殺し屋1

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殺し屋1
漫画
作者 山本英夫
出版社 小学館
掲載誌 週刊ヤングサンデー
発表期間 1998年12号 - 2001年18号
巻数 全10巻
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殺し屋1』(ころしやイチ、Ichi the Killer)は、山本英夫漫画作品。または、それを原作に制作された映画OVA作品。それらの主人公の名称。

概要[編集]

週刊ヤングサンデー連載。単行本は全10巻で、累計発行部数は約500万部。2001年三池崇史監督で映画化された。映画化の際、映倫によってR-18指定( = 成人指定)されている。なお、本来、R-18は性描写に対するものがすべてであったが、暴力描写による指定は本編が初とされている。また第一巻の電子書籍版がアマゾンKindleストアで無料配信された際には、アダルト本のカテゴリーに分類されていた(現在は終了)。有料配信では通常のコミックとして扱われている。

なお、同じ原作者による、イチが殺し屋になる以前の、高校時代の物語『1 -イチ-』(全1巻)もあり、こちらも2002年に映画版のスタッフ(丹野雅仁監督)によってオリジナルビデオ作品として映像化された。主演は映画版と同じく大森南朋

ストーリー[編集]

「ジジイ」率いる歌舞伎町のハグレ者グループ(イチも所属。ただし、ジジイ以外のメンバーは彼の顔を知らない)と「垣原」率いる暴力団・安生組との攻防、そしてイチと垣原の異常性愛者同士の邂逅を描く。なお、読者に「痛み」を感じさせるような意図的な暴力描写が特徴である。

作品の舞台[編集]

歌舞伎町の街がリアルに描かれており、名前にもじりはあるものの主な舞台となっているマンションや病院も実在する。PePe風林会館の喫茶店パリジェンヌ等、実名で登場する施設もある。

ヤクザマンション[編集]

歌舞伎町のマンション。名称は「歌舞伎町サンライズマンション」。13階建て。一般人の入居者がわずかに2割で、残りの8割が組事務所、住居、愛人宅、風俗店不法就労外国人のタコ部屋等の暴力団関係施設であり、警備員もヤクザの息のかかったものが務める。ジジイと垣原の抗争の末、マンションの中に垣原組の4人しかいない状況になった。他の組員や一般住民が抗争を避けるために退去してしまったためである。ヤクザの間の取り決めとして、マンション内での銃器の使用は禁止されている。中心には中庭がある。

  • マンション内の主な施設
11階 安生の愛人宅
部屋不明。イチが安生とその愛人を殺し、ジジイらが約3億円を金庫から盗み出した。作中の時間軸でのイチによる最初の殺人。
1303号室 安生興業事務所
のち垣原組事務所。最上階。
803号室 SMクラブ「ウィスパー」
安生組系のSMクラブ。完全防音になっており、垣原達が拷問を行う際によく用いられる。
905号室 SMクラブ「ウィスパー2」
安生組系のSMクラブ。1巻の時点では組(安生興業かそうでないかは不明)の事務所が入居していた場所。二郎三郎兄弟による拷問シーンでは外に音が漏れており防音ではない。

北新宿中央総合病院[編集]

垣原達の拷問を受けた鈴木が収容された病院。

登場キャラクター[編集]

ジジイ率いるはぐれ者グループ[編集]

イチ
本作品の主人公。本名は城石一(しろいし はじめ)。22歳。普段は地方[1]の板金工場で働いている。体型は細身の長身。気弱な性格だが超人的な脚力を持つ。過去に受けたいじめによるトラウマをジジイに利用され、対象人物が過去に自分を虐めたとされる人物(時としてジジイの刷り込みによる架空の者)に重なった時、トランス状態となって発作的に殺害する殺人マシーンとなった。彼の正体を知っているのはジジイのみ。
主な殺害方法は、彼の履く鉄骨仕込みの靴の踵にある仕込み刃によるもので、彼の超人的脚力も相まって、人間の四肢を軽々と切断し、斬られた相手が気付かないほどのすさまじい切れ味を誇る。また、彼の着ている特殊スーツ(ダウンヒル用の防護スーツと似たデザイン)のところどころにあるプロテクターはかなり高度な防弾加工がしてある。
自分の殺人行為を目撃してしまった地元の風俗嬢セーラを殺害してからスランプに陥り、どうやっても勃起が収まらず射精ができない状態が続く。その時は激しい嘔吐を繰り返していた。
本人は自覚していなかったが、いじめられていた過去を持つ。高校生の時に同級生を撲殺し、医療少年院に送られている。総合格闘技キックボクシングに詳しい一面もある。人が傷つき痛めつけられることに性的興奮を覚える潜在的間接的サディスト。ヤクザでありながらマゾヒストでもある垣原との対峙が本作の中核でもある。
ジジイ
作中、暴力団の幹部達やイチの行動を、「イチによる平和の新宿(ハイキョ)計画」というシナリオ通りに、陰で操っていく男。かなりのインテリで、策略に長け、流暢な中国語を話すこともできる。
常に笑みを浮かべているが、裏の性格は非情かつ冷酷。自らの計画のためなら他人を「駒」としか捉えず、巻き込まれた者が死のうが拷問を受けようが全く気にならない。
初老で小柄な容姿をしているが、整形手術によるもので実年齢は30代前半。また、ステロイド注射によって小柄な骨格に不相応な筋量を有している。
イチ以上の強固な妄想にもとづいて行動するが、実写映画版では垣原個人に対する個人的な感情で動いていたことが示唆される。
OVA版では田辺(タナベ)と名乗っている(偽名か本名かは不明)。
昇(ノボル)
ジジイの「仲間」の一人。苗字不明。白いタンクトップに坊主頭の巨漢。拳銃使いで密輸ルートなどにも詳しい。垣原に捕まり陰茎を真っ二つに切られた上、二郎の拷問を受け両腕をもがれてしまう。後にイチがその場に駆けつけるが、ジジイの裏切りで二郎もろとも殺害される。実写映画版には未登場。
拷問を受けていた部屋にイチが現れた時には、イチが助けに来てくれたものだと勘違いして嬉し涙を流すなど、武闘派の元ヤクザ者といえども、本作品内では良識ある普通の感覚の持ち主であり、本作で数少ないまともな人物である。
龍(りゅう)
同じくジジイの仲間。中国人で、ミユキというヘルス嬢に貢がせている「ヒモ」だが、実際は女性を心の底から愛でている。使用武器は、苦無
昇と同じく、悪党でありながら義理人情には厚い男。
ミユキを拉致した垣原に騙され、二郎、三郎に耳を引きちぎられる、睾丸を潰されるなどの拷問を受けた後殺害される。中国なまりの日本語を話す。
実写映画版では拳銃を使い、昇とキャラクターが統合されている。
井上(いのうえ)
ジジイの仲間。本名は加納(かのう)。禿げ頭で、薬物中毒者特有の鋭い目つきをした死体性愛者。使用武器は、ナタ
元は安生組の構成員であったが、覚醒剤絡みの件で失態を犯し、破門される。それを隠しながら新宿で生きていくために、整形手術を受けている。
垣原に捕らえられ、針による拷問を受けた後に殺害される。死の直前に死姦してくれるように垣原に頼み込み頭部を針で貫かれ絶命する。死後、垣原の部下によりその希望は叶えられる。

垣原組[編集]

垣原雅雄(かきはら まさお)
もう一人の主人公。安生組の若頭であったが、後に三光連合から絶縁処分を受けて「垣原組」をつくる。拷問による顔にある大きな傷や裂けた口、顔に嵌められたピアスが特徴的で「ピアスのマー坊」という呼び名を持っている。
痛みを性的な快感に置き換える究極のマゾヒスト。同時にサディストでもあり、「オトシマエ」と称して失態を犯した部下の顔や性器にピアスをつけさせている。性癖上、拷問をすることも受けることも好む。のような細長い針を常時何本も持ち歩いており、戦闘は勿論、拷問や「オトシマエ」に欠かせない彼の愛用の品である。
当初は安生組長の敵を討つために行動していたが、イチの猟奇性、異常性が判明していくにつれ、イチへの期待が高まり、そのイチに狙われているという状況をSMプレイのように楽しみ、「絶望したい」欲望を満たすためにイチを求める。彼にとってSMとはプレイではなく生活である。その独特な思想を表す言動も多い。
映画版では容姿が著しく異なる。
金子(かねこ)
安生組(後に垣原組)の鉄砲玉。フルネームは金子修二(かねこ しゅうじ)。愛用銃はトカレフ。組への忠義心が高く、組のために命を投げる覚悟を持っている。だが同時に臆病でもある。妻には逃げられ息子のタケシと二人暮しをしている。イジメにあっているタケシに蹴り技を教えてくれた城石=「イチ」という事実を知り、ヤクザマンションで垣原を襲っているイチに発砲するが返り討ちに合い、息子をイチに託し死亡する。キックボクサーだった過去を持つ。実力は三回戦ボーイ止まり。(映画版では拳銃を紛失して退職した元警官)
高山(たかやま)
垣原組の構成員。垣原の傍に仕えている大男で、二郎・三郎兄弟には「ゴリラ」とあだ名されている。かつて暴力で名を上げてきたが威勢がいいだけの肝っ玉の小さい男で、垣原の凶行には内心おびえる。ジジイ曰く「何の欲望も持たないブタ」。ヤクザマンションに一人で侵入していたジジイを見つけ後を追うが、返り討ちに遭いジジイに首を折られて死亡する。初めは両耳にピアスを付けていた(「オトシマエ」によるものかどうかは不明)が、後半からは付けていない。
二郎・三郎(じろう、さぶろう)
6年前に解散した九州の悪名高き暴力団「阿籐組」の残党(実写映画版では悪徳刑事)の双子。二人とも暴力で女をねじ伏せ、金を巻き上げる、龍とは違うタイプのヒモ。同じく阿籐組組員だった垣原に呼ばれ、対イチ用の助っ人として歌舞伎町に来た。二郎は人体を素手で引き千切るほどの怪力の持ち主で、三郎はドスの名手。
双子ゆえの不思議な感情をお互いが持っており、些細なことで競い合っては手が付けられない兄弟喧嘩に発展する。本来は三つ子で、一郎という長兄がいたが、過去に些細な喧嘩が原因で二郎・三郎に殺害されている。
また、垣原の顔の傷と裂けた口は過去に彼らがつけたものである。最終的には二人ともイチに殺害された。
藤原(ふじわら)
垣原組の構成員。ヘマをすることが多いらしく、顔中に「オトシマエ」のピアスが付けられている。他の組員が引き抜かれていく中、何処にも引き抜かれることなく渋々垣原組に残留していたが、後に耐えられなくなり逃亡。

その他[編集]

カレン
安生芳雄の愛人だったホステス。後に人脈を使い、垣原を援護する立場になる。
ミユキを垣原達に売り渡し、二郎三郎から拷問を受けて凄惨な姿になってしまった彼女を見ても平然としているが、実際にはジジイに踊らされている傀儡の一人。
イチのいじめられ仲間であった立花のふりをしていた為、それを利用したジジイの策略により、作中の最後でイチに殺される。
鈴木(すずき)
「船鬼一家」の幹部だったが、ジジイの謀略で垣原から拉致・拷問され、重傷を負わされ入院。その恨みと、中国マフィアに扮したジジイらの一計から、垣原組を壊滅させるための殺し屋(=イチ)を雇う。
物語終盤、殺し屋を雇っていたことを垣原たちに知られ、病室に乗り込んできた三郎に殺された。
中沢俊至(なかざわ しゅんじ)
安生や船鬼を傘下におさめる本家三光連合の会長。昔頭に銃弾を撃ち込まれた影響で常にフラフラしている。
船鬼(ふなき)
安生組とは同じ傘下にある、インテリ経済ヤクザである「船鬼一家」の組長。
安生芳雄(あんじょう よしお)
新宿の暴力団の中でも武闘派として一番恐れられている安生興業の組長。第一話にて「イチ」に殺害されるも、ダイイング・メッセージを遺す。垣原は安生から受ける暴力に悦びを感じていたとされるが、次の存在が見つかるまでの気休めでしかなかったらしい。カレン曰くロリコン。本編には死体の一部しか登場せず、垣原が所持する写真でのみ顔がわかる。
林田洋子(源氏名:セーラ)
イチの地元のピンサロ嬢。同棲している小太りの男に凄惨なドメスティックバイオレンスを受け、体中が傷だらけである。
その男はイチにより殺害されるが、この現場に居合わせてしまったセーラはイチを拒絶する姿勢を見せたため殺害される。
金子タケシ
金子の息子。金子と共にヤクザマンションで暮らしている。学校でイジメを受けていたがイチが教えた蹴り技のおかげでいじめられなくなった。抗争にて父を失い天涯孤独になるが、作品の最後にはジジイによって「計画」のための新たなる殺し屋に仕立てられることを予感させる描写がある。
立花
かつてのイチの同級生で、イチと一緒にイジメられていた少女。発端はいじめらていたイチを庇ったためで、自身も陰惨なイジメに巻き込まれてしまい、イチが医療少年院に送られた直後に自殺未遂を起こす。失踪していたことや単独での海外渡航、身売りでの精神的負担を減らす為、リタニンの大量服用の急性中毒になり、海外の病院に入院していた。
イチとのキスや排便の強制強姦など性的なイジメを受けていた。イチの性癖にも影響を与えていたキーパーソンと言える。

登場人物のうちヤクザにはU系と呼ばれるプロレスラーの名前が元ネタに使われていることが多い。具体的には、垣原高山藤原安生船鬼鈴木がそれにあたる。

映画[編集]

殺し屋1
監督 三池崇史
脚本 佐藤佐吉
原作 山本英夫
出演者 浅野忠信
大森南朋
SABU
塚本晋也
撮影 山本英夫
編集 島村泰司
配給 プレノンアッシュ
公開 カナダの旗 2001年9月14日TIFF
日本の旗 2001年12月22日
上映時間 128分
製作国 日本の旗 日本
香港の旗 香港
韓国の旗 韓国
言語 日本語
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スタッフ
エピソード 

クエンティン・タランティーノは本作のファンで、電話口で怒鳴る高山役の菅田の演技を気に入り、『キル・ビル Vol.1』に菅田を起用した。他にも船鬼役の國村や、ヤクの売人役の風祭なども同作に出演している。

オリジナルビデオ作品「1 -イチ-」[編集]

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出演  

読み切り版「殺し屋1」[編集]

後に映画化の際に行われた公式ガイドブックに現在再掲載された。元ボクサーのヤクザと戦うエピソードと、殺し屋の斡旋屋の女と共に渋谷のチーマーと戦う二つのエピソードがある。

OVA作品「殺し屋1 THE ANIMATION EPISODE.0 」[編集]

このOVA作品では、原作で語られることのなかった、殺し屋「イチ」の過去の話について明かされている。2002年9月27日発売。

  • 映像特典:対談「イチを創った男たち」(原作・山本英夫×精神科医・名越康文×脚本家・佐藤佐吉)/三池崇史アフレコ初体験/特報/劇場予告編
  • 時間:50分
  • 言語音声:DD(ステレオ)
スタッフ
  • 監督:石平信司
  • キャラクターデザイン:二宮常雄
  • 作画監督:大花松理、平林孝、八木元喜、加藤清司郎
  • 絵コンテ:水野和則中山勝一、帆村荘二
  • 脚本:佐藤佐吉
  • 美術監督:廣瀬義憲
  • 色彩設計:友野亜紀子
  • 撮影監督:大前亮介
  • 編集:岡田輝満
  • 音楽:高瀬ゆい
  • 音響監督:亀山俊樹
  • プロデューサー:千葉善紀
  • アニメーション制作:AIC
  • 製作:メディア・スーツ
出演

脚注[編集]

  1. ^ 1巻では東京から自転車で10時間という描写があり、のちに具体的に新潟と描かれた。

外部リンク[編集]