マクロコスモスとミクロコスモス

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大宇宙と小宇宙の図解,ロバート・フラッド『両宇宙誌=大宇宙誌』(1617年)
宇宙における人間と天空現象との関係,ロバート・フラッド『宇宙の気象学』(1626年)

マクロコスモスとミクロコスモス: Macrocosmos and microcosmos, Macrocosm and microcosm)は、大宇宙(マクロコスモス)と小宇宙(ミクロコスモス)の対概念で、大きな世界(大宇宙)に対応する小さな世界(小宇宙)は、通常は人間を指す[1]。マクロコスモスとミクロコスモスは、このふたつのコスモスが互いに照応するという思想である。

概説[編集]

マクロコスモスとミクロコスモスの対応は、人間のなかに大宇宙の本性や能力が内在しており、また大宇宙そのものが一つの人間であるとして、両者が類比関係にあり、互いに影響をおよぼす動的な関係にあることを意味する[2]。マクロコスモスとミクロコスモスのような概念は西洋思想だけでなく、世界各地に存在する[2]

西欧では、古代ギリシアデモクリトスにみられるが、特にプラトン学派で用いられて、プラトンの『ティマイオス』で生命的宇宙観と結びつけて語られた[1]。この思想は、ボエティウス新プラトン主義を介して、シャルトル学派など中世西欧にもみられるが、ルネサンス期になるとフィレンツェのプラトン主義者マルシリオ・フィチーノらによってヘルメス主義の復興とともに、それと融合されて、ルネサンス思想の典型として広範に支持された[2][1]

ヘルメス文書のひとつ『エメラルド板』に含まれる「下なるものは上なるもののごとく、上なるものは下なるもののごとし」という文章は、マクロコスモスとミクロコスモスの照応を見事に表現している[2]。マクロコスモスとミクロコスモスとの間には、厳密な類比関係があり、ともに機械的ではなく「生命的」な存在とされる[1]。また、宇宙と個体が照応するという考え方は、錬金術西洋占星術とも結びつき、医学、人相学、骨相学の原理ともなった[1][2]。その後、近代科学の進展に伴って、マクロコスモスとミクロコスモスの照応という神秘性は、次第にその意味を失っていった[2]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 清水 2007, p. 317.
  2. ^ a b c d e f 三浦 1998, p. 1003.

参考文献[編集]

  • 三浦信夫 執筆「大宇宙と小宇宙」『岩波哲学・思想事典』岩波書店、1998年。 
  • 清水純一 執筆「ミクロコスモス」『世界大百科事典 第27巻』加藤周一 編集、平凡社、2007年。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]