PDCAサイクル

PDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)とは品質管理など業務管理における継続的な改善方法。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価・原因分析)→ Act(改善)の4段階を繰り返して業務を継続的に改善する方法。主に日本で使われている[注 1]。AをActionとする場合もある[1]。
PDCAを提唱したと言われるデミングは、CheckはHold Backという停止を意味することから好ましくないと晩年まで主張していた。PDCAはシューハート・サイクル(Shewhart Cycle)またはデミング・ホイール(Deming Wheel)とは関係がないとも証言をしている。没年には、CheckをStudy(研究)に置き換えたPDSAサイクルとすべきであると主張した[2]。
概要
[編集]
第二次世界大戦後、日本において、統計的品質管理をウォルター・シューハートの弟子エドワーズ・デミングが日本科学技術連盟(日科技連)で講演した。この講演を聞いた日科技連の幹部がPDCAを提唱したとされる[2]。
PDCAサイクルという名称は、サイクルを構成する次の4段階の頭文字をつなげたものである[3]。
- Plan(計画):従来の実績と予測に基づいたブレインストーミングを行い、得たアイデアを取り入れた計画を策定する。
- Do(実行):計画に沿って業務を行う。
- Check(評価・原因分析):業務の実施・成果が計画・目標に沿っているかどうかを評価し、評価結果となった原因を分析する。
- Act(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて対策をする。
この4段階を順次行って1周したら、最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、螺旋を描くように1周ごとに各段階のレベルを向上(スパイラルアップ、spiral up)させて、継続的に業務を改善する。この手順に従う活動は本来的に、統計的品質管理(クオリティ・コントロール、QC)として工場でのQCサークル運動のツールであったが、多くのビジネス関係者がより広い経営活動一般に適用しようとしたため、PDCAの欠点や問題点が指摘されるに至っていた。
この解決のために、戦略の一般理論としてOODAループが提唱されている[4]。トヨタ自動車は伝統的にPDCAサイクルを重視していることが知られているが、原田勉は、同社のいう「PDCAサイクル」は実質的にはOODAループに近いものであると指摘している[5]。またOODAループやその応用としての機略戦理論の考案者であるアメリカ空軍のジョン・ボイド大佐も、PDCAサイクルの例である日本のトヨタ生産方式について、ビジネスにおいて機略戦理論を先取りした例であると述べている[6][注 2]。
Plan(計画)
[編集]計画においては、次のことが重要である。
①目標を明確にすること
目標には、定量目標と定性目標とがあります。目標は、可能な限り定量目標を設定します。すべての目標が数値で表せるわけではありませんが、 定性目標だけでは後で振り返って評価を行うことが難しくなります。
②達成までの期間を明確にすること
目標を実行するため、次の観点からスケジュールを作成します。実施する項目、実施する順序、必要となる工数。[7]
Do(実行)
[編集]Do(実行)の段階は、計画に沿って取組内容を実施します。できるだけ計画どおりに実施します。次のCheck段階で正しく評価できるように、活動記録をできるだけ残しておきます。[7]
Check(評価・原因分析)
[編集]Checkはパフォーマンス評価と原因分析をおこなう段階である[8]。
プロダクトとプロセスの情報を収集し、長期方針・中期目標・仕様・計画を基準として評価をおこない、それを改善行動 (Act) のために報告する[9](参考: インテリジェンス)。Checkは計画通りに実行できたかの単なる確認ではなく、より長期の方針・目標を基準とした方向性のズレを計測して方向修正のためのインテリジェンスを得る段階である(参考: スクラム#検査)。
このCheckの段階で特に重要なのが、なぜその結果になったのかという原因分析である。成功した場合には成功要因を特定し、失敗した場合にはその原因を明確にすることで、次のサイクルにつなげる。[10] この原因分析は、評価そのものよりも重要である。[7]
チェックポイントは、①計画どおり実施したか? 、②計画は妥当だったのか?妥当でなかった場合、どこに、どのような無理があったのか。、 ③成果はあったのか?あった場合、どのような成果か。なかった場合、何が原因か。[7]
Act(改善)
[編集]Action(改善)の段階では、Checkで評価した結果をもとに、問題点を克服する具体的な 改善案を考えます。改善案が複数ある場合は、次のPlanを意識し、優先順位をつけます。うまくいった点はそのまま継続、またはさらに改善にチャレンジしましょう。 うまくいかなかった点は、改善案を検討し、次の計画に反映させましょう。[7]
Checkのための原因分析の方法
[編集]主要な原因分析の方法には、基本型としての「なぜなぜ分析」,過程関連型としての「ImSAFER 」と「RCA(Root Cause Analysis)」と「FTA (Fault Tree Analysis)」,IT特化型の「総合的インシデン ト分析」,リスク評価型の「HAZOP(Hazard and Operability Studies) 」と「FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)」,発展型としての「STAMP(Systems Theoretic Accident Model and Processes)」と「STPA(System Theoretic Process Analysis)」と「CAST(Causal Analysis using STAMP)」が存在する。[11]
なぜなぜ分析
[編集]なぜなぜ分析(なぜなぜぶんせき)とは、ある問題とその問題に対する対策に関して、その問題を引き起こした要因(『なぜ』)を提示し、さらにその要因を引き起こした要因(『なぜ』)を提示することを繰り返すことにより、その問題への対策の効果を検証する手段である。トヨタ生産方式を構成する代表的な手段の一つである。
応用
[編集]PDCAサイクルの考え方は、政策評価、品質マネジメントシステム ISO 9001、環境マネジメントシステム ISO 14001、情報セキュリティマネジメントシステム ISO 27001、個人情報保護マネジメントシステム JIS Q 15001などに用いられている。
労働安全衛生マネジメントシステム ISO 45001でも、上記のISOと同様にPDCAサイクルを活用して危険の元凶となる事柄を特定し、リスクアセスメントを行うことによってリスク低減を継続的に実施している。
関連項目
[編集]- 経営管理論
- 品質管理(quality management)
- プロジェクトマネジメント
- 情報セキュリティマネジメントシステム
- intelligence cycle management
- OODAループ
- 管理過程論 - 経営学における理論のひとつで、PDCAとの類似性がある。
- 改善
- 避難訓練 - 緊急的に避難をする訓練。PDCAサイクルで実践。
- 防災訓練 - 災害予防及び減災対策等の訓練。PDCAサイクルで実践。
- 自主防災組織 - 住民の共助の中核となる組織。避難訓練の実施と検証をPDCAサイクルで実践。
関連書籍
[編集]- 入江, 仁之『「すぐ決まる組織」のつくり方 ー OODAマネジメント』フォレスト出版、2018年。ISBN 978-4-866800-09-7。
- Richards, Chet 著、原田勉 訳『OODA LOOP』東洋経済新報社、2019年(原著2004年)。ISBN 978-4492534090。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ↑ 入江 2018, pp. 024–025.
- 1 2 入江 2018, pp. 063–064.
- ↑ 入江 2018, pp. 023–024.
- ↑ 入江 2018, pp. 066–067.
- ↑ Richards 2019, pp. 329–341.
- 1 2 Richards 2019, pp. 13–18.
- 1 2 3 4 5 “PDCAサイクルを実践して生産性を高めよう”. 厚生労働省 (2020年). 2026年5月1日閲覧。
- ↑ "図2 ... PDCAサイクルとの関係 ... パフォーマンス評価 Check" p.3 of JIS Q9001
- ↑ "方針,目標,要求事項及び計画した活動に照らして,プロセス並びにその結果としての製品及びサービスを監視し,(該当する場合には,必ず)測定し,その結果を報告する。" p.4 of JIS Q9001
- ↑ “PDCAとは?基本から実践まで完全ガイド – ビジネス成果を最大化する継続改善の仕組み”. Basis Point Academy. Ascent Business Consulting株式会社 (2025年7月7日). 2026年5月1日閲覧。
- ↑ “[https://www.ipa.go.jp/archive/files/000071988.pdf 情報処理システム高信頼化 教訓集 IT サービス編 別冊Ⅱ:障害分析手法]”. 独立行政法人情報処理推進機構 (2020年3月16日). 2026年5月2日閲覧。