ライディーン (YMOの曲)
「ライディーン」 | |||||||||||||
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YMO の シングル | |||||||||||||
初出アルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』 | |||||||||||||
B面 | コズミック・サーフィン | ||||||||||||
リリース | |||||||||||||
規格 | 7インチレコード | ||||||||||||
ジャンル | テクノポップ | ||||||||||||
時間 | |||||||||||||
レーベル | アルファレコード | ||||||||||||
作曲 | 高橋幸宏 | ||||||||||||
プロデュース | 細野晴臣 | ||||||||||||
チャート最高順位 | |||||||||||||
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YMO シングル 年表 | |||||||||||||
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『ライディーン』(雷電、RYDEEN)は、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の2枚目のシングル曲。1980年6月21日にアルファレコードから発売された。
「テクノポリス」と並ぶYMOの代表曲として挙げられる[1]。
制作
[編集]元々のタイトルは江戸後期の伝説的な力士「雷電爲右エ門」から『雷電』と表記された。坂本龍一は「『雷電』には東海道五十三次のような浮世絵のイメージがあり、浮世絵が世界に影響を与えたように、自分達の音楽も世界に影響を与えることと重ね合わせた」と発言している。また、映画『スター・ウォーズ』を黒澤明監督が撮ったらどうなるか、が発想の起点だった。その為、途中で戦闘ゲームや時代劇風の馬が走る音が入る。このことは作曲者の高橋幸宏が著作で明かしている[2]。その後、細野晴臣が「アメリカで今『勇者ライディーン』っていうアニメがヒットしているので、『ライディーン』にしちゃおう」という発言で「ライディーン」となった[3]。ただし『勇者ライディーン』の英語表記は『RAIDEEN』であり、綴りは若干異なる。
無機的な表現とするためあえて抑制したつくりだった「テクノポリス」に対して、「ライディーン」は逆に盛り上がるように作られている。また、細野は「遊びながら、当時の自分達では作れるとは思っていなかったサウンドができ、非常に楽しいレコーディングだった」と回想している[3]。
イントロのコードは、高橋幸宏がすでにキーボードで考えていたもので、続きの部分は坂本が聞き取ったものである。坂本はその光景をはっきりと覚えているが、高橋は覚えていないという[3]。
メロディは、バーで高橋が鼻歌で歌っていたところを、坂本がメモに書き起こして作られたとされているが[4]、YMOの初代マネージャーであった日笠雅水は、高橋が家でキーボードで作ってスタジオに持ってきたと明かしている[5][6][注 1]。高橋によると、翌日アルファのスタジオのピアノでメロディを弾きながら坂本は「こんな音楽成立しない」という態度を全身から漂わせていたといい、坂本自身も「ドーレーミーで始まる曲などあり得ない」と考えていたとのこと[8]。
録音
[編集]Aメロの音色は長年、アープ・オデッセイを使用して坂本が手弾きしたと言われていたが、藤井丈司の著書にて松武秀樹との対談においてトラックシートの表記やビブラートが掛かるタイミングと深さが同じことから、moogIIICでディレイ・ビブラートを設定し演奏していたと判明した[9]。イントロから終始、右チャンネルから鳴っている馬の蹄はmoog IIIcにフランジャーをかけたものである。リボンコントローラーが使用されていおり、フィルインなどで音高が変わる[9]。左チャンネルの「チッチキ チッチキ ...」というパーカッションには、ピンクノイズが使われている。
Cメロで聞かれる馬の蹄は細野が得意としていたサウンド・エフェクトで、コルグ PS-3100を使用している。
間奏のサウンド・エフェクトで聴かれる「ホワァー」という音は細野によるPS-3100、「ピュンピューン」という音は坂本によるアープ・オデッセイの音が使われている[10]。この部分は、立体音になっている。 ドラムの飛び跳ねるようなフィルは、高橋が影響を受けたビートルズのリンゴ・スターの叩き方をまねている。
リリース
[編集]1980年6月21日にアルファレコードより7インチレコードでリリースされた。B面の「コズミック・サーフィン」はアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』収録曲で、ライブ・アルバム『パブリック・プレッシャー』(1980年)からのライブテイクを収録しているが、司会者のMCを丸ごとカットして演奏開始2秒前(演奏は3秒から始まる)の歓声からフェードインで始まっている。
ミュージック・ビデオ
[編集]本作のミュージック・ビデオはメンバー3人が演奏する姿と、キーボードを弾く手元のみを写すシーン、キーボードにエフェクトを掛けた映像、3人が銃撃戦を行うシーンとで構成されている。ミュージック・ビデオ集『COMPUTER GAME』(1983年)にVHSで初収録され、『YMO Giga Clips』(1998年)にて初DVD化された[11][12][13]。
メディアでの使用
[編集]- YMOのメンバーも出演していたフジカセットのCF曲「歩き篇」に採用された。
- 1982年にセガ(後のセガ・インタラクティブ)が発売したアーケードゲーム『スーパーロコモーティブ』のメインBGMで使用された。2022年発売のメガドライブ ミニ2移植版ではOMYの「RYZEEN(ライジーン)」に差し替えられている。
- 1983年にシグマが発売したアーケードゲーム『バトルクルーザーM12』で大型潜水艦登場時のテーマとして使用された。
- プロレスラーリッキー・スティムボートの日本での入場曲として使用された。
- 1991年にジブリ映画、『おもひでぽろぽろ』で背景曲として使用されている。
- 1999年にコナミ(後のコナミデジタルエンタテインメント)が発売したゲームボーイ版ゲーム『beatmania GB2 ガッチャミックス』の隠し楽曲で収録された。
- 2010年にはYMO自身が出演した『ポッキー』(江崎グリコ)のCMに使用された。
- プロ野球の読売ジャイアンツの応援団(広島にある応援団GLOVE)が広島・甲子園・九州を中心としてチャンステーマとして使用している。
- 『おもいッきりDON! 1025』の「夕刊来たDON!」コーナーのBGMに使用されている。
- 2015年に放送されたアニメ『響け!ユーフォニアム』の第5話の劇中において、主人公達が所属する北宇治高校吹奏楽部が演奏した。
- 東京ヤクルトスワローズに所属するスコット・マクガフ投手が2021年から登場曲として使用している[注 2]。
- 『太陽戦隊サンバルカン』第15話でへドリアン女王とその手下のゼロガールズがこの曲をバックにレオタード姿でダンスを披露する描写がある。
カバー
[編集]- 1988年、インディーズユニットであった空手バカボンが「来たるべき世界」というタイトルで事実上のカバー[14]。しかし当時ナゴムレコードから発売された『バカボンの頭脳改革 -残酷お子供地獄-』『空手バカボン ベスト』のクレジットでは作詞・大槻KENZI(大槻ケンヂ)、作曲・空手バカボンというクレジットになっている。2005年に発売された『空手バカボン ナゴムコレクション』には、著作権者からの使用許可が下りなかったため収録されていない[15]。
- 1991年、森丘祥子がアルバム『夢で逢えたら』で歌詞をつけてカバー(作詞は小西康陽)。
- 1991年、松武秀樹のロジック・システムのアルバム「To・Gen・Kyo」にて中国語歌詞付きでカバー。
- 1997年、Balanescu Quartetがアルバム『East meets East』でカバー。
- 2000年、THE HONG KONG KNIFEがシングル『LOVE ME』の4曲目でロックアレンジでカバーしている。
- 2004年、『TRIBUTE TO YMO』でLOW IQ 01がカバーした。
- 2004年、清心がアルバム『清心』で「RYDEEN(マンドリン&ヴォーカルバージョン)」として歌詞をつけてカバー。
- 2005年、aminが「雷電」というタイトルで歌詞をつけてカバーしている。
- 2007年、キリン ラガービールのCMにて、この曲のセルフカバーに当たる「RYDEEN 79/07」が新たに録音された。当初ネット配信のみで、ネット配信時の名義は「YMO」の略称ではなくカタカナ表記の「イエロー・マジック・オーケストラ」だった。2007年8月22日にYellow Magic Orchestra名義でCD化された。カップリングはHASYMO名義の『RESCUE』。
- 2010年、monobrightがシングル『雨にうたえば(初回版)』でカバーしている。
- 2010年、yes, mama ok?がアルバム『CEO -10th Anniversary Deluxe Edition-』のDisc 2でドラム叩き語りカバーしている。
- 2011年、渡辺香津美がアルバム『TRICOROLL』でカバーしている。
- 2013年、Sensationがアルバム『Sensation II』でカバー。
- 2014年、E-girlsのアルバム『COLORFUL POP』にリード曲として、同曲をサンプリングし歌詞とボーカルをつけた「RYDEEN 〜Dance All Night〜」が収録。
- 2015年、フレッシュマン・ウインド・アンサンブル(洗足学園音楽大学の1年生で編成されたバンド)がテレビアニメ『響け!ユーフォニアム』の劇中曲としてカバー[注 3]。同作のサウンドトラック・アルバムに収録[注 4]。
- 2016年、竜馬四重奏がアルバム『Neo Zipang』(7月27日リリース)のDisc2でカバーしている。
- 2023年、『D4DJ Groovy Mix』収録曲としてカバー[注 5]。
シングル収録曲
[編集]全編曲: イエロー・マジック・オーケストラ。 | |||
# | タイトル | 作曲 | 時間 |
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1. | 「ライディーン」(RYDEEN) | 高橋ユキヒロ | |
2. | 「コズミック・サーフィン」(COSMIC SURFIN') | 細野晴臣 |
リリース履歴
[編集]No. | 日付 | 国名 | レーベル | 規格 | 規格品番 | 最高順位 | 備考 |
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1 | 1980年6月21日 | 日本 | アルファレコード | 7インチ | ALR-701 | 15位 | |
2 | 1982年 | イギリス | アルファレコード | 7インチ | ALFA 2145 | ||
3 | 1993年7月21日 | 日本 | アルファレコード | 7インチ | ALKA-2 | - | 『YMO ANALOG SINGLE BOX』収録 |
4 | 1993年9月21日 | 日本 | アルファレコード | CD | ALDA-92 | - | 『CUBIC - YMO CD Single BOX』収録 |
5 | 2003年 | 日本 | アルファレコード | CD | AR-GO13 | - | タイムスリップグリコ「青春のメロディー」付録 「ライディーン」1曲のみ収録 |
収録アルバム
[編集]- ベストアルバム
- X∞Multiplies(1980年)
- シールド(1984年)
- ハイテック・ノークライム(1992年)(リミックスアルバム)
- テクノ・バイブル(1992年)
- YMO GO HOME!(1999年)
- UC YMO(2003年)
- ライブアルバム
- パブリック・プレッシャー(1980年)
- アフター・サーヴィス(1984年)
- フェイカー・ホリック(1991年)
- コンプリート・サーヴィス(1992年)
- ライヴ・アット・武道館1980(1993年)
- ワールド・ツアー1980(1996年)
- ライヴ・アット・グリークシアター1979(1997年)
- ONE MORE YMO(2000年)
- オムニバスアルバム
- クライマック80’sYELLOW (2008年)
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “YMOの「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」、41年前と同じ“透明イエロー盤”で再販”. くらテク ~生活を変えるテクノロジー by ITmedia NEWS (ITmedia). (2020年7月29日) 2023年4月5日閲覧。
- ^ 安藤健二 (2023年1月16日). “高橋幸宏さん死去。YMOの名曲「ライディーン」の元ネタは『スターウォーズ』だった”. ハフポスト. 2023年1月17日閲覧。
高橋幸宏『心に訊く音楽、心に効く音楽 私的名曲ガイドブック』PHP研究所、東京〈PHP新書〉、2012年8月11日、[要ページ番号]頁。ISBN 978-4-569-80640-2。OCLC 808339005。 - ^ a b c 『Yellow Magic Orchestra』 2007, p. [要ページ番号].
- ^ 坂本龍一 (2011年5月2日). “【忘れないうちに集団記憶とするため】ライディーンは、録音が終わったある夜、幸宏と西麻布の裏のバーに飲みに行き、幸宏が鼻歌で歌ったものを、ぼくが紙ナプキンに書き取り「明日、これ録音しよう!」と盛り上がったのでした。そのバーはもうとっくになくなり、名前も覚えていません。”. Twitter. 2014年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月7日閲覧。
- ^ 日笠雅水 [@maaco3] (2011年3月3日). "ライディーンは幸宏さんがお家でキーボードで作ってスタジオに持ってきました。アレンジしたあと「こんな普通の曲を僕が手を入れるとこんなふうになる」と少し自慢なさいました". X(旧Twitter)より2023年1月18日閲覧。
- ^ “【追悼】高橋幸宏さん YMO『ライディーン』巨額の印税を生んだドコモ携帯着信音への採用”. Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]. 光文社 (2023年1月16日). 2023年1月18日閲覧。
- ^ 高橋幸宏 (2011年3月3日). “@skmt09 ライディーンはいつも教授がそう言うんだけれど、アルファのスタジオであそこのピアノに向かって初め、Am,Fmaj7っていうキーで考えた記憶があるんだよね。教授が書きとめてくれたのは、中国女じゃない?か、ライディーンのBの部分じゃなかった?バーは、青山です。名前?”. Twitter. 2016年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月5日閲覧。
- ^ 細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一 著、後藤繁雄 編『TECHNODON(テクノドン)』小学館、1993年6月1日。ISBN 978-4-0936-3171-6。OCLC 673859945。
- ^ a b 藤井 2019, p. 114.
- ^ 『キーボード・スペシャル』1999年11月号
- ^ YMO『COMPUTER GAME』(VHS)ビクターエンタテインメント、1983年3月5日。ASIN B000064VVI。
- ^ YMO『Giga Clips』(DVD)東芝デジタルフロンティア、1998年8月22日。EAN 4947127500111。
- ^ YMO『Giga Capsule〜20th ANNIVERSARY King of Techno〜』(DVD)東芝デジタルフロンティア、1999年1月25日。EAN 4947127500319。
- ^ “大槻ケンヂ“死ぬまでハードロック?” 「筋肉少女帯」再結成10周年の心境を語る (2016年11月23日)”. エキサイトニュース. TOKYO FM+ (2016年11月23日). 2019年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月11日閲覧。
- ^ “空手バカボン ナゴムコレクション”. ナゴム再生委員会 (2005年7月16日). 2021年7月11日閲覧。 ただし、サイト上の曲名表記は「来るべき世界」であることに注意。
- ^ “【ライブレポート】<WORLD HAPPINESS 2015>、全8時間全13アクトに歴史と未来”. BARKS (2015年8月27日). 2021年7月11日閲覧。
- ^ “【詳細レポ】<WORLD HAPPINESS 2015>、真の意味での“YMOフェス”へ”. BARKS (2015年9月14日). 2021年7月11日閲覧。
- ^ “RYDEEN”. ウィンズスコア. 2021年7月11日閲覧。
参考書籍
[編集]- アスペクト 編『Yellow Magic Orchestra』アスペクト、2007年1月23日。ISBN 978-4-7572-1089-9。
- 藤井丈司『YMOのONGAKU』アルテスパブリッシング、2019年3月25日、114頁。ISBN 978-4-8655-9202-3。
関連項目
[編集]- リッキー・スティムボート - プロレスラー。入場曲に本曲を使用。
- スーパーロコモーティブ - 1982年にセガが発売したアーケードゲーム。メインBGMに本曲を使用。