アトラース

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アトラース

アトラース古希: Ἄτλας, Atlās)は、ギリシア神話に登場するである。日本語では長母音を省略してアトラスともいう。巨躯を持って知られ、両腕と頭で天の蒼穹を支えるとされる。名前は「支える者」・「耐える者」・「歯向かう者」を意味する古印欧語に由来する。

ティーターン神族の一柱のイーアペトスオーケアノスの娘クリュメネー(あるいはアシアー)の息子。プロメーテウスエピメーテウスメノイティオスの兄。アルカディアキュレーネーにおいて、オーケアノスの娘プレーイオネーとの間にプレイアデスと称される7人の娘、すなわちマイアターユゲテーステロペーメロペーケライノーアルキュオネーエーレクトラーをもうけた。ヒュギーヌスによれば、他にもヒュアスたち(ヒュアデス)という5人の娘たち、さらにヒュアースという息子をもうけた。またオーケアノスの妃であるテーテュースとの間に女神カリュプソーをもうけた。

概要[編集]

ティーターン神族がゼウス達との戦い(ティーターノマキアー)に敗れると、アトラースはゼウスによって、世界の西の果てで天空を背負うという役目を負わされる事となった。この役目はアトラスにとって、苦痛を伴うものであった。

そして後に英雄ヘーラクレースが、アトラスを頼って訪れて来た。彼はヘスペリデスの庭園から黄金の林檎を取り、ミュケナイへ持ち帰るよう命じられた(ヘーラクレースの11番目の功業)のだが、肝心の庭園の場所が分からなかった為、コーカサス山に縛り付けられていたプロメーテウスを救い出し、彼に助言を求めた。そして彼からアトラースの所へ行ってみてはどうかと言われたのである(アトラースは庭園に住むヘスペリスたち(ヘスペリデス)の父であった)。ヘーラクレースから黄金の林檎を手に入れたいと相談されたアトラースは、自分が天空を支える重荷から逃れたい事もあり、ヘーラクレースに対して、自分が庭園に行って林檎を持ってくるから、その間天空を代わりに支えて欲しいと頼んだ。こうして天空をヘーラクレースに任せたアトラースは庭園に行き、林檎を持って帰ってきた。しかし、再び天空を背負う事が嫌だった彼は、ヘーラクレースに対し、このまま林檎をミュケナイまで届けてやるから、もうしばらく天空を背負っていてくれと言った。勿論これはアトラースの企みであった。ヘーラクレースはその事に気が付き、逆にアトラースを騙すことにした。彼は、アトラースの言う事に納得したふりをしつつも、このままの背負い方を続けるのは辛い、どうすればもう少し楽に背負えるか教えて欲しいと言った。結局、この言葉にアトラスは騙され、彼が天空を背負って見本を見せている間に、ヘーラクレースは林檎を手に取り、エウリュステウス王に渡すべくミュケナイへ行ってしまった。こうしてアトラースは再び天を背負う事になった。なお、この他、アトラースが林檎を持ってヘーラクレースの所に帰ってきた時、(渋々ではあるが)自分で再び天空を背負い、ヘーラクレースに林檎を渡して帰らせたと語られる事もある。

別の神話によれば、メドゥーサを討伐したペルセウスがアトラースの元を訪れたとき、ペルセウスが持っていたメデゥーサの首により、アトラースは石と化す事となった。なお、その経緯については諸説あり、天を支えるという重荷に耐えかねたアトラースが、ペルセウスに頼んでメデゥーサの首を見せてもらい、石と化して、重荷から解放されたという話や、ゼウスの息子が将来、自分の黄金の林檎を奪いに来るだろうと聞かされていたアトラースが、自分を訪ねてきたペルセウスを追い返そうと、あるいは殺そうとした(ペルセウスはゼウスとダナエーとの間に生まれた子であった)為、逆上したペルセウスによって石と化した話等がある。そして、アトラースが石となった名残りが、アトラス山脈であるという。

地図帳をアトラスと呼ぶのは、16世紀メルカトルが地図帳の表紙としてこのアトラースを描いたことに由来する。

関連項目[編集]