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ヘスティアー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヘスティアー
Εστία
炉の女神
シンボル
クロノス, レアー
兄弟 ゼウス, ポセイドーン, ヘーラー, デーメーテール, ハーデース, ケイローン
ローマ神話 ウェスタ
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ヘスティアー[1][2]古代ギリシア語: Ἑστία古代ギリシア語ラテン翻字: Hestiā)は、ギリシア神話に登場する暖炉家庭家族国家の正しい秩序を司る女神である[3][4]クロノスレアーの娘で、ゼウスポセイドーンハーデースヘーラーデーメーテールと姉弟。

長母音を省略してヘスティアとも表記される[5]。ヘスティアーの名前は「暖炉祭壇[6]を意味し、これはインド・ヨーロッパ語源での「燃やす」という語から来ている(更に遡って「住む、夜を過ごす」)[注釈 1]。このことから、オイコス(家庭、世帯、家、家族)を意味する。クレーテー島のドレロスとプリニアスの初期の神殿暖炉を持つ建造物であり、デルポイのアポローン神殿は常に内部に暖炉を持っていたという。ミュケーナイの大広間(メガロン)は、ホメーロスのイタケーのオデュッセウスの広間のように、中央に暖炉があったとされている[10][3]

アテーナーアルテミスと同じく処女神 (parthenos) である[注釈 2]ローマ神話ウェスタと同一視される[12]

概説

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古代ギリシアにおいては、家の中心であり、従ってヘスティアーは、家庭生活の守護神として崇められた。また炉は、犠牲を捧げる場所でもあり祭壇祭祀の神でもある。さらには、家庭の延長上にあるとされていたため国家統合の守護神とされ、各ポリスのヘスティアーの神殿の炉は、国家の重要な会議の場であった。加えて全ての孤児達の保護者であるとされる[13]

植民地建設の際には、この神殿からヘスティアーの聖火をもたらすのが習わしだった。

プラトーンによれば「彼女1人だけがのんびりしていた」といわれる

さて、天界においては、まずここに、偉大なる指揮者ゼウス、翼ある馬車を駆り、万物を秩序づけ、万物を配慮しながら、さきがけて進み行く。これにしたがうのは、十一の部隊に整列された神々とダイモーンの軍勢。これはつまり、炉をまもる女神ヘスティアのみはひとり、神々のすみかにとどまるからである。

パイドロス』247A(藤沢令夫訳)

神話

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オリュンポス十二神の一柱に数えられるが別伝では、ヘスティアーの代わりにディオニューソスを数えることもある[14]。これは、オリュンポス十二神に入れないことを嘆く甥ディオニューソスを哀れんで、ヘスティアーがその座を譲ったためとされる。

主な神話によればクロノスとレアーの長女であり、ゼウスらの姉である。ヘーシオドスの『神統記』ではヘスティアーの名前は姉弟の中で最初に挙げられており、『ホメーロス風讃歌』の「アプロディーテー讃歌」ではクロノスの長女であると述べられている。したがってクロノスに最初に呑み込まれたのはヘスティアーだが、クロノスがゼウスによって打倒された際に最後に吐き出されたため最も年少と言われることもあった。

夫や子はなく処女神 (parthenos) とされる。 ポセイドーンアポローンに求婚されたこともあるが、その申し出を断り、ゼウスの御頭に触れ、この美しい女神は常に処女にとどまって変わらぬと誓言を立てた。これに対してゼウスはヘスティアーに結婚の喜びと引き換えに、高い誉れを彼女に授けた。すなわち全ての人間の家で、その中央に座すこと、犠牲の最良の部分を得ること、そして全ての神殿で他の神々と栄誉をわかつ特権を定めた。[3][15]

また、眠っている所をプリアーポスに犯されそうになったが、ロバの鳴き声で目を覚まし辛うじて難を逃れたという話もある[1]

役割

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ゼウスはヘスティアーに、オリンポスのを、神々への動物の生け贄の脂肪分や燃えやすい部分で維持する義務を課した[16]

脚注

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注釈

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  1. インド・ヨーロッパ語源の*wes「燃やす」(究極的には*h₂wes-「住む、夜を過ごす、滞在する」)に由来する[7][8][9]
  2. 処女神とは、永遠に乙女・処女である神であるが、それはパルテノス神の意味でもある。パルテノスは、男性とのあいだに性的関係の経験を持つか否かよりも、男性と結婚関係を持っているかどうかで区別される概念である。未婚神ともいうべきである。 Parthenos は、中心の意味は、年長女性で、結婚していない女性を言う[11]。ホメーロス風讃歌の『アプロディーテー讃歌』では、アテーナー、アルテミス、ヘスティアーの三女神は、アプロディーテーの力に対し冷淡であるとされる。実際これらの三柱の女神は、男の欲望を拒絶し、身を清らかに維持する逸話がある。また夫である男神がいない。ヘスティアーは、この意味の未婚女神で、結婚せず、男性配偶者を持たない女神である。

出典

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  1. 1 2 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年、1099頁。
  2. 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』229頁。
  3. 1 2 3 呉、1969年、pp.147-148
  4. Graves, Robert. “The Palace of Olympus”. Greek Gods and Heroes
  5. 水谷智洋、平凡社、改訂新版 世界大百科事典『ヘスティア』 - コトバンク
  6. R. S. P. Beekes. Etymological Dictionary of Greek, Brill, 2009, p. 471.
  7. Calvert Watkins, "wes-", in: The American Heritage Dictionary of Indo-European Roots. Houghton Mifflin Harcourt, Boston 1985 (web archive).
  8. Mallory, J. P.; Adams, D. Q. (2006-08-24) (英語). The Oxford Introduction to Proto-Indo-European and the Proto-Indo-European World. OUP Oxford. pp. 220. ISBN 978-0-19-928791-8
  9. West, M. L. (2007-05-24) (英語). Indo-European Poetry and Myth. OUP Oxford. pp. 145. ISBN 978-0-19-928075-9
  10. Burkert, p. 61.
  11. παρθένος、Henry Liddell, Robert Scott, Henry Jones A Greek English Lexicon Oxford. Clarendon Press. 1940.
  12. 呉、1969年、p.147
  13. 『ギリシア神話小事典』220頁。
  14. 『ギリシア神話小事典』139頁。
  15. 『ホメーロス風讃歌』「アプロディーテー讃歌」21行-32行。
  16. Kajava, pp. 1–2.

参考文献

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関連項目

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