ|en|Sahaja Yoga}}を設立。元ラジニーシの弟子。
* [[マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー]](マハルシ・マハーシュ・ヨーギー、1917年 - 2008年、男性):[[超越瞑想]]の創始者。{{仮リンク|スワミ・ブラフマナンダ・サラスワティ|en|Brahmananda Saraswati}}の弟子。
* [[マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー]](マハルシ・マハーシュ・ヨーギー、1917年 - 2008年、男性):[[超越瞑想]]の創始者。{{仮リンク|スワミ・ブラフマナンダ・サラスワティ|en|Brahmananda Saraswati}}の弟子。
* [[B.K.S.アイアンガー]](B.K.S.アイヤンガール、1918年 - 2014年、男性): {{仮リンク|アイアンガー・ヨーガ|en|Iyengar Yoga}}の創始者でクリシュナマチャーリヤの義弟・弟子。
* [[B.K.S.アイアンガー]](B.K.S.アイヤンガール、1918年 - 2014年、男性): {{仮リンク|アイアンガー・ヨーガ|en|Iyengar Yoga}}の創始者でクリシュナマチャーリヤの義弟・弟子。
443行目: 443行目:
* {{仮リンク|ヴィシュヌデヴァーナンダ|en|Vishnudevananda Saraswati}}(1927年 - 1993年):シヴァーナンダの弟子。西洋で最初期のヨーガ教師トレーニングプログラムを創始。
* {{仮リンク|ヴィシュヌデヴァーナンダ|en|Vishnudevananda Saraswati}}(1927年 - 1993年):シヴァーナンダの弟子。西洋で最初期のヨーガ教師トレーニングプログラムを創始。
* {{仮リンク|マルシア・ムーア|en|Marcia Moore}}(1928年 - 1979年、女性):ヨーガ指導者、占星術師。ヴィシュヌデヴァーナンダの弟子。シヴァーナンダ・ヨーガ・ヴェーダーンタ・センターを開設。
* {{仮リンク|マルシア・ムーア|en|Marcia Moore}}(1928年 - 1979年、女性):ヨーガ指導者、占星術師。ヴィシュヌデヴァーナンダの弟子。シヴァーナンダ・ヨーガ・ヴェーダーンタ・センターを開設。
* {{仮リンク|ヨギ・パジャン|en|Harbhajan Singh Khalsa}}(ハルバジャン・シン・カルサ、1929年 2004年、男性):アメリカにクンダリニー・ヨーガを紹介。[[シク教]]の指導者。阿含宗にヨーガを指導。
* {{仮リンク|ヨギ・パジャン|en|Harbhajan Singh Khalsa}}(ハルバジャン・シン・カルサ、1929年 - 2004年、男性):アメリカにクンダリニー・ヨーガを紹介。[[シク教]]の指導者。阿含宗にヨーガを指導。
* [[バグワン・シュリ・ラジニーシ]](バグワーン・シュリー・ラジニーシュ、1931年 - 1990年、男性):和尚ラジニーシ運動の教祖。
* [[バグワン・シュリ・ラジニーシ]](バグワーン・シュリー・ラジニーシュ、1931年 - 1990年、男性):和尚ラジニーシ運動の教祖。
* [[シュリ・チンモイ]](1931年 - 2007年、男性):アメリカでヨーガを指導。オーロビンド・ゴーシュの弟子。
* [[シュリ・チンモイ]](1931年 - 2007年、男性):アメリカでヨーガを指導。オーロビンド・ゴーシュの弟子。
* {{仮リンク|リン・マーシャル|en|Lyn Marshall}}(1944年 1992年、女性):イギリスのヨーガ指導者、現代ヨーガの番組のホストを務め普及に寄与。
* {{仮リンク|リン・マーシャル|en|Lyn Marshall}}(1944年 - 1992年、女性):イギリスのヨーガ指導者、現代ヨーガの番組のホストを務め普及に寄与。
* [[麻原彰晃]](1955年 - 2018年、男性):[[オウム真理教]]教祖。死刑。
* [[麻原彰晃]](1955年 - 2018年、男性):[[オウム真理教]]教祖。死刑。


452行目: 452行目:
'''存命人物'''
'''存命人物'''
{{columns-list|2|
{{columns-list|2|
* [[山口恵照]](1918年 - 、男性) - 理論家。古代インド哲学、サーンキヤ哲学研究者。
* [[山口恵照]](1918年 -、男性) - 理論家。古代インド哲学、サーンキヤ哲学研究者。
* {{仮リンク|アムリット・デサイ|en|Amrit Desai}}(1932年 - 、男性):西洋ヨガのパイオニアの一人。現代ハタ・ヨーガの一形式であるクリパル・ヨーガを創始。{{仮リンク|クリパルヴァーナーンダ|en|Kripalvananda}}(スワミ・クリパル)の弟子。
* {{仮リンク|アムリット・デサイ|en|Amrit Desai}}(1932年 -、男性):西洋ヨガのパイオニアの一人。現代ハタ・ヨーガの一形式であるクリパル・ヨーガを創始。{{仮リンク|クリパルヴァーナーンダ|en|Kripalvananda}}(スワミ・クリパル)の弟子。
* {{仮リンク|スリーヴァッサ・ラマスワミ|en|Srivatsa Ramaswami}}(1939年 - 、男性):ヴィンヤサ・クラマ・ヨーガの指導者。クリシュナマチャーリヤの弟子。
* {{仮リンク|スリーヴァッサ・ラマスワミ|en|Srivatsa Ramaswami}}(1939年 -、男性):ヴィンヤサ・クラマ・ヨーガの指導者。クリシュナマチャーリヤの弟子。
* {{仮リンク|アンジェラ・ファーマー|en|Angela Farmer}}(1939年 - 、女性):ヨガマットの考案者。B.K.S.アイアンガーの弟子。
* {{仮リンク|アンジェラ・ファーマー|en|Angela Farmer}}(1939年 -、女性):ヨガマットの考案者。B.K.S.アイアンガーの弟子。
* {{仮リンク|グルムク・カウル・カルサ|en|Gurmukh (yoga teacher)}}(1943年 - 、女性):ヨギ・パジャンにクンダリニー・ヨーガを学ぶ。妊婦向けヨーガのパイオニア。
* {{仮リンク|グルムク・カウル・カルサ|en|Gurmukh (yoga teacher)}}(1943年 -、女性):ヨギ・パジャンにクンダリニー・ヨーガを学ぶ。妊婦向けヨーガのパイオニア。
* [[相川圭子 (ヨーガ)|相川圭子]](1945年 - 、女性)
* [[相川圭子 (ヨーガ)|相川圭子]](1945年 -、女性)
* [[川上光正]](1938年 - 、男性)
* [[川上光正]](1938年 -、男性)
* {{仮リンク|ベリル・ベンダー・バーチ|en|Beryl Bender Birch}}(1942年 -、女性):パワー・ヨーガの一形式の創始者。パッタビ・ジョイスの弟子ノーマン・アレンに学ぶ。
* {{仮リンク|ベリル・ベンダー・バーチ|en|Beryl Bender Birch}}(1942年 -、女性):パワー・ヨーガの一形式の創始者。パッタビ・ジョイスの弟子ノーマン・アレンに学ぶ。
* [[ジョン・カバット・ジン]](1944年 - 、男性):生物学者・心理学者。痛みの緩和を目的に{{仮リンク|マインドフル・ヨーガ|en|Mindful Yoga}}を含む[[マインドフルネスストレス低減法]]を創始。
* [[ジョン・カバット・ジン]](1944年 -、男性):生物学者・心理学者。痛みの緩和を目的に{{仮リンク|マインドフル・ヨーガ|en|Mindful Yoga}}を含む[[マインドフルネスストレス低減法]]を創始。
* {{仮リンク|ビクラム・チョードリー|en|Bikram Choudhury}}(1944年 - 、男性):ビクラム・ヨガの創始者で、ホット・ヨーガのパイオニアの一人。ヴィシュヌ・チャラン・ゴーシュの弟子。
* {{仮リンク|ビクラム・チョードリー|en|Bikram Choudhury}}(1944年 -、男性):ビクラム・ヨガの創始者で、ホット・ヨーガのパイオニアの一人。ヴィシュヌ・チャラン・ゴーシュの弟子。
* [[成瀬雅春]](1946年 - 、男性)
* [[成瀬雅春]](1946年 -、男性)
* {{仮リンク|ジュディス・ハンソン・ラサター|en|Judith Hanson Lasater}}(1947年 - 、女性):理学療法士。{{仮リンク|リストラティブ・ヨーガ|en|Judith Hanson Lasater}}を創始。B.K.S.アイアンガーの弟子。
* {{仮リンク|ジュディス・ハンソン・ラサター|en|Judith Hanson Lasater}}(1947年 -、女性):理学療法士。{{仮リンク|リストラティブ・ヨーガ|en|Judith Hanson Lasater}}を創始。B.K.S.アイアンガーの弟子。
* {{仮リンク|シャロン・ギャノン|en|Sharon Gannon}}(1951年 - 、女性):デヴィッド・ライフと共に{{仮リンク|ジバムクティ・ヨーガ|en|Jivamukti Yoga}}を創始。シヴァーナンダのトレーニングプログラム、パッタビ・ジョイスに学ぶ。
* {{仮リンク|シャロン・ギャノン|en|Sharon Gannon}}(1951年 -、女性):デヴィッド・ライフと共に{{仮リンク|ジバムクティ・ヨーガ|en|Jivamukti Yoga}}を創始。シヴァーナンダのトレーニングプログラム、パッタビ・ジョイスに学ぶ。
* {{仮リンク|ジョン・フレンド|en|John Friend (yogi)}}(1959年 - 、男性):{{仮リンク|アヌサラ・ヨーガ|en|Anusara School of Hatha Yoga}}の創始者。パッタビ・ジョイス、B.K.S.アイアンガーに学ぶ。
* {{仮リンク|ジョン・フレンド|en|John Friend (yogi)}}(1959年 -、男性):{{仮リンク|アヌサラ・ヨーガ|en|Anusara School of Hatha Yoga}}の創始者。パッタビ・ジョイス、B.K.S.アイアンガーに学ぶ。
* {{仮リンク|ブライアン・ケスト|en|Bryan Kest}}(1964年 - 、男性):パワー・ヨーガの一形式の創始者。デイヴィッド・ウィリアムズ、パッタビ・ジョイスに学ぶ。
* {{仮リンク|ブライアン・ケスト|en|Bryan Kest}}(1964年 -、男性):パワー・ヨーガの一形式の創始者。デイヴィッド・ウィリアムズ、パッタビ・ジョイスに学ぶ。
* {{仮リンク|ポーリー・ジンク|en|Paulie Zink}}(男性):ハタ・ヨーガに道教を取り入れ陰ヨーガを創始。
* {{仮リンク|ポーリー・ジンク|en|Paulie Zink}}(男性):ハタ・ヨーガに道教を取り入れ陰ヨーガを創始。
* {{仮リンク|レイチェル・ブラゼン|en|Rachel Brathen}}(女性):ヨーガ指導者、ベストセラー「Yoga Girl」の著者。
* {{仮リンク|レイチェル・ブラゼン|en|Rachel Brathen}}(女性):ヨーガ指導者、ベストセラー「Yoga Girl」の著者。
479行目: 479行目:


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book ja-jp |editor=[[宇野精一]]、[[中村元]]、[[玉城康四郎]]|chapter= |title =講座 東洋思想 1 インド思想 |publisher=東京大学出版会|year=1967}}
* {{Cite book ja-jp |editor=[[宇野精一]]、[[中村元]]、[[玉城康四郎]] |chapter= |title =講座 東洋思想 1 インド思想 |publisher=東京大学出版会 |year=1967}}
**{{Cite journal|和書|ref={{Harvid|今西|1967}} |author|author=[[今西順吉]] 執筆|title = 第4章 バラモン思想の諸体系 第二節 ヨーガ}}
**{{Cite journal|和書|ref={{Harvid|今西 |1967}} |author |author=[[今西順吉]] 執筆 |title=第4章 バラモン思想の諸体系 第二節 ヨーガ}}
**{{Cite journal|和書|ref={{Harvid|奈良|1967}} |author|author=[[奈良康明]] 執筆|title = 第5章 ヒンドゥー教}}
**{{Cite journal|和書|ref={{Harvid|奈良 |1967}} |author |author=[[奈良康明]] 執筆 |title=第5章 ヒンドゥー教}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|佐保田|1973}} |author=[[佐保田鶴治]] |title=ヨーガ根本教典 |publisher=平河出版社 |year=1973 |isbn=4-89203-019-8}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|佐保田 |1973}} |author=[[佐保田鶴治]] |title=ヨーガ根本教典 |publisher=平河出版社 |year=1973 |isbn=4-89203-019-8}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|佐保田|1976}} |author=佐保田鶴治 |title=ヨーガの宗教理念 |publisher=平河出版社 |year=1976 |isbn=4-89203-021-X}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|佐保田 |1976}} |author=佐保田鶴治 |title=ヨーガの宗教理念 |publisher=平河出版社 |year=1976 |isbn=4-89203-021-X}}
* {{Cite book ja-jp |author=[[湯浅泰雄]]|title =身体 東洋的身心論の試み |series=叢書 身体の思想 4 |publisher=創文社|year=1977|ref={{Harvid|湯浅|1977}}}}
* {{Cite book ja-jp |author=[[湯浅泰雄]] |title =身体 東洋的身心論の試み |series=叢書 身体の思想 4 |publisher=創文社 |year=1977 |ref={{Harvid|湯浅 |1977}}}}
*{{Cite journal ja-jp|author = 瀬古康雄|year = 1978|title =インドの固有信仰と初期ヒンドゥ教(その2) : バクティ・ヨーガの形成について|journal = 島根女子短期大学紀要|serial = 16|publisher = 島根県立大学短期大学部|naid = 110004782021|pages = 131-139|ref={{Harvid|瀬古|1978}}}}
*{{Cite journal ja-jp |author=瀬古康雄 |year=1978 |title =インドの固有信仰と初期ヒンドゥ教(その2) : バクティ・ヨーガの形成について |url=http://id.nii.ac.jp/1377/00000436/ |journal=島根女子短期大学紀要 |serial=16 |publisher=島根県立大学短期大学部 |naid=110004782021 |pages=131-139 |ref={{Harvid|瀬古 |1978}}}}
* {{Cite book ja-jp |author=[[原実]]、[[早島鏡正]]、[[前田専学]]、[[高崎直道]] |title =インド思想史 |publisher=東京大学出版会|year=1982}}
* {{Cite book ja-jp |author=[[原実]]、[[早島鏡正]]、[[前田専学]]、[[高崎直道]] |title =インド思想史 |publisher=東京大学出版会 |year=1982}}
** {{Cite journal|和書||ref={{Harvid|原|1982}}|author=原実|title = タントリズム}}
** {{Cite journal|和書|ref={{Harvid|原 |1982}} |author=原実 |title=タントリズム}}
** {{Cite journal|和書||ref={{Harvid|前田|1982}}|author=前田専学|title = 正統バラモン系統の諸体系}}
** {{Cite journal|和書|ref={{Harvid|前田 |1982}} |author=前田専学 |title=正統バラモン系統の諸体系}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|佐保田|1983}} |author=佐保田鶴治 |title=解説ヨーガ・スートラ |publisher=平河出版社 |year=1983|isbn=4-89203-031-7}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|佐保田 |1983}} |author=佐保田鶴治 |title=解説ヨーガ・スートラ |publisher=平河出版社 |year=1983 |isbn=4-89203-031-7}}
* {{Cite journal |和書 |author =瀬古康雄|title =『カタ・ウパニシャッド』における心身論 : ヴェーダーンタの一元論とサーンキヤの二元論の比較研究|date = 1986|publisher = 島根県立大学短期大学部|journal = 島根女子短期大学紀要|naid =110004782123 |volume = 24 |pages = 37-46|ref={{Harvid|瀬古|1986}} }}
* {{Cite journal|和書|author =瀬古康雄 |title =『カタ・ウパニシャッド』における心身論 : ヴェーダーンタの一元論とサーンキヤの二元論の比較研究 |url=http://id.nii.ac.jp/1377/00000441/ |date=1986 |publisher=島根県立大学短期大学部 |journal=島根女子短期大学紀要 |naid =110004782123 |volume=24 |pages=37-46 |ref={{Harvid|瀬古 |1986}} }}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|エリアーデ, 立川訳|1987}} |author=[[ミルチャ・エリアーデ]] |others=立川武蔵訳 |title=エリアーデ著作集 第10巻 ヨーガ2 |publisher=[[せりか書房]] |year=1987 |isbn=4-7967-0087-0}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|エリアーデ, 立川訳 |1987}} |author=[[ミルチャ・エリアーデ]] |others=立川武蔵訳 |title=エリアーデ著作集 第10巻 ヨーガ2 |publisher=[[せりか書房]] |year=1987 |isbn=4-7967-0087-0}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|川崎|1993}} |author=[[川崎信定]] |title=インドの思想 |publisher=[[放送大学教育振興会]] |year=1993 |isbn=4-595-21344-1}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|川崎 |1993}} |author=[[川崎信定]] |title=インドの思想 |publisher=[[放送大学教育振興会]] |year=1993 |isbn=4-595-21344-1}}
* {{Cite book|和書 |others=増田秀光・山本尚幸 編集デスク |title=ヒンドゥー教の本|publisher=学習研究社|year=1995}}
* {{Cite book|和書|others=増田秀光・山本尚幸 編集デスク |title=ヒンドゥー教の本 |publisher=学習研究社 |year=1995}}
**{{Cite journal|和書|ref={{Harvid|藤巻|1995}} |author|author=藤巻一保 執筆|title =宇宙創造のシステム}}
**{{Cite journal|和書|ref={{Harvid|藤巻 |1995}} |author |author=藤巻一保 執筆 |title =宇宙創造のシステム}}
**{{Cite journal|和書|ref={{Harvid|吉田|1995}} |author|author=吉田邦博 執筆|title =ヨーガの修道論}}
**{{Cite journal|和書|ref={{Harvid|吉田 |1995}} |author |author=吉田邦博 執筆 |title =ヨーガの修道論}}
*{{Cite journal ja-jp|author = 正木晃|year = 1996|title =快楽と叡智|journal = 現代生命論研究|serial = 9|publisher = 国際日本文化研究センター|naid = |pages = 191 - 205|ref={{Harvid|正木|1996}}}}
*{{Cite journal ja-jp |author=正木晃 |year=1996 |title =快楽と叡智 |journal=現代生命論研究 |serial=9 |publisher=国際日本文化研究センター |naid=| pages=191 - 205 |ref={{Harvid|正木 |1996}}}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|田中|1997}} |author=[[田中公明]] |title=性と死の密教 |publisher=[[春秋社]] |year=1997}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|田中 |1997}} |author=[[田中公明]] |title=性と死の密教 |publisher=[[春秋社]] |year=1997}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|島|2002}} |author=[[島岩]] |title=179 シャンカラ|series=[[人と思想]] |publisher=[[清水書院]] |year=2002}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|島 |2002}} |author=[[島岩]] |title=179 シャンカラ |series=[[人と思想]] |publisher=[[清水書院]] |year=2002}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|ケサン & 正木|2000}} |author1=[[ツルティム・ケサン]] |author2=[[正木晃]] |title=チベット密教 |publisher=[[筑摩書房]] |series=[[ちくま学芸文庫]] |year=2008}}(旧版:[[ちくま新書]] 2000年)
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|ケサン & 正木 |2000}} |author1=[[ツルティム・ケサン]] |author2=[[正木晃]] |title=チベット密教 |publisher=[[筑摩書房]] |series=[[ちくま学芸文庫]] |year=2008}}(旧版:[[ちくま新書]] 2000年)
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|安藤|2003}} |author=[[安藤治]] |title=瞑想の精神医学 |publisher=[[春秋社]] |year=2003 |isbn=4-393-36117-2}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|安藤 |2003}} |author=[[安藤治]] |title=瞑想の精神医学 |publisher=[[春秋社]] |year=2003 |isbn=4-393-36117-2}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|森本|2003}} |author=[[森本達雄]] |title=ヒンドゥー教―インドの聖と俗 |series=[[中公新書]] |publisher=[[中央公論新社]] |year=2003 |isbn=4-12-101707-2}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|森本 |2003}} |author=[[森本達雄]] |title=ヒンドゥー教―インドの聖と俗 |series=[[中公新書]] |publisher=[[中央公論新社]] |year=2003 |isbn=4-12-101707-2}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|フォイヤーシュタイン, スタジオ・ヨギー監訳|2005}} |author={{仮リンク|ゲオルク・フォイアシュタイン|label=ゲオルグ・フォイヤーシュタイン|en|Georg Feuerstein}} |others=スタジオ・ヨギー監訳 |title=考えるヨガ |publisher=ロハスインターナショナル |year=2005 |isbn=4-901868-27-6}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|フォイヤーシュタイン, スタジオ・ヨギー監訳 |2005}} |author={{仮リンク |ゲオルク・フォイアシュタイン |label=ゲオルグ・フォイヤーシュタイン |en |Georg Feuerstein}} |others=スタジオ・ヨギー監訳 |title=考えるヨガ |publisher=ロハスインターナショナル |year=2005 |isbn=4-901868-27-6}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|すべて|2006}} |author=Yogini別冊 |title=ヨガのすべてがわかる本 |publisher=[[枻出版社]] |year=2006 |isbn=4-7779-0633-7}}
* {{Cite book|和書|ref={{Harvid|すべて |2006}} |author=Yogini別冊 |title=ヨガのすべてがわかる本 |publisher=[[枻出版社]] |year=2006 |isbn=4-7779-0633-7}}
*{{Cite journal ja-jp|author = 中谷ひとみ|year = 2006|title =男を生かすも殺すも、女を活かすも殺すも-John Hawkesと密教におけるセクシュアリティ言説|journal = 文化共生学研究|serial = 4|publisher =岡山大学大学院文化科学研究科|naid = 40007382963|url=http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/0/9087/20160527184238489704/4_0033_0053.pdf|pages = 33-53|ref={{Harvid|中谷|2006}}}}
* {{Cite journal ja-jp|和書|author=中谷ひとみ |year=2006 |title =男を生かすも殺すも、女を活かすも殺すも-John Hawkesと密教におけるセクシュアリティ言説 |journal=文化共生学研究 |serial=4 |publisher =岡山大学大学院文化科学研究科 |naid=120002311150 |url=http://doi.org/10.18926/9087 |pages=33-54 |ref={{Harvid|中谷 |2006}}}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|キャロル, 小久保ら訳|2008}} |author=ロバート・T・キャロル |title=懐疑論者の事典 下 |others=小久保温・高橋信夫・長澤裕・福岡洋一 訳、日本語版編集委員 小内亨(おさない内科クリニック院長)・菊池聡([[信州大学]]准教授)・高橋昌一郎([[國學院大学]]教授)・皆神龍太郎(科学ジャーナル) |publisher=[[楽工社]] |year=2008 |isbn=978-4-903063-13-3}}
* {{Cite book|和書|ref={{Harvid|キャロル, 小久保ら訳 |2008}} |author=ロバート・T・キャロル |title=懐疑論者の事典 下 |others=小久保温・高橋信夫・長澤裕・福岡洋一 訳、日本語版編集委員 小内亨(おさない内科クリニック院長)・菊池聡([[信州大学]]准教授)・高橋昌一郎([[國學院大学]]教授)・皆神龍太郎(科学ジャーナル) |publisher=[[楽工社]] |year=2008 |isbn=978-4-903063-13-3}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|佐藤|2009}} |author=佐藤任 |title=密教の神々 その文化史的考察 |publisher=[[平凡社]] |series=[[平凡社ライブラリー]] |year=2009}}(旧版:平河出版社 1979年)
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|佐藤 |2009}} |author=佐藤任 |title=密教の神々 その文化史的考察 |publisher=[[平凡社]] |series=[[平凡社ライブラリー]] |year=2009}}(旧版:平河出版社 1979年)
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|立川|2008}} |author=立川武蔵 |title=ヨーガと浄土 ブッディスト・セオロジーV |publisher=講談社 |series=講談社選書メチエ |year=2008 |isbn=978-4-06-258429-6}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|立川 |2008}} |author=立川武蔵 |title=ヨーガと浄土 ブッディスト・セオロジーV |publisher=講談社 |series=講談社選書メチエ |year=2008 |isbn=978-4-06-258429-6}}
* {{Cite journal |和書 |author =静春樹|title =インド仏教金剛乗に見られる女性<性>|date = 2008 |publisher = 日本印度学仏教学会|journal = 印度學佛教學研究|naid =110007026865 |volume = 57 |pages =418-414|ref={{Harvid|静|2008}} }}
* {{Cite journal|和書|author =静春樹 |title =インド仏教金剛乗に見られる女性<性> |date=2008 |publisher=日本印度学仏教学会 |journal=印度學佛教學研究 |naid =110007026865 |volume=57 |pages =418-414 |ref={{Harvid|静 |2008}} }}
*{{Cite book|和書 |others={{仮リンク|クリストファー・パートリッジ|en|Christopher Partridge}} 編、[[井上順孝]] 監訳、井上順孝・井上まどか・冨澤かな・宮坂清 訳 |title=現代世界宗教事典—現代の新宗教、セクト、代替スピリチュアリティ|publisher=[[悠書館]]|date=2009}}
*{{Cite book|和書|others={{仮リンク |クリストファー・パートリッジ |en |Christopher Partridge}} 編、[[井上順孝]] 監訳、井上順孝・井上まどか・冨澤かな・宮坂清 訳 |title=現代世界宗教事典—現代の新宗教、セクト、代替スピリチュアリティ |publisher=[[悠書館]] |date=2009}}
**{{Cite journal|和書|ref={{SfnRef|Daniels, 宮坂清訳|2009}} |author=Michael Daniels 執筆|title = トランスパーソナル心理学}}
**{{Cite journal|和書|ref={{SfnRef |Daniels, 宮坂清訳 |2009}} |author=Michael Daniels 執筆 |title=トランスパーソナル心理学}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|山下|2009}} |author=山下博司 |title=ヨーガの思想 |publisher=講談社 |series=[[講談社選書メチエ]] |year=2009 |isbn=978-4-06-258432-6}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|山下 |2009}} |author=山下博司 |title=ヨーガの思想 |publisher=講談社 |series=[[講談社選書メチエ]] |year=2009 |isbn=978-4-06-258432-6}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|伊藤|2011}} |author=伊藤武 |title=図説 ヨーガ大全 |publisher=[[佼成出版社]] |year=2011 |isbn=978-4-333-02471-1}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|伊藤 |2011}} |author=伊藤武 |title=図説 ヨーガ大全 |publisher=[[佼成出版社]] |year=2011 |isbn=978-4-333-02471-1}}
*{{Cite journal ja-jp|author = 西尾 秀生|year = 2011|title = 『バガヴァッド・ギーター』における出家と在家(インドの宗教における出家と在家,パネル,<特集>第六十九回学術大会紀要)|journal = 宗教研究|serial = 84|publisher = 日本宗教学会|naid = 110008513772|pages = 956-957|ref={{Harvid|西尾|2011}}}}
*{{Cite journal ja-jp|和書|author=西尾秀生 |year=2011 |title=『バガヴァッド・ギーター』における出家と在家(インドの宗教における出家と在家,パネル,<特集>第六十九回学術大会紀要) |journal=宗教研究 |volume=84 |issue=4 |publisher=日本宗教学会 |url=https://doi.org/10.20716/rsjars.84.4_956 |doi=10.20716/rsjars.84.4_956 |naid=110008513772 |pages=956-957 |ref={{Harvid|西尾 |2011}}}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|立川|2013}} |author=[[立川武蔵]] |title=ヨーガの哲学 |publisher=[[講談社]] |series=[[講談社学術文庫]] |year=2013 |isbn=978-4-06-292185-5}}(旧版:[[講談社現代新書]] 1988年)
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|立川 |2013}} |author=[[立川武蔵]] |title=ヨーガの哲学 |publisher=[[講談社]] |series=[[講談社学術文庫]] |year=2013 |isbn=978-4-06-292185-5}}(旧版:[[講談社現代新書]] 1988年)
* {{Cite journal |和書 |author =立川武蔵|title =なぜインド仏教は消滅したか(近代国家におけるサンガ・僧侶,パネル,<特集>第七十回学術大会紀要)|date = 2012|publisher = 日本宗教学会|journal = 宗教研究|naid =110009439928|volume = 85 |pages = 966-967|ref={{Harvid|立川|2012}} }}
* {{Cite journal|和書|author =立川武蔵 |title =なぜインド仏教は消滅したか(近代国家におけるサンガ・僧侶,パネル,<特集>第七十回学術大会紀要) |date=2012 |publisher=日本宗教学会 |journal=宗教研究 |naid =110009439928 |volume=85 |pages=966-967 |ref={{Harvid|立川 |2012}} }}
* {{Cite book|和書|ref={{Harvid|ブロード, 坂本訳|2013}} |author=ウィリアム・J. ブロード |title=ヨガを科学する―その効用と危険に迫る科学的アプローチ |others=坂本律 翻訳 |publisher=[[晶文社]] |year=2013 |isbn=978-4-7949-6797-8}}
* {{Cite book|和書|ref={{Harvid|ブロード, 坂本訳 |2013}} |author=ウィリアム・J. ブロード |title=ヨガを科学する―その効用と危険に迫る科学的アプローチ |others=坂本律 翻訳 |publisher=[[晶文社]] |year=2013 |isbn=978-4-7949-6797-8}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|シングルトン|2014}} |author=マーク・シングルトン |others=喜多千草訳 |title=ヨガ・ボディ - ポーズ練習の起源 |publisher=大隅書店 |year=2014 |isbn=978-4-905328-06-3}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|シングルトン |2014}} |author=マーク・シングルトン |others=喜多千草訳 |title=ヨガ・ボディ - ポーズ練習の起源 |publisher=大隅書店 |year=2014 |isbn=978-4-905328-06-3}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|立川|2014}} |author=立川武蔵 |title=宗教の世界史 2 ヒンドゥー教の歴史 |publisher=[[山川出版社]] |year=2014 |isbn=978-4-634-43132-4}}
*{{Cite book|和書|ref={{Harvid|立川 |2014}} |author=立川武蔵 |title=宗教の世界史 2 ヒンドゥー教の歴史 |publisher=[[山川出版社]] |year=2014 |isbn=978-4-634-43132-4}}
* {{Cite journal |和書 |author =河原和枝|title =ヨガ : 文化のグローバル化をめぐって|naid =120005591277|date = 2014 |publisher = 甲南女子大学|journal = 甲南女子大学研究紀要 人間科学編 |volume = 51 |pages = 89-97|ref={{Harvid|河原|2014}} }}
* {{Cite journal|和書|author =河原和枝 |title =ヨガ : 文化のグローバル化をめぐって |naid =120005591277 |date=2014 |publisher=甲南女子大学 |journal=甲南女子大学研究紀要 人間科学編 |volume=51 |pages=89-97 |ref={{Harvid|河原 |2014}} }}
* {{Cite book|和書|ref={{harvid|加藤|2015}}|author=加藤有希子 |title=カラーセラピーと高度消費社会の信仰―ニューエイジ、スピリチュアル、自己啓発とは何か?|publisher=[[サンガ (出版社)|サンガ]] |year=2015 |isbn=978-4-86564-028-1}}
* {{Cite book|和書|ref={{Harvid|加藤 |2015}} |author=加藤有希子 |title=カラーセラピーと高度消費社会の信仰―ニューエイジ、スピリチュアル、自己啓発とは何か? |publisher=[[サンガ (出版社) |サンガ]] |year=2015 |isbn=978-4-86564-028-1}}
* {{Cite journal |和書 |author =河原和枝|title =ハイブリッド文化としてのヨーガ|date = 2017 |publisher = 甲南女子大学|journal = 甲南女子大学研究紀要 人間科学編|naid =120006458467 |volume = 54 |pages = 155-166|ref={{Harvid|河原|2017}} }}
* {{Cite journal|和書|author =河原和枝 |title =ハイブリッド文化としてのヨーガ |date=2017 |publisher=甲南女子大学 |journal=甲南女子大学研究紀要 人間科学編 |naid =120006458467 |volume=54 |pages=155-166 |ref={{Harvid|河原 |2017}} }}
* {{Cite journal |和書 |author =石橋丈史|title =『[[楞伽経]]』と『ヨーガ・ストーラ』との関係について:cittaの定義を中心に|date = 2017 |publisher = 佛教大学大学院|journal = 佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇|naid =120006009421 |volume = 45 |pages = 1-18|ref={{Harvid|石橋|2017}} }}
* {{Cite journal|和書|author =石橋丈史 |title =『楞伽経』と『ヨーガ・ストーラ』との関係について:cittaの定義を中心に |url=https://archives.bukkyo-u.ac.jp/repository/baker/rid_DB004500008628 |date=2017 |publisher=佛教大学大学院 |journal=佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 |naid =120006009421 |volume=45 |pages=1-18 |ref={{Harvid|石橋 |2017}} }}



== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2020年8月20日 (木) 01:22時点における版

庭園に坐すヨーギー

ヨーガ: योग (Yoga_pronunciation.ogg 聞く), yoga)は、古代インド発祥の伝統的な宗教的行法で、心身を鍛錬によって制御し、精神を統一し、心の働きを止滅させ、古代インドの人生究極の目標である輪廻からの「解脱(モークシャ)」に至ろうとするものである[1][2][3]ヨガとも表記される。漢訳は瑜伽(ゆが)。仏教ヒンドゥー教の修行法の源流であり、インドでは宗教・宗派の違いを超え、インドの諸宗教と深く結びつき、バラモン教ヒンドゥー教仏教ジャイナ教等の修行法として行われ、多様な展開を見た[4][5]。静的な瞑想である古典ヨーガの流れとは別に、10-13世紀には、活動的・身体的変容論を含む、タントラ的で動的なヨーガであるハタ・ヨーガ(後期ヨーガ)がある程度完成をみており[6][7][8]密教でもタントラ的ヨーガが行われた。

1990年代後半から世界的に流行している、身体的ポーズ(アーサナ)を中心にしたフィットネスのような「現代のヨーガ」は、宗教色を排した身体的なエクササイズとして行われているが、宗教的実践である「本来のヨーガ」とは別の潮流である[5]

概説

森林に入り樹下などで沈思黙考に浸る修行形態は、インドでは紀元前に遡る古い時代から行われていたと言われている[9]。古ウパニシャッドカタ・ウパニシャッドでは、感覚器官の堅固な総持(制御)がヨーガであるとされており[10]、インドの宗教・仏教の研究者奈良康明は、ヨーガを簡潔に説明すると、呼吸を調整しながら、あるものを思念瞑想し、ついには恍惚状態となってその対象と合体する技法であるとしている[11]。インド哲学研究者の島岩は、基本的に意識を一点に集中する瞑想の技法であり、心の働きを止滅させることを目的とすると説明している[3]。ヨーガは、身心の諸訓練と健康の保持を目的とする実際的な「技術」という性格が強い[12]。ヨーガ登場以前には苦行(tapas、熱の意)という語が用いられたが、苦行が肉体を苦しめることで強い緊張を伴う精神状態を生じるのに対し、ヨーガ(古典ヨーガ)は平静な観想を本質とするものであり、両者は多くの関係があるが、同一であるとは言い難い[13]。ヨーガという言葉及び思想は、インドの長い歴史においては比較的新しいものである[13]

ヨーガはインドの諸宗教で行われており、仏教各派でもそれぞれ独自の修行法が発展した[4]。ヨーガの行法の流れは中国・日本にも伝えられ、日本に現存する瞑想修行の一つが坐禅である[† 1]。紀元前4 - 6世紀には、仏教の開祖である釈迦ジャイナ教の開祖マハーヴィーラが、当時はまだ未発達だったヨーガの伝統に沿って瞑想修行を行っており、ジャイナ教でもヨーガの修行は必須となっている[2][15]

初期仏教 - 大乗仏教におけるヨーガ

個体の精神的至福を追求するヨーガの行法は、初期仏教において重視された[16]。ヒンドゥー教(バラモン教)の古典ヨーガの発展にやや先行し、3 - 5世紀のインドの大乗仏教では、ヨーガの実修を好む瑜伽師(ゆがし、ヨーガ行者)によって、般若の思想と修行者のヨーガの最中の体験をベースに、徹底した主観的観念論の哲学体系を構築した瑜伽行唯識派(瑜伽行派、ヨーガチャーラ)が生まれた[17][18][15]。彼らはヨーガの実習を通じ、人間が日常的に経験する事象はすべて心が作り出したイメージでしかなく、心そのものは存在せず、根源的な心識のみが唯一の実在である(唯識)と説き、この唯識観を理解し己のものとし最終的に悟りの境地に到達するには、ヨーガによる段階的な実践があってはじめて可能になるとした[19]

ヒンドゥー教(バラモン教)の古典ヨーガ

勢いが衰えていたヴェーダの宗教が仏教や土着の信仰を取り入れて生じたヒンドゥー教バラモン教)もまた、個体の精神的至福の追及を重視するようになったた[16]。正統バラモン教のヨーガ(古典ヨーガ)は、4-6世紀頃に体系化されたと考えられている[20]六派哲学ヨーガ学派の教典『ヨーガ・スートラ(瑜伽経)』が現在に残されており、仏教の影響がうかがえる[16]ウパニシャッドにもヨーガの行法がしばしば言及され、正統バラモン教ではヨーガ学派に限られずに行われた[† 2]ウパニシャッド梵我一如思想の流れをくむ解脱への道ジュニャーナ・マールガ(智道、知識の道)では、感覚器官を抑制し、輪廻の根源となる行為、さらにその根源である欲望を断つ必要があったため、感覚器官と心の動きを抑制するヨーガは解脱への手段として重視された[11][† 3]。心の働きを止滅させると、感覚器官(五官)によって認識される外界の対象、物理的現実、身体が消え去り、次いで苦楽や欲望などの内的な対象も感じなくなり、内官(「私」という意識の拠り所としての自我意識)も、内官の活動によって生じた「私」という意識も消え去り、主客未分の境地に至るのである[21]。とはいえ、ヨーガ学派はヨーガ自体を解脱への方法と見做したが、ヒンドゥー教全般で見ると、ヨーガは解脱への道の一種の補助的な手段に過ぎない[11]。ヒンドゥー教(バラモン教)も仏教と同じように個体の精神的至福に焦点を当てるようになると、相対的に仏教の魅力は低下した[16]

後期のタントラ的ヨーガ

ヒンドゥー教の修行者は苦行を行ったが、苦行は苦行者だけでなく、祭祀においても浄め等のために行われたので、祭祀を通じて一般化し、ヨーガも影響を受け、後代では苦行が採用されるようになった[13]。伝統的な動的ヨーガは、肉体的・生理的な鍛錬(苦行)を重視し、気の流れを論じ、肉体の能力の限界に挑み、大宇宙の絶対者ブラフマンとの合一を目指すハタ・ヨーガ[2]とそのヴァリエーションである[22]。「ハタ」は「力、暴力、頑固」などを意味する[22]。ハタ・ヨーガはヨーガの密教版ともいうべきもので、12-13世紀のシヴァ教ナータ派のゴーラクシャナータ英語版(ヒンディー語でゴーラクナート)を祖とする[22]ムドラー(印相)や、プラーナーヤーマ(調息、呼吸法)、シャットカルマ(浄化法)などの身体的修練を重視した。ハタ・ヨーガの主張はヒンドゥー教のシヴァ派やタントラ仏教(後期密教)の聖典群(タントラ)、『バルドゥ・トェ・ドル(チベット死者の書)』の説と共通点が多く、プラーナ(生命の風、)、ナーディー英語版(脈管)、チャクラ(ナーディーの叢)が重要な概念となっている[2]

ヨーガとインド思想

ヨーガの技術・身心観は複雑多様であるが、あくまで瞑想の経験・実証をベースとする[12]。インドの思想は極めて形而上学的な印象を与えるが、ヨーガの徹底的な経験と実証によって哲学的・宗教的思索が構築されており、言葉による思索をヨーガの実践に落とし込んだわけではない[12]。インド思想の、物質的な現実は幻想(マーヤー)であり、自分の心の内から開示されていく世界こそ真の存在であり、高次の現実であるという考え方は、ヨーガの瞑想の体験がベースになっている[23]

ヨーガと物理的現実

ヨーガは、超越することで得られるであろう個人、個体の精神的至福を確信し、それを追求する行法であり、生きながら物質的な現実世界とその生を否定するという面がある[24][16]。初期仏教のヨーガ、古典ヨーガ、などが心の働きを止滅させることを目指す一方、後期に生じたヒンドゥー教のハタ・ヨーガ、密教のヨーガは心の働きを活性化させるもので[25]、現世肯定的である[26]

ヨーガの世界観

古典ヨーガの哲学がサーンキヤ哲学の世界観をベースとし二元論であるのに対し、ハタ・ヨーガは一元論のヴェーダーンタ哲学により近い概念を採用している[6]

ヨーガの身心観

ハタ・ヨーガとチャクラの理論が密接に結びついているのに対し、古典ヨーガとチャクラの理論に直接の関係はない[27][28]

現代のヨーガ

今日ヨーガと呼ばれるものの多く動的なヨーガだが、伝統的なハタ・ヨーガの流れとは別である。1990年代後半から、身体的ポーズ(アーサナ)に重点を置いたヨーガがアメリカ、イギリスなどの英語圏を中心に世界的に流行している[29]。現代では、一般に“ヨーガ(ヨガ)”または“ハタ・ヨーガ“と呼ばれるものの多くは、このヨーガを指している。この近現代のヨーガは、日本においてもアメリカなどの影響により、今世紀に入って爆発的な広がりを見せている。その特徴は「アーサナ(ポーズ)」の実践にある。宗教学者のエリザベス・ド・ミシェリスはこうしたヨーガを「現代体操ヨーガ(Modern Postural Yoga)」と呼んでいる[30]。この現代の「ヨーガ教室」等で教えられているヨーガは、20世紀前半のインドで西洋の体操やボディビルディングなどの外来の身体鍛錬英語版を取り入れてインド人のための国産エクササイズを作ろうとする動きから生まれた「創られた伝統」を直接的な起源としており、マーク・シングルトン英語版は、現代のヨーガと元来のヨーガにおける「yoga」とは似て非なる「同音異義語」であると評している[31]

このヨーガは、アメリカで「スピリチュアルな実践」とも解釈されている[29]。多くの現代人はヨーガに「インド古来の、何か難しいポーズをとる、健康に良いらしいもの」というイメージを持っており、現代ヨーガは流派によって練習内容が異なりはしても、「古代インドの修行法」「アーサナ(ポーズ)・呼吸(プラーナーヤーマ=調息)・瞑想」」、「科学的に検証された健康に良い効果」という3点から構成され、この神話的要素ともいえる3つの絡み合いが魅力になり、人気を博していると思われる[32]。ヨーガの歴史は、古来より続く、時代を超越した一つの伝統的な修行法というロマンティックな物語として、一般に(特にマーケティング戦略として)かなり広まっているが、こうした物語は西洋人のロマンティックなオリエンタリズムや東洋学の影響を受けている[33]

ヨーガの歴史に関する研究は、エリザベス・ド・ミシェリス、ジョセフ・アルター英語版、マーク・シングルトンなどの学者によって、この20年の間に着実に発展してきた[33]。主にインドのイギリス植民地時代の最盛期からの発展と変容に焦点を当て、18世紀から21世紀までの実践と思想の流れを探求し、今日一般的にみられるヨーガがどのように徐々に形成されたのか解明されてきた[33]。こうした研究により、ヘンリー・トーマス・コールブルックのような東洋学者、ヴィヴェーカーナンダといったインドの著名人、そして神智学協会、ヨーロッパのボディビル体操のグループまで、多様な団体の影響が明らかになってきている[33]

健康への効果と危険性

現代ヨーガは、健康法として多くの効果が喧伝される一方、心身に対する様々な危険性も指摘されている[34][35]

現代ヨーガの利便性と危険性

また現代では、様々な文献が翻訳・執筆され容易に入手できるので、書籍や映像により独習されることも少なくない。ヨーガを取り入れていたオウム真理教の教祖麻原彰晃は、正規のグルにつかず文献を基に独学で修行している。しかし、このことがのちに様々な問題を生ぜしめた要因の一つであるとも言われている[36][37]。その一方、アヌサラ・ヨーガ英語版ビクラム・ヨーガといった巨大ヨーガ教室のトップがセクハラ、パワハラ、性犯罪で告発されるなどの権力の乱用もあり、商業化された現代のヨーガで、指導者に帰依することは妥当かどうか疑問も持たれている[38]

「ヨーガ」という言葉

ヨーガ (योग) は、「牛馬にくびきをつけて車につなぐ」という意味の動詞 根√yuj(ユジュ)から派生した名詞で、「結びつける」という意味もある[9]。つまり語源的に見ると、牛馬を御するように心身を制御するということを示唆しており、「くびき」を意味する英語yokeと同根である。『ヨーガ・スートラ』は「ヨーガとは心の作用のニローダである」(第1章2節)と定義している[39](ニローダは静止、制御の意[40])。森本達雄によると、それは、実践者がすすんで森林樹下の閑静な場所に座し、牛馬に軛をかけて奔放な動きをコントロールするように、自らの感覚器官を制御し、瞑想によって精神を集中する(結びつける)ことを通じて「(日常的な)心の作用を止滅する」ことを意味する[9]

ヨーギニー女神の像、10世紀

日本では一般に「ヨガ」という名で知られているが、サンスクリットでは「यो」(ヨー)の字は常に長母音なので「ヨーガ」と発音される[† 4]仏教においては元のサンスクリットを漢字で音写して「瑜伽」(ゆが)と呼ぶか、あるいは意訳して「相応」とも呼ぶ。仏教ではヨーガ(瑜伽)という言葉は、修行の正しいあり方といった意味で使われていた[41]

ヨーガの行者は日本では一般にヨーギーまたはヨギと呼ばれるが、ヨーガ行者を指すサンスクリットの名詞語幹は男性名詞としてはヨーギン (योगिन्)、女性名詞としてはヨーギニー (योगिनी) であり、ヨーギーはヨーギンの単数主格形(日本語にすると「一人の男性行者は」)に当たる[42]。インド研究家の伊藤武によると、サンスクリット語のヨーギニーに「ヨーガをする女性」の意味はない[43]。現代日本ではヨーガを行う女性を俗にヨギーニと呼ぶことがあるが、前述のようにサンスクリットでは「ヨー」は常に長母音なので、女性名詞はヨーギニー (yoginī) であってヨギーニではない[44]。ヨギーニは英語読みに由来する発音だと説明する本もあるが[45]、英語の発音は /'joʊgəni/ (ヨウギニ)または /'joʊgəniː/ (ヨウギニー)である。

修行者は男性であった[† 5]タントリズムの性的ヨーガにおいて、男性行者の性行為の相手をする女性がヨーギニーと呼ばれていた[† 6]。南インドで、親が娘を神殿や神(デーヴァ)に嫁がせる宗教上の風習デーヴァダーシー(神の召使い)の対象となった女性もヨーギニーと呼ばれた[53]。彼女たちは伝統舞踊を伝承する巫女であり[54]神聖娼婦、上位カーストのための娼婦であった[53][55](1988年まで合法であった[53])。

インドの歴史

原始ヨーガ

紀元前2500-1500年頃の彫像

ヨーガの起源には不明な点が多く、その成立時期を確定することは難しい。ヨーガの起源を最も古くに見るものは、紀元前2500年-1800年のインダス文明に、その遠い起源を持つとするもので、これは20世紀初頭の考古学者達によって考え出されたものである[56]。1921年にモヘンジョ・ダロハラッパーの遺跡を発掘した考古学者のジョン・マーシャルらは、発掘された印章に彫られた図像を、坐法を行っているシヴァ神の原型であると解釈した[56]。そこから宗教学者エリアーデも、これを「塑造された最初期のヨーガ行者の表象」であるとした[56]。近代に至るヨーガの歴史を研究したマーク・シングルトンは、この印章がのちにヨーガと呼ばれたものであるかは、かなり疑わしいものであったが、古代のヨーガの起源としてたびたび引用されるようになった、と述べている[56]。日本で出版されているヨーガに関する書物でも、インダス文明にヨーガの起源をみるとする立場を取るものも多い。

しかし、佐保田鶴治も指摘するように、このような解釈は、あくまで推論の域を出ないものであるという[57]。インダス文明には、文字らしきものはあっても解読には至っておらず、文字によって文献的に証明することのできない、物言わぬ考古学的な史料であり、全ては「推測」以上に進むことはできない、と佐保田は述べている[57]。また、インド学者のドリス・スリニヴァサンも、この印章に彫られた像をシヴァ神とすることには無理があり、これをヨーガ行法の源流と解することに否定的であるとしている[58]。近年、このようなインダス文明起源説に終止符を打とうとした宗教人類学者のジェフリー・サミュエルは、このような遺物からインダス文明の人々の宗教的実践がどのようなものであったかを知る手がかりはほとんど無いとし、現代に行われているヨーガ実践を見る眼で過去の遺物を見ているのであり、考古学的な遺物のなかに過去の行法実践を読み解くことはできないとしており[59]、具体的証拠に全く欠ける研究の難しさを物語っている。

紀元前12世紀頃に編纂されたリグ・ヴェーダなどのヴェーダの時代には「ヨーガ」やその動詞形の「ユジュ」といった単語がよく登場するが、これは「結合する」「家畜を繋ぐ」といった即物的な意味で、行法としてのヨーガを指す用例はない[60]。比較宗教学者のマッソン・ウルセルは、「ヴェーダにはヨーガはなく、ヨーガにはヴェーダはない」(狭義のヴェーダの時代)と述べている[61]

ウパニシャッドの時代では、単語としての「ヨーガ」が見出される最も古い書物は、紀元前500年-紀元前400年の「古ウパニシャッド初期」に成立した『タイッティリーヤ・ウパニシャッド』である[62]。この書では、ヨーガという語は「ヨーガ・アートマー」という複合語として記述されているが、そのヨーガの意味は「不明」であるという[62]。ブッダ以後に成立した「中期ウパニシャッド」では、ヨーガの技法と初期ウパニシャッド以来の形而上学が合わさり、ウパニシャッドで初めて禅定や三昧などの行法が記載された[63]紀元前350年-紀元前300年頃に成立したのではないかとされる「中期ウパニシャッド」の『カタ・ウパニシャッド』には、ヨーガの最古の説明が見い出すことができ[64]、自己認識がヨーガの崇高なる目的であるとされている[65]。ヨーガの実践は、この頃はまだ明確に定義されていない[65]

しかし、ヨーガの目的が崇高なものであるとされるにもかかわらず、宗教学者のエリック・デントンによると、ほとんどの初期のサンスクリット文学では、ヨーガによって超自然力(シッディ英語版)を備えたヨーギーたちは、悪役として描かれている[65]。ヨーガを通して「アートマンとブラフマンが同一である」と悟る前に、かなりの超自然力が身につくと考えられており、ヨーギーが持つ力として、人間や動物の体や死体に入り込んでコントロールする力がよく知られていた[65]。他に、飛ぶ、心を読む、透明になる、過去の命を呼び覚ますといった能力を持つヨーギーが描かれているが、超自然的な力はほぼ悪用されて描かれていた[65]。17世紀までヨーギーは、おおむね黒魔術師や魔法使いとして描かれており、恐れられていたことが伺える[65]

仏教

仏教で出家者は、日常生活において従うべき実践的規律「(シーラ)」と、瞑想すなわちヨーガ観法「(サマーディ)」の2つ実践「修行」の過程を経て、仏教哲学の理論「」(パンニャー、般若)を学ぶという「三学」によって悟りを得ることを目指す[66]

仏教では、心の働きを止滅させるヨーガの瞑想を「(サマタ)」と呼ぶ。釈迦(ガウタマ・シッダールタ、紀元前5世紀頃)はこの行法により、人間の「苦」の根本原因が「無明」であることを自覚し、「十二因縁」を順逆に観想する「(ヴィパッサナー)」によって「無明」を脱したとされる[15]。仏教の瑜伽行(ヨーガ)は、この「止」と「観」が同時に行われる止観(「双運」)である[15]

西暦前3世紀半ばからの約550年間、根本分裂の後に生まれた部派仏教の繁栄と、大乗仏教の発展がみられた。3 - 5世紀のインドの大乗仏教では、ヨーガの実修を好む瑜伽師(ゆがし、ヨーガ行者)によって、般若の思想と、修行者の瑜伽行の最中の体験、外界の存在や心象が消えうせ根源的な心識のみが唯一の実在として残る(唯識)体験を教義のベースとした思想体系が生まれた[15]。この学派は瑜伽行唯識派(瑜伽行派、ヨーガチャーラ)と呼ばれ、中観派と並び大乗仏教思想の中核の一であった(中観派では観行という行法が行われた)。瑜伽行唯識派の基本的論書として『ヨーガーチャーラ・ブーミ・シャーストラ(瑜伽師地論)』がある[17]。『ヨーガーチャーラ・ブーミ・シャーストラ』では「信・欲・精進方便」が瑜伽であるとされ、正行(悟りを得るために実践しなければならない正しい修行)の要件がすべて含まれるとされる[41]

瑜伽行唯識派は、外界の対象の存在を否定し、人間が日常的に経験する事象はすべて心が作り出したイメージ(相)にすぎず、心そのものは存在せず、全てはイメージを作るものと作られるものの仕組みに還元されるという徹底した主観的観念論の哲学体系を作り、諸事象を現象せしめる原動力としてアーラヤ識(阿頼耶識、根本蔵識)を創案した[18][15][17]。瑜伽行者の止観行の深まりのプロセスとして、「資糧位」・「加行位」・「通達位」・「修習位」・「究竟位」の「五位」が説かれた[67]

瑜伽行唯識派は、中国の玄奘を通じ、日本の法相宗の伝統に連なる[18][15]

7世紀の法相宗の僧である円測(玄奘の門下)は『解深密経疏』で、一切乗(上座部仏教と大乗仏教)の境(対象)・行(方法)・果(結果)のすべてが広義の瑜伽に含まれ、狭義には止観であるとしている[41]

古典ヨーガ

パタンジャリの典型的な像

紀元後4-5世紀頃には、『ヨーガ・スートラ(瑜伽経)』が編纂された[68][69]。簡潔な短文で構成されており、4章から成る。この書の成立を紀元後3世紀以前に遡らせることは、文献学的な証拠から困難であるという[68]。『ヨーガ・スートラ』の編纂者はパタンジャリとされているが、彼のことはよくわかっていない。同書は「ヨーガ学派」の教典であり、同派はダルシャナ(インド哲学)のうちシャド・ダルシャナ(六派哲学)の1つに位置づけられている。

ヨーガ学派の世界観・形而上学は、大部分をサーンキヤ学派に依拠しており、精神と物質の二元論である。ヨーガ学派では最高神イーシュヴァラの存在を認める点が、サーンキヤ学派と異なっている[2]。内容としては主に観想法(瞑想)によるヨーガ、静的なヨーガであり、それゆえ「ラージャ・ヨーガ」(=王・ヨーガ)と呼ばれている。『ヨーガ・スートラ』の思想は、仏教思想からも多大な影響や刺激を受けており[70][71]、石橋丈史はヨーガ学派と大乗仏教瑜伽行唯識派(瑜伽行派、ヨーガチャーラ)の文献を分析し、両者に親密な交流があった可能性を指摘している[72]

『ヨーガ・スートラ』で説かれるヨーガは、アシュターンガ・ヨーガ(八階梯のヨーガ)と言われ、ヤマ(禁戒)、ニヤマ(勧戒)、アーサナ(座法)、プラーナーヤーマ(調気法、呼吸法を伴ったプラーナ調御)、プラティヤーハーラ(制感、感覚制御)、ダーラナー(精神集中)、ディヤーナ(瞑想、静慮)、サマーディ(三昧)の8つの段階で構成される[73][74]。 『ヨーガ・スートラ』では、ヨーガを次のように定義している。

ヨーガとは心の作用を止滅することである (『ヨーガ・スートラ』1-2)
その時、純粋観照者たる真我は、自己本来の姿にとどまることになる (『ヨーガ・スートラ』1-3)[73]

『ヨーガ・スートラ』には、後のハタ・ヨーガのような、個我と真我(アートマン)が合一し全ての観念が消え去った状態という明確で普遍性を持った解脱の感覚は見られない[75]。一章を丸々使ってヨーギーに備わる超自然力(シッディ)の説明がされているが、ヨーガの目的はあくまで「心の作用を止滅すること」とされており、超自然力の習得が最重視されているわけではない[65]

『ヨーガ・スートラ』は、現代のヨーガへの理解に多大な影響を与えている。国内外のヨーガ研究者や実践者のなかには、この『ヨーガ・スートラ』をヨーガの「基本教典」であるとするものがあるが、マーク・シングルトンはこのような理解に注意を促している。『ヨーガ・スートラ』は当時数多くあった修行書のひとつに過ぎないのであって、かならずしもヨーガに関する「唯一」の「聖典」のような種類のものではないからである[76]。佐保田鶴治は、サーンキヤ・ヨーガの思想を伝えるためのテキストや教典は、同じ時期に多くの支派の師家の手で作られており、そのなかでたまたま今日に伝えられているのが『ヨーガ・スートラ』であると述べている[77]。『ヨーガ・スートラ』は15世紀にはほとんど忘れ去られていたが、イギリス人インド学者のヘンリー・トーマス・コールブルック(1765年 - 1837年)の著作によってふたたび知られるようになった[33]

『ヨーガ・スートラ』は、ヨーロッパ人研究者の知見に影響を受けながら、20世紀になって英語圏のヨーガ実践者たちによって、また、ヴィヴェーカーナンダH・P・ブラヴァツキーなどの近代ヨーガの推進者たちによって、「基本教典」としての権威を与えられていった[76]

後期ヨーガ

チャクラ、ナーディが描かれた瞑想するタントラ行者の図

バラモン教で説かれた解脱には、膨大なヴェーダ聖典の学習が必要であり、学習は上部3カーストの男子にしか許されていなかった。ヴェーダの祭式は王侯や司祭階級バラモンたちが独占し、ウパニシャッドに説かれる自己と宇宙に関する深遠な哲学は、知的エリートだけのものであり、民衆は救いへの道から締め出されていた[78]。農業生産拡大政策で農民であるシュードラ(隷属民)の人口が増大し、彼らの重要性が増したが、領主へと成長を遂げていたバラモンや仏教の比丘僧院は、シュードラの成長を抑圧し、彼らからの租税徴収のために、自分たちに比べシュードラがいかに宗教的資質に劣っているかを説き、彼らを救済の儀礼の枠から遠ざけることによって自らを正統化しようとした[79]。こうした聖職者たちに反発し、彼らの行いを批判し、農民を中心とするシュードラなどの下層民に救済の道を開こうとする宗教運動として、神に絶対的な敬愛を捧げひたすらに称えることで恩寵により解脱に至るとするバクティ運動(人格神への献身の道であるバクティ・ヨーガ英語版(バクティ・マールガ、信愛の道))や、現世を肯定し欲望を解脱のエネルギーに変換しようという民衆のタントラが盛り上がっていったのである[79]。仏教で瞑想修業は出家者のみに求められることだったが、大乗仏教が発展すると、世俗で生きながら仏教の修行を行う「居士(こじ)」が現れ、その生き方が称賛を得るようになっていった[80]。バクティ運動の指導者である新鋭のバラモンや民衆密教の指導者である脱俗の修行者は、シュードラなどの下層民もバラモンあるいは比丘と同等の宗教的境地へ到達することができると考え、シュードラ出身の成就者(シッダ)も多く記録されている[79]。『バガヴァッド・ギーター』においてバクティは解脱に至る三つの道のうちの一つにすぎなかったが、バクティ運動の盛り上がりにより、バクティがヒンドゥー教の主流となった[78]。バクティにはヴィシュヌ派の信徒が多い[78]

インドではグプタ朝(320年から550年頃)以後ヒンドゥー教が興隆し、仏教の勢力は下降していたが、ヒンドゥー教と重複する様々な民衆宗教の要素を取り入れる仏教再興への挑戦が起こり、ヒンドゥーの思想やタントラ、土着の信仰を取り込んだ密教が大乗仏教から生じた[81]密教では、修行者自らが象徴的に仏そのものになり、仏と合一することがヨーガ(瑜伽)であるとされ、中期インド密教では、真言(マントラ)、印契(ムドラー)やマンダラを用いる三密行を通して仏となることができるとする瑜伽の思想と実践がみられた[41]。大乗仏教・特に密教では、超自然力を得た者による儀礼の執行、呪術的な密教儀式が非常に隆盛したが、ヨーガの修行で超自然力(シッディ、神通力、呪術的能力)を得た人間が行うことで呪術的儀礼が効果を持つと考えられ、修行による超自然力の獲得が重視され[82]、ハタ・ヨーガのチャクラの理論を含む擬似生理学的な行法や性的行法が密教に取り入れられた。密教(仏教タントラ)がヒンドゥー教のタントラの様々な教派より先行して発展おり、密教の神々がのちにヒンドゥーの神々に同化されたと考える学者が多い[83]

8世紀になると、ヒンドゥー教シャークタ派のタントラやシャクティ(性力)信仰から影響を受けたとされる、男性原理(精神・理性・方便)と女性原理(肉体・感情・般若)との合一を目指す密教が登場した。これを後期密教といい、後期密教は無上瑜伽密教、タントラ仏教と呼ばれる。なお、後期密教は儒教の強い中国では左道密教と批判され受け入れられなかったため、日本には伝わっていない[84]。後期密教は、解脱のためにあらゆる手段が肯定される解脱至上主義であったため、酒と肉食(悪食)、糞や尿といった不浄物の摂取、貪欲行(性ヨーガ)などの儀礼を行う秘密集会が仏教の正統な修法・行法として定期的に行われた。貪欲行は、男女の集団で、または師と弟子とマハームドラー(明妃、ヨーギニー。性ヨーガの相手として選別された被差別階級(不可触民、アウトカースト)出身の若く美しい女性)、修行者とマハームドラーによって行われた。秘密集会に専心することで死後ではなく生きている間に悟ることができると説かれ、象徴を用いた儀礼が悟りに有用であるとされ、象徴するものと象徴されるものとは同一であり、自己の構造を象徴操作を通じて絶対者と相似な状態に再構築することで自己が絶対者と合一(ヨーガ)することができると考えられた[81]。男性と女性の性的ヨーガの状態が、そのまま悟り(菩提)を象徴されるようになり、チベット密教では悟りそのものを男女の性行為の形態で象徴的に表現する像や図が作成された[81]。出家者が行う性ヨーガは性的な観念を用いたもので実際の性行為は伴わないと考えられるが、こうした性行為の形態の仏像の姿を再現し性行為を伴う性ヨーガを行うこともあったといわれる[85]。性的実践は主に在家の密教行者によって行われていたと考えられているが、出家者が女性在家信者に性ヨーガの相手を強要することもあった[85]

『バガヴァッドギーター』にも『ヨーガスートラ』にもアーサナの記述はあるものの、10世紀に入ってからアーサナの詳しい説明のある文献が現れた[65]。ハタ・ヨーガは、ちょうど後期密教と同時期に現れた。ヒンドゥー教でもタントラが隆盛し、12世紀-13世紀には、タントラ的な身体観を基礎として、動的なヨーガが出現した。これはハタ・ヨーガ(力〔ちから〕ヨーガ)と呼ばれている。内容としては印相(ムドラー)や調気法(プラーナーヤーマ)などを重視し、超自然力(超能力)や三昧を追求する傾向もある。教典としては『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』、『ゲーランダ・サンヒター』、『シヴァ・サンヒター』がある。15世紀までに、ハタ・ヨーガにおいて84のアーサナが体系化された[65]

ハタ・ヨーガの考え方の基礎には、性的エネルギーの変換と昇華によって悟りに至るという考え方がみられ、人間の体にあるチャクラという見えない輪に意識を集中して瞑想し、低級な性的エネルギーである「オジャズ」(生理学的に解釈するなら「精液」)を宇宙的な創造の力である「シャクティ(性力)」に変換することを原則とする[86]。人体を宇宙と同一視し、ヨーガによって人体に眠るクンダリニーの蛇(シャクティ)を目覚めさせ、シャクティとシヴァを合一させることで梵我一如を実体験し、解脱することを目指し、これはタントラ・ヨーガと呼ばれる[87]

ハタ・ヨーガでは、人間の強い性的な欲望は、神々の境地に昇華されるためのエネルギーと位置付けられ、肯定されている[26]。シャクティとシヴァの合体はしばしばセックスにたとえられ、またはセックスそのものであるとされ、タントラ・ヨーガはセックス・ヨーガとも呼ばれる[87]。タントラを構成する4つの主要な要素として、礼拝の次第に関する「チャリヤー」、神像や寺院の作成に関する「クリヤー」、セックス・ヨーガの実践に必要な心身を準備するための「ヨーガ」、セックス・ヨーガやヤントラ(神秘図形)、マントラ(真言)などを用いて宇宙精神そのものを直接認識し、自身を神そのものと同一化して神を供養する「ジュニャーナ」がある[87]。経典には実際の性行為を含む儀礼が記載されている[26]。ただし、そうした性儀式が文字通りに実践されていたかは不明であり、否定的な見方もある[26]

他に後期ヨーガの流派としては、古典ヨーガの流れを汲むラージャ・ヨーガ、社会生活を通じて解脱を目指すカルマ・ヨーガ英語版(カルマ・マールガ、行為の道)、哲学的な思索の道であるジュニャーナ・ヨーガ英語版(ジュニャーナ・マールガ、知識の道)があるとされる[88]。(カルマ・マールガ、バクティ・ヨーガ、ジュニャーナ・ヨーガは19世紀末にヴィヴェーカーナンダによって、『バガヴァッド・ギーター』の三つのヨーガとして提示された[89]。)

8世紀には、イスラームのインドへの波及が始まり、11世紀のガズナ朝から本格化、16世紀のムガール帝国がほぼインド全土を征服した[90]。仏教は僧院中心主義であり、世俗的な儀礼にも否定的であったことから、ヒンドゥー教隆盛の一方世俗の世界での魅力を失い、仏教再興の試みもあったが、イスラームのインド侵攻で僧院が破壊されると、インドでは急速に衰退した[16]。北インドでは10世紀からイスラーム政権による実質支配が続き、イスラム神秘主義のスーフィーの活動がバクティ運動と結びついてインドで受け入れられた[90]。また、イスラームの「アッラーの前にすべての人間は平等である」という教えは、インドの民衆にとって、カーストやヒンドゥー教と結びついたさまざまな習慣による抑圧から解放してくれるという面もあり、インドにおけるイスラム教を一概に否定的のとらえることはできない[90]。イスラーム商人との交易で都市が広がり、ムガール帝国ではインド=イスラーム文化が栄えた[90]。ムガール帝国は19世紀まで存続した。

18世紀後半の時点で、インドにおけるサンスクリット語や聖典、古典の研究は事実上途絶えており、サンスクリット語を理解できる人はほとんどいなくなっていた[91]。19世紀半ばには、インドの伝統的なヨーガの実践と、『ヨーガ・スートラ』の体系のつながりはすでになくなっており、古典ヨーガの体系について教えることのできるインド人の学者はいなかったという[92]。インドはイギリスの植民地として支配下に置かれ、インド人知識人たちはそこから抜け出そうともがき、西欧人に蔑視されるインドにも誇れる文化があることを示そうと、西洋の知的伝統によってインド哲学のヨーガ学派、古典ヨーガの有効性を示そうと試み、『ヨーガ・スートラ』はインドの文化的ナショナリズムと関わる形で注目され、復権し、重視されるようになった[92]

インドには、ヨーガで心身を鍛えた戦闘的サンニヤーシン(托鉢修行僧、遊行者)の長い伝統があり、ハタ・ヨーガと武術訓練とは結びついていた[93]。15世紀頃に、ゴーラクシャナータのハタ・ヨーガを行うナータ派(シヴァ派の一派)から、武装した宗教集団が登場した[94]。彼らはカーストにも社会秩序にも縛られず野放図な振る舞いをし、異様とも見える苦行で心身を鍛え、裸体で武器をもって略奪を行った[94]。交易ルートを支配して、18世紀にはムガール帝国からインドの支配権を奪いつつあったイギリス東インド会社を脅かすほどの勢力となっていた[94]。伊藤武は、マーク・シングルトンは彼らを武装したヨーギーの集団としているが、ナータ派に帰依した土豪の兵というのが正しいと思われ、イギリスの侵略に対する抵抗運動であると述べている[95]。ナータ派武装集団による略奪行為、抵抗運動は失敗に終わった[95]。ヨーギーは支配層からは忌み嫌われ恐れられ、1773年にはベンガルで最初にヨーギーの放浪が規制されて、警察の監視下で非武装化と定住化が促進されるようになり、ヨーガはサーカスのような見世物として生き延び、怪力や綱渡り、心臓停止などがヨーガとして行われていた[94]。イギリス人や西洋的教育を受けたインド人の知識人から見れば、ヨーギーは「曲芸を見せてお金を取り、淫らな悪巧みをする社会的パラサイト」であった[94]。これらの行者のなかには、かなり暴力的な方法で物乞いをする者達もおり、一般の人々から恐れられていたという[96]。正統派ヒンドゥー教徒、西洋人やインド人の知識人たちからは、社会の寄生虫として蔑視され、インド文化の陰の部分として忌まれていた[96][94]

ヴィヴェーカーナンダ
オーロビンド・ゴーシュ

マーク・シングルトンによれば、こうした経緯により近代インドでは、ハタ・ヨーガは望ましくない、危険なものとして避けられる傾向にあった[97]ヴィヴェーカーナンダオーロビンド・ゴーシュラマナ・マハルシら近代の聖者とされる指導者たちは、ラージャ・ヨーガやバクティ・ヨーガ、ジュニャーナ・ヨーガなどのみを語っていて、高度に精神的な働きや鍛錬のことだけを対象としており、ハタ・ヨーガは危険か浅薄なものとして扱われた[97][† 7]。ヨーロッパの人々は、現在ではラージャ・ヨーガと呼ばれる古典ヨーガやヴェーダーンタなどの思想には東洋の深遠な知の体系として高い評価を与えたが、行法としてのヨーガとヨーガ行者には不審の眼を向けた。それは、17世紀以降インドを訪れた欧州の人々が遭遇した現実のハタ・ヨーガの行者等が、不潔と奇妙なふるまい、悪しき行為、時には暴力的な行為におよんだことなどが要因であるという[96]

バンキム・チャンドラ・チャートパーディヤーエ英語版の愛国小説『アノンドの僧院英語版』(1884年)やV・D・サヴァルカール英語版のノンフィクション『1857年インド独立戦争(セポイの乱)』(1908年)などの作品もあり、外国の勢力と戦うヨーギーのイメージは高まった[100]。身体文化の活動家でヨーガで鍛え怪力を得たというK・ラマムルティ英語版や世界チャンピオンになったインド人レスラーは、自由への闘争の英雄的シンボルになった[100]。ヨーガ、身体文化の実践者たちは、西洋の身体文化とインドの伝統的な鍛練法であるヨーガを融合し、それを身体文化と見ることもあれば、ヨーガと捉えることもあり、全てインド由来と主張しインドの身体文化の方法の優越性を説くこともあった[100]。ヨーガの指導、練習は戦闘訓練の隠れ蓑としても行われた[100]

『現代ヨーガの歴史(A History of Modern Yoga)』の著者で宗教学者のエリザベス・ド・ミシェリス(Elizabeth de Michelis)は、主にインドの宗教に関心のある西洋人と西洋の影響を受けたインド人との相互作用によって過去150年間に形成されたヨーガの潮流を「近代的ヨーガ」(modern yoga)と呼び、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(おそらく超絶主義者ラルフ・ワルド・エマーソンの図書室でヨーガを知ったと思われる)が「私もヨーギーである」と友人への手紙に書いた1849年と、ヴィヴェーカーナンダが『ラージャ・ヨーガ』を出版した1896年を、「近代的ヨーガ」の重要の節目であるとみなしている[101][102][103]

西洋で講演し人気を博したヴィヴェーカーナンダは、シャンカラ的な幻想主義的一元論のアドヴァイタ・ヴェーダーンタ思想(不二一元論)に基づく普遍主義的な教えを説き、「インド人には鉄の筋肉と鉄の心が欠けている」として身体鍛錬文化を支持し、西洋を外遊しインドに帰国した後「筋肉的ヒンドゥー教」ともいえる立場を取り、影響を与えた[100][104]

またオーロビンド・ゴーシュ(1872 - 1950)は、シャンカラ的なアドヴァイタ・ヴェーダーンタ思想に基づいて、絶対者ブラフマンを有・知・歓喜が統合されたものであると考え、人はブラフマンをヨーガによって体験することで、自己が変容して超人になることができ、このような超人が世に増えることで、世界が救済されると説いた[104]

近現代

左からスワミ・サッチダーナンダ英語版B.K.S.アイアンガーアムリット・デサイ英語版、クマラ・スワミ、ディレンドラ・ブラフマチャリ英語版、B・I・アートレーヤ博士。科学的ヨーガに関する世界会議(the World Conference on Scientific Yoga)、1970年、ニューデリー

19世紀後半から20世紀前半に発達した西洋の身体鍛錬英語版運動に由来するさまざまなポーズ(アーサナ)が、インド独自のものとして「ハタ・ヨーガ」の名によって体系化され、このヨーガ体操が近現代のヨーガのベースとなった。現在、世界中に普及しているヨーガは、この新しい「現代のハタ・ヨーガ」である。現代ヨーガの立役者のひとりであるティルマライ・クリシュナマチャーリヤ英語版(1888年 - 1989年)も、西洋式体操を取り入れてハタ・ヨーガの技法としてアレンジした[29][† 8]。 インド伝統のエクササイズ(健康体操)と喧伝されることで、アーサナが中心となったハタ・ヨーガの名前が近現代に復権することになった[105]。医療人類学者のジョセフ・アルター英語版は、運動としてのヨーガの発展に、ヒンドゥー至上主義民族義勇団の影響があると指摘している。

ファイル:AYUSH Logo.jpg
アーユルヴェーダ・ヨーガ・伝統医学を担当する「AYUSH省」[† 9]のロゴ

2016年、ユネスコが推進する無形文化遺産にインド申請枠で登録された[106]。それに先立つ2014年、モディ政権は政府に「ヨーガ・アーユルヴェーダ・伝統医学担当省」(AYUSH省)[† 9]を設立するとともに、国連加盟各国に働きかけて夏至の6月21日を「国際ヨガの日」として国連総会で定めることに成功した[107]。インドの身体文化の世界的盛況は、年間約450万人の外国人観光客が訪れるインド国内の観光産業にも波及しており、インド政府は観光資源の最大の目玉と位置づけ、「国家プロジェクト」として、旅行者の誘致をしている[108][109]。インド政府観光局のキャンペーン・ポスターには、ヨーガのポーズをした女性の写真が使われることが多くなっている[109]

グローバルに展開する現代のヨーガの流行は、ヨーガの発祥地であるインドにも影響を与えている[109]。インドでは修行者のような一部の人々に実践され、一般の人々には近寄りがたいイメージであったヨーガは、近年、欧米の流行からの逆輸入としてヨーガが再評価され、肥満問題の深刻化する都市部の新興富裕層や中産階級を中心に、ヨーガのリバイバルが起きている[109][108]。欧米で改良されたエクササイズ的なヨーガは、今日ではインドでも広く受け入れられており、「NY 直輸入」などと謳ったヨーガ教室の看板も多数見られる[109][108]

また、現代ではインドのカトリック教会でもヨーガが取り入れられ、クリスチャン・ヨーガとして実践されている[110]

世界への伝播

欧米への紹介

ラマナ・マハルシ

近世に入って、インドが西欧の文化に接触すると、ヒンドゥー教に改革の機運が生じ、ブラフモ・サマージアーリヤ・サマージ、神智学協会がつくられ、さらに19世紀には現在でも知られるヨーガ行者が何人も現れた[111]。ヴィヴェーカーナンダは、1893年にシカゴ万国博覧会にともない2週間近くにわたって開催された万国宗教会議英語版に出席し、続いて1896年末まで欧米各地でインドの思想を説いてまわった[112]。『バガヴァッド・ギーター』やヨーガ学派の思想を再編成し、ヴェーダーンタを再解釈し、単純化し、近代化して、ヨーガの名によって説いた[113]ネオ・ヴェーダーンタ英語版)。ヴィヴェーカーナンダのヨーガの最終目標はジュニャーナ・ヨーガ(智慧の道) であると考えられているが、アメリカで人気となったのは、プラーナ(呼吸)とプラーナーヤーマ(調息)に関してハタ・ヨーガの生理学的要素を取り入れた、プラクティカルなラージャ・ヨーガ(心身統一の道)であった[114]。個人が自力で霊的な高みに上る方法論として受容され、ロマン・ロランによれば、人びとは「世界征服の幼稚不健全な秘密を求めて力のヨーガ‐ラージャ・ヨーガ‐に飛びついた」のである[113]

このヴィヴェーカーナンダの活動を手始めとして、ヨーガ行者たちはアメリカやヨーロッパに渡航して指導するようになり、ヨーガが欧米の一般社会に次第に紹介されるようになった[115]オーロビンド・ゴーシュや、シャンカラ的なアドヴァイタ・ヴェーダーンタ思想を学ぶことなく自らの神秘体験を通してその境地に到達したラマナ・マハルシなどの思想も書物などによって欧米に知られるようになった[116][104]。ラマナ・マハルシのもとには、カール・グスタフ・ユングなどヨーロッパの著名人も訪れている[117]

また、ニューヨークで設立された「神智学協会」は、創設者のブラヴァツキー夫人オルコット大佐が、1879年にインドに本部を移し[118]、『ヨーガ・スートラ』などの文献の翻訳、チャクラなどの概念を欧米に紹介し、ヨーガへの貢献が大きかった[119]。神智学協会は、ヨーガはレムリア大陸やアトランティス大陸から伝えられた霊的進化のための行法であると主張している。オカルト活動の一方、インド独立運動も支援した[120]

ニューエイジ・対抗文化

ビートルズ
ミック・ジャガーブライアン・ジョーンズ、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー

1960年代に対抗文化がはじまり、60年代初期にはカリフォルニアのエスリン研究所等の前衛的な「成長センター」で、心理劇エンカウンターグループゲシュタルト療法等のグループ・セラピー、ホロトロピック・ブレスワークボディワークなどの心身技法と共に、瞑想やヨーガが個人変容・自己啓発のテクニックとして教えられるようになり、これらのセンターはヒューマンポテンシャル運動の中心となっていった[121]。こうした潮流から、アメリカから「ニューエイジ運動」が起こった[122]。行き過ぎた近代主義や西洋中心主義に対抗するニューエイジ・ムーヴメントは、東洋思想や神秘主義、エコロジーなどを取り入れて、精神性を追求し、平和や調和を掲げた[123]。初期の象徴的なイベント、モントレーのフェスティバルでは、インド人のラヴィ・シャンカルがシタールを演奏した[124]。また、その規模を拡大したのがウッドストック・フェスティバルであった[124]。この時代のヨーガに多大な影響を与えたのは、ビートルズであった[125]。1968年にビートルズはインドに渡り、超越瞑想を広めたインド人グルのマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーが主催するリシケーシュのアーシュラム(道場)を訪問し、2ヶ月に渡って瞑想やヨーガを実践した[126][127]。この時ビートルズは、ガールフレンドや友人、マネージャー、リポーター等総勢200人以上を引き連れており、インドに渡ったメディアも「ヨーガ」に注目し、流行を後押しした[125][127]

ヨーガの普及は先鋭的な若者たちに限られていたが[128]、当時アメリカに600万人のヨーガ人口があり、イギリス内でのヨーガ教室は全国にまたがり数千カ所に及び、ドイツ、スイス、フランスでも盛んにおこなわれていた[129]

世界的な大流行

スポーツジムのヨーガ教室
プラーナーヤーマを試みる男性

1980年代には、欧米で空前のフィットネスブームがあった[130]。西洋とインドの身体文化がシンクロする形で生まれた「アーサナ体操」は、1980-90年代、特に1990年代後半以降にアメリカをはじめとする世界各国に広がり、「スピリチュアルを喚起するインドの伝統的な身体技法」として受容されるようになった[29][130]。1990年代初頭のアシュタンガ・ヨーガやパワー・ヨーガの台頭である[131]。アメリカでは、ヨーガ・マットを肩からさげて、モダンな雰囲気のヨーガ・スタジオに行くことが、新しいカルチャーになろうとしているという[132]

スワミ・サッチダーナンダの弟子で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部教授のディーン・オーニッシュは、心臓病の回復にヨーガが役立ちうるという研究結果を発表し、ヨーガは代替医療としても注目を集め、オーニッシュのヨーガプログラムを取り入れる病院も出てきた[130]。欧米の近現代ヨーガの初期の指導者たちは、インドで時間をかけて修行し学び、教える立場に立ったが、ヨーガへの急激な注目の高まりで指導者の需要が急増し、数日で指導者を養成することが望まれるようになった[130]。ヨーガのコミュニティは、指導者の質の低下や、ジムや病院、保険会社、政府機関が指導基準を作り、ヨーガ業界に押し付けることを危惧するようになり、熟練の指導者たちによるヨガアライアンス(YA)は、1999年に数十年間インドのアシュラムで行われていた1カ月の研修プログラムの時間に基づき、生徒を安全に指導するための最低トレーニング時間を200時間とすることに決めた[130]

アメリカでフィットネス仕様(ワークアウト)にアレンジされた新しいヨーガが、マドンナなどハリウッドのセレブリティ(セレブ)が実践していたことで脚光を浴び、アメリカで広範な人気を得たことで、アメリカ発の爆発的で世界的な大流行をするに至っている[131][133]。2005年の統計によれば、アメリカのヨーガ人口は1650万人となり、特に18-24歳の若者達に限れば、年に50パーセント近い割合で増加したという[133]

日本の状況

仏教伝来

最初に瑜伽として日本にヨーガが伝わったのは、大同元年(806年)、より帰国した空海にまでさかのぼる。その後、真言宗や天台宗の「阿字観」等の密教行法として、現在に伝わっている。禅宗でいうは仏教の代表的な修行のひとつ「禅定」であるが、その原語はディヤーナ(禅那)で、ヨーガ・スートラ第2章に記述されるディヤーナと同語である。

近代ヨーガの受容

アメリカから書籍で日本に紹介され影響のあったヨーガは自称インド人も多く、戦前はアメリカ白人のものが中心だった[134]

近代日本におけるヨーガの受容は、1919年に中村天風が天風会を設立し、ヨーガを「心身統一法」として各界で説法したことに始まる[135]。その後、1940-50年代に神智学者三浦関造が竜王会を主宰し、「綜合ヨガ」の研修会でアーサナや呼吸法を指導した[135]。この二人が、日本のヨーガの「草分け的存在」とされる[135]

実際にヨーガを広めたのは、1950年代より活動を始めた二人の人物である[135]。一人は、沖ヨガの創始者沖正弘で、ヨーガを体系的に指導した先駆者であり、多くの後進を育てたことから「日本ヨガの父」とも呼ばれる[135]。沖と双璧とされるのが、インド哲学の権威佐保田鶴治で、『ヨーガ・スートラ』などのヨーガ文献の翻訳とヨーガの思想をまとめあげ、60歳を過ぎてから本格的な実践を始めて、多くの人に受け入れられるヨーガを紹介した[136]

精神世界の潮流

1970年代には、アメリカに端を発したニューエイジ・ムーヴメントが紹介されるようになり、日本でヨーガも含めた「精神世界」として受け入れられるようになった[137]。これは、精神性や心、自然との調和を重視する思想を核とする[137]。人間の内面世界の潜在的可能性を探る実践として、現在まで続いている[137]。この対抗文化の影響を受けたヨーガは青年層が中心であり、自己鍛錬により精神の向上を目指す「修行」のイメージの強いものであった[132]

メディアでの紹介と普及

また、1970年代半ば以降カルチャー・センターが人気を得るようになると、そのなかでヨーガ教室も開かれるようになった[138]。ヨーガは一種の「健康体操」として、比較的高齢の人びとに受容されたが、まだ十分に浸透するには至らなかった[138]。同時期、テレビでヨーガのコーナーが設けられ、書籍の出版やメディア出演が行われるようになったが、当時は30代から50代の方が大半で、現在のように若者中心ではなかった[138]1980年代には、若者向けのメディアや新聞にも広く取り上げられるようになり、「健康と美容」で全世代に浸透するようになった[138]

こうしてヨーガは、一定の支持者を獲得していた[139]。そのような時期、1995年に、オウム真理教による「地下鉄サリン事件」を始めとする一連の事件が発生した[139]。瞑想、ヨーガという言葉には、この教団のイメージがつきまとうようになった[139]。この事件がヨーガに与えた影響はきわめて大きかった[139]。看板からヨーガの文字が外されたり、生徒のいないクラスがあるなど、ヨーガは下火となり、廃業する教室も少なくなかった[139]

21世紀のヨーガの流行

1990年代後半には既にアメリカで流行していたヨーガは、オウム事件の影響のため、すぐには日本に入ってこなかった[139]。今回のヨーガの流行は、アメリカにおけるそれから10年近く遅れた[139]。ヨーガはメディアに無視されていたことで、多くの人々に「新しいもの」というイメージで捉えられることとなった[139]。2003年にアメリカから入ってきたパワー・ヨーガやアシュタンガ・ヨーガは、マドンナクリスティー・ターリントンに象徴されるセレブリティな雰囲気から爆発的な人気となった[139]。インドのヨーガは、アメリカを経由して新たな装いで洗練されたイメージとなり、こうした流行の最先端をいく人たちの実践によって、ヨーガの普及にさらなる拍車をかけることになった[132]

日本では、上記の異なる時期に発達したヨーガが、重層構造を形成しつつ展開しているものと理解される[132]

また、2016年よりインド政府認可のヨガ検定が一般社団法人全日本ヨガ連盟によって実施されている[140]

内容

座法

静的なヨーガでは、緊張を緩めて体を楽に保ち、心を無限性に集中させ瞑想にふけるために、座法の熟達が目指される[141]。『ヨーガ・スートラ』では座法の名前は挙げられていないが、ヴィヤーサの『注解』では蓮華座(結跏趺坐に相当)、英雄座など12種類があり、後世になるとますます増えて84種類にもなっている[141]

タントラ

インドにはタントラ、タントリズムと呼ばれる潮流があり、定義は困難であるが、ウパニシャッド梵我一如に表される大宇宙と小宇宙の相関符合の神秘思想によって世界観が基礎づけられており、絶対的最高原理を認め、これと融合・合一することで生前解脱することを目指し、現世を肯定してそれを自在に支配しようという教義と実践の体系であると言える[142]。タントリズムでは、解脱と現世の享受が主な関心事であり、解脱と共に神通力・神秘力の体得がもてはやされ、タントリズム特有の行法の秘儀・神秘的人体学が発達した。宇宙生命力としてのプラーナが、人体のナーディー(脈管)を循環し、チャクラに集約されると考えられた[143]。ヨーガによって会陰部のムーラダーラ・チャクラのクンダリニー女神を目覚めさせ、頭頂のサハスラーラのシヴァ神と合一することで法悦に浸るとされ、このヨーガに関連して、マンダラ、ヤントラ、チャクラ、ムドラーといった神秘的道具、附属物が考案され、グルによる入信聖別式は秘密性を深めた[143]。秘儀性は常識を超えた社会的禁忌へと接近させ、肉食、飲酒、乱交の勧めともなった[143]。タントリズムでは、女神から魔女まで女性に帰せられる宇宙のエネルギーであるシャクティが重視され、解脱の障碍にも宇宙支配の具ともなるシャクティをなだめ支配する必要があるとされ、これは性の謳歌に通じたが、退廃の危険性をはらみ、淫乱・狂操という性格も持っていた[144]。人身供儀のような、血なまぐさく陰惨な側面もみられた[142]。ハタ・ヨーガはこうしたタントリズムの一部である。

チャクラ

6つのチャクラの図、18世紀
レッドビータに始まる虹色チャクラ説のチャクラの色と場所[145]

チャクラとそれに関連する信仰は、タントラ的・密教的な伝統の中で重視されてきたが、古典ヨーガ(主流のヨーガ)とは直接関係はない[27][28]。インド学者のエドウィン・ブライアントらによると、解脱、悟りなどと呼ばれるヨーガの目標である霊的解放は、古典ヨーガでは、チャクラを採用するタントラ的なシステムとは全く異なる方法で達成され、チャクラ、ナーディ、クンダリーニといったタントラの生理学は、古典ヨーガにおいて周辺的なものにすぎないとしている[27][28]

ハタ・ヨーガの実践はチャクラ理論に依拠しており、これはタントラ的な身体観である。ヒンドゥー・ヨーガや仏教におけるチャクラの数、言及される色は一定していない。

チャクラを7つに固定し、各チャクラのプラーナの色に虹の7色をあてる考えが現代では普及しているが、これは伝統的なものではなくインド思想を取り入れた近代神智学を唱えた神智学協会のメンバーであるチャールズ・ウェブスター・レッドビータ(1854年 - 1934年)が20世紀に考案したものである[146]

種類

バラモン教・ヒンドゥー教

ラージャ・ヨーガ (राज योग、古典ヨーガ)

パタンジャリの彫像(ハリドワール)

「ラージャ」は「王の」という意味である。「マハー(偉大な)・ヨーガ」とも呼ばれる。教典はパタンジャリの『ヨーガ・スートラ』(紀元後4-5世紀頃)。サーンキヤ学派同様に、宇宙の究極的な原理として純粋精神(プルシャ)と根本物質(プラクリティ)とを認める二元論であり、根本物質から統覚器官・自我意識・思考器官という心(心理・認識機能を司る器官)を含め、一切が展開するとみなす[147]。よって、心は本来の自己である純粋精神とは本質が異なる物質的なものであるとする[147]。心の作用には煩悩性があり、煩悩を原因とする経験によってが心の中に蓄積するため、苦行・学習・最高神(イーシュヴァラ、自在神)への祈念という行作ヨーガ(クリヤー・ヨーガ、『ヨーガ・スートラ』2:1[148]。クリヤーは行為の意)の実践で煩悩を弱め、禅定によって煩悩の活動をし止滅させることで、心は根本物質に帰り、輪廻は消滅し、肉体の死とともに完全な解脱が実現できるとされた[147]

『ヨーガ・スートラ』第2章29節は、実修法として以下の八部門が説かれている[147]

  1. ヤマ(禁戒):不殺生・真実・不盗・不淫・無所有の五戒の実践[147]
  2. ニヤマ(勧戒)・内外の清浄・満足・苦行・学習(読誦)・最高神への祈念[147]
  3. アーサナ座法
  4. プラーナーヤーマ(調気、調息)
  5. プラティヤーハーラ(制感)
  6. ダーラナー(凝念)
  7. ディヤーナ(静慮、禅定)
  8. サマーディ(三昧

第1段階と第2段階は、当時の宗教や哲学体系で説かれた実践徳目と共通するものが多い[147]。第2段階(ニヤマ)のうち、苦行、学習(読誦)、最高神への祈念の3つ、クリヤー・ヨーガは準備段階に当たる。安定した座法で(アーサナ)呼吸を調整し(プラーナーヤーマ)、外界の支配から感覚を引き離して対象と感覚を切り離すことで、感覚器官を支配下に置く(プラティヤーハーラ)[141]。心を一か所に集中し(ダーラナー)、さらに他の観念に妨げられずに中断することなく持続し(ディヤーナ)、ついに集中する対象のみとなって自身が対象そのものであるかのようになる(サマーディ)。第6から8段階は同一の対象に対して行い、これを総制と言い、熟達することで真の智の輝きに達し、解放されると考えられた[141]

実修法は8つの段階で構成されることから、ラージャ・ヨーガをアシュターンガ・ヨーガ(八支ヨーガ)[† 10]とも言う。ハタ・ヨーガをラージャ・ヨーガの準備段階として用いることもある[149]

ヴィヴェーカーナンダは19世紀末にジュニャーナ、バクティ、カルマ、ハタを四大ヨーガとして、その総称をラージャ・ヨーガとしたが[150]、後にラージャ・ヨーガは第5のヨーガを指す言葉とされるようになった[151]。今日ではラージャ・ヨーガは『ヨーガ・スートラ』に示される古典ヨーガと同義とされる[152]。ただし、ラージャ・ヨーガという言葉の文献上の初出はハタ・ヨーガの教典『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』にある[† 11]

ジュニャーナ・ヨーガ (ज्ञान योग)

ジュニャーナ・ヨーガ英語版は知のヨーガである[154]

『バガヴァッド・ギーター』で説かれた解脱に至る3つの道のうちの一つであり、ジュニャーナ・マールガ(知識の道)は、正しい知識を学び、正しく認識することによって解脱に到達するとされている[155]。霊肉の関係を正しく分別することを学び、絶対者との本質的合一を己の精神の中に確立することを目指すもので、ウパニシャッド梵我一如の思想の流れを汲むと言える[11]。『バガヴァッド・ギーター』で言われるジュニャーナ・ヨーガは、無神論のヨーガであるサーンキヤ・ヨーガ学派のことであり、静かに座して観法すること主とする、非行動的な、哲学的ヨーガである[154]真我(観照能力)と自性(宇宙的普遍存在)の一致による解脱を目的とする[154]

超越的な真理の認識を重んずるヨーガ。ヴェーダーンタ学派、特にシャンカラに由来する不二一元論派で重視されている[85]。シャンカラは著書『バガヴァッド・ギーター註解』で、祭祀の実行といった世俗的な繁栄をもたらす「活動を促すことを特徴とするダルマ」は心の浄化を通じて間接的に解脱につながるものにすぎず、ウパニシャッドに説かれる梵我一如の知識である「活動を止滅させることを特徴とするダルマ」ジュニャーナ・マールガこそが至福すなわち解脱への道であり、『バガヴァッド・ギーター』が真に意図するところであるとしている[156]

カルマ・ヨーガ (कर्म योग)

カルマ・ヨーガ英語版は行のヨーガ[154]。日常生活を修行の場ととらえ、行為(カルマ)の結果としての報酬を求めず、願いを持たず、ただ各自の義務・本務(ダルマ)を行う実践倫理のヨーガである[157][154]インド独立運動の主導者たちが重視した[85]

バガヴァッド・ギーター』で説かれた解脱に至る3つの道のうちの一つであり、カルマ・マールガ(行為の道、実践の道)は、先祖祭祀の実行、正しい日常生活、正しいヨーガを学んで実践することで、心身を清め、解脱に到達するものとされている[155]。各ヴァルナ(身分)の義務の遂行を説いており、出家者向けでなく在家者のための教えであると理解されている[157]。ただし、シャンカラはこれを一段低いヨーガとみなしていた[85]

ハタ・ヨーガ (हठयोग)

ナーディー、チャクラ、クンダリニーの図

「ハタ」は「力」(ちから)を意味する。教義上、「ハ」は太陽、「タ」は月をそれぞれ意味すると説明されることもある[† 12][158]アーサナ(姿勢)、プラーナーヤーマ呼吸法)、ムドラー(印・手印や象徴的な体位のこと)、クリヤー/シャットカルマ(浄化法)、バンダ(制御・締め付け)などの肉体的操作により、深い瞑想の条件となる強健で清浄な心身を作り出すヨーガ。その萌芽は8-9世紀[159]ないし9-10世紀頃[160]に遡り、13世紀のゴーラクシャナータによって確立したとされる[159][† 13]。『ハタ・ヨーガ』と『ゴーラクシャ・シャタカ』という教典を書き残したと言われているが、前者は現存していない[8]。インドにおいて社会が荒廃していた時期に密教(タントラ)化した集団がハタ・ヨーガの起源と言われる場合もある。欧米など世界的に学習されているハタ・ヨーガの大半は、伝統的なハタ・ヨーガとは別系統である。アーサナが中心で、身体的なエクササイズの側面が重視されている。(→#現代のハタ・ヨーガ

ラヤ・ヨーガはハタ・ヨーガの奥義とされ、これをクンダリニー・ヨーガともいう[161]。クンダリニー・ヨーガの行法はハタ・ヨーガからタントラ・ヨーガの諸流派が派生していくなかで発達した[162]。ムーラーダーラに眠るというクンダリニーを覚醒させ、身体中のナーディーやチャクラを活性化させ、悟りを目指すヨーガ。密教の軍荼利明王は、性力(シャクティ)を表わすクンダリー(軍荼利)を神格化したものであると言われることもある[163]。クンダリニーの上昇を感じたからヨーガが成就したというのは早計で、その時点ではまだ「初期」の段階にすぎない。「火の呼吸」と呼ばれる呼吸法はクンダリニー・ヨーガの側面もあるがイコールではない。クンダリニー・ヨーガに相似するものとしては、チベット仏教のゾクリム(究竟次第)などがある[要出典]

神智学協会チャールズ・ウェブスター・レッドビータは、ハタ・ヨーガにより「透視力」を得ると、オーラの感知、さらにはアカシック・レコードと呼ばれる霊的な記憶の場にアクセスすることによる過去視・未来視が可能になるとしている[164]

近代インドでは、ハタ・ヨーガ(あるいはクンダリニー・ヨーガ)とその実践者は、不審で望ましくない、危険なものとして避けられる傾向にあった。(#後期ヨーガを参照)

バクティ・ヨーガ (भक्ति योग)

クリシュナが『バガヴァッド・ギーター』をアルジュナに説く場面

バクティ・ヨーガ英語版は、信のヨーガである[154]。呪法祭祀主義のバラモン教を否定して登場した、バクティ(信愛)を精神的支柱とし、ヨーガを実践的支柱とする運動である[154]。有神論のヨーガであり、神への絶対帰依と全き信愛を重視する宗教的なヨーガである[154]。バクティ・ヨーガは神を招く方法でもあり、三昧の境地で神と一体化することを目指す[154]

『バガヴァッド・ギーター』で説かれた解脱に至る3つの道のうちの一つであり、バクティ・マールガ(信愛の道)は、神の恩寵によって解脱に到達するものとされている[155]。『バガヴァッド・ギーター』では3つの道のうち最後に挙げられ、最も重んじられている[155]。ヒンドゥー教の諸派で重んじられる道である[85]

マントラ・ヨーガ (मंत्र योग)

聖音オーム

神聖な呪句、特に呪術的効果があると考えられる神聖な音節(種子(しゅじ))を唱えることによって解脱が得られるというヨーガである[85]。マントラ(真言)としてはブラフマンを表す「オーム」が広く知られているが、心の平安を意味する「シャンティ」もよく用いられる[85]ガーヤトリー・マントラをはじめ、マハー・マントラ、ハレークリシュナ・マントラ等、主にサンスクリット語のインヴォケーション・マントラ(神を讃えるマントラ)などがある。音(ヴァイブレーション=振動)のヨーガである、ナーダ・ヨーガ(नादयोग)の一種。真言密教と密接な関係がある[85]

マントラに簡単なメロディをつけ、コール・アンド・レスポンス(初めに一人が一節を歌い、次に参加者が同様に歌う)方式で、複数人から大勢で歌うものをキールタン(कीर्तन)という。キールタンと混同されやすいものにバジャン (भजन) がある。

現代では、ヒンドゥー教系新宗教とも言われる超越瞑想で、マントラを心の中で唱えて雑念を追い払う瞑想(超越瞑想)が行われる。

ジャパ・ヨーガ (जप योग)

基本的には、数珠を用いて定数のマントラを唱えるヨーガ。紙に定数のマントラの文字を書いてゆくものを、リキタ・ジャパという。

仏教

止観

阿字観

真言宗の伝統的な瞑想法で、僧侶の鍛錬の方法である。仏と行者の一体を観想するものが、阿字の観法である[165]。正式な阿字観への言及は、弘法大師空海が口述したものを、その弟子実慧が記録したといわれる「阿字観用心口決」が最初といわれる[166]。本尊である大日如来の象徴である阿字観掛け軸(大きな月輪(がちりん)の中に梵字の「阿」が蓮華の花の上に鎮座している図・曼荼羅)の前に座禅し、半眼または目を閉じて阿字観本尊を観じ、曼荼羅世界に入っていく[166][167]

本来出家者の修行法であるが、近年では高野山に外部から瞑想はないのかという問い合わせがあり、一般向けにも指導が行われるようになった[165]。僧侶の指導の下で行われる。

チベット密教

チベット語ではヨーガのことを ワイリー方式rnal 'byor (ネンジョル、ネージョル、ナルジョル)という。チベット密教にもさまざまなヨーガが伝承されている。

夢のヨーガ

夢のヨーガ英語版、夢ヨーガ (チベット語: rmi-lam もしくは nyilam; サンスクリット: स्वप्नदर्शन, svapnadarśana)は、チベット仏教密教の階梯で行われるもの。チベット仏教では伝統的に、明晰夢を訓練で導き出す技術を養ってきた[168]。最初は夢の中で、次は夢のない睡眠の中で、さらに24時間常にはっきり覚醒した状態を保つ訓練を行い、最終的に通常の覚醒そのものが夢であるという認識を目指す[168]

生起次第(キェーリム)

世界を構成する森羅万象が究極の存在である仏たちの顕現であることを体得する修行で、曼陀羅の観想法(瞑想法)や本尊瑜伽とも類似している[169]

究竟次第(ゾクリム)

後期密教が究極の修行法として開発した、快楽と叡智の究極の関係をベースにした性瑜伽にまつわる修行法で、インドの後期密教とそれを受け継ぐチベット密教に独特のものである[169]。生起次第と、究竟次第の準備に当たる微細瑜伽に続いて行われるが、チベット密教の究極の修行法で、秘伝であり、ごく少人数にしか伝えられてこなかった[169]

近年の種類

ヨガマット
ハタ・ヨーガの練習をする人々
スポーツジムのヨーガ教室

近現代に創られた、新たな「ハタ・ヨーガ」にフィットネス等の要素を取り入れ改良を加えたものが、現代人に人気である。B.K.S.アイアンガー(1918年 - 2014年)によって、滑らない個人用のマット上で実施することや、補助具を利用して安全性や運動の効果を高める工夫がなされた[170]

ハタ・ヨーガ(ヨーガ体操)

現代になってティルマライ・クリシュナマチャーリヤ英語版が重視したといわれる「シールシャーサナ」(頭立ちのポーズ、ヘッドスタンド)[171]

現代の英語圏ではアーサナに重点を置いた体操的なヨーガがハタ・ヨーガと呼ばれて広まっているが、マーク・シングルトンの研究によると、それは中世のハタ・ヨーガが連綿と現代に伝えられたものではない。その直接的な起源は、西洋の身体鍛錬文化英語版体操法の影響を受けて20世紀初頭の数十年間にインドで形成された「創られた伝統」であった[31]

現在世界的に普及している体操的なヨーガのポーズの多くは、イギリスの筋肉的キリスト教などを背景に19世紀後半から20世紀前半に西洋で発達した身体鍛錬運動に由来しており、それらはキリスト教を伝道するYMCAやイギリス陸軍によってインドに輸入されたものである[29][93]。宗教社会学者の伊藤雅之は、この西洋身体鍛錬に由来するヨーガ体操はハタ・ヨーガと呼ばれるが、現在のハタ・ヨーガのアーサナと、『ヨーガ・スートラ』に代表される伝統的な古典ヨーガや中世以降発展した(本来の)ハタ・ヨーガとのつながりは極めて弱いと指摘している[29]。イギリス人はインド人とインド社会は肉体的、道徳的、精神的に堕落しているという脆弱神話を唱えてインド支配を正当化しようとし、インド人も脆弱神話を内面化していたため、インド人知識人たちは身体鍛錬文化に興味を持ち、肉体を強化して個人と社会の堕落と言われる状態を克服しようとし、またイギリスとの武力闘争の闘士を育てようとした[93]。1920-30年代に、西洋の身体鍛錬から発生した多様な体操法などが融合してインド伝統のハタ・ヨーガの技法として確立した[29]

「現代ヨーガの父」と呼ばれるティルマライ・クリシュナマチャーリヤ英語版(1888年 - 1989年)も、西洋式体操の影響を受けた身体技法を自らのヨーガ・クラスに取り入れ、思想面にヴィヴェーカーナンダ(1863年 - 1902年)などのヒンドゥー復興運動の思想と『ヨーガ・スートラ』を援用した[29]。現代のハタ・ヨーガはアーサナ(ポーズ)主体で、解剖学を修め、『ヨーガ・スートラ』を聖典とし[95]、現代の多くのヨーガのアーサナは、現代のハタ・ヨーガがベースになっている[29]シールシャーサナ英語版(頭立ちのポーズ)やサルヴァンガーサナ英語版(肩立ちのポーズ)はクリシュナマチャーリヤが重要視したものといわれ、現代のほとんどのヨーガ教師は、クリシャナマチャーリヤとは別系統の人々も含め、直接的・間接的に彼の影響を受けていると言われる[171]

アシュターンガ・ヴィニヤーサ・ヨーガ

現在のパワー・ヨーガの源流ともなっているヨーガ。呼吸と共にアーサナを行う。

現在、一般的にヨーガのシーンで「アシュタンガ・ヨガ」と呼ばれているものは正式には「アシュターンガ・ヴィニヤーサ・ヨーガ英語版」(アシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガ)という(本来は、アシュターンガ・ヨーガという語は『ヨーガ・スートラ』第2章29節に記述されている八部門ないし八階梯からなる修行体系を指す)。ティルマライ・クリシュナマチャーリヤに教えを受けたパッタビ・ジョイス英語版がこのヨーガの創始者である。現在は継承者でパッタビ・ジョイスの孫であるシャラスが指導している。

パワー・ヨーガ

パワー・ヨーガ英語版」(パワーヨガ)は、アシュターンガ・ヴィニヤーサ・ヨーガをベースにしたヨーガで、アーサナを実践することで脂肪を燃焼させ、美しい肉体を作ることを目的として主にアメリカで開発された。ハリウッドスターを中心に一大ブームとなり先進諸国に広がったことから「ハリウッド・ヨーガ」ともいう。

ハタ・ヨーガ(ヨーガ体操)が、1つのポーズをとったまま一定時間静止した上で次のポーズに移行するのに比べ、アシュターンガ・ヴィニヤーサ・ヨーガをベースにしたパワー・ヨーガは、各種ポーズをストレッチのように一連の流れの中で行うのが特徴である。アイソメトリックな運動によるフィットネスが主な目的である。

ホット・ヨーガ

ホット・ヨーガ、ホットヨガは、室温35〜39度前後、湿度60%前後に保たれた室内でアーサナを中心としたエクササイズを行うヨーガである。実施する室内環境は、ヨーガ発祥の地インドの気候を模したとも言われる[172]。パワー・ヨーガ、ビクラム・ヨーガ(40度以上で行う)、フォレスト・ヨーガ英語版などの形態がある。アメリカ合衆国西海岸で1970年代に始まり、日本では2009年ごろから広まった[172]。2015年時点で日本で30万人が行っているとも言われる(出典のデータが何の統計によるかは不明)[172]

論争・問題

オウム真理教におけるヨーガによる自己変容体験の悪用

オウム真理教には、ヨーガがきっかけになって入信した信者が多かった。教祖の麻原彰晃は、阿含宗での修行ののちに『ヨーガ・スートラ』に出合い、『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』、『ゲーランダ・サンヒター』、『シヴァ・サンヒター』(いずれも佐保田鶴治訳)と教典をもとに独学し、空中浮揚するまでに至ったという。新宗教を研究する沼田健哉は、このように正規のグルにつかずに修行をしていたことで、いわゆる「魔境」に陥った可能性を指摘し、のちに様々な問題を生ぜしめた要因のひとつであると述べている[36][37]。オウム真理教ではヨーガによるクンダリニー覚醒の実践が中心的な位置を占めており、沼田は、「ヨーガによる自己変容としての解脱体験こそ、80年代前半の麻原の宗教的アイデンティティの柱の一つとみなしうる」と述べている。本来ヨーガや瞑想によって常人にない能力を得ることは否定されてはいないが、オウム真理教の信者には超能力を獲得することを主な目的とする者も少なくなかった[36]

ヨーガや瞑想などの修行法、断食などの苦行も、本来は真の自己を見出すためのセルフ・コントロールの一種である。沼田は、破壊的カルトと呼ばれるような新宗教の教団で行われている行為と、東洋の伝統的なヨーガや瞑想などの修行法は似ている部分が少なくないが、行われるコンテクストが異なっていると反対の結果を生じうると述べている。またオウム真理教にみられる強固な教祖 = グル崇拝は、麻原や幹部による洗脳やマインドコントロールをより容易にしたことを指摘している[36]

指導者の無資格問題・講習の質と時間

ヨーガの指導者になるのに定まった資格はなく、だれでもなることができるが、全米ヨガアライアンス(YA)200時間(週末10-12回分)のYoga Teacher Training(YTT)[173]の修了がスタジオやジムで教えるための必須条件となっていることが多いため、これを受ける人が多い。200時間YTTを行うYA認定校は5500以上、YA認定指導者は6万人以上にのぼる。2016年には世界中で10万人以上が年間平均3000ドルを200時間YTTに投資した。200時間YTTは、インドである程度長い時間を費やしてヨーガを習得した初期のアメリカの熟練の講師たちによって、講師の短期間での育成を防ぐために設定された。しかし、200時間は初期の欧米のヨーガの指導者たちが教える立場になるまでに費やした時間とは比べ物にならないほど短く、たった200時間のトレーニングで十分なのかという疑問の声もある。200時間YTTでは、生徒の安全を図るための解剖学に十分な時間を費やしておらず、クラスの作り方や生徒の生徒の肉体的、精神的ニーズへの理解、ヨーガの伝統を十分学ぶことは難しい。YTT修了者には、コースの内容が指導者になるには不十分と感じ、生徒をサポートし安全に指導することはできないと考え、指導者になることをあきらめる人も少なくない。[130]

指導者の低収入

全米ヨガアライアンスの調べでは、ヨーガの指導が主要な収入源となっているインストラクターは30%にも満たない。そのため、コロラド州議会では、ヨーガ講師は職業として認められないという論争があった。[130]

女性への性的虐待

近年では、ヨーガ教室で、指導者が生徒や関係者に不適切な性関係を強いたり、セクシャルハラスメントをしたり、生徒のアジャスト(姿勢の調整)の際に性的な接触を行ったり、セラピーと称して性行為、性儀式を行うといったスキャンダルが相次いでいる。「ヨガジャーナル」の記者は、ヨーガの歴史の中で、ヨガの流派やしきたり、またはヨーガ道場や関連の組織のなかで、違法な性的行為の問題は正しく認識されないことが多く、対策も講じられてこなかったと指摘している[174]

後期密教で行われた女性を性ヨーガの相手に行う貪欲行について、高野山大学密教文化研究所の静春樹は、性ヨーガの相手を務める女性にとって貪欲行は男性修行者と同じ意味を持つのか、貪欲行は女性が理論構築しイニシアチブを取るわけではなく、性ヨーガの相手の女性は男性修行者が悟るための手段としてだけでなく、彼女にとっても成就の手段であるのか、女神崇拝の大きな潮流の影響を受け女性性を重視しているが、むしろそれが男女の権力関係、男性による女性支配、女性差別を隠す装置になっていないかと問いかけている[175]。後期密教で、出家者は性的ヨーガを主に性的イメージを用いる観想として行ったと考えられているが、時には男性出家者が在家の女性信者に対し、「我が身を捧げる無上の供養」として性ヨーガの相手を強要する破戒行為に及ぶこともあった[85]

現代のヨーガの世界でも、男性指導者を教祖や聖者であるかのように思わせる、カリスマ的な物語があふれている[176]

現代ハタ・ヨーガの一種であるアヌサラ・ヨーガ英語版の創始者ジョン・フレンド英語版は、ウイッカカブン魔術的な性関係を持ち(セックス・ヨーガを含むタントラ・ヨーガ(ネオタントラ)を指導していたと言われるが、伝統的なものではないと言われる[177][178][179])、既婚者を含む関係者や生徒と不適切な性関係を持っていると告発された。このスキャンダルで教師は次々辞職し、ジョン・フレンドは指導者の地位を退いている[180][181][179]。(加えて、被雇用者の年金等の雇用条件に関する違法行為の疑惑がある[180][179]。)

現代ハタ・ヨーガ、ホット・ヨーガの一種であるビクラムヨガでは、の創始者で巨大ヨーガスクールを経営し世界的にフランチャイズ展開していたビクラム・チョードリー英語版が、生徒からセクハラ、パワハラ、性犯罪で民事告訴された[182][183]

2017年の#MeToo運動の盛り上がりの際には、ヨーガ教師で企業家のレイチェル・ブラゼンが、ヨーガ教室・コミュニティ内で女性が受けた性的虐待、セクシャルハラスメント、性的暴行の経験の告白を300件以上集め、ヨーガの世界に衝撃を与えた[184]。ブラゼンは、このような被害の申し立ては比較的最近に始まったが(2018年時点)、「何十年もの間、ヨガのコミュニティ内での虐待については皆知っていました」と述べ、長年続く問題であると指摘し、「少なくとも、虐待を行ったティーチャーが信用を失う仕組みが必要です」と述べた[184]。ヨーガの生徒には、社会的な立場が弱く、心のバランスや静けさを求めて学びに来る人も多く、虐待の被害者は、神聖で安全であると考えていた場所で、尊敬する教師やメンバーから暴行されたことで非常に大きなショックを受けているという[174][184]。ヨーガ産業の中心に君臨するアシュターンガ・ヴィニヤーサ・ヨーガを創始したパッタビ・ジョイス英語版は、慈悲深い父親的存在として尊敬を集めてきたが、生前も死後もヨーガの指導での性的虐待の噂があり、#MeToo運動で性的な不正行為および性的暴行を繰り返していたとして、指導者や生徒から告発があった[176][174]

スピリチュアルな世界では、権力の乱用による虐待は珍しい話ではない[174]。Kripalu Center for Yoga & Healthの元CEOであるリプシウスは、性的虐待のヨーガ界への影響は壊滅的なものであり、加害者が追放されても被害者の後遺症が数十年間も続く現実を見てきたという[174]。全米ヨガアライアンスは、被害者のためのホットラインと支援を始め、状況の改善を試みている[174][184]

健康への影響と研究

エクササイズとしての現代のヨーガの健康への影響がさまざまに研究されてきたが、多くの研究は対象が少なすぎるなどの問題があり質が低いため、ほとんどの場合、健康管理のために有望であると言えるが、効果があると科学的に証明されているわけではない[185]。ヨーガを行う場合、個々人の健康状態に合わせてインストラクターや医療従事者と話し合うべきであるが、適切に行われれば健康な人にとっては一般的に安全であると考えられている[185]

2012年のアメリカの全国調査によると、実践者の多くはヨーガが一般的な健康問題を改善すると信じており、ストレス管理、バランス、メンタルヘルスなどの健康を助け、健全な食生活と運動の習慣の向上に役立つというエビデンスも出始めている[185]。腰痛や首の痛みを和らげ、糖尿病患者の血糖値をコントロールするのに役立ち、太りすぎ、肥満の人が体重を減らす助けになると考えられている[185]。がん、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患などの慢性疾患を持つ人々の症状の管理、生活の質の向上の援助に役立つ可能性があるという有望な証拠がある[185]。女性の更年期障害の肉体的・精神的な症状の改善を助け、睡眠障害の改善、禁煙の実行を助けることができるかもしれない可能性が示唆されている[185]。人生の困難な状況における不安や気分の落ち込みの改善に役立つかもしれないが、不安障害、うつ病、または心的外傷後ストレス障害の管理に役立つという証拠はない[185]

男性と女性では、ヨーガのポーズが筋肉に与える影響が異なるというエビデンスがある[185]

ヨーガを行っている人の3分の2は、そのことを医療従事者に話していなかった[185]

アメリカのヨーガの研究は、主にヨーガが最も人気がある層、比較的裕福で高度な教育を受けた白人女性のグループが対象で、他の人々、特に少数民族のグループやより収入の少ない人々は過小評価されている[185]

怪我・身心への悪影響

後屈のポーズ

現代の一般的なヨーガは、十分に訓練されたインストラクターの指導の下で適切に行われる場合、健康な人にとっては安全な身体運動であるとみなされているが、他の運動同様に怪我のリスクはあり、スポーツ障害と同様の肉体的な損傷が生じうるポーズがある[186][187][188][189]。ヨーガが原因の怪我で最も一般的なものは捻挫と肉離れである[185]。65歳以上の怪我の割合は、若年者より多い[185]。衝撃の大きなスポーツより怪我のリスクは低く、重傷はまれである[185]

オーストラリアのヨーガ関係者の調査によると、回答者の約20%が練習中に何らかの身体的傷害を負っていた[186]。過去12か月間で、回答者の4.6%が長期的な痛みのある、または医療による治療が必要な怪我を負っていた[187]。頭立ち、肩立ち、蓮華座及び半蓮華座、前屈、後屈、倒立が最も多く負傷者を出していた[186]

専門家が指摘するヨーガの悪影響は、初心者の競争心とインストラクターに資格がないことが理由として挙げられる[187]。教室の需要が高まるにつれて、多くの人が各々の組織や教室でヨーガ・インストラクターとして独自に認定されたが、インストラクターになるのに特別な資格は必要なく、骨格や筋肉など、体の仕組みについての専門知識を学ぶことは義務づけられていない[190]。新しいインストラクターのすべてが、教室の初心者全員に十分目を配り、けがを防ぐのに適切な指導を行えるわけではない[187]。同様に初心者は、自分の身体能力を過大評価し、ポーズを行うの十分な柔軟性や筋力を備える前に、高度なポーズができるよう間違った努力をしがちである[187]。『メディカルヨガ(原題:Yoga as Medicine)』の著者で、「ヨガジャーナル」の編集者である医学博士のティモシー・マッコールは、生徒は怪我をしても「先生を慕っているから、歯を食いしばって大丈夫だと言う。だがひそかに整形外科に通っているんだ」、そのため、指導者は生徒の怪我の問題を把握できず、生徒を管理しきれないだろうと語っている[130]。なお、初心者や生徒だけでなく、指導する方・される方の双方がベテランの指導者であっても、不適切なアジャストで大怪我を負うこともある[191]

ヨーガの練習で裂傷が生じる可能性のある頸部動脈

血液を脳に供給する頸部動脈の裂傷である椎骨動脈解離英語版は、首を伸ばしながら回すことで起こる可能性があり、幾つかのヨガのポーズで起こりうる。これは非常に深刻な症状であり、血管の裂ける場所や程度によっては、脳梗塞脳卒中くも膜下出血等を引き起こすこともある[192][193][194]

大腿骨股関節を結ぶ股関節唇(こかんせつしん:臼蓋部分を覆う軟骨の一種)損傷は、股関節を大きく開く動きをするスポーツなどで多く見受けられるが、ヨーガの練習で生じたという報告がある[195][196]。ヨーガの練習で股関節に筋断裂、大腿骨骨挫傷、股関節唇損傷の大怪我を負った現役講師は、原因はポーズの指導で受けた強いアジャストであり、指導者によるアジャストの負荷が自分の限界を超えていたことはわかったが、強い力で固定されて逃げ場がなく、痛みを訴える言葉も聞き流されてしまったと語っている[191][190]

日本でもヨーガのブームによる教室の急増で被害の訴えが増加しており、国民生活センターには、「肩の腱板(肩甲骨と腕の骨をつなぐ重要な腱)を損傷した」、「運動中に圧迫骨折した」など、重大な怪我をしたという相談があり、ホットヨーガで「アレルギー症状が出た」、「じんましんになった」、「皮膚がただれた」等の訴えもある[190]

国際医療福祉大学の岡孝和は、2013年に厚生労働省の研究班の代表としてヨーガの効果や安全性を調査し、全国200か所余りの教室で、ヨーガを行った直後の2508人の生徒に聞き取りをしたところ、3割近くが心身に何らかの異常を訴えていた。岡孝和は、国民生活センターに寄せられた相談件数について「氷山の一角にすぎないと思います」と述べている[190]

ホット・ヨーガは様々な利点が主張されているが、エクササイズやダイエットの効果は通常のヨーガと変わらないと指摘されており、高温多湿の環境で行うことが肉体に悪い影響を及ぼすこともある[197]

健康に問題がある人、年配の人、妊娠中の女性は、いくつかのヨーガのポーズや練習を避けるか、修正して行う必要があると考えられている[185]

著名なヨーガに関連する人物

存命人物

脚注

補注

  1. ^ 禅定はヨーガの一種であるが[11]禅宗の坐禅とヨーガの瞑想は、思想・方法とも、必ずしも同じというわけではない[14]
  2. ^ 唯物論チャールヴァーカと祭事に専念するミーマーンサー学派を除く[2]
  3. ^ カタ・ウパニシャッド」では、「感官(感覚器官)の彼方に対象あり、対象の彼方に意あり…未顕現の彼方に純粋精神あり。純粋精神の彼方には何ものもなし。」とサーンキヤ哲学(ヨーガ学派との関係が深い学派)の諸原理が説かれており、今西順吉によると、これはヨーガによる精神の沈潜の深まりに対応すると考えられる[10]
  4. ^ ただし、日本語の長母音はサンスクリット語の三倍母音なので長くのばしすぎるのも問題である。インド人の発音を聞くとヨゥガと言っているように聞こえる。
  5. ^ マヌ法典』では、女性はどのヴァルナ(身分)であっても、入門式(ウパナヤナ)を受けてヴェーダを学ぶ男子として「再生」するドヴィジャ(二度生まれる者、再生族)ではなく、入門式を受けられず一度生まれるだけのエーカージャ(一生族)とされていたシュードラ(隷民)と同等視され、女性は再生族である夫と食事を共にすることはなく、祭祀を主催したり、マントラを唱えることも禁止されていた[46]
  6. ^ 伊藤武によると、ヨーギニーという言葉は本来、尸林英語版(シュマシャーナ)で土俗信仰の女神を祀り特異な儀礼にたずさわった巫女たちを指す言葉で、魔女の意味合いを帯びるようになった。その多くは被差別カーストの出身であった[47]。母系制社会を形成していた彼女たちは、中世インドの後期密教の時代にヨーギニー(瑜伽女)またはダーキニー(拏吉尼)と呼ばれた[48]。彼女らは男性行者を導く師の役割を演じることもあり[49]、その時代の大成就者英語版たちの伝記である『八十四成就者伝』には悟りを得た女性が複数登場する[50]。後期密教の性的儀礼における男性行者の相手の女性はムドラー(印契)とも呼ばれた[51]。『ハタヨーガ・プラディーピカー』は、ヴァジュローリー・ムドラーでラジャス(性分泌物と解される)を再吸収し、保持することのできる女性をヨーギニーと呼んでいる[52]
  7. ^ 例えば、近代インドを代表する聖者であるラマナ・マハルシ[98]の『あるがままに - ラマナ・マハルシの教え』は、修練方法としてジュニャーナ・ヨーガ、バクティ・ヨーガ、ラージャ・ヨーガを勧めている。ラマナは、霊性の向上は「心」そのものを扱うことで解決ができるという基本的前提から、ハタ・ヨーガには否定的であった。また、クンダリニー・ヨーガは、潜在的に危険であり必要もないものであり、クンダリニーがサハスラーラに到達したとしても真我の実現は起こらないと発言している[99]
  8. ^ 伊藤雅之はこれを1920年代から1930年代のこととしているが、シングルトン 2014によれば、少なくともクリシュナマチャーリヤに関して言えば1930年代以降のことである。伊藤論文では西洋式体操から編み出された近代ハタ・ヨーガをひとりクリシュナマチャーリヤのみに帰しているような記述となっているが[29]、シングルトンによれば同時代のスワーミー・クヴァラヤーナンダ英語版シュリー・ヨーゲーンドラ英語版も重要であり、クヴァラヤーナンダの活動はクリシュナマチャーリヤに先行している。また、伊藤は近代ハタ・ヨーガにはインド伝統武術に由来する要素もあるとしているが、シングルトンの著書にはそれを示唆する記述はない。
  9. ^ a b AYUSHは、次の頭文字をとった略語。AはAyurveda(アーユルヴェーダ)、YはYoga&Naturopathy(ヨーガとナチュロパシー=自然療法)、UはUnani(ユナニ医学)、SはSiddha(シッダ医学)、HはHomeopathy(ホメオパシー)。
  10. ^ アシュタ=8つ、アンガ=枝、支分、部門。
  11. ^ 伊藤武の解釈するところによると、『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』のいうラージャ・ヨーガはハタ・ヨーガの奥義を意味し、ラヤ・ヨーガ(クンダリニー・ヨーガ)のことを指している[153]
  12. ^ 印度哲学研究者の山下博司によると、これは通俗語源的な解釈である。
  13. ^ ゴーラクシャを山下は10-12世紀[7]、伊藤は12世紀前半の人物とする[8]
  14. ^ オーロビンド・ゴーシュのインテグラル・ヨーガとは別。

出典

  1. ^ 森本 2003, p. 288.
  2. ^ a b c d e f 川崎 1993.
  3. ^ a b 島 2002, p. 117.
  4. ^ a b 湯浅 1977, pp. 16–17.
  5. ^ a b 佐保田 1976.
  6. ^ a b 吉田 1995, p. 112.
  7. ^ a b 山下 2009, p. 140.
  8. ^ a b c 伊藤 2011, p. 262.
  9. ^ a b c 森本 2003, p. 289.
  10. ^ a b 今西 1967, pp. 124–125.
  11. ^ a b c d e 奈良 1967, pp. 302–303.
  12. ^ a b c 湯浅 1977, pp. 3–23.
  13. ^ a b c 今西 1967, pp. 122–123.
  14. ^ 森本 2003, p. 290.
  15. ^ a b c d e f g 雑密修験から大乗瑜伽行思想へ”. 空海誕生 -エンサイクロメディア空海-. 2020年8月14日閲覧。
  16. ^ a b c d e f 立川 2012.
  17. ^ a b c 瑜伽行派”. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2020年8月14日閲覧。
  18. ^ a b c 川崎 1993, pp. 95–96.
  19. ^ 斉藤征雄. “唯識思想 8.悟りは、瑜伽行の実践によってはじめて可能”. 企業OBペンクラブ. 2020年8月14日閲覧。
  20. ^ 河原 2014, p. 91.
  21. ^ 島 2002, pp. 117–118.
  22. ^ a b c 森本 2003, p. 291.
  23. ^ 湯浅 1977, p. 171.
  24. ^ 吉田 1995, p. 96.
  25. ^ 中谷 2006.
  26. ^ a b c d 吉田 1995, p. 123.
  27. ^ a b c Edwin Francis Bryant (2009). The Yoga sūtras of Patañjali: a new edition, translation, and commentary with insights from the traditional commentators. North Point Press. pp. 358-364, 229-233. ISBN 978-0-86547-736-0. https://archive.org/details/yogastrasofpataj0000brya 
  28. ^ a b c Stefanie Syman (2010). The Subtle Body: The Story of Yoga in America. Farrar, Straus and Giroux. pp. 72-74. ISBN 978-1-4299-3307-0. https://archive.org/details/subtlebodystoryo0000syma 
  29. ^ a b c d e f g h i j 伊藤雅之「現代ヨーガの系譜 : スピリチュアリティ文化との融合に着目して(第十二部会,<特集>第六十九回学術大会紀要)」『宗教研究』第84巻第4号、日本宗教学会、2011年3月30日、417-418頁、doi:10.20716/rsjars.84.4_1255NAID 110008514008 
  30. ^ De Michelis, Elizebeth,2004,『A History of Modern Yoga : Patanjali and Western Esotericism』,London:Continuum
  31. ^ a b シングルトン 2014.
  32. ^ 河原 2014, p. 90.
  33. ^ a b c d e Sammy Bishop. “Timeless Yoga and Sinister Yogis: David Gordon White’s Brief History of Yoga”. The Religious Studies Project. 2020年8月8日閲覧。
  34. ^ ブロード, 坂本訳 2013.
  35. ^ How Yoga Can Wreck Your Body(ヨーガはどのようにあなたの身体を破壊するのか) ニューヨークタイムズ、2012年
  36. ^ a b c d 沼田健哉 「マインド・コントロールとセルフ・コントロール : オウム真理教事件と関連して」『桃山学院大学社会学論集』 29(2), p.61-94, 1995-12-20 桃山学院大学, NAID 110004700873
  37. ^ a b 沼田健哉 「オウム真理教の研究 : 科学と宗教の関係に関連して」 総合研究所紀要 22(1), 93-128, 1996-09-30 桃山学院大学, NAID 110004088027
  38. ^ After sex scandal, a Bikram yogi asks whether it’s wise to put so much faith in a guru Benjamin Shalva The Washington Post 2015年4月9日
  39. ^ 立川 2008.
  40. ^ 伊藤 2011, p. 90.
  41. ^ a b c d 瑜伽”. 新纂浄土宗大辞典 (2018年3月30日). 2020年8月14日閲覧。
  42. ^ 山下 2009, p. 30.
  43. ^ 伊藤武 ヨーギン yogin योिगन्【伊藤武のちょこっとサンスクリット語】 バン・ボーラ!
  44. ^ 伊藤 2011, p. 14.
  45. ^ http://www.yogini.jp
  46. ^ 森本 2003, pp. 191–192.
  47. ^ 伊藤 2011, pp. 230–233.
  48. ^ 田中 1997, pp. 79–83.
  49. ^ 伊藤 2011, pp. 232–233.
  50. ^ ケサン & 正木 2000, p. 166.
  51. ^ エリアーデ, 立川訳 1987, p. 88.
  52. ^ 佐保田 1973, pp. 245–246.
  53. ^ a b c キャロル, 小久保ら訳 2008.
  54. ^ ブリハディーシュワラ寺院 神谷武夫
  55. ^ 奴隷状態から自立へ:南インド、ダリット女性たちの物語 INPS International Press Syndicate
  56. ^ a b c d シングルトン 2014, p. 33.
  57. ^ a b 佐保田 1973, p. 23.
  58. ^ シングルトン 2014, pp. 33–34.
  59. ^ シングルトン 2014, p. 34.
  60. ^ 山下 2009, p. 69.
  61. ^ 山下 2009, p. 68.
  62. ^ a b 山下 2009, p. 71.
  63. ^ 瀬古 1986.
  64. ^ 佐保田 1973, p. 27.
  65. ^ a b c d e f g h i 起源は4500年前。黒魔術と言われた「ヨガ」の語源とルーツを振り返る”. ヨガジャーナルオンライン (2020年1月5日). 2020年8月2日閲覧。 翻訳元
  66. ^ 湯浅 1977, pp. 112–114.
  67. ^ 大乗の深層心理学を問う”. 空海誕生 -エンサイクロメディア空海-. 2020年8月14日閲覧。
  68. ^ a b 山下 2009, p. 105.
  69. ^ 『世界宗教百科事典』丸善出版、2012年。 p. 522.
  70. ^ 佐保田 1973, p. 36.
  71. ^ シングルトン 2014, p. 279.
  72. ^ 石橋 2017.
  73. ^ a b 佐保田 1983.
  74. ^ 佐保田 1973.
  75. ^ 吉田 1995, pp. 122–123.
  76. ^ a b シングルトン 2014, p. 35.
  77. ^ 佐保田 1973, p. 35.
  78. ^ a b c 杉木恒彦. “バクティ”. コトバンク. 2020年8月16日閲覧。
  79. ^ a b c 杉木恒彦. “母タントラの宗教性 —真理観と初期中世世界”. 東京大学文学部・大学院人文社会系研究科. 2020年8月14日閲覧。
  80. ^ 湯浅 1977, p. 114.
  81. ^ a b c インド仏教とマンダラ”. 野口圭也. 2020年8月14日閲覧。
  82. ^ 湯浅 1977, pp. 118–119.
  83. ^ チベット仏教のダーキニー”. NIERIKA. 2020年8月16日閲覧。
  84. ^ 関 1996.
  85. ^ a b c d e f g h i j インド仏教史16 仏教の変遷8 大乗仏教の思想的展開”. 徳法寺. 2020年8月19日閲覧。
  86. ^ 湯浅 1977, pp. 188–191.
  87. ^ a b c 藤巻 1995, pp. 102–104.
  88. ^ 佐保田 1973, p. 37.
  89. ^ 伊藤 2011, p. 96.
  90. ^ a b c d イスラームのインド侵入/インドのイスラーム教”. 世界史の窓. 2020年8月16日閲覧。
  91. ^ 河原 2017, p. 157.
  92. ^ a b 河原 2014, p. 96.
  93. ^ a b c 河原 2017, p. 160.
  94. ^ a b c d e f 河原 2014, pp. 92–93.
  95. ^ a b c 伊藤武 ヨガ・ボディ【伊藤武のかきおろしコラム】 バン・ボーラ! 2015.07.05
  96. ^ a b c シングルトン 2014, pp. 45–52.
  97. ^ a b シングルトン 2014, p. 99.
  98. ^ ポール・ブラントン 著、日本ヴェーダーンタ協会 訳『秘められたインド 改訂版』日本ヴェーダーンタ協会、2016年(原著1982年)。ISBN 978-4-931148-58-1 
  99. ^ デーヴィッド・ゴッドマン編 著、福間巖 訳『あるがままに - ラマナ・マハルシの教え』ナチュラルスピリット、2005年、249-267頁。ISBN 4-931449-77-8 
  100. ^ a b c d e 河原 2017, pp. 160–161.
  101. ^ A History of Modern Yoga by de Michelis”. Traditional Yoga Studies (2011年3月25日). 2020年8月4日閲覧。
  102. ^ Thoreau the Yogi”. Daily Cup of Yoga. 2020年8月4日閲覧。
  103. ^ Henry David Thoreau, Yoga Master”. MENTAL FLOSS (2013年5月6日). 2020年8月4日閲覧。
  104. ^ a b c 島 2002, pp. 49–50.
  105. ^ シングルトン 2014, p. 5.
  106. ^ Yoga India Inscribed in 2016 (11.COM) on the Representative List of the Intangible Cultural Heritage of Humanity Intangible Heritage UNWSCO
  107. ^ 「ヨガの日」を国連に採択させたインドのソフトパワー外交”. 東京財団 (2015年3月31日). 2018年3月16日閲覧。
  108. ^ a b c 加瀬澤雅人 「身体と医療」『南アジア社会を学ぶ人のために』 世界思想社、2010年。pp. 243-245.
  109. ^ a b c d e 竹村嘉晃「グローバル時代における現代インドのヨーガ受容」『スポーツ人類学研究』第2007巻第9号、日本スポーツ人類学会、2008年、29-52頁、doi:10.7192/santhropology.2007.29NAID 130004184353 
  110. ^ 山下 2009, pp. 231–232.
  111. ^ 佐保田 1973, pp. 61–62.
  112. ^ 山下 2009, pp. 169.
  113. ^ a b 河原 2014, p. 94-95.
  114. ^ 河原 2014, p. 94.
  115. ^ 佐保田 1973, pp. 62–63.
  116. ^ 山下 2009, pp. 174–178.
  117. ^ 山下 2009, p. 178.
  118. ^ 大田俊寛『現代オカルトの根源 - 霊性進化論の光と闇』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2013年。p. 25.
  119. ^ シングルトン 2014, pp. 41, 98.
  120. ^ 『現代世界宗教事典』 悠書館、2009年。p. 446.
  121. ^ Daniels, 宮坂清訳 2009, p. 506.
  122. ^ 島薗進『精神世界のゆくえ』 秋山書店、2007年。p. 54.
  123. ^ 有元裕美子『スピリチュアル市場の研究』東洋経済新報社、2011年、p. 39.
  124. ^ a b すべて 2006, p. 12.
  125. ^ a b 山下 2009, p. 6.
  126. ^ 山下 2009, pp. 6, 90.
  127. ^ a b 中川康雄 数々の名曲が生まれた「ビートルズ・アシュラム」。インド・リシケシでファンの聖地を訪ねてみよう トラベルジェイピー 旅行ガイド
  128. ^ すべて 2006, pp. 12–13.
  129. ^ 佐保田 1973, p. 63.
  130. ^ a b c d e f g h たった200時間のトレーニングでヨガ指導者になれるのか?YTTの実態と問題に迫る”. ヨガジャーナルオンライン (2017年10月19日). 2019年1月13日閲覧。
  131. ^ a b すべて 2006, p. 13.
  132. ^ a b c d 伊藤雅之「スピリチュアル文化風にアレンジされたヨーガ・ブームとその背景」『宗教と現代がわかる本2007』渡邊直樹編、平凡社、2007年、p. 149.
  133. ^ a b 山下 2009, p. 4.
  134. ^ 吉永進一, 「近代日本における神智学思想の歴史(<特集>スピリチュアリティ)」『宗教研究』 2010年 84巻 2号 p.579-601, 日本宗教学会, NAID 110007701175, doi:10.20716/rsjars.84.2_579
  135. ^ a b c d e すべて 2006, p. 14.
  136. ^ すべて 2006, p. 15.
  137. ^ a b c 佐藤壮広「癒しの見本市『すぴこん』」渡邊直樹編『宗教と現代がわかる本2007』平凡社、2007 年、pp. 144-147.
  138. ^ a b c d すべて 2006, p. 16.
  139. ^ a b c d e f g h i すべて 2006, p. 17.
  140. ^ 「YOGINI TOPICS 1」『Yogini Vol.55』 枻出版社、2016年。p. 9.
  141. ^ a b c d 前田 1982, pp. 116–117.
  142. ^ a b 原 1982, p. 173.
  143. ^ a b c 原 1982, pp. 172–173.
  144. ^ 原 1982, pp. 171–173.
  145. ^ 加藤 2015, pp. 172–174.
  146. ^ 加藤 2015, p. 168.
  147. ^ a b c d e f g 前田 1982, pp. 114–116.
  148. ^ 佐保田 1973, p. 86.
  149. ^ 前田 1982, p. 118.
  150. ^ 伊藤 2011, pp. 96, 98.
  151. ^ 伊藤 2011, pp. 98–99.
  152. ^ フォイヤーシュタイン, スタジオ・ヨギー監訳 2005, p. 48.
  153. ^ 伊藤 2011, p. 97.
  154. ^ a b c d e f g h i 瀬古 1978, pp. 131–132.
  155. ^ a b c d 川崎 1993, pp. 77–78.
  156. ^ 島 2002, p. 191.
  157. ^ a b 西尾 2011.
  158. ^ 山下 2009, pp. 137–138.
  159. ^ a b 立川 2008, p. 101.
  160. ^ 立川 2014, p. 194.
  161. ^ 伊藤 2011, pp. 92, 321.
  162. ^ 山下 2009, p. 153.
  163. ^ 佐藤 2009, pp. 308–309.
  164. ^ 大田俊寛『現代オカルトの根源 - 霊性進化論の光と闇』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2013年、pp. 52-55.
  165. ^ a b 阿字観とは? 高野山 金剛三昧院
  166. ^ a b 密教瞑想法・阿字観(あじかん)について 薬師院
  167. ^ 別記11:「阿字観」について 西明寺住職・普門院診療所医師 田中雅博
  168. ^ a b 安藤 2003.
  169. ^ a b c 正木 1996.
  170. ^ 古田瑞穂「ヨーガの方法とその潮流 : 心身一体となるための身体トレーニング法とは何か」『筑紫女学園大学・筑紫女学園大学短期大学部紀要』 6号 p.265-274, 2011, NAID 110008151328
  171. ^ a b Ruiz, Fernando Pagés. "Krishnamacharya's Legacy." YogaJournal.com and Yoga Journal, May/June 2001.
  172. ^ a b c “女の園”脱皮を図るホットヨガ 稼働率アップのカギは?”. SankeiiBiz (2015年7月12日). 2015年12月1日閲覧。
  173. ^ 200時間のヨガ教師トレーニングコース”. 07-01-2020閲覧。
  174. ^ a b c d e f 性的虐待に終止符を!経験者が語るヨガ界の#Timesup”. ヨガジャーナルオンライン (2018年3月24日). 2019年1月12日閲覧。
  175. ^ 静 2008.
  176. ^ a b MATTHEW REMSKI (2018年4月25日). “Yoga's Culture of Sexual Abuse: Nine Women Tell Their Stories(ヨーガのカルチャーにおける性的虐待:9人の女性が語った彼女たちの話)”. The Walrus. 2019年1月12日閲覧。
  177. ^ Pitzl-Waters, Jason. “Details of John Friend’s "Blazing Solar Flames" Coven Emerge”. Patheos. 2012年4月16日閲覧。
  178. ^ YOGA SPOT : Love Live Yoga. “ジョン・フレンドとアヌサラヨガの暗転からヨガコミュニティーが学べる事”. 2012年2月16日閲覧。
  179. ^ a b c masala life‐ヨガは人生、人生はヨガ. “アヌサラヨガ:混沌の光と影”. 2012年2月15日閲覧。
  180. ^ a b WashingtonPost. “Scandal contorts future of John Friend, Anusara yoga”. 2012年3月28日閲覧。
  181. ^ YogaDark. “Running Timeline of Anusara Controversy, Updates and Teacher Resignations”. 2011年11月閲覧。
  182. ^ ホットヨガのビクラム・チョードリー氏、レイプ疑惑で提訴 CNN.co.jp 2015.02.27
  183. ^ GQ JAPAN. “ホットヨガ創始者のご乱心!?──ヨガ教室の元生徒がセクハラ疑惑で次々と提訴”. 2015年10月10日閲覧。
  184. ^ a b c d ヨガ界に衝撃走る、ヨギのセクハラ#MeTooストーリー”. ヨガジャーナルオンライン (2018年3月3日). 2019年1月12日閲覧。
  185. ^ a b c d e f g h i j k l m n “Yoga: In Depth”. アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH). (2018年10月). https://nccih.nih.gov/health/yoga/introduction.htm 2019年3月5日閲覧。 
  186. ^ a b c Penman, Stephen; Cohen, Marc; Stevens, Philip; Jackson, Sue (2012). “Yoga in Australia: Results of a national survey”. IJOY, International Journal of Yoga 5 (2): 92-101. doi:10.4103/0973-6131.98217. PMC 3410203. PMID 22869991. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3410203/. 
  187. ^ a b c d e Broad, William J. (2012年1月5日). “How Yoga Can Wreck Your Body”. The New York Times Magazine. https://www.nytimes.com/2012/01/08/magazine/how-yoga-can-wreck-your-body.html 2012年8月29日閲覧。 
  188. ^ Broad, William J. (7 February 2012). The Science of Yoga The Risks and the Rewards (hardcover) (1st ed.). Simon & Schuster. p. 336. ISBN 978-1-4516-4142-4 
  189. ^ Walters, Joanna (2012年1月14日). “'Yoga can damage your body' article throws exponents off-balance: A $5bn industry is outraged over a New York Times article saying that the keep fit regime is bad for your body”. The Guardian, The Observer. https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2012/jan/14/yoga-can-damage-body-row 2012年8月29日閲覧。 
  190. ^ a b c d ヨガで体が…急増するトラブル”. NHK NEWS WEB (2018年3月13日). 2019年1月13日閲覧。
  191. ^ a b アジャストメントに潜む罠 現役ヨガ講師が大怪我を通して感じたこと”. ヨガジャーナルオンライン (2018年10月14日). 2019年1月13日閲覧。
  192. ^ Biffl, Walter L.; Moore, Ernest E.; Elliott, J. Paul; Ray, Charles; Offner, Patrick J.; Franciose, Reginald J.; Brega, Kerry E.; Burch, Jon M. (May 2000). “The Devastating Potential of Blunt Vertebral Arterial Injuries”. Annals of Surgery 231 (5): 672-681. doi:10.1097/00000658-200005000-00007. PMC 1421054. PMID 10767788. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1421054/. 
  193. ^ Critchley, E. M. (June 1984). “Non-atheromatous causes of cerebral infarction”. Postgraduate Medical Journal 60 (704): 386-390. doi:10.1136/pgmj.60.704.386. PMC 2417905. PMID 6379628. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2417905/pdf/postmedj00124-0008.pdf. 
  194. ^ 楠勝介. “椎骨動脈解離”. 済生会. 2019年1月13日閲覧。
  195. ^ Kang, Chan; Hwang, Deuk-Soo; Cha, Soo-Min (December 2009). “Acetabular Labral Tears in Patients with Sports Injury”. Clinics in Sports Injury 1 (4): 230-235. doi:10.4055/cios.2009.1.4.230. PMC 2784964. PMID 19956481. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2784964/. 
  196. ^ 先生があなたに伝えたいこと / 【後藤 公志】老後まできれいな姿勢で、健康的に歩いてほしいと願って治療にあたっています。”. 人工関節と関節痛の情報サイト 【関節が痛い.com】 (2018年10月14日). 2019年1月13日閲覧。
  197. ^ 【衝撃】ホットヨガは “ホット” だからと言ってダイエットに対して特に何の効果もないという研究結果”. ロケットニュース24(参照元: Mail Online) (2013年8月10日). 2015年12月3日閲覧。
  198. ^ 山下 2009, pp. 184–185.

参考文献


関連項目