介護休業

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介護休業(かいごきゅうぎょう)とは、一定の親族を介護する労働者が法律に基づいて取得できる休業のことである。本項目では、日本において、1991年に制定された育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)(通称:育児介護休業法)によって定められた介護休業について説明する。

  • 育児介護休業法については、以下では条数のみ記す。

休業取得の条件[編集]

介護休業を取得するには、以下の条件を満たすことが必要である。取得する者の男女は問わない。他の者の手伝いを受けている場合であっても、労働者本人が介護をしているのであれば、社会通念上、「対象家族を介護する」に該当する。休業は法律により定められている労働者の権利であるため、事業所に規定が無い場合でも、申出により休業することは可能であり、問題がある場合には事業所に対して厚生労働大臣から助言・指導・勧告がなされる。事業所によっては就業規則等で独自の上乗せ規定を設けている場合もある。

「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう(第2条3項)。介護保険制度上の「要介護状態」と同じではないので、要介護認定を受けていなくても、介護休業の対象となり得る。また「対象家族」とは、当該労働者の配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫である(第2条4項)。ただし平成28年12月31日までは太字の者以外については、当該労働者が同居かつ扶養することが要件となる。

家族の介護を行うための休業をする労働者は、その休業後における就業を円滑に行うことができるよう必要な努力をするようにしなければならない(第3条2項)。

事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない(第12条1項)。ただし、労使協定に定めることにより、以下の労働者については、介護休業を認めないことができる(施行規則第23条)。

  • 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 介護休業申し出があった日から起算して、93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

介護休業開始予定日までであれば、労働者は当該介護休業の申出を撤回することができるが(第14条1項)、平成29年1月1日以降は、同じ対象家族について連続して2回介護休業の申出を撤回した場合には、事業主はそれ以降の介護休業の申出を拒むことができる(第14条2項)。

事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(第16条)。

雇用の形態[編集]

労働者(日々雇用される者を除く)が対象となる。ただし、有期雇用労働者については次のいずれにも該当していなければならない(第11条1項)。

  1. 当該事業主に引き続き1年以上雇用されていること。
  2. 介護休業開始予定日から起算して93日経過後も引き続き雇用されることが見込まれる者(93日経過日から6ヶ月を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く)

期間[編集]

介護休業は、同一の対象家族の要介護状態ごとに1回ずつ、後述の短縮等の措置が講じられた期間と合算して93日まで取得することができる(第11条2項)。平成29年1月以降は93日以内であれば3回まで分割して取得することができる。

手続き[編集]

対象家族の氏名、生年月日、続柄、要介護状態にあること、休業開始及び終了の予定日を明らかにして、その2週間前までに申し出る。

介護離職を防止するための措置[編集]

要介護状態にある対象家族の介護等を行う労働者(日々雇用される者を除く)は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において5労働日(要介護状態にある対象家族が2人以上の場合にあっては、10労働日)を限度として、当該介護等を行うための休暇(介護休暇)を取得することができる。この申出は、対象家族が要介護状態にあること及び介護休暇を取得する日を明らかにして、しなければならない(第16条の5)。事業主は、労働者からのこの申出があったときは、当該申出を拒むことができないし、取得日を変更することもできない。介護休暇は、1日又は半日単位で取得(1日の所定労働時間が4時間以下の者は半日単位での取得は不可)することができる(施行規則第39~40条)。ただし以下の労働者については、労使協定に定めることにより、介護休暇を認めないことができる(第16条の6)。

  • 当該事業主に引き続き雇用された期間が6月に満たない労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

要介護状態にある対象家族の介護等を行う労働者(日々雇用される者を除く)は、その事業主に申し出ることにより、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはならない(所定外労働の制限、第16条の9)。この請求は、一の制限期間(1月以上1年以内)について、制限開始予定日・終了予定日を明らかにして、制限開始予定日の1月前までにしなければならない。この制限は、対象家族を介護しなくなった場合、労働者が産前産後休業育児休業・介護休業をすることとなった場合は労働者の意思にかかわらず、終了する。ただし以下の労働者については、労使協定に定めることにより、所定外労働の制限の請求を認めないことができる。

  • 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者(日々雇用される者を除く)で次のいずれにも該当しない者が、当該対象家族を介護するために請求したときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、制限時間(1月について24時間、1年について150時間)を超えて時間外労働をさせてはならない(時間外労働の制限、第18条)。この請求は、一の制限期間(1月以上1年以内)について、制限開始予定日・終了予定日を明らかにして、制限開始予定日の1月前までにしなければならない。

  • 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者(日々雇用される者を除く)で次のいずれにも該当しない者が、当該対象家族を介護するために請求したときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後10時から午前5時までの間(深夜)において労働させてはならない(深夜業の制限、第20条)。

  • 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 当該請求に係る深夜において、常態として当該対象家族を介護することができる同居の家族等がいる場合における当該労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 所定労働時間の全部が深夜にある労働者

事業主は、その雇用する労働者(日々雇用される者を除く)のうち、その要介護状態にある対象家族を介護する労働者に関して、労働者の申出に基づく連続する3年以上の期間における所定労働時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置を講じなければならない(所定労働時間の短縮措置等、第23条3項)。なお、労働者が、その対象家族について介護休業をしたことがある場合には、93日から介護休業をした期間の日数を差し引いた日数以上の期間について措置等を講ずればよい。ただし、労使協定に定めることにより、以下の者については所定労働時間の短縮措置等を講じないこととすることができる。

  • 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

「労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置」とは、以下のいずれかの方法によって講じなければならない。さらに4.を除き2回以上利用できる措置でなければならない(施行規則第79条)。

  1. 所定労働時間の短縮の制度を設けること。具体的には、
    • 1日の所定労働時間を短縮すること
    • 週又は月の所定労働時間を短縮すること
    • 週又は月の所定労働日数を短縮すること
    • 労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認めること
  2. フレックスタイム制を設けること。
  3. 1日の所定労働時間を変更することなく始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤)を設けること。
  4. 当該労働者に代わって当該対象家族を介護するサービスを利用する場合、当該労働者が負担すべき費用を助成する制度その他これに準ずる制度を設けること。

事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する介護休業等の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない(第25条)。対象となる労働者は、有期雇用労働者を含むすべての労働者であり、また派遣労働者については派遣元・派遣先とも措置を講じなければならない。

介護休業給付制度[編集]

介護休業期間中の賃金については、法令上は賃金の支払いを事業主に義務付けておらず、各事業所の就業規則等による。そのために賃金の支払いを受けられない者に対して、雇用保険法(昭和49年法律第116号)の規定により介護休業給付金の支給を受けることができる。次の条件をすべて満たした場合、介護休業給付を受けることができる。

  1. 一般被保険者又は高年齢被保険者である。
  2. 育児休業開始日の前2年間に、賃金支払い基礎日数11日以上の月が12か月以上ある。
  3. 各支給単位期間(介護休業開始から1か月毎の区切り)に、就業している日数が10日以下である。
  4. 各支給単位期間において、休業開始時の賃金に比べ、80%未満の賃金で雇用されている。

支払われる介護休業給付金の金額は、支給対象期間(1か月)当たり、当分の間休業開始時賃金日額×支給日数の67%相当額である。ただし、各支給対象期間中(1か月)の賃金の額と介護休業給付金との合計額が賃金日額×支給日数の13%を超えるときには、当該超えた額が減額されて支給される。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]