坂茂

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坂茂

坂 茂(ばん しげる、1957年8月5日-)は、日本建築家。アメリカで建築を学び、紙管、コンテナなどを利用した建築や災害支援活動で知られる。1996年吉岡賞、1997年JIA新人賞、2009年日本建築学会賞作品賞、2014年には建築分野の国際的な賞であるプリツカー賞を受賞している。

来歴[編集]

カトリックたかとり教会仮設集会所「ペーパードームたかとり」(紙の教会)
ノマディック美術館。大量の海上コンテナを積み上げて建設された移動する(ノマディックな)仮設美術館。2005年にニューヨークのハドソンリバーパークに建てられ、内部の写真展と共に2006年サンタモニカ、2007年東京に移築された[1]
ポンピドゥー・センター・メス(坂茂建築設計とJean de Gastines Architectesの共同案、Philip Gumuchdjian Architectsによる設計協力[2][3]

東京都出身。会社員の父と服飾デザイナーの母の下に生まれる。成蹊小学校時代からラグビーを始め、高校では花園での全国大会にも出場。成蹊中学校時代に建築家を志す。高校時代には建築雑誌で見たジョン・ヘイダックやヘイダックが教えるニューヨーククーパー・ユニオン英語版に憧れを抱く[4][5]。1976年、成蹊高等学校卒業。クーパー・ユニオンを目指して1977年、19歳で渡米。しばらく英語学校に通い、1978年から2年半、南カリフォルニア建築大学(サイアーク、SCI-Arc)で建築を学び、1980年にクーパー・ユニオンに編入。1982年から1983年の1年間、磯崎新アトリエに在籍したあと、クーパーユニオンに戻って1984年に同建築学部を卒業(建築学士号[6])。日本建築家協会会員[7]。ニューヨーク州登録建築士[8]

マイノリティ、弱者の住宅問題に鋭い関心を寄せ、ルワンダの難民キャンプのためのシェルターを国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) に提案し開発・試作した[9][10][11]

1995年の兵庫県南部地震阪神・淡路大震災)後の紙のログハウス(仮設住宅)や教会の集会所を特殊加工された「紙(紙管)」で制作[12]トルコインドで起きた地震に際しても仮設住宅の建設を行った。2005年に津波災害を受けたスリランカキリンダ村で復興住宅、2008年に大地震の被害に遭った中国四川省の小学校の仮設校舎[1]2011年の地震で被害を受けたクライストチャーチ大聖堂の仮設教会の建設を提案した。東日本大震災では、体育館などの避難所に避難したものの、ひとつの空間で多くの人々が同居している状態で、プライバシーがまったく無くて苦しんでいるが言いだせない人々のために、紙パイプと布を使いプライバシーを確保する提案をし、各地の役所職員たちを説得してまわり、また仮設住宅の建設、質の向上にもかかわった。女川町で坂茂が提案した海上輸送用のコンテナを使い家具を作り付けにした2-3階建仮設住宅は快適で、期限が来てもそのまま住み続けたいと希望する人々が多いと報じられた[13][3][14]

阪神・淡路大震災後に被災地神戸で手がけた「紙の教会」では1995年第41回毎日デザイン賞大賞[15]、第3回関西建築家賞大賞[16]、1997年度JIA新人賞[17]、「家具の家・カーテンウォールの家」で1996年吉岡賞、東日本大震災被災地にて活用された「紙の建築」で平成23年度芸術選奨文部科学大臣賞[18]を受賞。

グローバルに問題を考えており、建築資材などをあらかじめ確保しておき、どこかの国で大災害が起きた時にそれを供給するしくみ作りも進めている[13]。そうしたことを行うにあたって、ただ慈善や寄付だけに頼るのではなく、通常の経済の循環の中に組み込み継続性を持たせることも進めており、それに関して坂茂が思いついたアイディアは、まず途上国に仮設住宅の工場をつくり、その工場で作られる住宅を、災害の無い時には各国のスラム街の住環境を改善するのに用い、もし災害が起きたらそれを仮設住宅として供給するという方法で、これで、途上国で雇用も作りだしつつ、住環境改善も実現し、災害時には苦しむ人々を救うということもできるというものである[13]

坂茂建築設計[編集]

1985年、東京に株式会社坂茂建築設計を設立。1999年、ニューヨークに事務所を開設[3]。2003年にポンピドゥー・センター・メスのコンペを勝ち取ったのを機に、2004年、パリにも事務所を開設[3]。現在は、東京、パリ、ニューヨークの事務所を行き来し[19]、パートナー建築家とチームを組んで個人の邸宅や大規模建築から被災地支援まで、さまざまな建築意匠を手がけている。2014年11月現在のパートナー建築家は、平賀信孝(東京)[20]、ジャン・デ・ギャスティン(Jean de Gastines、欧州)、ディーン・モルツ(Dean Maltz、米国)[21]。坂茂建築設計では、坂がデザインの核を考え、プロジェクトの総括と事務所の運営にはパートナーが大きな役割を果たしている[22][3]

ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク (NGO VAN)[編集]

ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(ボランタリー建築家機構)は、坂茂が1995年の兵庫県南部地震阪神・淡路大震災)後、神戸で建築面での被災地支援のためにボランティア組織としてたちあげたNGONGO VAN(Voluntary Architects' Network)。VANは仮設住宅や教会の仮設集会所の建設を行い、その後の坂の国内外の被災地支援でも活動した。

当初、VANの運営は、坂茂建築設計のスタッフが設計事務所の仕事のかたわら兼務。2001年に坂が慶応SFC教授になってからは、研究室の活動の一環として、学生がVANの運営の中心となっていった。2003年には神奈川県のSFCキャンパスに紙の仮設スタジオ「慶應義塾大学SFC坂茂研究室」が研究室の学生らの手で完成。幅と奥行が10m、高さ5mのワンルームで、2008年に解体されるまで(2009年春に坂は慶応教授を辞した)、電動工具も使える仮設建築の実験場として、またVANの拠点として機能した[1]

年表[編集]

手がけた作品[編集]

紙の建築[編集]

クライストチャーチ大聖堂(仮設)

坂の建築の特徴として、紙管を建築の構造材として使用していることが挙げられる。

それまで、建築構造材としての紙管の使用は、建築基準法において前例がなかった。このため、紙の家(1995年)を実現するにあたり、構造家の松井源吾・手塚升と共同で実験を進め、紙管構造 (PTS) の建築基準法第38条の評定を取得した。また、ハノーバー万博2000・日本館に際しては、フライ・オットー、ビューロ・ホッパルド(Buro Happold、構造設計事務所)と協力し、ドイツの建築基準をクリアして実現させた。[33][34][9][35]

  • アルヴァ・アアルト展」会場構成(1986年)
  • 世界デザイン博覧会「水琴窟の東屋」(1989年)
  • ときめき小田原メイン会場ホール(1990年)
  • 詩人の書庫(1991年)
  • MDSギャラリー:(1994年)1998 - 2005年、三宅一生デザイン文化財団がギャラリーとして運営。
  • 紙の家(1995年)
  • 難民シェルター
  • 大震災被災者用仮設住宅(紙のログハウス)(1995年)
  • カトリックたかとり教会仮設集会所(紙の教会)(1995年)
  • ハノーバー万博2000・日本館(2000年)
  • クライストチャーチ大聖堂(仮設)(2013年)

著書・作品集[編集]

  • 『SHIGERU BAN』TASCHEN ISBN 3836530767 2012年
  • 『Voluntary Architects' Network─建築をつくる。人をつくる。』INAX出版 ISBN 4872751639 2010年
  • 『SHIGERU BAN Complete Works 1985~2010』ファイドン ISBN 3836507358 2010年
  • 『SHIGERU BAN PAPER IN ARCHITECTURE』リッツォーリ ISBN 0847832112 2009年
  • 『SHIGERU BAN』ファイドン ISBN 4902593157 2005年
  • 『紙の建築 行動する―震災の神戸からルワンダ難民キャンプまで』筑摩書房 ISBN 4480860495 1998年
  • 『坂茂プロジェクツ・イン・プロセス―ハノーバー万博2000日本館までの歩み ギャラリー・間叢書』TOTO出版 ISBN 488706179X 1999年
  • ja30『坂 茂』 JA30号 新建築社 1998年
  • 『坂茂の 家の作り方』平凡社 2013年(プロジェクト・ディレクターとして真壁智治)

共著

  • 『Voluntary Architects' Network─建築をつくる。人をつくる。』坂茂+慶應義塾大学坂茂研究室(著) INAX出版  ISBN 4872751639 2010年
  • 『Japan car Designs for the crowded globe 飽和した世界のためのデザイン』 デザイン・プラットフォーム・ジャパン編 坂茂,原研哉企画編集 朝日新聞出版 2009.7

出演[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 『Voluntary Architects' Network─建築をつくる。人をつくる。』
  2. ^ Le Centre Pompidou-MetzL'architecture
  3. ^ a b c d e f g 『坂茂ーNA建築家シリーズ7』
  4. ^ 『紙の建築 行動する』
  5. ^ 一青窈 『ふむふむのヒトトキーはじまりの終わり編』 メディアファクトリー 2008年
  6. ^ a b 所定の実務経験を経ることでアメリカにおける建築士の受験資格が得られ、日本でも所定の実務経験を経ることで一級建築士の受験資格が得られる。
  7. ^ 日本建築家協会:JIA会員検索「坂+茂」
  8. ^ http://www.nysed.gov/coms/op001/opsc2a?profcd=03&plicno=028339
  9. ^ a b 坂茂「紙の建築」、日本記号学会 『文化の仮設性ー建築からマンガまでー』(東海大学出版会、2000年)に収録
  10. ^ 「坂茂氏にプリツカー賞、日本人が2年連続受賞<追加情報あり>」 世界各国の被災地で貢献/避難シェルター(ルワンダ) ケンプラッツ 2014/03/25
  11. ^ COM-ET:淵上正幸のアーキテクト訪問記 / 坂茂氏 / 紙の建築 紙管利用のデザインは難民のシェルターから
  12. ^ 坂茂氏にプリツカー賞、日本人が2年連続受賞<追加情報あり> 紙の教会 ケンプラッツ 2014/03/25
  13. ^ a b c NHK BS『ASIAN VOICE』2014年5月27日放送 1, 2
  14. ^ 坂茂氏にプリツカー賞、日本人が2年連続受賞<追加情報あり>東日本大震災でも被災者を支援
  15. ^ 1995/H7 《41st》
  16. ^ 関西建築家大賞歴代受賞者及び受賞作品
  17. ^ JIA新人賞
  18. ^ 平成23年度芸術選奨 受賞者及び贈賞理由
  19. ^ http://www.pritzkerprize.com/2014/announcement
  20. ^ 1949年、東京出身。東京藝術大学建築家卒業。一級建築士。1998年から坂茂建築設計パートナー。2009年、ニコラス・G・ハイエックセンター日本建築学会賞作品賞を坂茂と共同受賞。
  21. ^ http://www.shigerubanarchitects.com/profile_partners.html
  22. ^ [1]
  23. ^ 公式サイトプロフィール
  24. ^ 2008年11月1-9日、シテ・デ・シオンス(パリ)。2008年11月29日-2009年4月25日、サイエンス・ミュージアム(ロンドン)。(『Japan car Designs for the crowded globe 飽和した世界のためのデザイン』 による)
  25. ^ “建築のノーベル賞”米プリツカー賞に坂茂氏 災害支援「紙の住宅」評価
  26. ^ 素材の可能性 切り開く建築家 坂茂さん プリツカー賞
  27. ^ 坂茂さんにプリツカー賞 「疲れを知らない建築家」
  28. ^ 坂茂さんに「プリツカー賞」 建築界のノーベル賞が贈られた理由とは
  29. ^ 坂茂氏にプリツカー賞、日本人が2年連続受賞<追加情報あり>
  30. ^ 朝日賞 2014(平成26)年度 受賞者一覧
  31. ^ ねむの木こども美術館
  32. ^ 建築写真集NO
  33. ^ 『坂茂プロジェクツ・イン・プロセス―ハノーバー万博2000日本館までの歩み』(英語:Shigeru Ban; Frei Otto; Hideki Yoshimatsu, "Shigeru Ban : projects in process to Japanese pavilion, Expo 2000 Hannover") TOTO出版 1999年
  34. ^ "Engineering and Architecture: Building the Japan Pavilion"
  35. ^ 坂茂「紙のパビリオンー場ノーバー国際博覧会2000 日本館」、日本建築家協会ビオシティ編集部『サステイナブル建築最前線ー建築/都市グローカル・ドキュメント2000 (Sustainable Architecture - A Report from the Forefront)』(ビオシティ、2000年)
  36. ^ スーパープレゼンテーション これまでの放送 5月14日放送”. NHK. 2014年12月16日閲覧。
  37. ^ [2]
  38. ^ インタビュアーとのやりとりは質問、返答とも英語。長時間英語でスラスラと語りつづけた。

参考文献[編集]

  • 日経アーキテクチュア編『坂茂ーNA建築家シリーズ7』日経BP社 2013年
  • ローランド・ハーゲンバーグ『なりたいのは建築家-24 Architects in JAPAN-』 柏書房 2011年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]