見える化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search

見える化(みえるか)とは、もともと、製造現場で故障工程が分かる赤ランプを皆が見える表示盤に即時点灯させる運動からはじまり、営業、経営といった企業活動においてデータから得られる問題を客観的に把握しやすい指標、数表、グラフなどにして組織に共通認識させることをいうようになった。

その後、IT(情報技術)における可視化技術の普及につれて、可視化できる分野や能力が格段に広がった結果、この語は可視化と同様に解釈されることも増え、ビジネス以外にも「見える化」という言葉が用いられるようになった。

ただ、「見える化」という言葉は「可視化」と違って国語として気持ちが悪いために、人々の耳目を引く効果はあっても、あえて「可視化」と言い換える人々もいる。

トヨタにおける原義[編集]

トヨタ自動車が、「見える化」という言葉を社内に浸透させ、改善活動の中で活用していたことが有名である。それに触れている社長年頭所感[1]の英訳を見ると「identifying problems and bringing them to the foreground」とある[2]。ここから、見える化の眼目は、現場のよく分からない闇の中から諸問題を摘出してパッと明るみに出すこと、という感じが読みとれる。

トヨタ生産方式では工場の生産ラインで作業工程を横軸とし、工程異常、品質チェック必要、処置中などの状態ランプを縦軸とするアンドンと呼ぶ表示パネルを設けている。人が紐またはボタンで赤ランプを点灯させることで、すぐにラインが止まり、管理者や関係者が認識し、しかるべき要員がすぐ対応できる。アンドンは見える化のためのシンプルで強力な道具であり、世界中に広まった[3]

ビジネスにおける意味[編集]

見える化とは、製造、営業、経営など現場の問題の早期発見・解決・予防に役立てるために、対象作業についての情報を表現し組織内で共有させることをいう。

業種により適用方法は異なるが、一般的には問題や課題を認識するために利用される。また、発生した特定の問題に対して解決策を講じるために、問題点の正確な把握を目的として見える化を行うこともある。

横浜信一氏の記事[4]などによれば、以下のように、各部門での見える化に意味がある。

  1. 収益、経費、投資のどこに問題があるかといった、経営の見える化
  2. 顧客層別の製品収益の分析による、戦略の見える化
  3. 物またはサービスの流れのどこが停滞しどこに無駄があるかの、プロセスの見える化
  4. 稼働率など、設備の見える化
  5. 人の活用状況など、人材の見える化
  6. ハードウェア、ソフトウェア、データなど、ITの見える化

ITで高度化された見える化[編集]

ITインフラの整備により、電子データとして蓄積された業務データをより簡単に、より高度に抽出・加工して、本質がよりはやく理解できる表現が可能になってきた。

・数字・グラフにする可視化が典型的である。さらには赤ランプやブザーをはじめによる体感認識を用いた可視化もある。

情報処理分野では早くから研究開発分野のひとつに可視化があった。ソフトウェア開発・運用におけるシステム動作や通信の可視化や、いろいろな立場の多数の人によって進められるシステム開発プロジェクトの進捗状況や成果物の可視化など、多くの技術が開発されてきている。そうした可視化で、場合により見える化と呼ばれているものがある。

年次データをグラフにするようなのんびりした仕組みだけでは効果が薄い。近年は、ITの力を借りて組織内外の活動をほぼリアルタイムに監視して、問題の解決や予防策の実施を迅速化する方向へと、取組みが進んでいる。

ネットワークで接続された大量のセンサーなどのIoT(Internet of Things)デバイスや、検索エンジンやPOSデータ、メール、アンケート、SNS発言、巨大データベースなどからの大量のデータを、BI(Business Intelligence)技術やデータマイニング技術で賢く高速に処理できるようになってきた。処理結果を自動的にあるいはユーザがどんどんカスタマイズして可視化できる。さらに、可視化結果を人が判断する前に、人工知能を搭載したプログラムが自動的に学習や判断を行って、必要なアクションを提案したり実行する方向へと、高度化しつつある。

営業部門での見える化[編集]

製造分野からはじまった見える化は営業分野にも広がった。 販売会社における営業の分野の可視化は従来難しく、営業員は手帳に自分の営業に関する情報をとどめがちで、成果は個人の経験や能力に引っぱられていた。近年、クラウド化や低価格化により多くの企業でSFA(営業支援システム)を導入でき恩恵にあずかれるようになった。営業プロセス・商談プロセスの見える化により、隠れていた暗黙知を、見える化することにより形式知化して共有し、組織として機動的で強力な対応をすることが可能になった。

ビジネス以外での広義の見える化[編集]

見える化、イコール、可視化(英 visualization)とシンプルにとらえる向きもあり、有効な情報をとにかく一覧できるようにしよう、公開しよう、といった意味にも「見える化」が使われることがある。

医療分野を例に取ると、「治療後5年後生存率」といった診療の質の見える化、医療過誤の見える化、医療費・診療報酬の見える化、診療報酬地域間差異事例の見える化、医療研究費配分の見える化、治療法や患者の会の情報がマスコミに取り上げられることによる見える化、病床必要数の見える化など、さまざまな場面で使われている。

見える化で陥りやすい失敗と予防策[編集]

目的意識を持たずに「流行っている」「何となく効果がありそう」で見える化を行っても、現場に負担を強いてリソースを消費するだけで、成果が上がらないことが多い。目的を持ったうえで「その目的のためにどの作業工程の何を見える化し、その結果からどのような対策を打つか」までを考えてから始めることが望ましい[4]

また、業務の今まで把握されていなかった知られざる部分を見える化によって把握し、改善を講じるということは、言い換えると「今までの業務のやり方は駄目だった」という指摘を勇気をもって行い、影響を恐れずに検証して、共通認識にまで広めることでもある。そのため、関係者間で事前に十分調整してから実行しないと、見解の相違が壁になるなどして円滑に改善に進めなくなる恐れがある[4]

見える化と測る化[編集]

ITプロジェクトにおいて、情報の外部への見える化だけでなく、その“進化形である”測る化が、成功のために必要である、とも提唱されている[5]。「測る化」とは、品質、コスト、納期そしてスコープというプロジェクト状態の数値化と監視である。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 2006年年頭所感 - トヨタ Global Newsroom
  2. ^ TOYOTA: News Releases - Internet Archive
  3. ^ 目で見る管理とアンドン【トヨタ生産方式基礎講座 中級編:第8章】 - カイゼンベース
  4. ^ a b c 横浜信一「ITによる経営の「見える化」がパフォーマンスを高める」日経ビジネスオンライン日経BP、2008年6月2日付配信
  5. ^ 藤貫美佐 『変化に強い計画・問題発見の技術 プロジェクトの「測る化」』 日経BP社、2017年9月14日ISBN 978-4822259662

参考文献[編集]


関連項目[編集]