磯焼け

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

磯焼け(いそやけ)とは、海藻が繁茂し藻場を形成している沿岸海域で、海藻が著しく減少・消失し、海藻が繁茂しなくなる現象を指す。 それに伴って、アワビやサザエ等の生物が減少し、沿岸漁業に大きな打撃を与える。

定義の詳細と変化[編集]

「磯焼け」(rocky-shore denudation)とは、沿岸の岩礁域等で海藻が繁茂する藻場が、本来の海藻の季節的な変化や多少の経年変化の範囲を越えて、海藻の著しい減少・消失状態が続き、海藻が繁茂しなくなる現象を指す。

磯焼け(藻場の減少・消失)により、海藻類(ワカメコンブなど)を採集できなくなる。また、海藻を餌とする生物(アワビサザエなど)や海藻を住処とする多くの生物(カサゴメバルなど)もみられなくなる。磯焼けは沿岸生物の生態系全体に波及し、沿岸の漁獲量が激減して漁村の疲弊にも繋がる。

磯焼けの定義について、かつては人的影響によるの藻場の消失のみを定義とされていたが、近年では前述の藻場の減少や消失、生態系の激変等の現象そのものを指すようになっている。

この定義の「磯焼け」に対応するのが "sea desert"(海の砂漠、海の砂漠化)である。

なお、磯焼けは、必ずしも「サンゴ藻(石灰藻、ピンク色をし、石灰化した固い細胞壁を持つ紅藻類)が海底を覆い、潮下帯の磯全体が白っぽく見える」ことだけを言うのではない。これはむしろ磯焼けの原因となっている現象なのではないかとされている。

磯焼けの研究の歴史[編集]

もともとは伊豆地方の漁民の言葉で「磯焼け」とも「磯枯れ」とも言ったという。「磯焼」自体も、海藻学者の遠藤吉三郎が、静岡県伊豆東海岸のテングサ漁場の荒廃について、20世紀初頭に発表した時の言葉であり、歴史は古い。

磯焼けの原因[編集]

考えられる原因として

などがある。

また、人間活動に伴う原因として

  • 浅場の埋め立てや防波堤の設置による浅場の消失や湾内等の停滞水域の増加
  • 船舶の船底塗料、下水処理場等の残留塩素、環境ホルモン、農薬、除草剤等の人工的な有毒物
  • ダムや堰の造成による海域での浮泥の増加(胞子の基質付着の阻害)
  • 陸域負荷量の慢性的な増加等によって海域の栄養塩濃度が増加(富栄養化)したり、浅場の埋め立てや防波堤等の設置により海水が停滞し、植物プランクトンが恒常的に繁殖しやすくなり、透明度が低下する。これに伴う、日射量の減少による光合成阻害
  • 陸域負荷量の削減等による海域の栄養塩濃度の低下(貧栄養化)に伴う、海藻の成長不良(栄養不足)
  • 地球温暖化による海水温の上昇や海流気候の変化(台風の増加等)

などがある。

なお、一般に河川水(栄養塩)が流入し適度に流れのある沿岸の岩礁域では、豊かな藻場が形成されている場合が多い。

食害を及ぼす生物のうち、アイゴやチヌ等があげられている。特にアイゴは海藻を好んで食べる魚で日本全国の海岸線に生息している。冬になると水温低下により食欲が落ちていたが、近年では冬の海水温の上昇により食欲が落ちなくなり、海藻を食べ尽くしているのではないかと考えられている。

しかし、多くの場合、原因ははっきりと特定されていない。また、水域によって主たる原因も異なる。

対策[編集]

微量の鉄分を含む製鉄スラグには磯焼けへの対策として効果があることが確認されている[1][2][3][4]

外部リンク[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]