不当解雇

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不当解雇(ふとうかいこ)とは、法律上・判例法理上の規定や就業規則労働協約などの取り決めを守らずに使用者により行われた労働契約の解除行為を指す。

実情[編集]

使用者は法律等に定められた要件を満たしていれば基本的に解雇ができるとされているが、使用者自体が法律や労働慣例に詳しくなかったり(過失)、悪意(故意)を持っているなどで、必要な要件を満たさないまま解雇を行なおうとすることも少なくない。現在では、不況に伴いリストラの最終手段としての人員整理において、不当解雇の存在が見逃せなくなっている。近年では、会社側が内部告発をした社員などに対し、逆に社員に言いがかりを付けて懲戒にすること(不当懲戒解雇)も問題になっている。弁明の手続きがあっても、他の懲戒相当ケースと比べ明らかに重い処分をする場合は、不当懲戒処分である社員不平等扱いの可能性が高い。なお、退職強要も法律的な解釈から見れば、労働者の意思を制圧したことの要件が加わることになるので、不当解雇の要素の1つとなる。

不当解雇の救済手段は、法律上明文化されたものや明らかな判断がつく事項は労働基準監督署で扱うことができるが、それ以外の「合理的な理由」というものについては、個別の事案ごとに不当かどうかを検討しなければならず、結局民事的な紛争として解決するしか方法がない。裁判所に訴え出るとなると、それに費やす金銭、時間、人的余裕の少ない労働者にとっては負担が大きいことや、勝訴した場合でも被告である使用者からのケアが充分に行われなかったりする(使用者は与える仕事がないから解雇するのであって、解雇が無効であっても仕事が与えられないことに変わりはない)ことなどで、結局「泣き寝入り」となる労働者が少なくない。訴訟では地位保全の仮処分、賃金仮払いの仮処分を解雇後迅速に申請すれば、3か月以内に決定が下される。本訴の裁定までには数年かかる場合もある。

解決方法[編集]

解雇は専ら使用者の意思で行なわれるので、すべて使用者の裁量によるものである。特に解雇の中の普通解雇に関しては、解雇要件が広義になっているので、社会通念や程度なども千差万別であり、就業規則や労働協約などの取り決めも含めて、解決方法の手段も異なってくる。労働組合が存在する会社では、労働組合を通じて交渉する手段があり、交渉が決裂した場合は、双方の主張を司法で判断すべく裁判となる。労働組合が存在しない場合は、一般労働組合と呼ばれる外部の労働組合に個人で加入するか、個人での交渉か弁護士社会保険労務士などの代理人を通じて行なうこととなる。また、厚生労働省労働局や地方自治体の労働委員会による個別労働紛争の調整など、行政の介入による解決も行われ、成果を挙げている。

労働審判法[編集]

2006年より労働審判法が施行される。内容としては現在の厚生労働省都道府県労働局長による個別紛争解決が司法の場に用いられ、その決定は強制力を持つ。形式としては刑事裁判の形式裁判に類似している。決定に不服な場合は正式裁判に移行する。

ラテンアメリカ[編集]

19世紀に独立したラテンアメリカ諸国でははじめ、無期限の雇用契約を禁止し、解雇を自由としてきた。メキシコ革命によって成立した1917年憲法が、正当な理由のない解雇を禁じたのが、不当解雇を禁じる最初の法である。以後同様の立法が広まり、第2次世界大戦がおわるまでにほとんどの国で不当解雇を禁じる法律が作られた[1]。不当解雇の法律上の扱いはおおよそ三つに分れる。不当解雇が無効となるのはキューバメキシコパナマペルーで、不当な解雇に対して補償金を支払うのがアルゼンチンコロンビアコスタリカエルサルバドルグアテマラウルグアイ、正当・不当にかかわらず解雇に補償金を支払わせるのがボリビアチリエクアドルハイチホンジュラスニカラグアドミニカ共和国である[2]。いくらかの国では不当解雇に対して復職を命じる法律をもっているが、そうした国でも、また不当解雇を無効とする国でも、実務的には補償金を積むことで決着させることが多い[3]。不当でない解雇の圧倒多数は業績悪化のような経済的理由によるもので、多くの国がこれを認めている[4]。個々の労働者が故意または重大な過失で損害をもたらした場合も正当な解雇理由になるが、そうした解雇権の乱用に対しては労働裁判所のような機関に訴えることができる[5]。この場合、不当でないことの証明責任は、雇用者が負う[5]。ただし、この手続きには時間がかかり、ときには確定するまで10年かかることもあって、十分な救済手段にはなっていない[6]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Arturo S. Bronstein (1990) "Protection against unjustified dismissal in Latin America", p593.
  2. ^ Arturo S. Bronstein (1990) "Protection against unjustified dismissal in Latin America", p599.
  3. ^ Arturo S. Bronstein (1990) "Protection against unjustified dismissal in Latin America", p603 - p605.
  4. ^ Arturo S. Bronstein (1990) "Protection against unjustified dismissal in Latin America", p600.
  5. ^ a b Arturo S. Bronstein (1990) "Protection against unjustified dismissal in Latin America", p602.
  6. ^ Arturo S. Bronstein (1990) "Protection against unjustified dismissal in Latin America", p602. p610.

参考文献[編集]

  • Arturo S. Bronstein "Protection against unjustified dismissal in Latin America", International Labour Review, Vol. 129, 1990, No. 5.