「野焼き」の版間の差分
Raralu4440 (会話 | 投稿記録) m →インド |
Floe~jawiki (会話 | 投稿記録) →悪影響: 国連環境計画の見解を加筆 |
||
24行目: | 24行目: | ||
=== 健康上の問題 === |
=== 健康上の問題 === |
||
野焼きはPM2.5などの汚染物質を大量に排出するため、慢性心不全などの循環器疾患や呼吸器疾患、子供の早死のリスクを高めることが懸念されている<ref name="Cassou2018" /><ref name="CDC2020"/><ref name="UNECE2021"/>。 |
野焼きはPM2.5などの汚染物質を大量に排出するため、慢性[[心不全]]などの循環器疾患や[[呼吸器疾患]]、[[癌]]、子供の早死、[[アルツハイマー病]]や[[パーキンソン病]]、[[認知症]]のリスクを高めることが懸念されている<ref name="Cassou2018" /><ref name="CDC2020"/><ref name="UNECE2021"/><ref name="UNEP2021"/>。 |
||
野焼きの煙は特に[[喘息]]や[[慢性閉塞性肺疾患]] (COPD) を増悪させる<ref name="UNECE2021"/>。秋田県の医師の間では、稲の収穫期を迎えて[[籾殻]]や[[稲わら]]などの作物残渣が野焼きされる季節になると喘息発作の救急外来が急増するという事象がよく知られていた<ref>{{Cite journal|和書 |author=萱場広之 |title=2 稲作地域における環境因子と気管支喘息 : 穀物粉塵と野焼きを中心に(化学物質過敏症の診断・治療と問題点) |url=https://doi.org/10.15036/arerugi.53.224_1 |journal=アレルギー |publisher=日本アレルギー学会 |year=2004 |volume=53 |issue=2 |pages=224 |naid=110002432669 |doi=10.15036/arerugi.53.224_1 |issn=0021-4884}}</ref>。 |
野焼きの煙は特に[[喘息]]や[[慢性閉塞性肺疾患]] (COPD) を増悪させる<ref name="UNECE2021"/>。秋田県の医師の間では、稲の収穫期を迎えて[[籾殻]]や[[稲わら]]などの作物残渣が野焼きされる季節になると喘息発作の救急外来が急増するという事象がよく知られていた<ref>{{Cite journal|和書 |author=萱場広之 |title=2 稲作地域における環境因子と気管支喘息 : 穀物粉塵と野焼きを中心に(化学物質過敏症の診断・治療と問題点) |url=https://doi.org/10.15036/arerugi.53.224_1 |journal=アレルギー |publisher=日本アレルギー学会 |year=2004 |volume=53 |issue=2 |pages=224 |naid=110002432669 |doi=10.15036/arerugi.53.224_1 |issn=0021-4884}}</ref>。 |
||
31行目: | 31行目: | ||
=== 農業生産力の低下 === |
=== 農業生産力の低下 === |
||
本来、植物残渣などの有機物は施用・[[堆肥化]]によって土壌有機物([[腐植]])となり、土壌の理化学性・生物性ひいては地力を維持・増進する役割がある。この機会が野焼きによって失われ、また表土も焼かれることで、必要な施肥量の増大や、土壌[[侵食]]、収量低下などを引き起こし、経済的損失や生物多様性の低下を招く<ref name="UNECE2021"/>。 |
本来、植物残渣などの有機物は施用・[[堆肥化]]によって土壌有機物([[腐植]])となり、土壌の理化学性・生物性ひいては地力を維持・増進する役割がある。この機会が野焼きによって失われ、また表土も焼かれることで、必要な施肥量の増大や、土壌[[侵食]]、収量低下などを引き起こし、経済的損失や生物多様性の低下を招く<ref name="UNECE2021"/>。[[国際連合環境計画]]によれば、野焼きは土壌の保水力や[[土壌肥沃度]]を25 - 30%低下させる<ref name="UNEP2021">{{Cite web|url=https://www.unep.org/news-and-stories/story/toxic-blaze-true-cost-crop-burning|title=Toxic blaze: the true cost of crop burning|publisher=UNEP|date=2021-8-16|accessdate=2021-11-14}}</ref>。 |
||
野焼きで得られる[[草木灰]]は、伝統的な「肥料」として利用される場合があるが、これは誤った認識に基づいた慣習とされ、前述の有機物の土づくり効果が失われるほか、燃焼に伴い栄養の多くが失われることが知られている<ref name="UNECE2021"/><ref name="Cassou2018" />。[[アジア工科大学院]]のMohammad Esmaeil Asadiによれば、稲藁の野焼きは炭素のほぼ全量、窒素の99%、リンの18%、カリウムの44%を失わせる<ref name="Asadi2019">{{Cite news|url=https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1763179/open-burning-is-a-needless-way-to-lose-money|title=Open burning is a needless way to lose money|author=Mohammad Esmaeil Asadi|newspaper=Bangkok Post|publisher=Bangkok Post|date=2019-10-2}}</ref>。オーストラリアの[[ビクトリア州]]政府によれば、小麦藁の野焼きは窒素の80%、リンの40%、カリウムの60%、硫黄の50%を失わせ、また長期的には土壌の酸性化を招く<ref name="StateOfVictoria">{{Cite web|url=http://agriculture.vic.gov.au/agriculture/grains-and-other-crops/crop-production/stubble-burning|title=Stubble Burning|publisher=State of Victoria|accessdate=2019-12-26}}</ref>。 |
野焼きで得られる[[草木灰]]は、伝統的な「肥料」として利用される場合があるが、これは誤った認識に基づいた慣習とされ、前述の有機物の土づくり効果が失われるほか、燃焼に伴い栄養の多くが失われることが知られている<ref name="UNECE2021"/><ref name="Cassou2018" />。[[アジア工科大学院]]のMohammad Esmaeil Asadiによれば、稲藁の野焼きは炭素のほぼ全量、窒素の99%、リンの18%、カリウムの44%を失わせる<ref name="Asadi2019">{{Cite news|url=https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1763179/open-burning-is-a-needless-way-to-lose-money|title=Open burning is a needless way to lose money|author=Mohammad Esmaeil Asadi|newspaper=Bangkok Post|publisher=Bangkok Post|date=2019-10-2}}</ref>。オーストラリアの[[ビクトリア州]]政府によれば、小麦藁の野焼きは窒素の80%、リンの40%、カリウムの60%、硫黄の50%を失わせ、また長期的には土壌の酸性化を招く<ref name="StateOfVictoria">{{Cite web|url=http://agriculture.vic.gov.au/agriculture/grains-and-other-crops/crop-production/stubble-burning|title=Stubble Burning|publisher=State of Victoria|accessdate=2019-12-26}}</ref>。 |
||
38行目: | 38行目: | ||
=== 地球温暖化 === |
=== 地球温暖化 === |
||
[[地球温暖化]]の観点からは[[雪氷圏]]の温暖化に影響が大きい{{仮リンク|ブラックカーボン|en|Black carbon}}の排出源として最大の分野であると考えられている<ref name="Cassou2018" />。 |
[[地球温暖化]]の観点からは[[雪氷圏]]の温暖化に影響が大きい{{仮リンク|ブラックカーボン|en|Black carbon}}の排出源として最大の分野であると考えられている<ref name="Cassou2018" />。これにより[[氷河]]などの融解のほか、とりわけ[[アジアモンスーン]]への影響といった[[気候変動]]が懸念される<ref name="UNEP2021"/>。 |
||
[[温室効果ガス]]排出の観点では、[[二酸化炭素]]については[[カーボンニュートラル]]と捉えることができ、[[メタン]]や[[一酸化二窒素]]についても全体への寄与は目立たないが、土壌微生物に影響を与え土壌の温室効果ガス排出を増加させる<ref name="Cassou2018" />。 |
[[温室効果ガス]]排出の観点では、[[二酸化炭素]]については[[カーボンニュートラル]]と捉えることができ、[[メタン]]や[[一酸化二窒素]]についても全体への寄与は目立たないが、土壌微生物に影響を与え土壌の温室効果ガス排出を増加させる<ref name="Cassou2018" />。 |
2021年11月14日 (日) 12:45時点における版
野焼き、または火入れ(英: open burning/controlled burn)とは、野外で葦などの植生や刈草、作物の栽培に伴う副産物である藁、籾殻、剪定枝などの作物残渣といったものを人為的に焼却することである。このうち、田んぼの畦(あぜ)を対象とするものをあぜ焼き[1]、落ち葉などを対象とするものを焚き火と呼ぶ[2]。
その他ごみの野外焼却に対しても野焼きという言葉が使われる(#その他ごみの野焼き)。
概要
野焼きは古来より焼き畑を行い農地をならすために、近年では山火事の防止、生態系の管理などを目的として行われてきた。一方、PM2.5などの大気汚染の大きな原因となっており、国境を越えた越境汚染が国際問題に発展する例もある[3]。現代において農業における野焼きは、大気や土壌の環境を悪化させ、健康、経済や生物多様性に害をもたらす慣習として認識されており、各国において禁止が進む動向にある[4][5][6]。
草原の野焼き
草原の野焼きはアフリカなど世界各地の草原で主に放牧のためにおこなわれており、ロシアのステップや北アメリカのグレートプレーンズにおける研究では、土壌の窒素を放出させたり、野焼き後に成長する若い植物は収量は減るが栄養価や採食嗜好性は高まるといったことが知られている[7]。
作物残渣の野焼き
穀類や豆類、サトウキビの残茎・藁稈・殻・葉などの作物残渣の野焼きは世界各地で多くは規制のもとで行われている。原因として、伝統的に雑草・病害虫を防ぐために必要であるとみなされてきたこと、経済的理由により野焼きを行う以外に処分する選択肢を持てない農民が多いことが挙げられる[8][9]。世界銀行によれば、上位の国として中国、インド、米国、ブラジル、インドネシア、ロシアが挙げられるほか、アフリカ、メキシコ、タンザニアなどで割合が高く、この数十年の間に世界の多くの国々で増加した[4]。
悪影響
汚染物質
野焼きは低温燃焼のため、不完全燃焼となり煤煙を大量に発生させる。この煤煙はベンゾ[a]ピレンなど発癌性の多環芳香族炭化水素を含んだ粒子状物質(PM2.5など)や、揮発性有機化合物、硫黄酸化物、窒素酸化物、アンモニア、一酸化炭素などの汚染物質を含む[11][12][13]。国立環境研究所の報告によれば、麦や稲の野焼きで発生するPM2.5粒子は、大気中のPM2.5粒子と同程度もしくはそれ以上に毒性を持つと考えられる[14]。
また植物残渣の低温燃焼においてもダイオキシン類が発生し、煤煙から大気を汚染し、焼却灰から土壌を汚染する[15]。ダイオキシン類の発生量は燃焼物に含まれる塩素の量や燃焼状態によって左右され、特に塩素を含む農薬、除草剤の影響により発生量が増えることが知られている。
健康上の問題
野焼きはPM2.5などの汚染物質を大量に排出するため、慢性心不全などの循環器疾患や呼吸器疾患、癌、子供の早死、アルツハイマー病やパーキンソン病、認知症のリスクを高めることが懸念されている[4][16][6][17]。
野焼きの煙は特に喘息や慢性閉塞性肺疾患 (COPD) を増悪させる[6]。秋田県の医師の間では、稲の収穫期を迎えて籾殻や稲わらなどの作物残渣が野焼きされる季節になると喘息発作の救急外来が急増するという事象がよく知られていた[18]。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックに際しては、野焼きによるリスク増大が懸念され、いくつかの地域で野焼きが禁止された(#アメリカ合衆国、#カナダの例を参照)。PM2.5などの大気汚染は統計的に新型コロナの死亡率を高めると考えられており[19][20]、実験によっても罹患リスク、重症度を高めることが示されている[21][22]。また、煙害によって感染症対策の換気が困難になり、感染拡大につながることが懸念されている[23][24]。
農業生産力の低下
本来、植物残渣などの有機物は施用・堆肥化によって土壌有機物(腐植)となり、土壌の理化学性・生物性ひいては地力を維持・増進する役割がある。この機会が野焼きによって失われ、また表土も焼かれることで、必要な施肥量の増大や、土壌侵食、収量低下などを引き起こし、経済的損失や生物多様性の低下を招く[6]。国際連合環境計画によれば、野焼きは土壌の保水力や土壌肥沃度を25 - 30%低下させる[17]。
野焼きで得られる草木灰は、伝統的な「肥料」として利用される場合があるが、これは誤った認識に基づいた慣習とされ、前述の有機物の土づくり効果が失われるほか、燃焼に伴い栄養の多くが失われることが知られている[6][4]。アジア工科大学院のMohammad Esmaeil Asadiによれば、稲藁の野焼きは炭素のほぼ全量、窒素の99%、リンの18%、カリウムの44%を失わせる[25]。オーストラリアのビクトリア州政府によれば、小麦藁の野焼きは窒素の80%、リンの40%、カリウムの60%、硫黄の50%を失わせ、また長期的には土壌の酸性化を招く[26]。
高温に曝された土壌は一時的に交換性アンモニア態窒素や重炭酸塩抽出リンの画分が増加するが、長期的には理化学性・生物性のいずれも低下すると考えられている[4][27]。
地球温暖化
地球温暖化の観点からは雪氷圏の温暖化に影響が大きいブラックカーボンの排出源として最大の分野であると考えられている[4]。これにより氷河などの融解のほか、とりわけアジアモンスーンへの影響といった気候変動が懸念される[17]。
温室効果ガス排出の観点では、二酸化炭素についてはカーボンニュートラルと捉えることができ、メタンや一酸化二窒素についても全体への寄与は目立たないが、土壌微生物に影響を与え土壌の温室効果ガス排出を増加させる[4]。
対策
野焼きに代わる作物残渣の有効利用法としては、不耕起栽培などのマルチング、圃場すき込み、堆肥化、飼料・敷料といった耕畜連携のほか、紙やバイオプラスチックなどの素材原料、バイオ燃料原料やバイオ炭(木炭)原料として利用する取り組みがある[4]。
籾殻燻炭などのバイオ炭の生産においては、野焼きのような伝統的方法をとれば同様の害を伴い、一般的なボイラーのような高温燃焼では発癌性物質であり珪肺の原因となる結晶質シリカを生成するという問題があるが、これらの問題を解決させたガス化・エネルギー回収技術の開発も進められている[28][29]。
野焼きは多くの国で法的に規制されており、その分野は火災防止、交通災害防止、大気質保全、土壌保全など多岐に渡る。国際連合欧州経済委員会 (UNECE) によれば、1980年代始めから加盟国における規制が始められた[6]。規制の枠組みも様々であり、欧州連合の共通農業政策のように、直接支払い(補助金)といったメリットを与える引き換え条件(クロスコンプライアンス)として野焼きの禁止を求める制度もある。許可制を設ける国もあるが、特に農業者の教育が進んでいない国では形骸化するなど、実施状況にはむらがある。UNECEによれば、問題の地理的把握、教育、規制の3段階が順序をもって発展することが実効性のある規制において重要とされる。
国際連合環境計画がとりもつ気候と大気浄化の国際パートナーシップの農業イニシアチブは、ヒマラヤおよびアンデス地域を主な対象として、環境保全を伴う生産性向上や、健康状態の改善のほか、とりわけブラックカーボンの排出抑制を目的として、2015年に作物残渣の野焼きの抑制計画を開始した[5]。
各地の野焼き
日本
山野の野焼き
日本では伝統的に、春先のまだ草本の新芽が出ない時期に、野山の枯れ草を焼く事が多い。山焼きとも言う[30]。また、田の畔や[31]、河川敷を焼くことも野焼きということもある[32]。
日本の自然の状態では酷寒地を除き、草原は森林へと遷移する。野焼きや採草、放牧を行うことで、この遷移がリセットされ、初期状態の草地に戻る。このように人為的に手を加えることで維持されている草原を二次草原(半自然草原)といい、採草地や放牧地として利用されてきたほか、特に野草地では特有の生物相を形成する[33][34]。野焼きは、地下に生長点を持つ草本植物を生かしつつ、地表を覆う有機物や、地上に生長点を持つ木本植物を減らし、また炎などによる地温上昇や発芽誘導物質(カリキン)の生成などにより土中種子の休眠打破を促したり、炭による暗色化(アルベド低下)で地温を上昇させたり、有機物を無機塩類とすることで新たに出る若草のための肥料としたり、ダニなどの害虫を焼き殺す効果も期待される[35][36]。
よく知られた山野の野焼きには、次のようなものがある。
- 奈良・若草山の山焼き
- 阿蘇の野焼き
- 別府市の扇山火まつり・十文字原の野焼き
- 渡良瀬遊水地の葦焼き
- 大室山の山焼き
- 秋吉台の山焼き
- 房総の野焼き
- 仙石原の山焼き
- 平尾台の野焼き
- 都井岬の野焼き
- 東富士演習場、北富士演習場の野焼き
国立公園など自然保護区における野草地の野焼きは、採草や放牧とあわせ、二次草原環境や生物多様性の維持に有用な管理手段のひとつとして行われており、環境省は自然再生推進法などに基づき支援している[37]。草地の野焼きの量の正確なデータは把握されていないが、1,000ヘクタール以上の主要な野焼き実施地の5箇所(計24,400ヘクタール)を想定し、単位ヘクタール当たりの平均焼却量を10トンとする概算(日本国温室効果ガスインベントリ)があり、単純計算で244キロトンのバイオマス焼却が行われうると想定される[38]。野焼きは土地の炭素貯留を減少させると一般的には考えられているが、阿蘇の二次草原(約16,400ヘクタールの野焼き地)では、文献上は千年以上前から(延喜式に基づく説)、土壌分析によれば一万年以上前から野焼きがおこなわれ、かつ耕起がおこなわれてこなかった結果、土壌に蓄積した炭と植生由来の有機物により、土壌炭素の貯留が高められていると考えられている[39]。
野焼きに関する春の季語には「野焼」や「山焼」、「野山焼く」、「野火」、「畑焼」などがある[40]。
作物残渣の野焼き
稲藁や籾殻、果樹の剪定枝といった作物残渣は、従来は堆肥化や畜産資材、藁細工など手工業製品の材料として資源利用されてきたが、現代になり農家の担い手減少や牛馬の減少、農業機械化、化学肥料の普及などによりその利用途が減少し、その一部が焼却されるようになった[41][42]。特に稲作における野焼きは、昭和40 - 50年代の自脱型コンバインなどによる機械収穫の普及に伴い増加し、一時は稲作付面積の25%で野焼きが行われ、その煙害は「稲わらスモッグ」と呼ばれ社会問題化した[43][44]。
野焼きは大気汚染、悪臭などの公害、洗濯物の汚れ[45]など近隣トラブル、火災など事故の原因となる[46]ほか、地域における農産・観光のイメージ低下[47][48]や、焼却により有機物の土壌への還元量が減少し、地力・収量低下につながることが示される[41][49]など、営農面においても問題があることから、農協や行政機関における土づくり運動が興り[42][50]、地力増進法[注 1]、持続農業法[注 2]、GAP(適正農業規範)[注 3]などの政策において、作物残渣は焼却せずに堆肥や飼料として利用することが奨励されるようになっている[55]。
日本国内での作物残渣の焼却量は、都道府県が把握するデータからの算出では、稲(藁・籾殻)で1990年には1,019.5キロトン、2016年には295.4キロトン、麦類の焼却割合は2007年度には13.5%、2016年度には7.7%である[56][57]。2012年の第181回国会での内閣答弁書によれば、2010年度産の稲由来の焼却された稲藁の重量割合は、各都道府県からの集計で1.8%である[55]。地域の取り組みによっても違いがあり、例えば米の最多産地(2018年時点)である新潟県では、1993年には独自の指導要綱を制定するなど作物残渣の適正処理を積極的に推進し[58][59]、稲藁の焼却割合(対作付面積)は、1995年度には6.9%(9,451ヘクタール)、2017年度には0.0%(36ヘクタール)となっている[60]。青森県では2010年に稲藁の適正処理を推進する条例を制定し、作付面積の1%まで野焼きが減少したが、一部地域では根強く残る[44]。
その他ごみの野焼き
ごみを廃棄物処理法に従わずに焼却処分することを指す。そのまま地面に積み上げて、穴を掘りそのなかに投棄して、ドラム缶や焼却炉といったものを使用して、それぞれ焼却する[61] [62]。
日本では近代化以降、戦後まで適切な焼却施設が普及していなかったためごみの野焼きが常態化していたが、ごみ問題の深刻化を受けて1963年の生活環境施設整備緊急措置法で焼却施設の整備方針が定められ[63]、2000年の廃棄物処理法改正でごみの野焼きが全般的に原則禁止された[64]。ごみの野焼きは、煙害・火災などの問題に加え、特にダイオキシン類に代表される有害物質の発生が問題とされる[65][66]。
農業分野では、事業系一般廃棄物にあたる作物残渣の野焼きが焼却禁止の例外に含まれているが、これは軽微かつやむを得ない場合の特例であり、原則的にごみの野焼きは禁止されている(詳しくは#法規制を参照)。特に産業廃棄物に指定される廃ビニールなど廃プラスチック類は少量でも汚染が深刻であり、災害非常時でも野焼きしてはならないものとされている[64][66]。農業におけるこうしたごみの野焼きは、大気汚染や土壌汚染のほか、農業用水の汚染が懸念される場合もある[67]。
環境省の「産業廃棄物行政組織等調査報告書」によれば、日本国内の産業廃棄物の野焼きは1990年代後半から大幅に減少し、廃プラスチック類の野焼きの量は1996年度には3,446トン、2015年度には19トン、木くずの野焼きの量は1996年度には59,916トン、2015年度には831トンである[68]。警察庁の「警察白書」ほか統計によれば、廃棄物処理法の焼却禁止違反(不法焼却)による検挙件数は、2018年には2,802件(うち2千件以上が一般廃棄物事犯[69])であり、同法違反による検挙全体の約51%を占める[70]。
周囲への被害
公害
- 市民からの苦情
総務省の「平成30年度公害苦情調査」によれば、野焼きは日本国内で最も多い公害苦情の発生原因であり、全体の18.3%(12,243件)を占める[71]。
大気汚染
日本国内における微小粒子状物質(PM2.5)の汚染は中国などからの越境汚染が大きく寄与していたが、2018年の時点ですでにそれらの影響は小さくなっており、むしろ相対的に国内の野焼きが大きな発生源であると認識されている。野焼きはPM2.5を発生させるにも関わらず、廃棄物処理法の特別な例外となっており野放し状態となっている。特に老人の農家は野焼きをよく行うと言われる。[72]
2015年から環境省のPM2.5政策パッケージにおいて排出抑制が検討されるようになった[73][74][75]。環境省は、野焼きが地域のPM2.5濃度に与える影響が高まりやすい気象条件として、弱風や、秋から冬にかけて晴れた日の夜間に形成されやすい逆転層、高湿度を挙げ、こうした条件での野焼きをしないよう求めている[76]。また含水率の高い(未乾燥の)作物残渣はPM2.5の排出量を増加させる[77]。
環境省の「PM2.5等大気汚染物質排出インベントリ」によれば、2015年度の作物残渣の野焼きによるPM2.5一次粒子の推計排出量は約1万3千トンであり、国内排出全体(約12万トン)の約1割を占める[78]。またその他の大気汚染物質として、揮発性有機化合物約1万1千トン、硫黄酸化物約1,300トン、窒素酸化物約8千トン、アンモニア約3,500トン、一酸化炭素約12万トンの年間排出量が推計される(2012年度データ)[13]。
悪臭
環境省の悪臭に関する全国調査では、最も多かったのが野外焼却(野焼き)であり3,223 件(全体の 25.6%)となっている(平成30年度)[79]。2017年の神奈川県横浜市では悪臭苦情の6割が、2018年の福井県では大気汚染苦情の8割、悪臭苦情の6割が野焼きによるものだった[80][81]。
事件、事故
火災
総務省消防庁の「平成30年(1~12月)における火災の状況(確定値)」によれば、火入れは日本国内で6番目の(たばこ、たき火、こんろ、放火、放火の疑いに次ぐ)火災原因であり、全体の4.9%(1,856件、死者18名)を占める[82]。林野火災においては、たき火に次ぐ2番目の原因であり、全体の18.9%(258件)を占める。また、野焼きの火が下草に延焼し、人が炎に巻かれ死亡する事故が度々発生している[83][84][85]。 また、野焼き(火入れ)は山火事を引き起こす原因となっている。平成27年~令和元年の調査では焚き火に次ぐ2位に入っており、国や地方自治体が警告のアナウンスを出している[86][87][88]。
交通事故
野焼きによる大量の煙は車の視界を遮り交通事故を誘発する。岩手県で野焼きの煙が原因で女児が死亡する交通事故が発生し、当該野焼きを行っていた男性は道路法違反で書類送検された[89]。
法規制
森林法
森林法により、森林やその1キロメートル以内の土地で野焼き(法律用語では「火入れ」)を行う場合はその所在地の市町村長の許可を得なければならない[90]。森林法で規制される火入れとは、土地の利用を目的とした面的な焼却をいうが、焼却物を複数箇所に収集しての「寄せ焼き」や、筋状に収集しての「筋焼き」も実質的に火入れとみなされる[91]。
消防法
また、消防法に基づいて地方公共団体が定める火災予防条例により、通例は「火災とまぎらわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為」として消防機関への届出をしなければならない[90][92]。火災警報発令中は同条例の制限に従う必要があり(法22条)、その他火災予防上必要な時には禁止命令などが出される場合もある(法3条)。
廃棄物処理法
田畑などで行われる作物残渣の野焼きは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)において、焼却禁止の例外とされるが、生活環境への影響のいかんにより、直罰規定(行為を罰する規定)と間接罰規定(命令違反を罰する規定)の2段階で規制される。このほか青森県や秋田県など一部の地方公共団体では、条例によって別途に規制を加えている[76]。
- 直罰規定:廃掃法では、原則的に法定基準外の焼却は不法焼却として処罰の対象となるが、例外として「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」や「震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却」にあたる野焼きは罰則になじまない行為として除外される(法16条の2、施行令14条)。例外にあたるには、周辺の生活環境への影響が軽微であることが要件とされるが、具体的な線引きはない[93]。「やむを得ない」の要件も、個別具体的な事情で判断されるが、煙害を伴うため他の方法より公益上有効であることが求められることがある[59]。廃ビニール[64]や家庭ごみ[94]の野焼きは不法焼却にあたる。家庭菜園やレジャー農園はここでの農林業に含まれず、造園業や植木屋などの園芸サービス業は条例により明文的に規制されることがある。
- 間接罰規定:焼却禁止の例外にあたる野焼きも、法定基準外の焼却であるため、生活環境保全上の支障を生じうる行為として、措置命令(法19条の4)などの対象となり、命令違反は処罰の対象となる[95][96][64][97]。ここでの「生活環境」とは環境基本法での定義に準じて「社会通念に従って一般的に理解される生活環境」などをいい、措置命令の発出は「高度の蓋然性や切迫性までは要求されておらず、通常人をして支障の生ずるおそれがあると思わせるに相当な状態をもって足りる」とされる[98]。
- 罰則:平成以降、不法焼却の厳罰化が進められており[99]、未遂罪[100](点火など[101])や、目的罪(収集・運搬)[102]も定められる。不法焼却(未遂を含む)や措置命令違反の罰則は、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方であり[103]、不法焼却に法人がかかわる場合は3億円以下の罰金が法人に併せて科される[104]。不法焼却の目的罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方であり[102]、法人がかかわる場合は300万円以下の罰金が法人に併せて科される[104]。
行政による対応
国
環境省は毎年12月を大気汚染防止推進月間と定めて各種提案を行っている。そのうち1つで野焼きをしないよう求めており[105]、またTwitterの環境省公式アカウントにおいても、野焼き防止の啓発ツイートを行うなどしている[106]。
地方自治体
環境基準と計測
各自治体は空気中のPM2.5等の汚染物質濃度の計測を行っているが、環境省が各自治体に対し野焼き行為についてのアンケートを行ったところ、野焼き等で数値が急上昇した場合、それを欠測値として集計しないという慣例を行っていることが判明した。この結果を受け、環境省はこうした欠測処理を中止し、正確な測定を行うよう各自治体に対し通知を出している [107] [108]。
各自治体の取り組み
- 新潟県
平成5年に「県稲わら等適正処理に関する指導要綱」を発表、推進している。これは稲刈り後に残る作物残渣である「稲わら」を、野焼きするのではなく細かくして土にすき込むというものである。県農産園芸課によれば平成14年には90%以上の農家がすき込みに移行することに成功、現在は県への野焼きに対する苦情はほとんど無くなった[109]。
- 青森県
「稲わらの有効利用の促進及び焼却防止に関する条例」を制定し、稲わらは水田にすき込むなどして有効利用に努めなければならないことが明記されている[110]。
- 富山県
射水市では平成23年から「もみ殻循環プロジェクト」を開始した。米の脱穀後に残る作物残渣である「もみ殻」を燃料として用いるものである。取り出した熱は冬場のイチゴ栽培用のビニールハウスの暖房、焼却灰は肥料にする。廃棄物であるもみ殻が有効活用できるため、他市からの視察も多い[111]。
砺波市では落ち葉やせん定枝の野焼き防止のため、行政による戸別回収サービスの実証実験を開始した。回収された廃棄物はごみ処理センター(清掃工場)へ運ばれる[112]。また、屋敷林で出る枝を粉砕機でチップ化し堆肥にする取り組みが進められている[113]。
- 兵庫県
三田市では野焼き対応を巡って取り締まり対象とする県警側と、容認姿勢を取る三田市側で対立が発生した。三田市オンブズパーソンは三田市に対し批判を展開、市長が謝罪するに至った[114] [115]。三田市オンブズパーソンは稲わらなどの農業廃棄物は一般廃棄物相当であり、行政側が責任を持って回収し、清掃工場に持っていく仕組みを策定することを提案している[116]。
- 秋田県
以下のような包括的な対応を行っている。
- 独自の県公害防止条例を策定し、稲わら焼きを原則禁止
- 10月1日から11月10日の間は、稲わらだけでなく籾殻(含もみ殻くん炭の製造)等も含めた野焼きの全面禁止
- 「稲わら等焼却禁止重点地域」を定め、域内の全農家に「稲わら等焼却防止リーフレット」を配布
- パトロ-ルにより監視・指導を行う
- 稲わら等を焼却している行為者に対し、直ちに焼却を中止するよう指導、勧告を行い、従わない場合は氏名を公表する
- 大気中の浮遊粒子状物質を県内16箇所の測定局で常時監視し、野焼きによる大気汚染を観測したら「稲わらスモッグ注意報」を発令
- 佐賀県
県、JAにより麦わらの野焼きをやめ、すき込みを行うよう呼びかけている[118]。
- 茨城県
那珂市では野焼きによる大気の汚染は新型コロナウイルス感染症の有効な対策である換気の妨げになるとして行わないよう呼びかけている[119]。
- 岡山県
「晴れの国ブルースカイ事業」と題し、環境汚染の小さい農業への転換を推進している。岡山県は大気汚染に悩まされており、全国の環境基準達成率では平成29年、30年と連続で全国最下位であった(平成30年度の環境基準達成率はわずか38.1%)。[120]そこから脱却し、住みやすい岡山県にすることを目標に「晴れの国ブルースカイ事業」を開始した。PM2.5の数値が毎年秋に急上昇するというデータがあり、原因である野焼きに対して次のような対策を実施するものである。
- 稲わら利用状況の把握
- 稲わら分解促進剤の購入への補助金
- 県、市、JAなど関係者で連携推進会議を開催し、情報交換
- 農家に対し、県レベルで全域に新聞広告、チラシ56000枚、ラジオ、講習会などを通じて野焼きの有害性や土作りのやり方を啓発
これら野焼き対策を徹底した結果、2020年度は2019年度と比較して野焼き面積を4割削減することに成功した。[121][122][123][124]
- 埼玉県
焼却処理の代わりに稲わら、麦わらの早期すき込みを推奨し[125][126] 、「腐熟促進剤を散布してすき込み処理」を行った農家に対し補助金を設けている。 [127]
国外
アジア
インドネシア
インドネシアでのプランテーションを目的とした違法野焼きが原因の森林火災・泥炭火災が例年発生しており、しばしば深刻な煙害や越境汚染となり社会問題となっている[128]。特にシンガポールとマレーシアへの越境汚染は深刻な国際問題に発展している[129][130]。
カンボジア
野焼きによる大気汚染が悪化していたが、政府が野焼き禁止令を発し、その結果PM2.5等の汚染物質が低下傾向にある。[131][132]。
タイ
焼き畑による煙害により、国民の健康被害が深刻なレベルに達している。そのためタイ政府は国家規模で対策を打ち出すとしている[133][134]。野焼きの多い地域を野焼き防止重点地域に指定し監視を強化[135]、野焼きを行ったサトウキビ農家に対し補助金を停止する[136]。また作物残渣のサトウキビ葉に対し、タイの製糖業界団体が買取事業を行い、自主規制に努めている[137]。
ベトナム
ハノイの大気汚染は世界最悪レベルとなっており、外出の自粛やマスク着用の推奨など深刻な事態に陥っている。秋冬(乾季)に悪化することが多く、野焼きが主要な原因と見られており、稲わらの焼却および大量のばい煙を発生させる練炭の使用が禁止された。[138] [139] [140] [141] [142]
インド
インドでは作物残渣の野焼きによる煙害が深刻である。ハーバード大学やNASAほかグループの研究によれば、季節によってはデリーの大気汚染の半分は農業の野焼きに起因するといわれる[143]。国際食料政策研究所ほかグループの研究によれば、インド北部では作物残渣の野焼きが急性呼吸器感染症のリスクを3倍に高めており、その経済損失は5年間で約15億ドルと試算される[144]。野焼きの背景には担い手不足と収穫の機械化があり、法律で規制されているが事実上遵守されていない[27][145]。
対策のひとつとしてハッピー・シーダーと呼ばれる不耕起栽培での二毛作のための農機(刈り取りと同時に播種し藁マルチングをおこなう)がオーストラリア国際農業研究センターの事業計画のもと開発され、野焼きの抑制と地力・収益向上が図られている[146][147]。また家具大手のイケアは、藁を製品材料にすることで野焼きを減らす「Better Air Now」という計画を2018年に発表し、インドで開始した[148][149]。マサチューセッツ工科大学発のベンチャー企業タカチャールは、同大で開発された低酸素トレファクション (oxygen-lean torrefaction) 技術の応用により、外部エネルギーを利用せずに低公害で作物残渣を炭化・肥料化可能な、低コスト・移動式の炉を利用した作物残渣買い取り事業を展開し[150]、この取り組みは2021年に第1回アースショット賞の大気浄化部門に選ばれた[151]。
農家から藁を購入して、飼料や土壌改良剤に加工するビジネスも進行している[152]
中国
中国では地方政府により作物残渣の野焼きが禁止されている。かつては違法な野焼きで得られる草木灰肥料に依存する農家が多かったが、2008年から中央政府により作物残渣の有効利用が推進され、大きく改善した[153]。
中東
エジプト
毎年9月になり収穫期を迎えると、籾殻の野焼き(焼き畑)を行うため、黒い煙がカイロを覆い、深刻な被害を出している。籾殻の野焼きが違法になってからも、農家たちは処分コストを自分たちが負担しなくてすむという理由で人目につきにくい夜間に隠れて野焼きを行っている。汚染度はWHOの基準の10倍に達し、2007年には世界銀行はカイロの大気を世界最悪と位置づけた [154] [155]。
レバノン
政府の腐敗により廃棄物が適正処分されず野焼き処理されており、その煙を日常的に吸い込んでいる近隣住民は慢性閉塞性肺疾患、喘息といった呼吸器疾患を訴えている。ヒューマン・ライツ・ウォッチが報告書を提出した [156]。
アフリカ
赤道ギニア
2021年に赤道ギニアの最大都市バタにおいて、作物残渣の野焼きが延焼して軍施設の爆発物に引火・爆発し、少なくとも107人が死亡する事故が発生した[157][158]。
北米
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国の制度では、連邦政府が定める大気浄化法の下、地方公共団体によって植生や植物残渣の野焼きが規制されている[159][160]。地域により例えば、有償を含む許可制や[161]、気象・大気汚染予測に基づく規制[162]、公道・隣接地域との距離や時間帯などの条件が設けられている[163]。
アメリカ疾病予防管理センター (CDC) は2020年、新型コロナウイルス感染症に際して、野焼きが公衆衛生上のリスクを悪化させ、また消防などの公共サービスを逼迫させることから、野焼きの禁止と堆肥化など適正処分の推進を勧奨した[16]。同様の理由から、サウスカロライナ州[164]やアイダホ州[165]といった地域では野焼きが禁止された。
カナダ
マニトバ州の法律では、夜間の作物残渣の野焼きを禁止し、日中は季節による規制期間や許可制を設けている[166]。ブリティッシュコロンビア州は2020年に、大気質の悪化が新型コロナウイルス感染症の悪化につながることを鑑み、被害軽減策として野焼きやキャンプファイヤーを禁止した[167][168]。
南米
ブラジル
ブラジルのアマゾン川流域では、開墾を目的とした野焼きが原因の森林火災が例年数万件発生しており、2019年には過去最多となり国際問題にも発展[169][170]、その後ブラジル政府は野焼きを禁止した[171]。
ヨーロッパ
欧州連合
欧州連合 (EU) 加盟国においては、共通農業政策に基づき、直接支払いにおけるクロスコンプライアンスとして、良好な農業環境条件 (GAEC: Good Agricultural and Environmental Conditions) の順守が定められており、ほとんどの加盟国で作物残渣の野焼きが事実上禁止されている[6]。クロスコンプライアンス審査においては、書類審査に加え、人工衛星画像による野焼き行為の確認などがおこなわれている[172]。
ポーランドやバルト三国のEU加盟に際しては、こうした政策への移行に伴い代替手段の普及が進み、野焼きが5年間で90パーセント削減されたことが報告されている[6]。
イングランドおよびウェールズ
イングランドおよびウェールズの法律では、穀類・豆類・アブラナの作物残渣の野焼きは、教育目的や、法律で定められた病害虫処理、破損したロールベールなどの片付けを除き禁止している[173]。また前述の教育目的・病害虫処理や亜麻の作物残渣の場合は、夜間や土日祝日の野焼きを禁止し、面積や周辺環境、従事者、通知、消火設備、燃焼灰の処分などの条件を設けている。またヒースや草原の野焼きについても、季節、時刻、従事者、設備、通知などの条件や許可制を設けている。
セルビア
セルビアの大気汚染は世界で最も深刻な水準であるが、その一因として違法な作物残渣の野焼きがある[174]。併せて野焼きによる地力低下や、火災、生物多様性への影響が懸念されており、2018年には延焼によって特別自然保護区ツァールスカ・バーラの約880ヘクタールが焼損した[175]。
こうした状況を受け、セルビア政府は国際連合開発計画や地球環境ファシリティなどと共同で野焼き撲滅キャンペーンを実施し、啓発を促すと共に、より厳しい懲罰的政策の方針を掲げている[176][177]。また在セルビア国際連合開発計画は世界保健機関や国際連合児童基金との協力の下、大気質改善のための「14の革新的ソリューション」を公募・採択し、2021年、人工衛星画像および気候データ、モバイルアプリからの通報データを統合・機械学習することで野焼きの位置を準リアルタイムに検出するモニタリングシステムの開発支援を発表した[178]。
オセアニア
オーストラリア
サバナではアボリジニが狩りのためにおこなう小規模な野焼きが5 - 12万年前から続けられている。モザイク状に焼け野が形成されるため、結果的に生物多様性の維持と山火事の延焼抑制に役立っていると考えられている。[179]。一方、野焼きは山火事に対し無力であり、根本原因である気候変動を解決するべきだという意見もあり、また野焼きそのものが山火事の原因になる危険が指摘されている[180]。
注釈
- ^ 地力増進法に基づいて定められる地力増進基本指針では、1997年以降の改正により環境保全型農業の推進が加えられ、作物残渣の堆肥化またはすき込み、廃掃法の遵守、廃棄物資材の利用・加工にあたっての環境保全への配慮を求めている[51]。
- ^ 持続農業法では、有機物の循環など持続性の高い農業生産方式を実践する農業者を認定し、資金支援や都道府県の環境ラベリング制度において優遇措置を設ける。
- ^ 国際連合食糧農業機関(FAO)で示されたGAP原則[52]や農林水産省GAP共通基盤ガイドライン(またその先鞭となった農業環境規範)をはじめ、多くのGAP規範・規準では、作物残渣など副産物の循環的な利用や環境汚染の最小化を求めている[53]。2018年度には環境保全型農業直接支払の要件として国際水準GAPの実施が定められた[54]
出典
- ^ 火入れの許可 | 北海道伊達市 — Mozilla Firefox
- ^ 焚火とは - コトバンク — Mozilla Firefox
- ^ インドネシアを非難
- ^ a b c d e f g h Cassou, Emilie (2018). Agricultural Pollution: Field Burning. World Bank. hdl:10986/29504
- ^ a b “Open agricultural burning”. CCAC. 2019年12月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h Draft guidance document on reduction of emissions from agricultural residue burning (ECE/EB.AIR/2021/5). UNECE. (2021-10-19)
- ^ J.M. Suttie, S.G. Reynolds and C. Batello, ed (2005). Grassland of the world. Plant Production and Protection Series No. 34. FAO
- ^ “Agricultural Burning Policy”. USDA (1999年11月10日). 2019年12月28日閲覧。
- ^ “How to practice Integrated Pest Management”. Sustainable Crop Production Intensification. FAO. 2019年12月25日閲覧。
- ^ 焦点:まるで「ガス室」、最悪のインド大気汚染が放置される訳
- ^ 伏見暁洋 (2018-2). “特集 化学物質曝露の包括的・網羅的把握に向けて 最近の大気中PM2.5の起源と稲わら等の野焼きの影響”. 国立環境研究所ニュース (国立環境研究所) 36 (6) .
- ^ 北畠茂、対馬典子、野澤直史「青森県内における稲わら焼却による大気汚染状況について」『全国環境研会誌』第44巻第2号、全国環境研協議会、2019年、10-15頁。
- ^ a b 森川多津子「PM2.5排出インベトリの最新状況と課題」『大気環境学会誌』第52巻第3号、大気環境学会、2017年、A74-A78、doi:10.11298/taiki.52.A74。
- ^ 茶谷聡、高見昭憲 編『未規制燃焼由来粒子状物質の動態解明と毒性評価』国立環境研究所〈国立環境研究所研究プロジェクト報告第133号〉、2019年2月28日 。
- ^ Burning Agricultural Waste: A Source of Dioxins. Commission for Environmental Cooperation. (2014)
- ^ a b “Open Burning during the COVID-19 Pandemic”. Centers for Disease Control and Prevention (2020年6月16日). 2020年11月9日閲覧。
- ^ a b c “Toxic blaze: the true cost of crop burning”. UNEP (2021年8月16日). 2021年11月14日閲覧。
- ^ 萱場広之「2 稲作地域における環境因子と気管支喘息 : 穀物粉塵と野焼きを中心に(化学物質過敏症の診断・治療と問題点)」『アレルギー』第53巻第2号、日本アレルギー学会、2004年、224頁、doi:10.15036/arerugi.53.224_1、ISSN 0021-4884、NAID 110002432669。
- ^ “寿命を縮める大気汚染”. ナショナルジオグラフィック日本語版. 日経ナショナルジオグラフィック (2021年3月26日). 2021年10月23日閲覧。
- ^ “森林火災のPM2.5で新型コロナの死者が大幅増、米研究”. ナショナルジオグラフィック日本語版. 日経ナショナルジオグラフィック (2021年8月18日). 2021年10月23日閲覧。
- ^ PM2.5で新型コロナ感染しやすく 京大がマウス実験
- ^ 大気汚染が新型コロナ感染症の発症、重症化をきたすメカニズムの一端を解明 -PM2.5が新型コロナウイルスの細胞侵入口を拡大する-
- ^ 新型コロナ禍で「野焼き」やめて 換気必要なのに「煙が家に入ってくる」
- ^ 世界最悪、インドの大気汚染 秋・冬に悪化 コロナ感染加速や重症化の恐れ
- ^ Mohammad Esmaeil Asadi (2019年10月2日). “Open burning is a needless way to lose money”. Bangkok Post (Bangkok Post)
- ^ “Stubble Burning”. State of Victoria. 2019年12月26日閲覧。
- ^ a b Crop Residues Management with Conservation Agriculture: Potential, Constraints and Policy Needs. Indian Agricultural Research Institute. (2012)
- ^ 籾殻ガス化発電技術 - 農林水産省
- ^ ヤンマー、国内初の「もみ殻」ガス化発電、実証を開始
- ^ “伊豆の春を告げる大室山の山焼き”. 大室山リフト. 2019年6月27日閲覧。
- ^ “田んぼに焼死体で捜査 滋賀・竜王町”. 産経新聞 (2019年6月27日). 2019年6月27日閲覧。
- ^ “河原植物を守れ 熊谷の荒川河川敷で「火入れ”. 朝日新聞デジタル (2019年1月20日). 2019年6月27日閲覧。
- ^ 大窪久美子 (2002). “日本の半自然草地における生物多様性研究の現状”. 日本草地学会誌 (日本草地学会) 48 (3): 268-276. doi:10.14941/grass.48.268_1.
- ^ 吉田光宏 (2011-3). “生物多様性を豊かにする日本の牛放牧”. ARDEC (日本水土総合研究所) 44 .
- ^ 津田智 (2001). “植生管理の手法としての火入れ”. 環境技術 (環境技術学会) 30 (6): 450-453. doi:10.5956/jriet.30.450.
- ^ 加茂綱嗣「論文の紹介: 植物の灰や煙に含まれる化学物質が種子の発芽と幼植物の生長を促進する」『農業と環境』第163号、農業環境技術研究所、2013年11月1日。
- ^ 「環境省の取組み(国立公園) 6 阿蘇 二次的草原の再生」『自然との共生を目指して』環境省、2009年3月 。
- ^ 「第6章 土地利用、土地利用変化及び林業分野」『日本国温室効果ガスインベントリ報告書』国立環境研究所、2019年 。
- ^ 高橋佳孝「阿蘇における野焼き(burning)と草原維持の特殊性」『2016年度 年次報告書』龍谷大学里山学研究センター、2017年、293-300頁 。
- ^ 『季語・季題辞典』日外アソシエーツ 。
- ^ a b “施肥コストの低減 / 稲わら・有機物”. 全国農業協同組合連合会. 2019年10月21日閲覧。
- ^ a b 上出順一「東北地方における稲わら処理の現状と問題点」『農業機械学会誌』第38巻第3号、農業食料工学会、1976年、418-422頁、doi:10.11357/jsam1937.38.3_418。
- ^ 富山一, 菅田誠治, 森野悠, 早崎将光, 小熊宏之, 井手玲子, 日下博幸, 高見昭憲, 田邊潔, 茶谷聡, 小林伸治, 藤谷雄二, 古山昭子, 佐藤圭, 伏見暁洋, 近藤美則「野焼き発生の時間分布調査および稲作残渣野焼きによる大気汚染物質排出量の日変動推計」『大気環境学会誌』第52巻第4号、大気環境学会、2017年、105-117頁、doi:10.11298/taiki.52.105、ISSN 1341-4178、NAID 130006077661。
- ^ a b “【フカボリ】わら焼き 農家ジレンマ”. Web東奥. 東奥日報社 (2019年10月27日). 2019年12月23日閲覧。
- ^ 野焼き行為は、迷惑行為
- ^ “農作業安全の啓発資料 / 野焼き”. 農林水産省. 2019年10月21日閲覧。
- ^ 「稲わら焼却は「新津米」のブランドを落とします!」『広報にいつ』第963号、新津市、2003年9月1日、8頁。
- ^ “稲作農家のみなさまへ -稲わらは燃やさずすき込みましょう!-”. 稲わらを有効活用しましょう!!. 会津若松市/福島県 (2015年). 2019年10月27日閲覧。
- ^ 須藤弘毅、米村由美子、藤澤春樹、清藤文仁「「わら焼き」が水稲収量及び地力へもたらす影響」『東北農業研究』第68号、東北農業試験研究協議会、2015年12月、33-34頁。
- ^ “日本一健康な土づくり推進プラン”. 青森県. p. 4 (2007年). 2019年10月22日閲覧。 “県では、稲わらの焼却が社会問題化したことや、化学肥料への過度な依存により水田の地力低下が懸念されたことから、昭和50年度から総合的な土づくり運動を展開してきました。”
- ^ 志賀弘行「土づくりと土壌物理性」『土壌の物理性』第120巻、土壌物理学会、2012年、1-2頁、doi:10.34467/jssoilphysics.120.0_1、ISSN 0387-6012、NAID 130008078756。
- ^ Anne-Sophie Poisot; Andrew Speedy; Eric Kueneman (2007). Good Agricultural Practices - a working concept. FAO GAP working paper series 5. FAO. p. 26 . "Farming produces by-products, some of which are potential pollutants of soil, water, or air. The production of these by-products should be minimized while others are resources that can be reused or recycled."
- ^ “GAP用語集 野焼き(Burn off in a field)”. 日本生産者GAP協会. 2019年9月3日閲覧。
- ^ “平成30年度予算概算決定 環境保全型農業直接支払交付金”. 農林水産省. 2019年10月24日閲覧。
- ^ a b “第181回国会 質問番号30 稲わら焼きに関する質問主意書”. 衆議院 (2012年11月16日). 2020年10月18日閲覧。
- ^ 「第5章 農業分野」『日本国温室効果ガスインベントリ報告書』国立環境研究所、2019年 。
- ^ 「3. 農業分野 3.F 農作物残渣の野焼き 3.F.1 穀物」『温室効果ガス吸収量の算定と報告〜温室効果ガスインベントリ等関連情報〜 温室効果ガス排出・吸収量の算定方法』環境省、2018年 。
- ^ 中川三緒 (2018年9月14日). “【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み”. 産経ニュース. 産経新聞社. 2019年12月23日閲覧。
- ^ a b 橋本尚士 (2001年8月9日). “提言/主張 ストップ!!稲わら焼却!!”. 新潟県小児科医会ウェブサイト. 2019年10月23日閲覧。
- ^ 「第5 豊かな食生活とうるおいの提供 1 環境保全型農業の取組 (2) 有機物の施用状況」『平成30年度版 新潟県の農林水産業(資料編:農業)』新潟県、2019年8月、105頁 。
- ^ 田舎の民家、ドラム缶に家庭ゴミを入れて焼却処分、煙モクモク…法的に問題ない?
- ^ 不法焼却禁止について
- ^ 『日本の廃棄物処理の歴史と現状』環境省、2014年2月 。
- ^ a b c d 『平成12年9月28日衛環78号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律の一部を改正する法律の施行について』厚生省、2000年9月28日 。
- ^ 松神秀徳「循環・廃棄物の豆知識: 野焼きの煙」『環環』、国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター、2015年1月。
- ^ a b “技術資料1-24 住民等への情報伝達・発信等(災害時)”. 災害廃棄物対策指針情報ウェブサイト. 環境省 (2014年3月31日). 2020年4月17日閲覧。
- ^ “農業ビニールの「野焼き」に佐賀市が警鐘”. 佐賀新聞LIVE (2017年7月4日). 2020年4月17日閲覧。
- ^ 「5.C.2 野焼き(廃棄物)(Open burning of waste)」『温室効果ガス吸収量の算定と報告〜温室効果ガスインベントリ等関連情報〜 温室効果ガス排出・吸収量の算定方法』環境省、2019年 。
- ^ 『令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について』警察庁、2020年、31頁 。"平30 検挙事件数 廃棄物事犯 うち産業廃棄物事犯:747件"。
- ^ 「統計資料: 2-39 廃棄物処理法違反の態様別検挙状況(平成30年)」『令和元年版 警察白書』警察庁、2019年 。
- ^ 『平成30年度公害苦情調査』総務省、2019年12月 。
- ^ PM2・5、野焼きも影響か 中国の濃度は低下傾向 条例で禁止する自治体も|【西日本新聞me】 — Mozilla Firefox
- ^ 遠藤真弘「PM2.5による大気汚染の現状と対策」『調査と情報』第866号、国立国会図書館調査及び立法考査局、2015年4月、巻頭1p,1-10、ISSN 1349-3019、NAID 40020437467、NDLJP:9275297。
- ^ 瀧口博明 (2016-5). “特集「大気汚染の現状と対策」”. ちょうせい (総務省公害等調整委員会) (85): 20-25 .
- ^ “PM2.5、野焼きも影響か 中国の濃度は低下傾向 条例で禁止する自治体も”. 西日本新聞 (西日本新聞社). (2018年8月22日)
- ^ a b 『平成30年3月27日環水大大発第1803273号 微小粒子状物質(PM2.5)と野焼き行為との関連について』環境省、2018年3月27日 。
- ^ 森野悠、高見昭憲 編『都市大気における粒子状物質削減のための動態解明と化学組成分析に基づく毒性・健康影響の評価』国立環境研究所〈国立環境研究所研究プロジェクト報告第109号〉、2015年9月30日 。
- ^ “PM2.5等大気汚染物質排出インベントリの整備状況”. 微小粒子状物質等専門委員会(第9回)議事次第・配付資料. 環境省 (2019年). 2019年11月17日閲覧。
- ^ 平成30年度悪臭防止法施行状況調査について (概要)
- ^ 煙や悪臭の苦情増加
- ^ [6 野焼き苦情増加「大気汚染」「悪臭」 福井県内、法律で禁止も除外ケース | 社会,政治・行政 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE — Mozilla Firefox]
- ^ 『平成30年(1~12月)における火災の状況(確定値)』総務省、2019年9月6日 。
- ^ 野焼きに巻き込まれ男児死亡
- ^ 演習場で野焼き延焼
- ^ 田んぼで人が燃えている
- ^ [1]
- ^ 令和2年全国山火事予防運動の実施について:林野庁 www.rinya.maff.go.jp > press > hogo
- ^ 山火事の直接的な原因にはどのようなものがあるの?
- ^ 野焼きで車の視界妨げた疑い、書類送検 2歳児が事故死
- ^ a b 「2章 火入れに必要な諸手続き」『火入れ作業の手引き』森林火災対策協会、2011年、13-16頁 。
- ^ “林野火災対策”. 岩手県 (2019年3月25日). 2019年10月21日閲覧。
- ^ 「第四五条」『昭和36年11月22日自消甲予発第73号 火災予防条例(例)について(改正平成25年3月27日消防予第122号)』総務省消防庁、2013年3月27日 。
- ^ “これから始めるGAP”. 農林水産省. p. 23 (2018年4月1日). 2019年10月21日閲覧。
- ^ 「違法な焼却はやめましょう 2. 違法焼却の事例(※罰金刑が科せられた事例)」『広報しょうばら』第171号、庄原市、2019年6月、15頁“家庭などから排出された廃棄物(事例としては「紙類」「段ボール」「雑誌」「弁当ガラ」「ポリ袋」「包装箱」「板切れ」「杭」「丸太」「木片」「稲木」「棚」「机」「じゅうたん」「その他のごみ」など)を、空地や田畑で焼却した行為が、罰則の対象となります。”
- ^ 長岡文明 (2015年5月20日). “「環境省の通知の背景と内容解説」シリーズ 第14回 野焼きについて”. リヴァックス. 2019年9月3日閲覧。
- ^ “群馬県の生活環境を保全する条例のQ&A”. 群馬県 (2011年3月1日). 2019年9月3日閲覧。 “廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条の2では、廃棄物処理基準に従わない廃棄物の焼却を禁止していますが、「災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な焼却」及び「農業、林業又は漁業を営むためやむを得ないものとして行われる焼却」については、焼却禁止の例外(同法第16条の2、同法施行令第14条)とされています。しかし、これらの行為であっても処理基準を遵守しない焼却として、同法第19条の3の改善命令、第19条の4第1項の措置命令や行政指導の対象となります(平成12年9月28日付衛環第78号厚生省環境整備課長通知)。”
- ^ 『平成28年1月21日環境省告示第7号 廃掃法基本方針』環境省、2016年1月21日、20頁 。"廃棄物の処理基準に適合しない処理に対しては、一般廃棄物については市町村、産業廃棄物については都道府県において、生活環境の保全上の支障が生じることを未然に防止するため、行政命令を適正かつ迅速に行うとともに、行政命令違反、不法投棄、焼却禁止違反等の行為については、都道府県警察との連携を強化し、厳正に対処しなければならない。"。
- ^ 「平成30年3月30日環循規発第18033028号 行政処分の指針について(通知)」『平成29年改正廃棄物処理法について』、環境省、29頁、2018年3月30日 。
- ^ “野外焼却は禁止です!”. 大分市 (2014年9月12日). 2019年11月6日閲覧。
- ^ 廃掃法 - e-Gov法令検索 25条第2項
- ^ 『平成30年3月30日環循規発第18033028号 行政処分の指針について(通知)』環境省、2018年3月30日、44頁 。"行為者が廃棄物を燃焼させるべく、焼却行為に着手した時点で、不法焼却の実行の着手があったものとして、不法焼却未遂罪に該当するものと考えられること。具体的な行為類型としては、直接廃棄物に点火したが廃棄物が独立して燃焼するに至らなかった場合、廃棄物を燃焼する目的で媒介物に着火した場合、焼却する目的で廃棄物にガソリンを散布した場合等が考えられること。"。
- ^ a b 廃掃法 - e-Gov法令検索 26条第1項第6号
- ^ 廃掃法 - e-Gov法令検索 25条
- ^ a b 廃掃法 - e-Gov法令検索 32条
- ^ 環境省_澄んだ空で満天の星を見よう~12月は大気汚染防止推進月間です。~
- ^ 稲わらなどの野焼きはPM2.5濃度の上昇の原因になる場合があるので、やめましょう。法律でも原則禁止になっています! 環境省
- ^ 環境省 微小粒子状物質(PM2.5)と野焼き行為との関連について(通知)
- ^ 環境省 野焼きの実施状況に関するアンケート調査結果
- ^ 【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み
- ^ 不法投棄と野焼きについて - 五所川原市 — Mozilla Firefox
- ^ 【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み
- ^ 屋敷林のせん定枝を戸別回収 砺波市が野焼き防止と景観保全へ実証実験
- ^ 粉砕機で堆肥に 砺波・高波振興会 屋敷林の枝をチップ化
- ^ 【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み
- ^ 三田市 野焼き問題で三田署と見解対立 市長陳謝
- ^ 三田市オンブズパーソン www.city.sanda.lg.jp > soumu > documents
- ^ STOP!稲わら焼き ~稲わらやもみ殻は焼かずに有効活用を~
- ^ 麦わら野焼きやめて JAや県、すき込み推奨 「わらは貴重な有機資源」
- ^ 野焼きは法律で禁止されています
- ^ 岡山県が 全国ワースト1位 でした
- ^ 晴れの国ブルースカイ事業 - 岡山県ホームページ(環境管理課
- ^ 晴れの国ブルースカイ事業について
- ^ 稲わら野焼き面積 5市町で4割減 岡山県調査 PM2・5濃度に影響:山陽新聞デジタル|さんデジ — Mozilla Firefox
- ^ 晴れの国ブルースカイ事業
- ^ 稲わらの早期秋すき込みを行いましょう! - 埼玉県 — Mozilla Firefox
- ^ わらは燃やさず有効活用を:熊谷市ホームページ — Mozilla Firefox
- ^ 農業に伴う野焼き/幸手市
- ^ 森浩 (2019年10月9日). “【アジア見聞録】「火星のような赤い空」それでもインドネシアの森林火災はなくならない”. 産経ニュース (産経新聞社) 2019年12月23日閲覧。
- ^ シンガポール、野焼きの煙害で全校休校に
- ^ インドネシアで煙害深刻、乳児ら死亡 周辺国も巻き添え
- ^ 国内の大気汚染、先週末から改善傾向
- ^ 野焼き禁止令、大気汚染悪化防止で
- ^ 大気汚染、焼き畑の改善必至
- ^ 大気汚染の悪化に警戒続く 健康対策費増加、学校に清浄機も
- ^ 農業省、野焼き防止重点地域に844郡を指定
- ^ サトウキビ補助金、焼き畑農家への支給停止
- ^ サトウキビ葉の買取り開始、PM2.5削減へ
- ^ ハノイ:練炭使用と稲わらの焼却禁止へ、大気汚染対策で [社会 - VIETJOベトナムニュース — Mozilla Firefox]
- ^ 深刻な大気汚染が続くハノイ、早朝と夕方の外出自粛を要請 [社会 - VIETJOベトナムニュース — Mozilla Firefox]
- ^ ハノイ:世界最悪の大気汚染都市に [社会 - VIETJOベトナムニュース — Mozilla Firefox]
- ^ ハノイの大気汚染は世界ワースト2位?:朝日新聞GLOBE+ — Mozilla Firefox
- ^ ハノイの大気汚染が悪化、当局が注意喚起 - NNA ASIA・ベトナム・マクロ・統計・その他経済 — Mozilla Firefox
- ^ “Stubble burning doubles Delhi pollution: Harvard study”. livemint. HT Media (2018年4月3日). 2019年12月29日閲覧。
- ^ “NEW STUDY: Air pollution from India’s stubble burning leads to USD 1.5 billion economic losses, poses significant health risk”. IFPRI (2019年3月4日). 2020年4月27日閲覧。
- ^ Jitendra; Shreeshan Venkatesh; Ishan Kukreti; Kundan Pandey; Deepanwita Gita Niyogi; Polash Mukerjee (2017-6-2), “India's burning issue of crop burning takes a new turn”, Down To Earth (Down To Earth) 2019年12月29日閲覧。
- ^ Iain Marlow (2019年2月2日). “「これは苦しい戦いだ」 世界最悪の大気汚染に立ち向かうインド”. SankeiBiz/ブルームバーグ. 2019年12月24日閲覧。
- ^ “Happy Seeder can reduce air pollution and greenhouse gas emissions while making profits for farmers”. CIMMYT (2019年8月9日). 2019年12月24日閲覧。
- ^ “【国際】イケア、稲わらを製品にリサイクル開始。大気汚染防止狙い。まずはインドから”. Sustainable Japan. ニューラル (2018年11月17日). 2019年12月24日閲覧。
- ^ “India is burning––here’s how to stop it”. CCAC (2019年11月11日). 2019年12月24日閲覧。
- ^ “Rethinking Biomass”. UNFCCC (2021年6月18日). 2021年11月3日閲覧。
- ^ “ウィリアム英王子創設の環境賞、コスタリカやインド企業が受賞”. AFPBB News. AFP (2021年10月18日). 2021年11月3日閲覧。
- ^ 藁を燃やさず燃料に加工してインドの大気を救う|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト — Mozilla Firefox
- ^ 張平 (2012年2月3日). “中国「十二五」農作物残茎総合利用目標”. 日本エネルギー経済研究所. 2019年12月26日閲覧。
- ^ A black cloud over Cairo | Earthdata — Mozilla Firefox
- ^ 収穫後の野焼きは環境汚染の原因 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News — Mozilla Firefox
- ^ レバノン:廃棄物問題が公衆衛生リスクに | Human Rights Watch — Mozilla Firefox
- ^ “Equatorial Guinea: Bata Explosions - Mar 2021”. ReliefWeb. UN OCHA. 2021年10月21日閲覧。
- ^ “Equatorial Guinea: Bata Explosions Emergency and Recovery Plan”. ReliefWeb. UN OCHA (2021年6月). 2021年10月21日閲覧。
- ^ “Agriculture and Air Quality”. Environmental Protection Agency. 2020年11月10日閲覧。
- ^ “Chapter 16 - Open Burning”. Area Sources and Area Source Method Abstracts. EIIP Technical Report Series Volume 3. Environmental Protection Agency. (2001)
- ^ “Open Burning Permits”. Montana Department of Environmental Quality. 2020年11月10日閲覧。
- ^ Smoke management guidelines for vegetative debris burning for forestry, agriculture, and wildlife purposes in the State of South Carolina. South Carolina Forestry Commission. (2006). hdl:10827/7375
- ^ “Learn Before You Burn”. South Carolina Department of Health and Environmental Control. 2020年11月10日閲覧。
- ^ Dal Kalsi (2020年4月8日). “State Forester's Burning Ban in effect for all SC counties until further notice”. FOX Carolina. Meredith Corporation. 2020年5月3日閲覧。
- ^ “Idaho officials enacts voluntary burn ban amid respiratory concerns during COVID-19”. IdahoNews. Sinclair Broadcast Group (2020年4月14日). 2020年5月3日閲覧。
- ^ “Manitoba's Controlled Crop Residue Burning Program”. Province of Manitoba. 2019年12月24日閲覧。
- ^ Beth Gardiner, 三枝小夜子(訳) (2020年4月11日). “新型コロナの死亡率、大気汚染で悪化と判明、研究”. ナショナルジオグラフィック. 日経ナショナルジオグラフィック. p. 3. 2020年4月15日閲覧。
- ^ Jennifer Smith (2020年3月26日). “Increased coronavirus cases spark B.C.-wide burning restrictions”. Victoria News. Black Press Group. 2020年4月15日閲覧。
- ^ “国際報道2019 広がる森林火災 アマゾンで何が!!”. 日本放送協会 (2019年9月25日). 2019年12月23日閲覧。
- ^ 知恵蔵. アマゾン森林火災. コトバンクより2020年7月11日閲覧。
- ^ ブラジル政府、アマゾン熱帯雨林での野焼き禁止
- ^ “EUにおけるGAP普及・支援事例 イタリアの取り組み”. 農研機構. 2021年10月21日閲覧。
- ^ Daniel Greenberg (2017年10月27日). “Straw burning”. Law Wales. Welsh Government. 2019年12月24日閲覧。
- ^ Zorica Korać (2021年7月26日). “Links Between Air Pollution and COVID-19”. UNDP Serbia. 2021年10月20日閲覧。
- ^ “НЕ ПАЛИ СТРЊИКУ!”. セルビア環境保護省. 2021年10月20日閲覧。
- ^ “Не палите стрњику, не играјте се ватром”. Politika. Politika (2019年9月5日). 2021年10月20日閲覧。
- ^ “Launch of the campaign - Do not burn the stubble”. UNDP/GEF (2020年8月21日). 2021年10月20日閲覧。
- ^ “14 innovative solutions for better air quality in Serbia presented”. UNDP Serbia (2021年3月19日). 2021年10月20日閲覧。
- ^ “オーストラリア北部アーネムランドの「野焼き」による景観管理”. 里なび. 環境省. 2019年12月23日閲覧。
- ^ 【有為転変】第139回 山火事をどう抑える?
関連項目
外部リンク
- FAOSTAT / Data / Burning - Savanna - 全世界のサバンナ、灌木地、草原の野焼きによる温室効果ガス排出データ(国際連合食糧農業機関)
- FAOSTAT / Data / Burning - Crop Residues - 全世界の作物残渣の野焼きによる温室効果ガス排出データ(国際連合食糧農業機関)