アムピトリーテー

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マリウス・ジャン・アントナン・メルシエ英語版の作品『アンフィトリテ』。1889年-1900年。ウォルターズ美術館所蔵。
ネプトゥーヌスとアンピトリーテーのモザイク画。315年~325年頃。ルーブル美術館所蔵。

アムピトリーテー古希: Ἀμφιτρίτη, Amphitrītē)は、ギリシア神話海神ポセイドーンの妃で海の女王である[1][2]アンフィトリーテー長母音を省略してアムピトリテアンピトリテアンフィトリテとも表記される。名前の意味は「大地を取り巻く第三のもの」、即ち海をあらわす。聖獣はイルカで、象徴はヴェール王笏

アムピトリーテーは、ネーレウスオーケアノスの娘ドーリスとの間にもうけた50人の娘ネーレーイデスの1人で[3][4]、ポセイドーンとの間に、トリートーン[5][6]、ロデー[6]ベンテシキューメー英語版を生んだ[7]。子供のうち、トリートーンは上半身が人間、下半身がイルカ(または魚)の姿をした海神である。ロデーは太陽神ヘーリオスの妻となった。ベンテシキューメーはエウモルポス英語版を育てたといわれる。

神話[編集]

ホメーロスとヘーシオドス[編集]

アムピトリーテーはホメーロスの『オデュッセイア』によると、青黒い瞳をしており、大波を起こすとされ[8]、海の巨大な怪魚や海獣を数知れず飼っているとされている[9]。しかしホメーロスにおいては十分な擬人化が進んでおらず、単に海を指すと思われる個所もある[10]ヘーシオドスの『神統記』では、アムピトリーテーは同じネーレーイデスのキューモドケー、キューマトレーゲーとともに、荒れ狂う風を鎮めることができ[11]、またポセイドーンとの間にトリートーンを生んだと詠われている[5]。『ホメーロス風讃歌』の「アポローン讃歌」によると、レートーデロス島アルテミスアポローンを出産したとき、ディオーネーレアーテミスをはじめとする多くの女神たちとともに立ち会った[12]

ポセイドーンとの結婚[編集]

テーセウスに指輪と王冠を授けるアムピトリーテー。両者の間にアテーナーが描かれている。
前490~500年頃のキュリクス。陶工はエウフロニオス、画家はオネシモス。ルーブル美術館所蔵。

後世の神話ではアムピトリーテーとポセイドーンの結婚の物語が語られている。それによればアムピトリーテーは姉妹たちとともにナクソス島で踊っているときにポセイドーンによってさらわれた[13]。あるいはポセイドーンの求婚に最初は抵抗したが、ポセイドーンからイルカをプレゼントされ、婚姻を承諾した[14]

エラトステネスによると、アムピトリーテーははじめポセイドーンを嫌って海の西端のアトラースのもとに逃げ、彼女の姉妹たちによって匿われた。ポセイドーンがイルカにアムピトリーテーを探させると、1頭のイルカが大西洋の島にアムピトリーテーがいるのを発見し、説得してポセイドーンのところに連れて行った。その結果ポセイドーンはアムピトリーテーと結婚することができ、この功績によってイルカは天に配置され、いるか座となった[15]

オッピアノスもエラトステネスとほぼ同じ神話を述べている。それによるとアムピトリーテーが隠れたのはオーケアノスの宮殿であった。そしてポセイドーンはイルカから隠れ場所を教わると、すぐさま拒絶するアムピトリーテーを奪い、結婚したという[16]

ポセイドーンはもともと大地の神だったが[17]、アムピトリーテーとの結婚によって海も司るようになったともいわれる[18]

テーセウス伝説[編集]

アムピトリーテーはテーセウス伝説にも登場する。アテーナイの英雄テーセウスがミーノータウロス生贄としてクレータ島に連れてこられたとき、ミーノース王は彼がポセイドーンの子であることを信じなかった。ミーノースは自分の指輪をはずして海に投げ入れ、本当にポセイドーンの子ならば指輪を取ってくることができるだろう、と言った。そこでテーセウスが海に潜ると、イルカが彼をポセイドーンの王宮に運んだ。やって来たテーセウスに、アムピトリーテーはミーノースの指輪と、真紅の外套、花冠を授けた[19][注釈 1]

ギャラリー[編集]

ジャン=ユーグ・タラヴァル英語版の1780年の絵画『アンフィトリテの勝利』。マサチューセッツ州アマーストミード美術館英語版所蔵。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ パウサニアス(1巻17・3)によると、ミーノースの指輪と黄金の冠を授けたことになっている。

脚注[編集]

  1. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』29頁。
  2. ^ 呉茂一『ギリシア神話 上巻』新潮社、1956年、234頁。
  3. ^ ヘーシオドス『神統記』243行。
  4. ^ アポロドーロス、1巻2・7。
  5. ^ a b ヘーシオドス『神統記』930行-933行。
  6. ^ a b アポロドーロス、1巻4・6。
  7. ^ アポロドーロス、3巻15・4。
  8. ^ 『オデュッセイア』12巻60。
  9. ^ 『オデュッセイア』5巻422、12巻97。
  10. ^ 『オデュッセイア』3巻91。
  11. ^ ヘーシオドス『神統記』252行-254行。
  12. ^ 『ホメーロス風讃歌』第3歌「アポローン讃歌」94。
  13. ^ 『オデュッセイア』3巻91に対する古註(カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 神々の時代』p.232)。
  14. ^ シブサワ・コウ『爆笑ギリシア神話』光栄
  15. ^ エラトステネス、31話。
  16. ^ オッピアノス『漁夫訓』1巻386行-393行。
  17. ^ マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル 『ギリシア・ローマ神話事典』 大修館書店
  18. ^ カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 神々の時代』p.224、231、232。
  19. ^ バッキュリデース、第17歌。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]