エロース

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エロース
Ἔρως
恋心と性愛の神
Eros Farnese MAN Napoli 6353.jpg
エロースの彫像
ナポリ国立考古博物館英語版所蔵
住処 オリュムポス
シンボル 弓矢, 松明,
配偶神 プシューケー
カオスガイアのような原初神
アレース, アプロディーテー
兄弟 ポボス, デイモス, ハルモニアー, アンテロース, アドレスティアー英語版
子供 ヘードネー英語版(ローマ神話ではウォルプタース英語版
ローマ神話 クピードー, アモール

エロース古希: ἜρωςErōs)は、ギリシア神話に登場する恋心と性愛を司るである。ギリシア語でパスシオン則ち受苦として起こる「愛」を意味する普通名詞が神格化されたものである。日本語では長母音を省略してエロスとも呼ぶ。

概説[編集]

ローマ神話との対応・姿の変化[編集]

ローマ神話では、エロースには、ラテン語でやはり受苦の愛に近い意味を持つアモール(Amor)またはクピードー(Cupido)を対応させる。クピードーは後に幼児化して、英語読みでキューピッドと呼ばれる小天使のようなものに変化したが、元は、髭の生えた男性の姿でイメージされていた。古代ギリシアのエロースも同様で、古代には力強い有翼の男性あるいは若々しい青年であり、やがて、少年の姿でイメージされるようになった。エロースの象徴は弓矢及び松明である。

古代の記述[編集]

ヘーシオドスの『神統記』では、カオスガイアタルタロスと同じく、世界の始まりから存在した原初神 (Greek primordial deities)である。崇高で偉大で、どの神よりも卓越した力を持つ神であった。またこの姿が、エロースの本来のありようである。

後に、軍神アレースと愛の女神アプロディーテーの子であるとされるようになった。またエロースはアプロディーテーの傍に仕える忠実な従者とされる[1]

古代においては、若い男性の姿で描かれていたが、西欧文化では、近世以降、背中にのある愛らしい少年の姿で描かれることが多く、手には弓と矢を持つ(この姿の絵は、本来のエロースではなく、アモールあるいはクピードーと混同された絵である)。黄金で出来た矢に射られた者は激しい愛情にとりつかれ、で出来た矢に射られた者は恋を嫌悪するようになる。

エロースはこの矢で人や神々を撃って遊んでいた。ある時、アポローンにそれを嘲られ、復讐としてアポローンを金の矢で、たまたまアポローンの前に居たダプネーを鉛の矢で撃った。アポローンはダプネーへの恋慕のため、彼女を追い回すようになったが、ダプネーはこれを嫌って逃れた。しかし、いよいよアポローンに追いつめられて逃げ場がなくなったとき、彼女は父に頼んでその身を月桂樹に変えた(ダプネー daphne とはギリシア語で、月桂樹という意味の普通名詞である)。このエピソードが示す寓意は、強い理性に凝り固まった者は恋愛と言う物を蔑みがちだが、自らの激しい恋慕の前にはその理性も瓦解すると言う事である。

「愛と心の物語」[編集]

フランソワ=エドゥアール・ピコの1817年の絵画『アモルとプシュケ(愛と心)』。

ヘレニズム時代になると、甘美な物語が語られるようになる。それが『愛と心の物語』である。地上の人間界で、王の末娘プシューケーが絶世の美女として噂になっていた。母アプロディーテーは美の女神としての誇りからこれを嫉妬し憎み、この娘が子孫を残さぬよう鉛の矢で撃つようにエロースに命じた。

だがエロースはプシューケーの寝顔の美しさに惑って撃ち損ない、ついには誤って金の矢で自身の足を傷つけてしまう。その時眼前に居たプシューケーに恋をしてしまうが、エロースは恥じて身を隠し、だが恋心は抑えられず、魔神に化けてプシューケーの両親の前に現れ、彼女を生贄として捧げるよう命じた。

晴れてプシューケーと同居したエロースだが、神であることを知られては禁忌に触れるため、暗闇でしかプシューケーに会おうとしなかった。姉たちに唆されたプシューケーが灯りをエロースに当てると、エロースは逃げ去ってしまった。

エロースの端正な顔と美しい姿を見てプシューケーも恋に陥り、人間でありながら姑アプロディーテーの出す難題を解くため冥界に行ったりなどして、ついにエロースと再会する。この話は、アプレイウスが『黄金の驢馬』のなかに記した挿入譚で、「愛と心」の関係を象徴的に神話にしたものである。プシューケーとはギリシア語で、「心・魂」の意味である。

プシューケーとの間にはウォルプタース英語版(ラテン語で「喜び」、「悦楽」の意。古典ギリシア語ではヘードネー)と言う名の女神が生まれた。

出典[編集]

  1. ^ 松村一男/監修 『知っておきたい 世界と日本の神々』44頁。

参考書籍[編集]

関連項目[編集]