戦え!!イクサー1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

戦え!!イクサー1』(たたかえ!!イクサーワン)は、阿乱霊レモンピープルに描いた短編漫画。及び、それを原案として1985年から1987年にかけて制作、発売されたOVA作品。全3巻。

本項では、主にOVAを中心として記述する。

ストーリー[編集]

真夜中の都会の片隅で、静寂を破る1人の男が逃げ惑っていた。

懸命に走るも躓いて転倒した男の顔には、尋常ならざる焦りが浮かんでいる。顔を上げた男の目に映ったのは、レオタード調の戦闘服を着け、尖った耳と長くウェーブの掛かった金髪が目立つ少女。男は獣のような唸り声で少女への怒りを露にすると、その顔を崩れさせた。瞬時に原型を留めないまで崩れ落ちた男の顔の下からは、タコともイカとも似付かない軟体の身体を持つ怪物が出現し、少女に襲い掛かる。しかし少女は少しも恐れず腕を振り構えると、その拳から眩しい光線を放ち、怪物を跡形も無く消滅させた。その途端、辺りには再び静寂が訪れる。少女の姿も、いつの間にか消えていた。

一方、視界に地球を望む宇宙空間には、半球にを被せたような形状の巨大な隕石宇宙船「クトゥルフの月」が留まっていた。その中の一室では、2人の少女が全裸のままベッドでお互いの四肢を絡め合い、快楽を貪っている。組み敷いている方はコバルト、組み敷かれている方はセピア。やがて行為を終えた後、地球を眺めながらセピアと談笑していたコバルトへ、クトゥルフの月の中枢部から呼び出しが掛かる。

身繕いを整えて中枢部を訪れたコバルトの前で、数人もの従者の真ん中に立つ1人の人物が降り返った。その名はサー・バイオレット。コバルトの上司であり、クトゥルフの月の長である。サー・バイオレットは巨大ロボット・ディロスθの操縦者にコバルトが選ばれたことと、先んじて地球に派遣した寄生怪物達が妨害を受けていることを彼女に伝える。

怪物達を妨害しているのは、真夜中の都会に現れたあの少女であった。サー・バイオレット達からイクサー1の名で呼ばれている彼女は怪物達と戦う一方、自分とシンクロすることで能力を完全に覚醒させてくれる、1人の地球人少女を探していた。その少女の名は、加納渚。ごく平凡な家庭で幸せに生きる、普通の女子高生である。

サー・バイオレットは、渚の元へも怪物を向かわせていた。最初は単なる悪夢にしか思えなかった状態から、一気に級友も父母も怪物化されてしまった渚は、自分にも寄生のための触手を伸ばしてくる彼らに恐怖と絶望を覚える。イクサー1が駆け付けてその窮地を救うが、あまりにも過酷な現実に直面した渚はパニック状態に陥り、彼女の言葉に耳を貸さない。一方、クトゥルフの月からは使命に燃えるコバルトが、ディロスθに搭乗して地上へ降り立つ。

地球は狙われていたのだ。宇宙の彼方からやってきた放浪の民・クトゥルフによって…。

登場人物[編集]

イクサー1(イクサー ワン)
声 - 山本百合子
主人公。宇宙を放浪する民・クトゥルフが、かつて彼らを守る戦士として作った、善なる心を持つ人造人間。それゆえビッグゴールドに支配されて他の星へ侵略活動を行うクトゥルフに対し、反旗を翻す。
自身だけの力で空を飛行するのは序の口で、宇宙空間の飛行や恒星間の航行も行えたり亜空間の出入りも自由自在と、行動範囲は無限。戦闘時は両腕から放つエネルギー弾、レーザービームソードなどを駆使して戦う。戦闘ロボットなどの巨大な敵に対しては、自らの分身とも言える巨大ロボ・イクサーロボを自分専用の異空間から出現させ、搭乗して戦う。
実はサー・バイオレットの娘であり、ビッグゴールドとは双子に等しい存在である。これはビッグゴールドの誕生と共に、サー・バイオレットの善の心(平和を愛する心)が宿ったためである。
加納 渚(かのう なぎさ)
声 - 荘真由美
ヒロイン。イクサー1にパートナーとして選ばれた少女。渚の力を得ることにより、イクサー1とイクサーロボは桁外れの戦闘力を発揮する。自分がイクサー1に選ばれた[1]ためにクトゥルフに狙われて友人や両親を失ったことからイクサー1を恨み、戦いを拒否していたが、小夜子との出会いを経て守りたい者を得たことで、最終的にイクサー1と共に戦う道を選ぶ。一度イクサーロボに搭乗した後、イクサー1から特殊な服と防衛機能を備えた腕輪を渡されている。
サー・バイオレット
声 - 島本須美塩沢兼人
クトゥルフの月の長。本来は心優しい理想的指導者だったが、あまりにも長い放浪の間にふと生じた心の隙間をビッグゴールドに侵け込まれて以降、邪悪な操り人形と化してしまう(島本が本来の人格、塩沢が操られてからの声を担当)。
イクサー2(イクサー ツー)
声 - 戸田恵子
イクサー1を倒すべくビッグゴールドによって作られた、邪悪な心を持つ人造人間で、民間人はおろか幼い命さえも踏みにじる冷酷さを持つ。「イクサー1の妹」を自称し、イクサー1を上回る戦闘力と自信、そして彼女と同様に分身とも言える巨大ロボ・イクサーΣ(シグマ)を持つ。
なお、平野曰くイクサー1はキカイダー、イクサー2はそのライバルであるハカイダーをイメージしてデザインされている。
コバルト
声 - 江森浩子
クトゥルフの戦士。巨大ロボ・ディロスθ(シータ)で地球侵略作戦を行うが、怒りを爆発させた渚に呼応してパワーを開放させたイクサーロボの前に散る。死後、機体と共に遺体がクトゥルフに回収されたが、その悲惨な姿はセピアにイクサー1と渚への復讐心を抱かせた。
セピア
声 - 安藤ありさ
コバルトの恋人(クトゥルフには「男性」という性別が無い)。コバルトを失った後、その復讐を遂げるためにイクサー2のパートナーとなるが、本来は優しい心の持ち主で、あまりにも残虐なイクサー2の行動から戦闘に集中できなくなり、最終的にはそれが災いしてコバルトの後を追う形で散った。
ビッグゴールド
声 - 塩沢兼人
金色の光を放つ赤目の赤子の姿をしている、謎の機械生命体[2]。イクサー1とは対極の「悪」である。サー・バイオレットを操り人形と化してクトゥルフを支配した後、彼らの愛玩生物をクトゥルフ神話ばりの奇怪な姿と凶暴な性格を持つ怪物と化して尖兵とし、他の星を侵略しようと企む。サー・バイオレットのことを母と呼んでいるが、これはサー・バイオレットの悪の心(クトゥルフの民を生き延びさせるためには手段を選ばない)から生まれたためである。
小夜子(さよこ)
声 - 渡辺菜生子
戦いを拒否した渚が出会った少女。過労で倒れた母親と共に渚に助けられるが、目の前で母が寄生され無残に崩壊する姿を目の当たりにし、自身もまたイクサー2の駆るイクサーΣによって、渚の目の前で無残にも踏み潰されてしまう。しかし、渚が渡していたイクサー1の腕輪の防衛機能によって事なきを得た。
小夜子の母
声 - 土井美加
小夜子の母親。渚が発見した時には既に衰弱しており、渚に介抱され、娘の小夜子と3人で一時を過ごす。しかしその後、背後からクトゥルフに襲われ、寄生されてしまう。

登場メカ[編集]

イクサーロボ
イクサー1の分身とも言える巨大ロボット。普段は自分専用の亜空間に留まっているが、イクサー1や渚の呼び掛けに応じてどこにでも出現する。イクサー1が搭乗して無数のコードに繋がれるだけでも強大な力を発揮するが、渚が液体に満たされている胸部に全裸で乗り込む(取り込まれる)ことによって、その力は何倍にも増幅される。
装甲の下は生体メカで構成されており、大きく傷付けば血液らしき液体も流れ出る。
主な武器は両腕から撃つエネルギービーム、胸から発射するイクセリオファイヤー、スラッシュ攻撃イクサーカッター、腕からの溜め撃ち、もしくは全身から放射するイクサーオーラ。イクサー1自身のイクサービームも発射できる。
漫画『黄金の戦士 ICZER-ONE』では元々イクサー専用機ではなく、惑星維珠阿(イシュア)の出身である事が示唆されている。
身長38メートル、体重150トン。誰も気付かないが女性型ロボットの基準の姿となっている。
イクサーΣ(イクサー シグマ)
イクサー2の分身とも言える巨大ロボット。イクサーロボよりも鋭角的かつ攻撃的なフォルムをしており、その能力も遥かに上。こちらもセピアが乗り込むことによって、そのパワーが倍増するようになってはいるが…。
マントを羽織り、自身のビームだけでなくメタルボールの遠隔操作による攻撃ができる。
身長はイクサーロボより若干低いか、同じくらい[3]
ディロスθ(ディロス シータ)
コバルトが地球侵略作戦の際に乗り込んだ巨大ロボット。地球の兵器相手には無敵の強さを誇るが、渚を得たイクサーロボには敵わず、怒りの拳でコクピットを破壊されて敗れる。
武器は胸の3連装ビーム砲、ディロスビーム。その後のシリーズでは派生機種が複数登場する。
身長40メートル、体重220トン。顔にハートのタトゥーを持つ。
富士シリーズ
富士壱號・富士弐號は自衛隊、FJ-IIIは地球防衛軍の戦艦。なお、これらの軍事組織の作中での区分は曖昧であり、この他にも「防衛連合軍」という呼称がなされた事もある。いずれも相当な戦闘力を持つが、クトゥルフの前にはひとたまりもない。
ちなみに地球防衛軍はこの他にも色々な各種兵器を有しているが、その大半が往年の日本特撮映画へのオマージュである。
代表的な艦長は、極東基地の黒川大佐(声 - 内海賢二)。
富士壱號(ふじいちごう)
型式番号「G-0TEN86」。富士の樹海の地下に位置する自衛隊の秘密基地「富士基地」で開発された首都防衛用空中戦艦第1号機。「戦艦」といっても大型の航空機程の大きさであり、富士基地の地下に格納されたカタパルトから発進する。主機は富士山麓から吉祥寺まで約10分で到達可能なほどの推力を持つハイドロジェネレイトエンジンで、武装として艦首ドリル、艦橋前のメーサー砲、ミサイルランチャーなどを装備している。
吉祥寺でディロスθと交戦するもあえなく撃沈。その後、再設計された「スーパー富士」数隻が要塞ノヴァ攻撃に投入されるが、これも瞬殺されている。
富士弐號(ふじにごう)
形式番号「M-IJACK11」。自衛隊が富士壱號の反省を元に新たに建造した首都防衛用空中戦艦第2号機。発進時には富士の樹海を割って垂直離陸する。富士壱號を遥かに上回る巨体を持ち、武装として富士壱號と同様の艦首ドリルや冷線砲を装備するほか、富士壱號と同規模の能力を持つ艦載機を多数搭載している。
要塞ノヴァ攻撃に自衛隊の切り札として投入されたが、同時に投入されたスーパー富士や熱線砲と共に殲滅された。
FJ-III(エフジェイスリー)
地球防衛軍が保有する宇宙戦艦で、正確には富士シリーズではない。詳細なスペックは不明だが、武装として粒子砲三門を装備している。月の裏側の「クトゥルフの月」を攻撃すべく軌道上の宇宙ステーションから出撃するが、地球へ向かうビック・ゴールドによって、その戦闘力を発揮しないままステーションともども撃沈された。
ワンダー3
防衛連合軍が運用している宇宙ステーション。ディロスΘが月の裏側に出現した「クトゥルフの月」から放たれた物であることを探知した。FJ-IIIが配備されていた宇宙ステーションと同一であるかは不明。
熱線砲
要塞ノヴァ攻撃に投入された地上部隊の兵器。八輪の大型装輪車両をベースとした一種の自走砲であり、車体上部にパラボラ型照射部を持つ熱線砲を装備している。複数車が富士弐號の冷線砲と共にノヴァへの連帯攻撃を行ったが、反撃を受け全車が破壊された。

この他の人類の兵器として、タンデムローター式のヘリコプターや主力戦車、富士弐號の艦載戦闘機などが登場しているが、いずれも端役としての登場に止まっている。

スタッフ[編集]

  • 原案 - 平野俊弘阿乱霊
  • 監督、脚本、キャラクターデザイン - 平野俊弘
  • 絵コンテ - 平野俊弘、西森明良(Act.I)
  • 演出 - 西森明良(Act.I)、岡本達也(Act.II)
  • メカニックデザイン - 本猪木浩明、荒牧伸志(Act.II、III)、大張正己(Act.II、III)
  • モンスターデザイン - わたなべぢゅんいち
  • 作画監督 - 平野俊弘(Act.I)、大上浩明(Act.I)、垣野内成美(Act.II、III)、大張正己(Act.II、III)
  • 色指定 - 金丸ゆう子
  • 美術監督 - 中村靖(Act.I)、荒井和浩(Act.II、III)
  • 音響監督 - 本田保則
  • 音楽 - 渡辺宙明
  • プロデューサー - 三浦亨
  • 制作 - AIC
  • 製作 - L・Pビデオ

各巻タイトル・主題歌[編集]

  1. 『戦え!!イクサー1 Act.I』
    主題歌「戦え!!イクサー1」
    作詞 - 岡田冨美子 / 作曲、編曲 - 渡辺宙明 / 歌 - 柿沢美貴 / レーベル - 東芝EMIユーメックス
  2. 『戦え!!イクサー1 Act.II イクサーΣの挑戦』
    主題歌「NEVER RUN AWAY」
    作詞 - 岡田冨美子 / 作曲、編曲 - 渡辺宙明 / 歌 - 楠木勇有行 / レーベル - 東芝EMI・ユーメックス
  3. 『戦え!!イクサー1 Act.III 完結編』
    主題歌「永遠のイクサー1」
    作詞 - 岡田冨美子 / 作曲、編曲 - 渡辺宙明 / 歌 - 柿沢美貴 / レーベル - 東芝EMI・ユーメックス

関連商品[編集]

後に各巻の廉価版が発売された。
  • デイドリーム
ACT.IIとIIIの間に作られたメイキングビデオ。
  • 戦え!!イクサー1 特別編(1987年9月25日発売)
ACT.I、II、IIIを1本に繋げた完全版。再編集ではなく、完全新作シーンや描き変えられたカット[4]もある。台詞は全て再アフレコされ、音楽の使い方も変更されている。

サントラ[編集]

東芝EMI(現・EMIミュージック・ジャパン)のユーメックスレーベルからLPレコードアルバムとして4枚発売された。後に2枚のCDで発売され、1992年にはその廉価版が発売されている。1998年には、2枚組CD『戦え!!イクサー1 バトル・ミュージック・コレクション』として再発売された。 

書籍[編集]

ゲームブック『戦え!!イクサー1―クトゥルフの逆襲』
著 - 松枝蔵人 / 刊 - 富士見ドラゴンブック / ISBN 9784829142226
小説『戦え!!イクサー1』
著 - 会川昇 / 刊 - 角川スニーカー文庫 / ISBN 9784044702014(上巻)、ISBN 9784044702021(下巻)
漫画『黄金の戦士 ICZER-ONE』
著 - 平野俊弘、森木靖泰 / 刊 - 久保書店 / ISBN 9784765901512
別の惑星を舞台にした本編の前日譚で、イクサー1が戦士として覚醒した頃の物語。
カセット文庫『黄金の戦士 ICZER-ONE』
上記のカセット文庫版。

他、各巻のムックおよびフィルムストーリーブックが発売された。

フィギュア[編集]

  • コトブキヤ - イクサー1(アニメ版、『黄金の戦士』版)、イクサー2
  • 海洋堂 - イクサー1(アニメ版、『黄金の戦士』版)
  • アトリエ彩のトレーディングフィギュアシリーズ「AICヒロインコレクション」にイクサー1が2種ラインナップされる(ノーマル版&リペイント版)。PVC塗装済み完成品/高さ12cm前後。2006年7月29日発売。

ゲームソフト[編集]

本作の直接的なゲーム化ではないが、2010年11月25日発売のニンテンドーDS用シミュレーションソフト『スーパーロボット大戦L』に本作と続編の『冒険!イクサー3』に登場するキャラ・ロボが複数登場しており、イクサー1序盤からイクサー3まで通しての1つのストーリーとして仕上げられて組み込まれている。その関係か、イクサー1は登場時から『イクサー3』時代の外見設定になっている。

本作ではクトゥルフはビッグゴールドと同じ機械生命体である、『獣装機攻ダンクーガノヴァ』の敵ムーンWILLと手を組んでいるほか、最終決戦ではコバルトのディロスθの残骸に付着していた細胞から培養した擬態獣を使用してくるなどのクロスオーバー展開が盛り込まれている。

関連作品[編集]

冒険!イクサー3
続編。本編の未来の世界を舞台としている。
戦ー少女イクセリオン
霞渚が主人公となった派生作品。渚が直に変身して戦う。
イクサー伝説
平野俊弘による漫画作品。『月刊ニュータイプ』の付録冊子『コミックGENKi』に連載。単行本は角川書店より発売。ISBN 9784048522922

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ アニメ本編では明確に描かれていないが、イクサー1に選ばれた理由は彼女の半身であるビッグゴールドの誕生に起因する人間だったためであることが、小説版で補足されている。
  2. ^ アニメ本編では明確に描かれていないが、自らを生み出したのは渚の先祖もしくは子孫が作り出した意志を持たぬ機械であることが、小説版で補足されている。
  3. ^ 『デイドリーム』のSDアニメより。
  4. ^ Act.Iにおける富士壱號のクルーなど。

外部リンク[編集]