パリスの審判


内容
[編集]イーリオス(トロイア)王プリアモスの息子パリス(アレクサンドロス)が、神々の女王ヘーラー・知恵の女神アテーナー・愛と美の女神アプロディーテー(ローマ神話においては、ユーノー・ミネルウァ・ウェヌス[2])という天界での三美神のうちで誰が最も美しいかを判定させられた。
テティスとペーレウスの結婚を祝う宴席には全ての神が招かれたが、不和の女神エリスだけは招かれなかった[3][4]。エリスは怒り、宴席に「最も美しい女神へ」と書かれた黄金の林檎を投げ入れた[3][4]。この林檎について、ヘーラー・アテーナー・アプロディーテーが権利を主張した[3][4]。ゼウスは仲裁するために「イーリオス王プリアモスの息子で、現在はイーデー山で羊飼いをしているパリス(アレクサンドロス)に判定させる」こととした(パリスの審判)。この時、女神たちは様々な賄賂による約束をしてパリスを買収しようとした。ヘーラーは「アシアーの君主の座」、アテーナーは「戦いにおける勝利」を与えることを申し出たが、結局「最も美しい女を与える」としたアプロディーテーが勝ちを得た[4][5]。「最も美しい女」とはすでにスパルタ王メネラーオスの妻となっていたヘレネーのことで[4]、これがイリオス攻め(トロイア戦争)の原因となった[5]。トロイア戦争の間にパリスを憎むヘーラーとアテーナーとはギリシア側に肩入れした[4]。
なお古い伝承ではパリスがアプロディーテーの加護の下に置かれ、ヘレネーが連れ去られたとするが、後にゼウスの娘であるヘレネーは半神とみなされ、不敬を避けるためパリスが略奪したのは、ヘレネーに似せて作られた雲で出来た像であったとする説ができた。
その他、フランスの比較神話学者ジョルジュ・デュメジルは彼自身の研究による三機能仮説がそれぞれに影響し、ヘーラー「主権」、アテーナー「戦闘」、アプロディーテー「生産」[6]の三つの階級が人間の社会を構成していると考えた。
絵画
[編集]「パリスの審判」では3人の女神が、美男といわれたパリスの前に並び美を競い合う。この題材は画家の好む主題の1つとなり[5]、様々な画家が『パリスの審判』というタイトルの絵を描いた。
- 『パリスの審判』ルーカス・クラナッハ、1527年、コペンハーゲン国立美術館所蔵
- 『パリスの審判』ルーカス・クラナッハ、1528年、メトロポリタン美術館所蔵
- 『パリスの審判』ルーカス・クラナッハ、1530年、セントルイス美術館所蔵
- 『パリスの審判』ハンス・フォン・アーヘン、1590年、バーミングハム美術館所蔵
- 『パリスの審判』ヨアヒム・ウテワール、1615年、ナショナル・ギャラリー所蔵
- 『パリスの審判』ヤーコブ・ヨルダーンス、1620年-1625年、ロウ美術館所蔵
- 『パリスの審判』クロード・ロラン、1645-1646年頃、ナショナル・ギャラリー所蔵
- 『パリスの審判』フランチェスコ・アルバーニ、1650年-1660年、プラド美術館所蔵
- 『パリスの審判』アドリアーン・ファン・デル・ウェルフ、1716年、ダリッジ・ピクチャー・ギャラリー所蔵
- 『パリスの審判』アントワーヌ・ヴァトー、1718年-1721年、ルーヴル美術館所蔵
- 『パリスの審判』ノエル=ニコラ・コワペル、1728年、スウェーデン国立美術館所蔵
- 『パリスの審判』フランソワ・ブーシェ、1754年、ウォレス・コレクション所蔵
- 『パリスの審判』フランソワ=グザヴィエ・ファーブル、1808年、ヴァージニア美術館所蔵
- 『パリスの審判』ジャン=バプティスト・ルニョー、1820年、シュトゥットガルト州立美術館所蔵
- 『パリスの審判』フィリップ・パロット、1875年、個人蔵
- 『パリスの審判』コンスタンチン・マコフスキー、1889年、個人蔵
- 『パリスの審判』アルベルト・フォン・ケラー、1891年、バーゼル市立美術館所蔵
- 『パリスの審判』ソロモン・ジョセフ・ソロモン、1891年、個人蔵
- 『パリスの審判』アルフォンス・ミュシャ、1895年、個人蔵
- 『パリスの審判』ウォルター・クレイン、1909年、個人蔵
- 『三女神:アテーナー、ヘーラー、アプロディーテー』フランツ・フォン・シュトゥック、1923年、個人蔵
アトリビュート
[編集]絵画に描かれた個々の人物が誰であるかはアトリビュートによって区別できる。フクロウを従えていたり、武具を身に着けている、あるいはそばに置いている者がアテーナー、エロース(クピードー)を従えている者がアプロディーテー、孔雀を従えていたり、王冠を頭に戴いている者がヘーラーである。また、男が2人描かれている場合、翼の生えた帽子やケーリューケイオンを身に着けている者がヘルメース(メルクリウス)、黄金の林檎を持つ牧人の服装の者がパリスである。
脚注
[編集]- ↑ 中野京子『名画の謎 中野京子と読み解く ギリシャ神話篇』文藝春秋、2011年、40頁。ISBN 978-4-16-373850-5。
- ↑ ゲーテ『ファウスト』など文献資料によってはジュノー、パラス、ヴィーナスの三女神と表記することもある。
- 1 2 3 “Eris (Greek mythology)”. Encyclopædia Britannica. 2018年9月6日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 “Paris”. Encyclopedia Mythica. 2018年9月6日閲覧。
- 1 2 3 “Paris (Greek mythology)”. Encyclopædia Britannica. 2018年9月6日閲覧。
- ↑ ペン編集部/編、ペンブックス22『美の起源、古代ギリシャ・ローマ』2014年、196頁。ISBN 978-4-484-14225-8。