ホルモン焼き

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ホルモン焼き(小腸)

ホルモン焼き(ホルモンやき)とは、内臓肉(もつ)を焼く料理。狭い意味では、小腸大腸を、広い意味では正肉以外のかつて廃棄していた部位をも含む臓物肉全般が含まれ、肝臓心臓腎臓子宮などを用いる。かつては焼肉専門店や屋台などで供される料理であったが、味付けされたパック製品が販売されていることから一般家庭においても食される事もある。

焼肉」やに刺して「やきとん(焼き鳥)」としても食べられている。 また、鉄板を使用して焼いた料理は「鉄板焼き」などの「鉄板焼き料理」となる。

部位[編集]

一般にホルモン焼きと言えば腸の料理を意味することが多いが、専門店や内臓食に縁の深い地域ではどの部位にするか聞かれることが多い。

事故[編集]

ブタの体内には、E型肝炎ウイルスが存在することがあることから、ブタのホルモンについては十分に加熱調理する必要がある。ホルモン焼きの肉として、ブタが多く用いられる北海道では、しばしばホルモンから感染した肝炎の発症者が出ることがあり、2004年には死者1名、2006年には重体1名が記録されている。

栄養[編集]

田中聡著『健康法と癒しの社会史』(青弓社、1996年)によると、昭和初期、「ホルモン」は「生命の基となる物質」にして「若返りの秘薬」であり、人間や動物の内蔵・血液に多く含まれていると考えられていたという。昭和11年には東京・赤十字博物館で「ホルモン・ビタミン展覧会」なる展覧会が開かれ、「東洋古来のホルモン思想」と題された掲示の中で、「種々の臓物や血液」、「人血や生膽」がかつて秘薬として珍重されていたことが紹介され、また臓物を使った「ホルモン料理」の実演も行われた(『健康法と癒しの社会史』、pp.68-71, 80.)。

コラーゲンが含まれている事から、美容に良いと広く信じられているが、ホルモンなどの食品を常識以上に多量に摂取したとしてもコラーゲンの形で吸収され、美容上の効果があるという事さえ実証されていない。 また、消化が悪く、カロリーも高い上に、プリン体を多く含み、これは痛風の原因となる事から、健康にとって良くないともされる。

歴史[編集]

佐々木道雄『焼肉の文化史』(明石書店)によれば、1920年代に精力を増強する料理のことをホルモン料理ということが流行したという。佐々木は、当時のホルモン料理は動物の内臓料理にとどまらず、卵、納豆、山芋も含まれていたことを多田鉄之助『続たべもの日本史』(新人物往来社、1973年)を引きながら指摘した。そしてまさに内蔵料理としてのホルモン料理の初出として魚谷常吉『長寿料理』(1936年)をあげ、昭和になると料亭「山水楼」や洋食屋「北極星」が内蔵料理をホルモン料理として提供していたことを記している。その影響のなかで戦前において大衆食堂などで出されたモツ焼きがホルモン焼きと称されるようになったようだと、植原路郎『食通入門』を根拠に推測している。これらのホルモンはまさに内分泌のホルモンのことである。

このようにもともとは日本系のモツ(内蔵)焼きを意味していたホルモン焼きは戦後、時期は不明だが朝鮮系の内蔵焼肉をホルモン料理と言うようになった。さらに、1970年代にはホルモンを医学・生物学用語由来ではなくダジャレとして「放(ほお)るもん」から採られたという説がとられたようである。

名称[編集]

上述の通り、ホルモン焼きのホルモンは内分泌のホルモン由来であり、日本人にも一部数奇者が好奇を寄せる料理として、もしくは一部集落内にて消費される内蔵食文化があったこと確かであるが、1970年代様々な文献において「在日朝鮮人が屠殺場で捨てるものをもらってたべていた」ということが在日側から主張されるようになった[要出典]

そのなかでホルモンの語源は、内臓は食用の筋肉を取った後の捨てる部分なので、大阪弁で「捨てるもの」を意味する「放(ほお)るもん」から採られたという説(この説を採る代表例は、焼肉の食道園)をとる人々が現れ、メディアなどを通して主張されるようになった[1]

「大阪風味 - くいだおれ大阪どっとこむ!」の北極星の項目によると、「放る(捨てる)もん」を使っているという意味でも、また、内臓料理にはホルモンが含まれているという意味でも、「ホルモン料理」という名が付けられ定着してきた、との説明がある。

平成18年3月15日放送のテレビ番組「トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜」のガセビアの沼コーナーでは、「ほおるもん=ホルモン」説は、誤りとして紹介された[2]

平成23年1月発行の普及啓発資料『畜産副生物の知識』において、特例社団法人日本食肉協議会は、「ホルモン」の語源について、下記のように説明をしている。

ホルモンの語源は、大阪弁の「捨てるものを意味する『放るもん』」説や、医学用語であるドイツ語のHormon(ホルモン)、英語のhormoneは、動物体内の組織や器官の活動を調節する生理的物質の総称から、栄養豊富な内臓を食べると、活力がつくとして名付けられた説など諸説あります。ホルモン料理の名称は戦前から存在し、戦前においては、内臓料理に限らず、スタミナ料理一般、例えば、スッポン料理などもホルモン料理と呼ばれていたことから、ホルモンは「放るもん」ではないと思われます。明治維新のころの西洋医学(主にドイツ)の影響を受け、栄養豊富で活力がつくとして名付けられた説が主流であるものと思われます。[3]

「北∞ホルモン」は、北極星産業株式会社により昭和12年3月13日に商標が出願され、昭和15年9月16日に商標が取得されている。称呼は「ホルモン, キタホルモン, キタ」。区分は『30 牛の臓器より抽出したホルモンを含有した味噌』となっている[4]

  • 焼肉 - 焼網などを使ってホルモンを直焼きにする。
  • 鉄板焼き - 下味をつけたホルモンを鉄板の上で焼く。
  • 串焼き - 焼き鳥と同じ要領でホルモンを串に刺し、タレなどで味付けして焼く。

トン・チャン[編集]

この語源には諸説あり、定かではない。

  • 『トンチャン』は朝鮮語の「トン」(똥、ttong、)、「チャン」(장、jang、もしくは)で、小腸・大腸を意味するというする説がある。
  • 『トン』は豚から。『チャン』は、北海道の名物料理で、魚を焼く類似の料理「ちゃんちゃん焼き」に由来するとする説がある。
  • 岐阜県飛騨・奥美濃地方では『鶏ちゃん(ケイチャン)』と呼ばれる鶏肉料理があり、それと関連してトンチャンは「豚ちゃん」の意味だと解釈されており、地元の料理店のメニューでも「豚ちゃん」と表記される。

これらに起因して、「とんちゃん」の名を冠したホルモン(内蔵)料理がある。

地域性[編集]

日本全国で、ホルモンを焼いた料理が食べられている。地域によっては独自の調理を行うなど地域性がある。詳細は各項目を参照。

小腸を「丸腸」と呼び、ホルモン焼きの材料とする店は各地にある。


脚注[編集]

  1. ^ ヒョンミのおいしい焼肉 三河島と焼肉・在日「当時の日本人にとって食習慣のない地場産業の副産物といえる屠殺場から排出される豚の耳、しっぽ、内臓等は在日にとっては、思いもかけぬ貴重な食材だった」
  2. ^ 佐々木『焼肉の文化史』を根拠にしている。第42回
  3. ^ 畜産副生物の知識(3)食肉消費の歴史と畜産複製物, pp.30
  4. ^ 商標出願・登録情報検索(詳細画面) 北∞ホルモン
  5. ^ 財団法人埼玉県市町村振興協会

関連項目[編集]

外部リンク[編集]